花芯 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 342
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750080

作品紹介・あらすじ

「繊細で、清らかな、言葉。」川上弘美

こんなに淫らで、こんなにも無垢な女がいただろうか?
晴美時代の記念碑的作品

「きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ」。親の決めた許婚(いいなずけ)と結婚した園子は、ある日突然、恋を知った。相手は、夫の上司。そして……。発表当時、著者に「子宮作家」のレッテルが貼られ、以後、長く文壇的沈黙を余儀なくされた表題作ほか、瀬戸内晴美時代の幻の傑作5編を収録。<解説・川上弘美>

感想・レビュー・書評

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  • 表題作が最高に良かった!痛快と取れるようなとこもあって、声に出して笑ってしまうほど。あたしは度々「女」であることが嫌になるけど「女」でないとこの作品は理解できなかったかも。男性で本当に理解できるなら、とても貴重な人だ。性に奔放と言われる「女」ばかり。時には冷酷で怖いような…でもこの作品に出てくる「女」が理解できない女性とは分かり合えないかもなー。読了するのに休み休み数ヶ月かかった。これはあたしが「女」の気持ちになった時に、手に取る作品だった。最初の「いろ」も好きな話。時代背景と切ない結末がたまらなかった。

  • たまたま瀬戸内寂聴の本を読みたくなったので購入。中でも、この作品は「子宮作家」と呼ばれるキッカケを作った問題作とのことで、「どんなもんかなぁ」と思って読んでみました。

    非常に優れた小説でした。生々しい女性的なパトスと愛撫や性行為のエロティシズム、そして不倫によるある種の頽落感が、「子宮」を鍵に見事な物語として紡がれている。非常に丁寧で味わいのある作品です。
    子宮やセックスの語は出てくるものの、ポルノを全く感じない。エロティシズムは感じますがね。
    繰り返し手に取って味わいたくなる文章ですね。

    何でdisられなくちゃいけなかったんだろう。川上さんが解説を読む限り、やはり「時代」としか言いようがなさそうです。予想通りでしたが。

  • 「きゅうきょくの、しょうふ」ですよホントに!
    僕がこれまで女性に漠然と感じていた、なんとなくな恐怖を見事に体現してくれた作品でした。

    男女関係なく人間にはきっとこういう衝動が潜んでいて、その動物的な本能は誰にも止められないし摂理なのです。
    だからこの作品を読んで、「うわ、なんか気持ち悪い、、、」とか言っちゃう人は全員ウソつきなんじゃないかなー。

    「花芯」というタイトルも素晴らしい。花の、女性の芯とは一体何なのか。それは最後の一文に全て集約されています。

  • 貸してくれる人があって読んだ。

    5作の短編集。女性の孤独を描いた作品群。
    ひとつめの『いろ』が一番すき。
    主人公の「るい」という名前といい、設定といい、うまい。


    瀬戸内晴美の時代の作品で、「瀬戸内晴美は奔放な官能小説を書いていた」と聞いていて、 特に興味も持たず読んだことがなかった。

    50年程前に書かれたこの表題作によって、当時彼女は「子宮作家」というレッテルを貼られたそうだ。
    わたしの聞いていた評判もこのあたりに端を発するのだろう。


    たしかに女性のことばで書かれた性愛の描写がどの作品にもあるし、極普通の結婚生活を送るような男女の姿は描かれていない。
    当時としてはセンセーショナルで、そこが取り沙汰されるのは仕方ないかもしれないが、この小説群の魅力はそれだけじゃない。文体の美しさ、登場人物のまっすぐさ、性表現もいやらしさを狙ったものではなく、品がある文学的な表現。
    わざわざ「官能小説」というのもどうかと思う。
    (正統な「官能小説」を読んだことないので性描写をメインとしているもの、と定義して話している。決して官能小説がほかの小説に劣るという意味合いで書いているわけではない)


    女性の女性らしい感性を素直に書き過ぎてるゆえに、当時の男性がたには受け入れ難かったのかなあ?

  • <霹>
    たぶん普段の僕ならば,この種の本は絶対に読まない.けれどコロナバイラス禍のせいもあってこの本を読んでしまった.が,やはりどうやら僕は瀬戸内さんの作品とは相性が良くないみたいだ.

    まあ,それにしてもこの本に収められた短編達はどれも似た内容ばかりですな.そう云うところも”僕には合わない”部分だろうとつくづく思う.

    もし次のチャンスが会っても,僕は固辞するだろう.m(_~_)m(すまぬw)

    尚,駅のプラットホームのことを何度でも「フォーム」と書くところに,どうしようもない時代の隔たりも感じたのであった.僕にとっては,この本が発行された当時話題になったらしい「『子宮』という言葉を多様し過ぎていて,云々」という偉い書評家先生のうんちくよりもずっと気になったのだ.

  • 現代文学に食傷気味だった頃、開いた一冊。
    長らく本棚の中で眠っていたが、パンドラの匣を思わせる素晴らしさだった。
    尻切れ蜻蛉の様に終わる表題作は、最後の三行に瞠目させられる。
    何と切れ味が良く、格好良い物言いだろう。
    読者を突き放して尚嘲笑う事、物書きになるべく生まれた妖怪の如し。
    流石です。

  • 『花芯』と4編の短編集。

    <目次>
    いろ
    ざくろ
    女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)
    聖衣
    花芯

    Wikipediaによると、『花芯』は1956年(著者が34歳になる年令)の著作で、本書によって「子宮作家」と批判されることになる。たしかに子宮という言葉が多く使われ、まだ女性に貞淑さが求められていた時代、女性がかような官能小説を描くことは、特異な存在だったのだろう。現代から見れば、特段、それほどのいやらしさはなく、性愛を美しく奏でているといえるのではないだろうか?いくつか引用してみる。 

    <引用>
    性の歓びは、けい子にとって、いつまでたっても、あの幅広い、とらえがたい風に似たオルガンの音のようなものであった。おとこがじぶんの上でうごめき、嘆きを忘れ、恍惚と虚脱するのを感じる時、けい子はじぶんが、まんまんとふくれ上がった、ゆたかな海になった想いがする。男も、男の性のつらさも、小さな片帆の小舟になって、じぶんの波の上に安心しきって浮かんでいった。(聖衣 p108)

    私たちは、逢って別れるまで、愛の言葉をかわさなかった。はじめから、言葉や目ざしで起こったものではなく、私たちのなかでは、皮膚と皮膚のこたえ合いだけで、すべてが語られていた。若い男の日常的な欲情と、少女の好奇心が、たまたまぶつかり、二つが一つになってうごめいたにすぎなかった。(花芯 p136)

    出産のあと、私はセックスの快感がどういうものか識った。それは粘膜の感応などのナマぬるいものではなく、子宮という内臓を震わせ、子宮そのものが押えきれないうめき声をもらす激甚な感覚であった。(花芯 p154)

    その若者のからだの下でさえ、私の子宮はうめき声を押さえきれず、私は快楽の極に待つあの甘美な失神に夜明けまでに二度もおちいった。(花芯 p239)

    ただ一度しかあわぬ行きずりの男と、何もかも忘れて没頭し、あの甘美な「死」の中をくぐって甦る、瞬間のいのちの充実を実感したいのだ。(花芯 p242)

    誠以外の子どもを産む気持ちは、私にはもう絶対なかった。一度、雑種と交わってしまえば、純粋種の犬や牛の雌は、それだけで、値打がなくなるのだ。生理的にどう説明されても、人間の女だけに、特別な純潔のあり方が存在するとも思われない。じぶんの目に見えない処女膜のあるなしで、処女性を云々されるのが、私は納得出来なかったが、匂いも味も、色の濃度も一人一人違う、さまざまな男のザーメンを、体内に吸収した今−−−私は生理的実感で、自分の血の純潔が、失われさったのを感じているのだ。(花芯 p244)
    253 L6 L2

    2013.02.10 読了

  • 瀬戸内寂聴の半生のドラマを観て、原作に触れてみたくなった。時代がはやかったのかもしれない。読みやすいし、他の作品も読みたい。

  •  なぜ買ったのか……多分、ツイッターか何かで紹介されていて、どんなものなんだろうか、と思って購入したのだと思います。
     一作目の、るいさんが、果てしないなあ、と思いました。儚さを佇む。

  • かなり長い時間をかけてやっと読了。
    実は私の勝手な都合ではあるけど、宮下奈都さんの本と並行して読んでいたので、その落差というか作風の開きに戸惑いが大きかった気がする。

    5編の短編集。印象が深かったのは最後の花芯だったけど、どの話の主人公も、言葉でちゃんと自己表現しないのに、人の何倍も濃い思いを持っているという共通点があったように思う。
    自分と違うタイプが多く、なかなか共有できなかったことも読了までに時間を要した理由かもしれない。

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著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。60年『田村俊子』で、田村俊子賞受賞、63年『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年、中尊寺にて得度。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、95年『白道』で芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で野間文芸賞、2011年『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。2006年に文化勲章受章。『現代語訳源氏物語』『奇縁まんだら』など著書多数。徳島県立文学書道館館長、宇治市源氏物語ミュージアム名誉館長。

「2020年 『ひとりでも生きられる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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