花芯 (講談社文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750080

作品紹介・あらすじ

「繊細で、清らかな、言葉。」川上弘美

こんなに淫らで、こんなにも無垢な女がいただろうか?
晴美時代の記念碑的作品

「きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ」。親の決めた許婚(いいなずけ)と結婚した園子は、ある日突然、恋を知った。相手は、夫の上司。そして……。発表当時、著者に「子宮作家」のレッテルが貼られ、以後、長く文壇的沈黙を余儀なくされた表題作ほか、瀬戸内晴美時代の幻の傑作5編を収録。<解説・川上弘美>

感想・レビュー・書評

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  • 寂聴さんのエッセイ本は何冊か読んでいるけど、小説を読んだのは初めて。曰く付きの作品を読んでみたかった。50年位前とは思えない生生しさ。私は好きだ。辛いし痛いしけど。女の性。分かる自分も痛みを抱えている。

  • こんなにも人間の性愛を、深く、上品さを持った淫らさで表現できるのはこのひとが女性だからだと痛感させられる短篇集。

    女性こそが強さをもって人間のしがらみを隠すことなく、官能を通して表現し切れるのだ

    こんな小説、現代では望むべくもない

  • 表題作が最高に良かった!痛快と取れるようなとこもあって、声に出して笑ってしまうほど。あたしは度々「女」であることが嫌になるけど「女」でないとこの作品は理解できなかったかも。男性で本当に理解できるなら、とても貴重な人だ。性に奔放と言われる「女」ばかり。時には冷酷で怖いような…でもこの作品に出てくる「女」が理解できない女性とは分かり合えないかもなー。読了するのに休み休み数ヶ月かかった。これはあたしが「女」の気持ちになった時に、手に取る作品だった。最初の「いろ」も好きな話。時代背景と切ない結末がたまらなかった。

  • 貸してくれる人があって読んだ。

    5作の短編集。女性の孤独を描いた作品群。
    ひとつめの『いろ』が一番すき。
    主人公の「るい」という名前といい、設定といい、うまい。


    瀬戸内晴美の時代の作品で、「瀬戸内晴美は奔放な官能小説を書いていた」と聞いていて、 特に興味も持たず読んだことがなかった。

    50年程前に書かれたこの表題作によって、当時彼女は「子宮作家」というレッテルを貼られたそうだ。
    わたしの聞いていた評判もこのあたりに端を発するのだろう。


    たしかに女性のことばで書かれた性愛の描写がどの作品にもあるし、極普通の結婚生活を送るような男女の姿は描かれていない。
    当時としてはセンセーショナルで、そこが取り沙汰されるのは仕方ないかもしれないが、この小説群の魅力はそれだけじゃない。文体の美しさ、登場人物のまっすぐさ、性表現もいやらしさを狙ったものではなく、品がある文学的な表現。
    わざわざ「官能小説」というのもどうかと思う。
    (正統な「官能小説」を読んだことないので性描写をメインとしているもの、と定義して話している。決して官能小説がほかの小説に劣るという意味合いで書いているわけではない)


    女性の女性らしい感性を素直に書き過ぎてるゆえに、当時の男性がたには受け入れ難かったのかなあ?

  • 瀬戸内晴美時代の六篇からなる短編集。
    「いろ」
    長唄などの師匠・るいと31歳下の弟子・銀二郎との話。
    読み進めるうちに、るいは玉三郎に重なる。顔の右半面は火傷でただれているが、色白で顔立ちだけでなく所作も美しく、どんなに歳を取り弱っていっても凛とした振る舞いをし、ただただ銀二郎のことを愛していた。そして、亡き後も銀二郎に愛されていた。
    「聖衣」
    電車に乗り、死の際に立つ不倫相手とのこれまでのことを思い返し、もうすでに亡くなってるかもしれないと思いながら、病院へ向かうけい子。
    目の前に立った外人の尼僧の黒白の聖衣に秘される緋色の帯は何を言わんとしているのか。
    「花芯」
    園子は申し分の無い雨宮という夫がいながら、夫の上司である越智に一目で心を鷲掴みにされる。そんな越智に対して貞淑であろうとするかのように夫との関係を拒むようになる。越智には関係を持つ未亡人がいて、一緒になる事はできないと分かっているのに、夫の元からも去る。園子はなんて自分に正直で強い女性なんだろう。

  • 女性だから生み出せる表現ばかりで、下品な感じは全くしなかった。これを子宮作家と馬鹿にするとはなんと表面的…時代柄、仕方ないのか。。
    女性として分かるものも多かったけど、勿論、分からない価値観も多かった。感動したとか共感した、ではなく、深く考えさせられた文章をメモ程度に。


    ・恋愛なんて、結局、誤解の上に発生する病状(p34)

    ・まだ男はできる…ということばよりも、まだこどもは産めるということばの方が、女にとって、なんとみずみずしく、涯しない可能を孕んだひびきをもっていることでしょう
    (p37)

    ・愛とはもっと透明な、炎のように掌に掬えないものではないだろうか。
    (p107)

    ・人間はどうしてだれも彼も結婚したがり、味気ない噓でぬりかためた家庭の殻の中にとじこもりたがるのだろう。出来ることなら生涯、独身ですごせないものだろうかと、私は度々空想した。
    (p110)

    ・人間のだれもが逃れることの出来ない行為
    (p118)

  • 人物描写や情景に憎いくらい引きこまれる。なのに、結論が分からない。何を伝えたかったのか…

  • 改めて読みました
    中でも『花芯』が好きです

  • これまでに読んだ寂聴さんの作品とは違うテイストだけど好き。
    当時この作品がバッシングを受けたのは、認めたくない女性像が描かれていたからでは。
    寂聴さんあっぱれ!
    解説は川上弘美さん

  • 表題作『花芯』は1958年の作品,1957年に「女子大生・曲愛玲」で新潮同人雑誌賞を受賞した後の第1作で,ポルノ小説であるとの批判にさらされ,批評家より「子宮作家」とレッテルを貼られ,しばらく干されていたのだという。

    直接的な性愛描写を,隠すことを美徳としてきた(一部の)世間に対する,堂々たる反抗と読んだ。家庭というのは女性にとっては大きな制約なのであって,作者の裏表のない讃歌によって,子宮は自由へと解き放たれた。これは悪女でなければ雌獅子でもない,一娼婦の目覚めの話である。まだ熟しておらず粗削りではあるが,有り余るパワーを黙殺するのはもったいない作品である。

    現代からすれば,陳腐にも思えるポルノと言ってしまえばそれまでなのだが,戦後間もない時代背景を見てこういう風土もあったのだという,慎重かつ真っ向からの批評が求められる。

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著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎純一郎賞、11年『風景』で泉鏡花賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月、逝去。

「2022年 『瀬戸内寂聴 初期自選エッセイ 美麗ケース入りセット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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