クラインの壺 (講談社文庫)

著者 :
制作 : 菅 浩江 
  • 講談社
3.80
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  • (23)
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本棚登録 : 1644
レビュー : 271
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750172

作品紹介・あらすじ

200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人の最終作かつ超名作。

感想・レビュー・書評

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  • ここは世界の内側か、それとも外側か―?

    初版は1989年。まだまだVR(バーチャルリアリティ)とはほど遠い年代に出版された作品であることにまず感動を覚えます。
    “VR元年”と呼ばれる今、この作品はさほど新鮮に映らないかもしれません。しかしVRの「よりリアルに」を追求した先にある世界を、この作品は覗かせてくれます。
    湧き上がる好奇心とスリル、その先は…?技術の進歩をネガティブに捉えるのも後ろ向きかもしれませんが、個人的には体験したくない世界でした。

    VRは今後ますます進化していくはずです。
    だからこそ“元年”のうちに読んでおいて良かったと思えた、SFミステリ。

  • あまりにリアルなゲームも、それはそれで怖い。
    うさんくさい会社、怪しげな登場人物、微妙に原作と違うゲーム、時々おこるバグ…違和感だらけだけど、自然すぎて溶け込みすぎて、気づけなくなくなってしまう不気味さが怖い。
    クラインの壷、題名そのままにぐるっとひっくり返る感覚を味わってゾッとした。

  • 怖っ。

    コンピュータの話だって事前情報だったから、とっつき辛そう……と読み始めたら、バーチャルリアリティーゲームの話だった。全然理解できる。
    体がすっぽり包まれて、五感全てが実際の感覚を疑似体験できるゲーム。ゲームの世界に体ごと入っちゃう感じの。
    主人公がそのモニターとしてゲームを体験して、終わって家に帰る場面を読みながら、「いやでも実はまだゲームの中かもしれなくね? 区別つかなくね?」と考えてしまって、とたんに恐怖に襲われた。
    そしたらこの物語もそっち方向に展開していって、主人公も最後には今置かれた状況が現実なのか仮想世界なのか区別がつかなくなる。
    ホントに怖い。
    まだコンピュータが一般化していない平成元年の作だってことが称賛されてる作品だけど、技術が進歩して実現化も夢じゃなくなった今の時代に読んだ方が確実に怖い。
    完璧なシュミレーションゲームは絶対に作っちゃいけないな。悪用されたら簡単にヒトが壊れる。世界が終わる。

    作品の完成度の高さは素晴らしい。
    岡嶋二人の、最後にして最高傑作だと素直に思う。

  • 読みやすい。
    あっと言う間に読了!

    主人公は仮想現実を体験するゲームに参加するのですが、
    あまりのリアリティに徐々に現実と仮想の区別があやふやになっていく。
    と言う、まぁよくある話なのですが、
    この本は現実もゲームの中のストーリーも面白く、
    スピーディで退屈感はありません。

    また構成がよいせいか、
    読んでるこっちまでどちらか判らなくなってくるのが凄いところ。

    これが1989年の作品っていうのが驚きです。
    今読んでも十分面白いです。

    ただ結局現実と仮想の区別がつかないまま、
    実はどうだったのかが解き明かされないまま終わってしまうので、
    私はそれがすっきりしないでもやもやし、読後感はいまひとつ。

    「クラインの壺」というタイトルを考えるとこのラストがいい気がしますけど、
    これは好みの問題で、私はもう少し謎を解明してすっきりしたかったので、
    ラストはやっぱり少し残念です(笑)。

    という訳で☆は3つですが、岡島さんはセンスがあっていいですね♪

  • 昔NHKでドラマ化されていた気がして読んでみた。

    題名のとおり、読んでいる此方も壺の中なのか外なのか判らなくなる。

    主人公が、最後に置かれた世界は外なのか中なのかと考えても仕方がない!
    主人公は最後それに悩まされ続けられるんだけど・・・

    まぁ私なりの解決方法としては、メビウスの輪もクラインの壺も観測者の視点から見れば裏なのか表なのか悩む事であって、当事者にとって実はそんな事は関係なく自分がいる場所こそが唯一の世界であると割り切るべき!

  • ◆ストーリー
    主人公上杉はゲームブックの公募に作品を応募。落選したがゲーム会社イプシロンのシナリオとして採用される。そのゲームは、K2という装置を使って、ユーザが現実世界と同様の五感を味わえる完全疑似世界を体験できる夢のような代物。シナリオ原作者としてテストに参加していたが、同様にテストに参加していた梨紗が失踪。梨紗の友人と名乗る七美と梨紗失踪の真実を探る内に、イプシロンがCIAと通じており、ゲームテストが秘密裏に進められているプロジェクトの危険を伴うテストであったことを突き止める。さらに、イプシロンはK2を使って疑似世界を現実と思わせることで、梨紗が犠牲になった事実を隠ぺいしていたことも発覚。イプシロン社に潜入し、証拠を手に入れることに成功したが、上杉と七美は社に捉えられる。しかし、目を覚ました上杉に待ち受けていたのは、それまで体験していた真相究明に奔走した日々がすべてテスト、即ち疑似世界の内容だったという事実。梨紗が存在して七美が存在しない世界を前に、上杉にはもはやそこが現実なのか疑似世界なのか見分けることはできず、壊れゆく精神状態の中で、どちらであろうとK2に入った瞬間から自分はこの堂々巡りから抜け出せなくなっていたことを悟るのであった。

    ◆総評
    ゲームブックの原作者が主人公ということで、ミステリゲーム舞台にしたサスペンスものかと思いきや、現実とゲームを行き来しながら、次第に募る開発会社(組織)への不信・疑念を通して、真実を探るサスペンスという感じ。ゲームという要素はどちらかというと話の舞台というよりは、展開の中で重要な鍵というか、トリックとして使われている印象。K2という非現実的な装置が登場することからSF的なノリもあるが、特に抵抗なく一気に読み進められる。個人的には好きな系統の話で面白かったが、K2でテストを始めた時点で、その後現実世界と混同させるのではという疑いは真っ先に湧いており、梨紗失踪の際の謎もすぐにカラクリは分かってしまった。その辺は正直肩すかしな感もあるが、筆者が一番読者にぶつけたかったのは、そんな謎解きではなく、K2という代物によってなし得た捉えようのない世界観というかループ感(作中では自分の尻尾を加えた蛇と表現されている)、さらにはそこに感じる無力であったと思うので、全体を通してきれいにまとまっていたと思う。その分、突き抜けた読後感は感じなかったのは致し方ないか。

  • ◆◆ ベッドでミステリー ◆◆ 第三十九回

    ・・・ 第三十九回 「クラインの壺」 ・・・

    岡嶋二人のミステリーは、いま読んでもどれも読めると思います。
    逆にこれが一番時代を感じるかもしれないので、1980年代を理解してもらう(もしくは思い出してもらう)ためにもいいかも、と思います。
    なにせこれから急激に変わっていくからね。
    いま思い出しとかんともっと難しくなってしまう。

    これはバーチャルで経験させることができるなら、殺人の記憶が本物かそうでないのか、どうやってわかるのよ?!
    がテーマの一つです。
    まだバーチャルが出始めたときに書かれて、かなり新鮮だった覚えがある……。

    ミステリーとしてもよくできているので、読んで損はないと思います。

    2018年11月13日

  • 読み終わった後、マジかっ!終わり!?ってなる。

  • 疑似感覚を体感する仮想現実なゲームのテスト体験者となった彰彦が、同じ体験者の梨紗の突然の失踪を心配し、梨紗の友人の七美と噛み合わない現実に翻弄されながら、会社を怪しむ。一九八九年の作品だけれど古さは全く感じない。展開に意外性はなかったものの飽きずにサクサクと読み進められた。極ナチュラルなわくわく感。

  • 超リアルな仮想世界。
    今でこそVRで気軽に遊べるようになったけど、本当に近い未来には、この小説のように現実か仮想世界か分からないほどの体験ができるようになるんだろうなと思うと、楽しみである反面怖いなと思う。
    たまに夢で起こったことをあれって夢だっけ?と一瞬考えてしまうくらい単純な私はやはり体験しない方がいいのかも。
    しかし一番の驚きはこの題材で30年以上も前に執筆されていたということ。
    30年前はまさかこんなことができるなんてと思っていたようなことが、着々と研究が進みも現実的になりつつあるということに、タイムマシンやどこでもドアなども、もはや夢の道具ではないかも?と期待してしまう。

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