クラインの壺 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2188
感想 : 317
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750172

作品紹介・あらすじ

200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人の最終作かつ超名作。

感想・レビュー・書評

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  • 楽しい読書でした。

    多くの人が、一度は考える世界観だ。
    自分は何か未来的な技術により、バーチャルの世界で生きていて、本当はカプセルの中で眠っているのかもしれない。大きな実験が行われていて、目の前にいる家族すら、作られた記憶の一つで、自分の視界の外では存在しないこともあり得るんじゃないか。的なもの。

    作者は井上泉と徳山諄一のコンビ。「岡島二人」というペンネームである。
    出版された当時にこの設定ができることに感心もするし、夢の世界や空想の世界、バーチャルに関する想像力が先鋭的であったことが伺える。書いていて2人は楽しかっただろうなぁ、と思う。

    K1とK2の描写に関しては専門性は一切排除して、誰でも容易に理解できる簡単な説明になっていることも好感。そもそも専門家でもない作者が、現代でも実在しないコンピュータの外郭のみを描いたのだから、描写も何もなかったのだろう。

    今の時代の読者には、仕掛けも、オチも、数パターン想像できてしまうだろうし、概ね予想と違わない結末が待っているだろう。

    主人公の結末は本の中で一応の区切りを迎えるが、一体それは内側なのか、外側なのか。
    奇妙な物語は幕を閉じた。

    読了。

  • やーばい。
    これは面白い。一気読みしてしまった。
    めっちゃ好み!

    1989年の作品なのだが、現代SFミステリーと言っても遜色ない。
    むしろ最近の方が話題になっても不思議はないのでは。

    ゲームブックの原作を売却した主人公、上杉彰彦が、イプシロン・プロジェクトというVR企業の開発した新作ゲームの体験をする。
    そのVR機器が通称「クラインの壺」という。
    内容を知らないで読んだもん勝ちですので、これ以上は書きません笑

    33年前、、、。
    1999年頃マトリックスが賑わせ、MACやWindowsが出回りPCを個人で所有する世の中になっていきチャットルームや BSSが盛んになっていました。
    そこからの進化が目まぐるしかったですが、1989年にこの作品のような想像ができたかと言うと、、、天才って思っちゃう。

    井上夢人
    ハマりました。他の作品も読みたい。
    ブク友さんに感謝♡

  •  ヴァーチャルリアリティ(VR)を扱ったSFミステリー。作者の岡嶋二人は井上泉(現 井上夢人)と徳山諄一のコンビのペンネームで、徳山氏は昨年なくなっている。本作はコンビとしての最後の作品で、1989年に出版されている。岡嶋二人が一人になってしまったのを機によんでみた。実はこの作品、1996年にNHKでドラマ化されており、私はそれを見ていたので、大まかかなストーリーは知っていた。そのためか、スラスラと読むことができた。

     本が出版された1989年は、パソコンをまだマイコンと呼ぶ人も多く、Windowsのヴァージョンも”2”の頃でMS-DOSが主流。FORTRANとかCOBOLとかあったな。作中で扱われているVRも夢のまた夢の技術だった。いまでもこれほどの技術は開発されていない。

     今作では現実世界と仮想世界が曖昧となり、「クラインの壺」のように、表と裏が判然としなくなる様が描かれている。主人公は「戻れなくなった」のだ。読者もまた、現実なのか仮想なのかわからないままに置かれてしまう。

  • 読み終えて、公園のぐるぐる回る遊具の外に放り出された感じ。

    少し気分が悪い。

    この悪酔いのような余韻は傑作の証なんだろうな。

    主人公、上杉彰彦と全く同一の視点で、最初から最後まで、見事に弄ばれた。

    これが最終作か。

    岡嶋二人さん、素晴らしい作家です。

  • 30年前に書かれたVRのミステリー、次々展開される物語がスゴイ! 圧倒的に★5

    新しいゲームのテストとしてVRを体験する主人公がトラブルに巻き込まてしまい、真相の究明と解決に奔走する新進気鋭のミステリー。

    レビュー自体がネタバレになるので何も語れませんが、平成元年に既にこの設定、この真相ですか… すげーよ。内容もわかりやすく、どんどん話が展開されて、純粋に面白い! 現代の映像技術と演出で、もう一度連続ドラマを作ってほしい。

    ミステリー好きは絶対読んどけって作品、こんな小説にであえて幸せです。

    • Kaniさん
      autumn522akiさん、こんにちは^ ^
      早速読みましたっ!
      これはすごい!

      Windows95以前といなると、DOS/Vとか真っ黒...
      autumn522akiさん、こんにちは^ ^
      早速読みましたっ!
      これはすごい!

      Windows95以前といなると、DOS/Vとか真っ黒な画面の時代ですよね、、、。
      パソコン通信とか言ってた。
      マニアはこんな未来を容易に想像できていたのだろうか、、、すごすぎる。

      私の中でTOP10に入る作品になりました。
      ラストまで綺麗に完成されていて、すごく好みです。

      ハマりまして、今、井上夢人の「ラバーソウル」読んでます。
      2022/02/18
    • Kaniさん
      Twitterフォローさせて頂きました^ ^
      Twitterフォローさせて頂きました^ ^
      2022/02/18
    • autumn522akiさん
      Kaniさん、コメントありがとうございます!
      しかも早速読んでいただいたようで、感謝感激です。

      そうすよね〜、あの頃はゲームといえばスーパ...
      Kaniさん、コメントありがとうございます!
      しかも早速読んでいただいたようで、感謝感激です。

      そうすよね〜、あの頃はゲームといえばスーパーファミコンくらいですか。いやーすごい。

      すっかり自分も岡島二人さん、井上夢人さんのファンになってしまいました。
      2022/02/18
  • クラインの壺。引き込まれる。仮想空間?夢?に入り込む最新ゲーム「クライン2」。これがドラクエⅢ、ファミコン時代に書かれた作品とは思えない。全く色褪せない作品。ネタは使い古されている感はあるけど、最後まで良くもって楽しませてくれた。
    本当に1989年にかかれたとは思えない!

  • ここは世界の内側か、それとも外側か―?

    初版は1989年。まだまだVR(バーチャルリアリティ)とはほど遠い年代に出版された作品であることにまず感動を覚えます。
    “VR元年”と呼ばれる今、この作品はさほど新鮮に映らないかもしれません。しかしVRの「よりリアルに」を追求した先にある世界を、この作品は覗かせてくれます。
    湧き上がる好奇心とスリル、その先は…?技術の進歩をネガティブに捉えるのも後ろ向きかもしれませんが、個人的には体験したくない世界でした。

    VRは今後ますます進化していくはずです。
    だからこそ“元年”のうちに読んでおいて良かったと思えた、SFミステリ。

  • コンビ作家・岡嶋二人の最終長編。1989年に書かれたバーチャルリアリティものの傑作。今だからこそ面白い。

    仮想空間を扱った作品は古くから多数あり、物語のモチーフとしては珍しくはない。VRやAIといったテクノロジーの進化を目の当たりにしている2023年現在の私たちにとってさらに身近な存在にもなりつつある。そんな中で、今さらタイトルだけでオチが見えてしまいそうなバーチャルリアリティものは興ざめではないか?実際に読んでみて、そんな心配はまったく無用だった。今読んでも古くさくない。それにわかりやすい。SFとミステリーを混ぜ込んだストーリーの筋運びは見事。結末のあの感覚は、既視感はあるけど意外と他ではなかなか味わえないもので、この小説の上質さがあそこに極まっている。仮想空間の世界が間近に迫っている今だからこそ、あの感覚を再検討してみる時期なのだろう。使い古されている題材をあざやかにまとめ上げた、分厚いけど一気に読める傑作。

  • むちゃむちゃ面白い!
    ノンストップで読めてグイグイ引き込まれる!
    今でこそあり得そうな話だが、これが書かれたのが30年前なんて信じられない!
    文章も古くさくなく、最近の本って感じ。

  • 1989年の作品で、携帯電話もネットで検索もない時代。しかし今日でも実現されていないであろうレベルの拡張現実がメインとなり、現実なのか虚構なのか、表と裏が混然として怖くなる。
    胡蝶の夢、マトリックス、メビウスの輪の4次元化であるクラインの壺。

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著者プロフィール

岡嶋 二人(おかじま・ふたり)
徳山諄一(とくやま・じゅんいち 1943年生まれ)と井上泉(いのうえ・いずみ 1950年生まれ。現在は井上夢人)の共作ペンネーム。
1982年『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。86年『チョコレートゲーム』で日本推理作家協会賞を受賞。89年『99%の誘拐』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年『クラインの壺』が刊行された際、共作を解消する。井上夢人氏の著作に『魔法使いの弟子たち(上・下)』『ラバー・ソウル』などがある。

「2021年 『そして扉が閉ざされた  新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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