- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062750240
感想・レビュー・書評
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エラの張った四角い顔。ゲジゲジ眉毛にタラコ唇。
ブ男。
というより、悪相である。
(本文より)
これが、本作の主人公である生稲昇太。
愛宕(おたぎ)南署の交通課交通事故係勤務の二十二歳の独身巡査です。
風貌に関しては、さんざんな言われようの彼ですが、巡査なのに膨大な知識と明晰な頭脳を駆使して事件を…
解決したりはしません。
警察官としての経験こそ浅いものの、あふれんばかりの正義感と、元気で明るい性格で、署内の人気者…
というわけでもありません。
実際、熱血漢であり、青臭い正義感をもってはいるものの、組織のしがらみはじめ、自分の思い通りにならないことに、時には愚痴をこぼします。
自分が殻に閉じこもって勝手に動いているだけなのに、先輩や上司が自分をわかってくれないと思い悩み、塞ぎ込み、他部署の先輩と酒を飲みながらいじいじしています。
署内のマドンナ的存在の警務課職員の女性に憧れと恋心を抱くも、どうやら彼女は自分とコンビを組んでいる先輩の彼女らしいと気づき、落ち込んでしまいます。
そう、僕が胸に手をあてて考えるまでもなく、僕をはじめ誰にも似た部分が多々ある、ごくごく普通の人間なのです。
さらに、彼の所属からわかるように、日常の仕事は書類の作成と、ノルマのような交通違反取り締まり、交通事故の捜査に取り調べ、五日に一度の夜勤当直、等々。
これまた、派手さのない地味なものばかり。
ラストシーンも、特に変わったことが起きるでもなく唐突に終わって、文字どおり、警察官の日常を何日か切りとって、そのまま編集なしで見せられたかのような感じです。
ところがところが、ものすごく不思議なことに、面白いんですよ、これが。
どこかしら自分とも被る部分があるせいか、昇太にはすんなりと感情移入でき、時には共感、時には「いやいや、それはお前がおかしいやろ」とツッコミを入れながら、気がつけば最後まで読みきっておりました。
僕は小説に対しては、どちらかというと突拍子もない、現実離れした内容を求めたり好んだりする方です。
でも、「こんな風に、普通で平凡なんもありなんかな」と思わされる味わいがありました。
作者の首藤瓜於さんは、江戸川乱歩賞受賞の「脳男」で有名な方ですが、本作はそれとは全く違った物語で、驚かされました。
あっ、愛宕市という舞台は一緒でしたけどね。
「脳男」を読んだ人も読んでない人も、読んでみてほしい一作です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
警察小説が好きでこれまでにも数多の警察小説を
読んできましたが、本作の面白さは抜群。
警察に知り合いがいる訳でもないので、
警察内部の描写が本当なのかどうか確認する術は
ありませんが、よくここまでと言わしめる内容。
素直に面白かったです。