冬の旅人 下 (講談社文庫 み 11-12)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750592

感想・レビュー・書評

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  • 皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
    ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
    いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

    しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
    特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

    ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
    一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。

    それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。

    読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ 座せる悪魔 を見た。荒々しさと粗野と憂愁と。ロシア人そのものじゃないか。

著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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