- 本 ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062750646
作品紹介・あらすじ
感想・レビュー・書評
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関ケ原の戦い前後で功績を上げた個性的な武士や民の短編
・『愛染明王』
家康方の功労者。成り上がり大名の福島正則。豊臣方の縁者でありながら、石田三成討伐へと家康方にしむけられ、いいように乗せられ利用されたという感じ。強烈な気性の狂人に描かれている。
戦国の世でなければただの無頼漢。
・『おれは権現』
豊臣秀次方時代。妾の目から見た可児才蔵吉永。
実際人気の高い人物らしい。
妾がなぜ子を儲けようとしないのか聞き出そうとする。
思い込みが強いというか、祈祷によって弱者から強者へと変容した。
・『助兵衛物語』
宇喜多家家臣の花房助兵衛。巫女からみた魅力的な助兵衛。
結局、骨はただのお守りだったのだろうか?
・『覚兵衛物語』
加藤清正の幼なじみで家臣になった飯田覚兵衛。
孫ほど離れた妾は助兵衛の過去を知っていく
伽の話が少し官能的
・『若江堤の霧』
大阪夏の陣・冬の陣に登場する豊臣方秀頼の重臣の木村重成。名だたる名将の2世たちが活躍する。
才あるが若すぎる重成。
太閤亡き後の弱体化した豊臣方で散る、負け戦が物悲しい
・『信九郞物語』
長曾我部盛親の異母兄弟である長曾我部信九郞。
世が世なら、百姓から成り上がる実力もあっただろうに…
この頃の弱体化した豊臣方の落ち牢人の武士たちの悲哀というか、物悲しくもあり感慨深い。
一番好きな物語だった。
・『けろりの道頓』
大阪道頓堀を作った大百姓の安井道頓。
一番ライトな物語だった。キャラが面白く好人物。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『愛染明王』…福島正則の話
『おれは権現』…可児才蔵の話
『助兵衛物語』…宇喜多家家臣、花房職秀の話
『覚兵衛物語』…加藤家家臣、飯田直景の話
『若江堤の霧』…木村重成の話
『信九郎物語』…長宗我部盛親の弟、長宗我部康豊の話
『けろりの道頓』…道頓堀を作った、安井道頓の話
司馬遼太郎の小説を読んでると、物語の主人公の行動が、
この人はこうするしかなかったんだなぁ、と腑に落ちます。
実際の選択肢としても、心情としても、生来のものとしても、
それを選ばざるを得なかったという納得感があります。
必然的なかんじがします。
しかもその必然の種が、その前にちゃんと蒔かれています。
不本意だとしても蒔かれていて、それによって、
こうするしかない、という心理や状況が生まれています。
『愛染明王』、『覚兵衛物語』では、そんなことを思いました。
『おれは権現』では、可児才蔵という豪の者が、
一人の人間に人生を縛られていることに、
なんだか退廃的なときめきを感じました。 -
とにかくうまいです。どの話も、締めの数行が実に見事で、はっとさせられ、そして、怖くすらなりました。どんなに努力してもどんなにもがいてもどうにもならない人間の運命の劇的さや虚しさ、愚かさみたいなものが簡潔な数行の文の中に凝縮されています。これぞ名文という感じです。
大坂の陣前後に活躍した少しマイナーな武将たちをとりあげた短編集なので、壮大さには少し欠け、展開も早くて淡々としてる印象もありましたが、締めの名文に象徴される司馬的人間観察力と表現力は一読の価値ありの作品群だと思いました。 -
西暦1600年前後の旅に最適の書。加えるなら大阪人がより楽しめるに違いない。司馬版、The Osakaな感あり。
これまでに読破した司馬作品の数はそれなりになりつつも、関ヶ原前後がここまで濃密に感じられるたのは本書が初。短編集という構成も手伝っているとは思われるが、それ故にいろんな側面から語られるのが心地よい。
道頓に関する逸話は秀逸。今まで地名としてのみ認識していたとある堀を途端にその半里をして歩きたくさせる。三層の仮宿がどこにあったかも気にさせながら。
単純な戦国武勇伝を読むには歳を取りすぎているとは思わされる毎日ではあるが、シバさんのなら…とまたも思わされた次第。 -
司馬作品というと、どちらかというと長編小説群に目が行く人も多いのではないでしょうか。この作品は、戦国期を舞台にした7編の短編集です。司馬作品は長編ばかりではなく、短編でもその魅力を十分に発揮していることが、この本でよくわかると思います。
いずれの作品も限られた紙面の中で、主人公の魅力を遺憾なく発揮し、その主人公の人生にどんどん引き込まれます。歯切れのよいストーリー展開で、一息に読み通してしまいました。
また、これらの短編が、長編作品を書く際の屋台骨となっていることも感じ取れます。ほかの作品とあいまって、読者にとっての司馬世界を豊かなものにしてくれると感じました。 -
18/8/13読了
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福島正則、可児才蔵、木村重成、長曾我部康豊、安川道頓他、花房職秀、飯田直景 7編。
関ヶ原後、徳川幕府の安定へと戦乱の世が終焉する過程での戦国武将の気風、最後の煌めき。
気宇壮大 この漢字四文字、漢は皆憧れるのでしょう。そう生きるための悲しさ。努力。ギャップへの苦悩。 -
色々な短編があるが。「けろりの道頓」という話がもっとも感動した。大阪の道頓堀の名の由来となった安井道頓。
彼が豊臣家に殉じていたとは全く知らなかった。
魅力ある男の物語だ。 -
「愛染明王」、「おれは権現」、「助兵衛物語」、「覚兵衛物語」、「若江堤の霧」、「信九郎物語」、「けろりの道頓」の編の短編。関ヶ原から大阪の陣にかけての人物伝。「けろりの道頓」は短編集「最後の伊賀者」で既読。
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戦国時代の豪傑たちの数奇な一生が描かれた短編集。
著者プロフィール
司馬遼太郎の作品





