新装版 おれは権現 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750646

作品紹介・あらすじ

新装版 司馬遼太郎の名作

戦国時代、それは苛酷残酷な時代であると同時に、気宇壮大な時代でもある。だからこそ、常識を常識とせず、天衣無縫、奇想天外に生涯を送る人物が輩出したのだ。超人的武勇の裏の意外な臆心、度はずれに呑気な神経の持ち主のじつは繊細な真情。戦国時代人の剛毅闊達にして人間味あふれる短編7編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『愛染明王』…福島正則の話
    『おれは権現』…可児才蔵の話
    『助兵衛物語』…宇喜多家家臣、花房職秀の話
    『覚兵衛物語』…加藤家家臣、飯田直景の話
    『若江堤の霧』…木村重成の話
    『信九郎物語』…長宗我部盛親の弟、長宗我部康豊の話
    『けろりの道頓』…道頓堀を作った、安井道頓の話

    司馬遼太郎の小説を読んでると、物語の主人公の行動が、
    この人はこうするしかなかったんだなぁ、と腑に落ちます。
    実際の選択肢としても、心情としても、生来のものとしても、
    それを選ばざるを得なかったという納得感があります。
    必然的なかんじがします。

    しかもその必然の種が、その前にちゃんと蒔かれています。
    不本意だとしても蒔かれていて、それによって、
    こうするしかない、という心理や状況が生まれています。
    『愛染明王』、『覚兵衛物語』では、そんなことを思いました。

    『おれは権現』では、可児才蔵という豪の者が、
    一人の人間に人生を縛られていることに、
    なんだか退廃的なときめきを感じました。

  • 西暦1600年前後の旅に最適の書。加えるなら大阪人がより楽しめるに違いない。司馬版、The Osakaな感あり。

    これまでに読破した司馬作品の数はそれなりになりつつも、関ヶ原前後がここまで濃密に感じられるたのは本書が初。短編集という構成も手伝っているとは思われるが、それ故にいろんな側面から語られるのが心地よい。

    道頓に関する逸話は秀逸。今まで地名としてのみ認識していたとある堀を途端にその半里をして歩きたくさせる。三層の仮宿がどこにあったかも気にさせながら。

    単純な戦国武勇伝を読むには歳を取りすぎているとは思わされる毎日ではあるが、シバさんのなら…とまたも思わされた次第。

  • 司馬作品というと、どちらかというと長編小説群に目が行く人も多いのではないでしょうか。この作品は、戦国期を舞台にした7編の短編集です。司馬作品は長編ばかりではなく、短編でもその魅力を十分に発揮していることが、この本でよくわかると思います。
    いずれの作品も限られた紙面の中で、主人公の魅力を遺憾なく発揮し、その主人公の人生にどんどん引き込まれます。歯切れのよいストーリー展開で、一息に読み通してしまいました。
    また、これらの短編が、長編作品を書く際の屋台骨となっていることも感じ取れます。ほかの作品とあいまって、読者にとっての司馬世界を豊かなものにしてくれると感じました。

  • 18/8/13読了

  • 福島正則、可児才蔵、木村重成、長曾我部康豊、安川道頓他、花房職秀、飯田直景 7編。

    関ヶ原後、徳川幕府の安定へと戦乱の世が終焉する過程での戦国武将の気風、最後の煌めき。

    気宇壮大 この漢字四文字、漢は皆憧れるのでしょう。そう生きるための悲しさ。努力。ギャップへの苦悩。

  • 色々な短編があるが。「けろりの道頓」という話がもっとも感動した。大阪の道頓堀の名の由来となった安井道頓。
    彼が豊臣家に殉じていたとは全く知らなかった。
    魅力ある男の物語だ。

  • とにかくうまいです。どの話も、締めの数行が実に見事で、はっとさせられ、そして、怖くすらなりました。どんなに努力してもどんなにもがいてもどうにもならない人間の運命の劇的さや虚しさ、愚かさみたいなものが簡潔な数行の文の中に凝縮されています。これぞ名文という感じです。

    大坂の陣前後に活躍した少しマイナーな武将たちをとりあげた短編集なので、壮大さには少し欠け、展開も早くて淡々としてる印象もありましたが、締めの名文に象徴される司馬的人間観察力と表現力は一読の価値ありの作品群だと思いました。

  • 「愛染明王」、「おれは権現」、「助兵衛物語」、「覚兵衛物語」、「若江堤の霧」、「信九郎物語」、「けろりの道頓」の編の短編。関ヶ原から大阪の陣にかけての人物伝。「けろりの道頓」は短編集「最後の伊賀者」で既読。

  • 戦国時代の豪傑たちの数奇な一生が描かれた短編集。

  • 福島正則、可児吉長、木村重成、安井道頓などの「有名だけど歴史の主役にはなれない」「無名だけど魅力的」な人物を主人公にした短編集。

    マイナーな人物にも活き活きとした表情を与えるのが著者の作品の魅力であるが、これもそんな中の一冊である。

    これと併せて、彼らが端役で登場する著者の長編を読むとより楽しめるのではないだろうか。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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