新装版 市塵(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750752

作品紹介・あらすじ

貧しい浪人生活から儒者、歴史家としてようやく甲府藩に召し抱えられた新井白石は、綱吉の死後、六代将軍家宣となった藩主とともに天下の経営にのり出していく。和漢の学に精通し、幕政改革の理想に燃えたが、守旧派の抵抗は執拗だった。政治家としても抜群の力量を発揮した白石の生涯を描く長編感動作。

感想・レビュー・書評

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  • 市塵とは、町に立ち上る土埃や市の雑踏の賑わいを意味する。江戸時代のブレイン新井白石の歴史小説。混迷の綱吉の時代を修正していく物語である。


     斬り合いもないし、派手なところがない。江戸前期の終わりの歴史事項の基礎がないと読むには面白くないだろう。
     でも、だから良い。こういうのが読みたくて新井白石の本を探したのである。

     江戸時代になって戦国時代は終わった。法治国家として安定した社会を作っていく。でもそれは家康がすぐに完成させたものではない。武士から、政治家にかわって、紆余曲折を経て安定していったのである。
     その法治国家としての、派手じゃない、会議室で事件は起こっているんだって感じが、味のある物語にしている。

     戦国時代の馬や足軽たちが荒々しく立てる土埃ではなく、江戸の100万都市の町人がザワザワと立ち上げる砂埃。その雰囲気に包まれた江戸時代の話。
     もはや戦国ではない。そのためのタイトル『市塵』なのだと思った。

  • 間部詮房と共に徳川六代将軍家宣を支えた新井白石の話。

  • 家宣が将軍になるとともに幕府中枢で政治に関与するようになった新井白石。家宣の求めに応じて次々に見解を示していくが、守旧派を敵に回して立場は微妙になっていく。それにしても、儀式、儀礼の多さとそのばかばかしいまでのコストのかけ方には驚き。

  • 江戸中期、正徳の治を行った新井白石の物語。おもに白石の回想録「折たく柴の記」(未読)をもとに書かれている。藤沢周平の筆なので、安心して読むことができる。

    はるかむかし教科書で、正徳の治への評価は否定的であり八代将軍吉宗によって改められた、というように教わったような記憶がある(もしかするとテレビの時代劇の影響か?)。
    しかしこの「市塵」を読む限り、白石は綱吉の生類憐れみの令などをただし、経済政策も積極的に行い、理に基づいた政治を行ったらしい。
    なるほど、正徳の治を肯定的に評価する方が正しいのではないかと思う。どうやら、彼が自分の学問的信念に基づき政治を行い、一定の効果を上げたのは客観的に確かなようだから。

    この本を手に取ったのは、藤沢周平の本を読みたかったのと、くわえて間部詮房と白石について知りたいと思ったから。
    時代は流れて江戸末期。
    安政の大獄の際、大老井伊直弼が赤鬼、老中間部詮勝(間部詮房の子孫)が青鬼と称され討幕派に恐れられていた。
    このときの彦根藩(井伊直弼)の記録に、「鯖江藩(間部詮勝)の儒者が自分を旗本にして欲しいと言って来た、不埒な」というような記述を見つけたのだが、ちょっとこの部分の意味が分からなかった。
    なぜこの時期にたかが儒者が旗本になりたいと?あまりに分をこえた不埒なのでは?
    旗本の位置づけも実感として解らなかったので調べてみたところ、この「市塵」の主人公白石も旗本だったことがわかった。白石は藩士(武士)からスタートしていて、途中で旗本になるわけだが、どうやら旗本はその家禄よりも将軍にお目見えできるという点で白石に必要だったようだ(勝海舟なんかもそういう口だろうと思ったら、すでに江戸末期のこと、勝の曾祖父の代に御家人株を買って勝の父は旗本に養子に行っていたという顛末だった)。
    つまり、鯖江の儒者も間部の殿様とともにタッグを組んで正徳の治のリバイバルみたいなことをやりたかったのではないだろうか、そのためには自分も将軍直参である必要があったと。
    そうだとすると、正徳の治はきっと後世の武士にとっても肯定的に評価されえたのだろう。そうでなければ、いくら何でも儒者ともあろうものがトレースしたいと公に言うことはできないだろう。
    ウィキに「正徳の治と享保の改革には断絶があると考えるのは相当ではない。前者の有用な部分は後者によって承継され、吉宗主導の改革と共に後世に残ったとみるのが至当である。」とあるのも頷ける。
    今回、藤沢の小説によって、白石の主観的認識のみならず時代の空気的なものにも合点がいった。
    藤沢の筆は素晴らしい。

  • 2009.11.5購入

  • 新井白石が主人公の歴史小説。若い頃の白石は才能はあったが、貧しい浪人生活を送っていた。しかし、野心を持っていた白石はやがて甲府藩に召し抱えられて、遂には将軍家宣の下で政治顧問として政治を動かすようになる。

  • 新井白石はおなかが痛くなりすぎる。カタカナがほとんど無い。文字が大きくなって見やすくなった。章ごとにルビをふりなおしてくれるので親切。

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著者プロフィール

藤沢 周平(ふじさわ しゅうへい、1927年(昭和2年)12月26日 - 1997年(平成9年)1月26日)
日本の小説家。山形県鶴岡市出身。江戸時代を舞台に、庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説作品を多く残した。代表作として『暗殺の年輪』『たそがれ清兵衛』『海鳴り』『白き瓶』『蝉しぐれ』など。
1971年「溟い海」で第38回「オール讀物」新人賞、1973年「暗殺の年輪」で第69回直木賞、1986年「白き瓶」で第20回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。ほか、菊池寛賞、朝日賞、東京都文化賞を受賞。紫綬褒章を授与されている。選考委員として、オール讀物新人賞、直木賞、山本周五郎賞にも関わった。
映画化された作品も多数あり、特にヒット作としては「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」。2010年4月29日、出身地の鶴岡市に「鶴岡市立藤沢周平記念館」が開館した。

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