ニューヨーク大聖堂(上) (講談社文庫)

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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750899

感想・レビュー・書評

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  • やはりこういう物語は緊張感が必要だなと思った。そして緊張感いっぱいでした。

  • ネルソン・デミルの魅力は背景やディテイルが必要十分に細かく、読み手の集中を切らさない点にあると思う。今回の背景は、IRAとアイルランド系移民の話で、このあたりの情報がきちんとストーリーの中に入ってくるので読みやすい。

    さて、物語はアイルランド系移民の祭典、聖パトリックのパレードのさなかに勃発する。フィアナ騎士団を名乗るIRAの一派が枢機卿、神父、イギリス駐米大使、そしてアイルランド和平に携わる元IRAの女性活動家を人質にニューヨーク聖パトリック協会に籠城する。

    全体で12時間の籠城戦なので読む速度とほぼ同時に物語が進行していく感じがする。

  • 北アイルランドのベルファストで、モーリーン・マローンはブライアン・フリンや仲間のIRAとともに、姉が乗っていると思われる囚人護送車を襲って、失敗した。傷ついた二人は山の中の修道院にかくまわれ、そこで、伝説のフィアナ騎士団の指輪を見つけた。自らをフィアナ騎士団の戦いの王たるフィン・マックニールだと言うフリンとの別れを決め、IRAとも決別したモーリーンはアメリカに渡った。そこで囚人解放運動に身を挺するモーリーンは、4年後、アイルランドの守護聖人たる聖パトリックの日に、ニューヨーク大聖堂の前にイギリス総領事とともに姿を現すこととなる。「フィアナ騎士団」を率いたフリンは、枢機卿や神父、を含む一行を人質に、大聖堂に爆薬を仕掛けた。北アイルランドとイングランドの収容所に捕えられて居る囚人を夜明けまでに釈放し、彼らに大赦を与えないと、人質たちを殺し大聖堂を爆破すると要求したのだ。バーク警部補はじめNY市警、人質交渉人、市長助役、州知事、イギリス情報部、CIA・・・捜査陣は互いに責任を擦り付け合う。一方、騎士団内部でも様々な感情が渦巻いていた。突入か、爆破か、大聖堂の外と中で息詰まるような時間が過ぎて・・・

    犯人、人質、警察、米・英政府、それぞれが利害と思惑と陰謀をもちながら危ういバランスを保ち、物語は進行します。盛り沢山な登場人物それぞれの時間が綿密に描かれ、迫力満点でした。バークとのなんだかいい感じの会話で垣間見えるフリンの本心や、あるときは狂気、あるときは冷静、あるときは芝居ッ気たっぷり、といろいろな顔を見せる老テロリストヒッキー、血に飢えた若い女テロリスト、冷徹なスナイパー、色っぽい市長助役とラングリー警視は???・・・などなど、よく書き込まれていて最後まで飽きさせません。
    20年以上前の作品だそうですが、時代をあんまり感じず、面白かった。昨年か、IRAは武装解除を宣言していますが、最近もアイリッシュとブリティッシュの小競り合いがあったように、民族間の長い争いの火種はまだくすぶっているようです。この作品はそういう憎しみの深さを改めて教えてくれました。

    ただ、モーリーンが弱いなあ。もう少し魅力的でないと、この襲撃事件が納得しにくいような。それと、あの指輪はどこから来てどこへ行ったの?

  • ただいま、読んでるところです。こういうテロ組織の考え方はやっぱりわからない。

  • マンハッタンの象徴・聖パトリック大聖堂が、年に一度の大パレードの最中、武装集団に乗っ取られた。人質は美貌の元テロリストや要人達。いちはやく現場に到着した警部補バークは犯人にまみえるが……。予告爆破時刻まで12時間、NY市警の死力を尽くした奪還作戦が始まった。名匠デミルの若き才能煌く傑作。
    原題:Cathedral
    (1981年)
    — 目次 —
    第一部 北アイルランド
    第二部 ニューヨーク
    第三部 パレード
    第四部 大聖堂・攻囲戦

  • デミル1981年の作品。デミルの未訳作品がこうして講談社から発表される意義を高く買う。

    しかしそれと書評とは別で、やはり約四半世紀前のデミルは若書きがどうしても目立ってしまい、ページ数の割には物語が雑だったという印象が残る。

    まず物語を整理してみると、最後に語られる真相ではフリンがマーティンとグルで、マーティンはフリンとバクスターを始末したい。また間者としてスナイパー、リアリーを送り出している。そしてこの中ではヒーローとして位置付けされているバークは全てを知っている。
    どうも整理がつかない。

    まず一介の警部補であるバーク。彼に設定を盛り込みすぎだ。
    最後の最後で実は○○のエージェントだった、なんていう隠しネタが披露されるのかと思っていたが、結局はただの、いや頭が切れる優秀な警部補に過ぎなかった。しかもこれがデミル作品の主人公とは思えぬほど、キャラクター像がはっきりしない。事件全てを見据える冷静沈着な人物と設定したのが逆に仇になったようで、救出作戦の委員会メンバーそれぞれが私欲と自らの保身に腐心している様子を描写されているがゆえに人間くさく、バークよりもキャラクターが立っていた。
    特に突撃隊の隊長を務めるベリーニがこの中でも白眉だろう。
    そして敵役のフリン。冒頭の神の啓示が降りてきたかのような不思議なエピソード、そして仲間うちから語られる伝説的なIRAのリーダーという触れ込みで登場した割にはラストの銃撃戦での活躍が全くと云っていいほどなく、むしろ突然の攻撃に右往左往する体たらくだ。結局彼の唯一の仕事は装甲車をバズーカで吹き飛ばしただけだった。
    他のメンバーもあまりにも呆気なく、作者はむしろそれまであえて詳しく描写しなかったリアリーをここに至って縦横無尽に操り、フラストレーションを爆発させたかのようだった。

    (下巻の感想に続く)

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