ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 178
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750967

作品紹介・あらすじ

「情報を制する国が勝つ」とはどういうことか-。世界中に衝撃を与え、セルビア非難に向かわせた「民族浄化」報道は、実はアメリカの凄腕PRマンの情報操作によるものだった。国際世論をつくり、誘導する情報戦の実態を圧倒的迫力で描き、講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作。

感想・レビュー・書評

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  • ボスニアヘルツェゴビナ(vsセルビア)の紛争がいかにUSのPR会社によって情報操作されたものだったか、という話。確かにセルビアが悪、と断定した方が話が分かりやすいし世論はそっちになびくんだろうなぁ、と。そもそも90年代の旧ユーゴスラビア周りバトルを全くと言っていいほど知らなかったので、そういう意味でも勉強になった。コソボ紛争とかも一度きちんと読んでみたい。

    BTW、DQ11のせいで3か月ほど一切本を読まなかったので、久しぶりに読書したら疲れたけど知的好奇心がむくむくと復活。人生で唯一飽きてない趣味読書、これからも時々中断しながら読み続けるんだろうな。

  • 情報をうまくコントロールできるかどうかで、結果が大きく異なっていく。「情報コントロール」の実態を頭に入れて、情報に接し、判断していかなければ、とあらためて思う。

  • ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国 シライジッチ外務大臣
    ルーダーフィン社のジムハーフがPR ボスニア支持の論調を作り上げる

    セルビア共和国 ミロシェビッチ大統領 悪玉=セルビアの主人公とされる

    ユーゴスラビア連邦 パニッチ首相 セルビアのイメージ挽回するための切り札 間に合わず

    ソ連の崩壊でユーゴスラビア連邦から
     スロベニア、クロアチア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナの各共和国が独立
     セルビア共和国とモンテネグロ共和国が新たなユーゴスラビア連邦を構成した

    ボスニア・ヘルツェゴビナの首都 サラエボ

    ボスニア紛争 92-95 旧ユーゴスラビアの民族紛争
    ボスニア・ヘルツェゴビナ 4割 モスレム(オスマントルコの影響でキリスト教からイスラム教に改宗した人んの末裔) 3割 セルビア人 2割 クロアチア人

    民族浄化 ethnic cleasing
    強制収容所 concentration camp

    モスレム人=被害者 セルビア人=加害者のイメージ戦略 PR会社

    ミロシェビッチをサダマイズした

  • 想像を遥かに超えて、ちょう面白かった。1992年のボスニア・セルビア等を取り巻く環境がどのように出来上がっていったか丹念に書かれ分析されている。ボスニア紛争について鍵を握った人物達がとっても活き活きと書かれてて読んでる間、ホント夢中になりました。事後的に分析できたことも含んでいてちゃんと厚みがある。
    本当に情報は凄いし、情報を巧みに有利にもっていくことはものすごく強い。直接真偽を確かめられないけどみんなの手に入ってく情報がどんどん増えてるのは怖くもある。
    PRって凄い。。私にもノウハウを教えて欲しい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「PRって凄い。。私にもノウハウを教えて欲しい。」
      貴方が欲しているのは、情報分析力でしょ?でも極悪企業ルーダー・フィンについて書かれている...
      「PRって凄い。。私にもノウハウを教えて欲しい。」
      貴方が欲しているのは、情報分析力でしょ?でも極悪企業ルーダー・フィンについて書かれている本で、そんな風に言わなくても、、、
      2013/05/20
  •  1990年代前半、複雑な多民族国家を形成していた旧ユーゴスラビア連邦は連邦内の共和国が次々と独立、連邦崩壊の危機を迎えていた。そんな中ボスニア・ヘルツェゴビナが独立を宣言、ボスニア紛争が勃発する。
     それは単なる独立紛争というだけではなく、ボスニア国内でも様々な民族が対立する泥沼の戦いだった。出口の見えない惨劇の中、ボスニア政府は状況打開の一手を打つ。それはアメリカの大手PR会社ルーダー・フィン社と手を組み、世界中の世論をボスニア支持へと向かわせること。そしてルーダー・フィン社からやってきた敏腕PRマン、ジム・ハーフと、ボスニア政府のハリス・シライジッチ外務大臣は運命的な出会いを果たすのだった。

     この本は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争においてPR会社が影で果たした役割を克明に描き出すノンフィクションである。アメリカの一企業であるPR会社が、紛争の運命を左右する驚くべき情報戦を繰り広げていた。2000年10月にNHKで放送された『民族浄化 ユーゴ・情報戦の内幕』の書籍化である。

     戦争の行方を民間企業が左右するという事に驚かされるが、その手法はプロフェッショナルそのものだ。マスメディアに対する詳細な情報提供、影響力を持つ人物への接近、印象的なキーワードの設定…。地道なこれらの「根回し」ともいえる活動が、少しずつ世界中にボスニアの立場をPRしていく。
     なんか戦争に勝つための策としてはあまりにもセコい、と感じてしまう。しかし実際この活動が、ボスニア紛争とはなんの利害関係もないアメリカを動かし、世界の論調を動かす大きな流れを作り出してしまうのだ。

     本書のタイトルは「戦争広告代理店」だが、日本の広告代理店のイメージで捉えるとその活動内容はちょっと違う。彼らは戦争を煽る広告を流す訳でもないし、スポンサーを探す訳でもない。もしかしたら本書に書かれていないだけでそういう事もやっていたのかも知れないが、どちらかというと彼らが行っているのは「広告」というより「広報」である。どちらも「宣伝」というカテゴリで語ることができるのかも知れないが、その内容は少し違う。

     当時ボスニアと対立していたユーゴスラビアのセルビア共和国を率いたミロシェビッチ大統領は、PR企業の巧みな戦略により、世界的な「悪者」へと仕立て上げられていく。
     世論誘導というと捏造や隠蔽といったネガティヴなものを想像してしまうが、本書で描かれるのはもっと洗練された情報戦略だ。ルーダー・フィン社は倫理的な側面を重視し、決して倫理にもとる事はしない。ただ顧客であるボスニアの主張をわかりやすく明確にし、それを一般人という世論に的確に届けていくだけである。

     著者が本書内で何度も述べているように、ボスニア紛争においてはどちらかが一方的に悪い、ということはなかった。様々な民族の立場が絡み合い、どちらが悪とも言い切れない状況だったようだ。
     ただ、優秀なPR会社がバックについているかいないか、というそれだけが戦況を決した。ボスニアの方が自分の立場をうまく世界にアピールしたために「セルビア=悪人」「ボスニア=被害者」という図式を人々の頭の中に作り上げてしまったのである。

     これは非難されるような事だろうか?しかしそれまでボスニアの場所なんてどこにあるのかすら西側諸国では誰も知らなかったのだ。
     著者も指摘している通り、日本ではこのようなPR戦略が実に軽んじられている印象をうける。政府や外交活動においてだけの話ではない。民間企業から一個人の生活にいたるまで、自分の立場をうまくPRする事が日本人は下手なようである。
     それは現代においては致命的である。企業の不祥事など、これらの危機管理上のPR策が決定的に欠如している。例えば今回の福島原発事故に対応する東京電力の姿勢。事故収束のために自分たちは頑張っているのだから、その努力はそのうちわかってもらえる、と考えているのかも知れないが、世論はそんなに甘いものではない。その姿勢は普段からPR手法の大切さを熟知している海外の企業とは全く違う。

     そしてこの本の構成自体が、実に巧みにできているように感じる。センセーショナルなタイトル。冒頭に、「主な登場人物」や舞台となる土地の地図を付す。一つの章が短く、わかりやすい言葉で伝えたい事を明確にする。
     著者自身PRするテクニックを身につけているのかも知れない。だから本書は強く読者の胸に迫るのだ。講談社ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞を受賞。TV番組の書籍化にも関わらず、著者がノンフィクション作家として高く評価されたのはそれらの要素がうまく活かされていたからではないか。
     情報戦略というこれまでにない切り口で戦争の本質をえぐった本書は、そういう意味でもエポックメイキングな作品なのである。

  •  信じられるか…これ、ドキュメントなんだぜ…。

     舞台は20世紀末のバルカン半島。祖国存亡の危機にあったボスニア・ヘルツェゴビナ外務大臣、ハリス・シライジッチはとある米国のPR企業の手を借りることになる。おそらく誰が悪いというわけでもないだろうボスニア紛争において、PR企業の情報戦略によって国際世論が作られ、誘導される様が克明にと描かれている。

     この本を読んで私が一番最初に、そしてもっとも強く抱いた感情は「怖い」。おそらくそれは、私が第三者の視点からボスニア紛争を観察することになるとともに、情報の見えない力に圧倒されるからであろう。一企業のPR戦略により、一方が諸悪の根源とされ、紛争の行方が左右されるという異様な光景を眺めることになるのだ。「情報を制する国が勝つ」とはどういうことなのかがまざまざと描かれている。「民族浄化」という言葉もこの紛争で有名になった。

     メディアは一体何をしていたのか?企業倫理として紛争に加担することに問題はないのか?一国を相手にビジネスをするとは?など思うところはいろいろあるが、読み物として(不謹慎かもしれないが)かなり面白い。是非薦めたい。

  • おもしろい!
    という言葉を使ってはいけないのかもしれないけどおもしろかった。
    国際政治上では相手にされていなかったボスニアがアメリカのPR会社の力を借りて国際的地位を勝ち取っていくドキュメント。
    政治にもどんどんPR力が求められてきてて、
    そりゃそういうの重要だよな、
    と思いつつも
    そんな世の中ってコワ・・・
    と思う。
    やっぱりもっと国際政治勉強しなきゃ!
    と思った本でした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そんな世の中ってコワ・・・」
      昔から勝てば正義。勝つためには何をしても良い。
      「勝つ」を「儲ける」に変えても成り立つ、身近なところで同じよ...
      「そんな世の中ってコワ・・・」
      昔から勝てば正義。勝つためには何をしても良い。
      「勝つ」を「儲ける」に変えても成り立つ、身近なところで同じようなコトが繰り広げられている、、、悲しいね。。。
      2013/05/21
  • PR会社の内定者から、「PR・広告を目指すならコレは読むべき!」と教えてもらった本。


    ボスニア紛争の原因や結果が、民族浄化や対立ではなく「PR」によって左右されたという歴史上のドキュメントを客観的につづる。

    このような紛争モノは、基本的に作者がどちらかに肩を入れがちだが、作者があえて客観的第三者の立場にたっているため、俯瞰しやすい。



    国際政治における「PR戦略」の重要性、PRのためならどんなことでもする人間の怖さを知ることができ非常に勉強になった。


    卒論テーマにしたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「卒論テーマにしたい。」
      情報戦は、プロパガンダやイデオロギー教育。メディア・リテラリーに情報操作等を考えると気が滅入りそうだけど、、、(そ...
      「卒論テーマにしたい。」
      情報戦は、プロパガンダやイデオロギー教育。メディア・リテラリーに情報操作等を考えると気が滅入りそうだけど、、、(それって私だけ?)
      2013/05/21
  • この本を読んで情報操作に対する嫌悪感や、情報操作に対する脅威を感じるだけの人は危機感が足りてないかも。重要なのは日本にはこういったPR能力が完全に欠如しており、現在進行形で情報戦争に負け続けている事に対する危機感を喚起されたかどうか、そして簡単に情報操作にのってしまうマスコミを鵜呑みにする事の恐ろしさを感じたかどうかだと思う。感情論だけの話をすると、嘘をつきはしないかもしれないが、目的のためには悪意のない人間の人生を狂わせる事も厭わないPR会社の人間には嫌悪感を覚える。多分一般的な日本人なら多くの人がそう感じるんじゃないかなぁ。

  • 高校生の時に「メディア・コントロール」という本を読み、マスメディアの持つ影響力の強さと、本質を見極めることの大切さを学んだ。その時感じた気持ちを久しぶりに思い出させてくれる一冊だった。耳ざわりの良い言葉に惑わされずに、自分の頭で考える力を研ぎ澄ませていきたい

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著者プロフィール

1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして数々の大型番組を手がける。NHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」「バーミアン 大仏はなぜ破壊されたのか」「情報聖戦~アルカイダ 謎のメディア戦略~」「パール判事は何を問いかけたのか~東京裁判・知られざる攻防~」「インドの衝撃」「沸騰都市」など。番組をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店』(講談社文庫)で講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をダブル受賞。二作目の『大仏破壊』(文春文庫)では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

「2014年 『国際メディア情報戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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