分冊文庫版 狂骨の夢 (下) (講談社文庫)

  • 講談社 (2005年8月11日発売)
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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784062751582

作品紹介・あらすじ

「実に、見事な左道であった」。謎の寺院、聖宝院文殊寺に乗り込んだ京極堂。白丘、降旗、そして朱美……、照魔鏡(しょうまきょう)をかかげるがごとく記憶の深淵が明らかにされたとき、歴史の底に凝(こご)っていた妄執が、数百年の時空を超えて昭和の御代に甦る。いくつもの惨劇を引き起こした邪念は果たして祓(はら)い落とせるのか。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ3作目。
    逗子の海岸での出会いが、抒情的。にしてもちろん怪奇。
    前作でちょろっと出てきた伊佐間一成が、またとぼけた雰囲気で好ましい。
    さらに焦点となる宇多川朱美の、キップのいい口調がさらに好ましい。
    そしてキリスト教会の、降旗弘および白丘亮一の屈託。
    フロイトへの拘泥は自分にとっても他人事ではなく、息が詰まるようだった。
    そのうえ密教やら髑髏やら……むしろある程度知識を得た中年になって読んでよかった。
    ボルヘス「円環の廃墟」や、折口信夫「死者の書」の、"受肉叶ったパターン"を知っているからこそ、後半のおぞましさを逆から想像することができた。
    京極堂が降旗へ投げた言葉は、今後も思い出していきたい。

  • 10年くらい?空けての再読。

    逗子の海岸、フロイト、頭蓋骨、いくつかのキーワードは記憶していたが
    展開はすっかり忘却の彼方。

    そうだこの本を読んでフロイトとユングに興味を持ったんだ。

    初めて読んだ時は、フロイトの件が難し過ぎて、
    さっぱり頭に入ってこない。文字を目で追いかけていただけに
    なってしまっていたが、自分も読書を進めるうちに若干の理解力が
    増したのか?今回は情景、感情を頭の中に思い描きながら
    読書を進めていくことができた。

    京極夏彦先生の京極堂シリーズは、その厚さもさることながら、
    内容の重厚感も凄い。
    いつも単純な展開では終わらず、これもか!またここもか!
    そうくるのか!と唸ってしまう。

    京極堂シリーズの中では、この作品はあまり好きではなかったような
    記憶があるが、再読してみると気づきがたくさんあって面白かった。

    もっと榎木津が活躍してくれると、ゲラゲラ笑えるほどに面白いのだが(^-^;
    この本はこの本でとても良かった(*^-^*) 満足!

  • 何年ぶりの再読か忘れたし、そもそもいつもの様に何も覚えてなかったので純粋に楽しんだ。

    なかなか入りが辛くて物語が始まらないなともどかしかったり、人間の相関はあれがああなんでしょ?ってのはある程度示してくれてるものの中身が分かる訳もなく3つだの4つだのの事件が起こる。

    前作もだったけど、今回も風呂敷バサーっと広げてる。

    それが下巻で急に回収してくる。
    自分の中で即身仏は孔雀王のあれを重ねながら読んでたから変な感じにはなったけど。

    取りこぼしなのか私が見落としてるのか、回収されないものもある気がするし、後味がそんなに良い物ではないけど楽しい時間だった

  • 『どすこい』に続き、京極作品四作目。いや〜面白かった!だいぶ久々の京極さんだったけれど、あっという間に読み終えてしまった…。いろんな事件が一つに収束していく様は圧巻!その背景も凄まじくゾクゾクした。フロイトやユングの夢診断、精神分析。猶太教、基督教、仏教。髑髏本尊の作り方にはホントびっくりした!?悍ましいこと、悍ましいこと・・。こんな話を創る作者の頭の中はどうなってんだ、ホント。

  • 980ページを超える、文庫版の狂骨の夢を読了。
    どんどん視点が変わり、さまざまな出来事が描かれるが、どこまでが現実なのかが曖昧。中盤まで進んで、それぞれの出来事がリンクしてくるが、どれが事件なのか、亡くなったのは何人なのか、よく分からないままで話が進む。世界観は面白いが、ユングやフロイトについてなどは難しく、退屈に感じてしまう部分もあった。それも含めて京極夏彦を堪能できた。

    夫を4度殺した女、朱美(あけみ)。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗(ふるはた)。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実(うつつ)の縺(もつ)れに悩む3人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏(どくろ)、山中での集団自決。遊民、伊佐間、文士、関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第3弾。

  • 京極夏彦の和風ミステリー『狂骨の夢』、分冊文庫版の下巻。

    「金色髑髏事件」、「二子山集団自殺事件」、「小説家・宇田川殺害事件」―――逗子近辺で発生した奇妙な事件。牧師・白丘、元精神神経科医・降旗、そして"朱美"を苛む悪夢。「髑髏」に願いを託そうとした者どもの思惑が明らかとなった時、全ての事柄が繋がりを持ち、おぞましくもむなしい真相が明らかとなる―――。

    前作、前々作に続いて、これまた凄い作品であった。真相が語られ始めて、いきなり日本神話とか"神の骨"とか出てきて、「これどう収拾つけるつもりなんだ」と思いながら読み進めていたら、すごいすごいどんどん収斂されいくわ!もはや読者が推理できるレベルを超えているし、これら全ての真相を解き明かす京極堂が文字通り超人化しているんだけど、その読者を圧倒する筆致にもう「それがいいんだよ!」ってなってしまう!こんな物語を書き上げてしまう京極御大、マジぱないっす!

  • 世界中の不幸と苦悩を纏めて背負ったような顔をして、そんなもの誰だって背負っているぞ!ちっとも偉くない。心の暗闇だか何だか知らないが、心に光度や照度があるか。明るい暗いで善し悪しが決まるのは、電灯くらいだ。
    どうしても人間に救われたくないと云うならこう考えてくれたっていいぞ!
    僕も神だ。

    鵼の碑刊行記念に再読。
    魍魎まで比較的常識人だった榎木津が、これを機に榎木津全開になる。初読の際、うじうじと思い悩み、それでいて「悩みがない人はいいね」と周囲を見下していた自分には大きな衝撃だった。あの日から自分にとっての神はずっと榎木津。
    信仰とは理解ではなく信じること。妄念となるほどの信仰が絡み合う事件。事実なんかどうでもいい。実現可能かも問題じゃない。そう信じていることが強い動機になる。
    朱美さんはめちゃくちゃいい女。感傷的になりがちなこの男共とは真逆。ずっと、てめえこの野郎、と直接言う機会を待っていただけとも言える。

  • ちょうどもののけ姫を最近観たところで、隼別王子の叛乱を読了するのに挫折したところなので、お寺と神主のところは興味深い謎解きでした。あと、皿屋敷の講談を聴きに行ってきたところなので。神田松鯉すばらしかった。
    いつも通り京極堂が登場するとこのうえなく盛り上がりました。よくこんなこと思いつくなあ、よくこんなにわかりやすく書けるなあと。
    南北朝のところは自分が知らなさすぎるので調べました。後醍醐天皇に仕えた楠木正成が攘夷志士の理想であったということ。また、大覚寺統、持明院統のはじめの方に出てくる後深草天皇がとはずかたりにでてくる、くらいの印象しかなかったので勉強になりました。歴史の授業ちゃんとうけていればよかったのですが、勉強内容というより、勉強するという行為が面倒くさいんだと思います。よくないけれど勉めて力いるとも読めるので。

  • 再読。当時読んだ時は武御名方だとか後醍醐の末裔だとかフロイトだとかのガジェットが難しく感じられてそこまで没入することができなかった。再読した今でもそういう難しい部分を全部理解できたとは思えないけれど、それでも昔より何かは分かったような気がする。

  • 中巻に引き続きボンヤリと読み進めてしまい、
    盛り上がりどころを掴めずに読了。

    やはり京極作品は一気に読んでしまわないとな。
    時間が空いてしまうと、どうしてもダラダラ読みになってしまう。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく・なつひこ):一九六三年北海道生まれ。九四年『姑獲鳥の夏』でデビュー。同作を含む〈百鬼夜行〉シリーズで人気を博す。九六年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞。その後も泉鏡花文学賞、山本周五郎賞、直木三十五賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞を受賞。〈巷説百物語〉シリーズ、〈豆腐小僧〉シリーズなど著書多数。

「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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