エコノミカル・パレス (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.07
  • (21)
  • (62)
  • (219)
  • (51)
  • (13)
本棚登録 : 815
感想 : 116
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752046

作品紹介・あらすじ

生き迷う世代を描く最高傑作

34歳フリーター、「タマシイのない仕事はしたくない」と、年下の同棲相手は失業中。エアコンは壊れ、生活費の負担は増えていく。どんづまりの生活を変えたのは、はたちの男からかかってきた「テキ電」――私はちゃちな恋をした。生き迷う世代を描き、フリーター文学とも呼ばれた著者の転換点となった傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もう少し若い頃に読めたらもっと違う感想になったのかな。タマシイのない仕事はしたくないという主人公の同棲相手は働かず、主人公の女性に金銭的に頼っている。お金がなければ生活は出来ない。どのみちタマシイは無くなってしまう事になるけどとつっこみたくなる。主人公の真面目さと優しさが上手く回らず、終わり方かもこの先がどうなるのか分からないまま。何が正しいのかな…。

  • コミカルな文章とその経済的な逼迫感の対比が面白く一気読み。金策に走った若かりし日々を思い出す...。たった数万円を借りるあのドキドキ感。えいやぁとぱあっと使いたくなる衝動。いいからヤスオくん、働きたまえ!

  • 「フリーター」という肩書きに挙げられる、給料が低いというデメリットを全面に押し出して、生活の不安定さが描かれていた。
    仕事はもともとまっさらなもので、自分の心意気次第でタマシイのある仕事にもなるという人もいるが、モチベーションを保ち続けられる仕事は、そう多くないと思う。
    「みじめにならない仕事をしよう」という意見を最近聞いたせいか、フリーターがどうのこうのというのは、あまり悪いように感じなかった。

  •  去年から、家計簿をつけ始めた。帰国してから本格的に始めたのだが、家計簿をつけていると、以前の自分がいかに無計画にお金を使っていたかがよくわかる。お金を使っている感覚がなくなるから、クレジットカードもほとんど使わなくなってしまった。
     4月は、定期代、教科書代、ゼミ費で結構支出が出たが、それ以外にはあまり支出はなかった。でも、出費が多い月に、焦らずにすむよう、常に貯蓄を心がけるべきである。
     この本では、主人公の恋人が「お金に固執して、短期のバイトや、自分の好きでない仕事することなど無意味だ」と言い、無職のままその言葉を繰り返し続けている。
     私も以前はそのように思っていた。お金に固執することなんて汚らわしい、自分の好きでない仕事なんてする意味がない、等々。
     だが、最近思うのだ。まず、自分のやりたいことって何だ?と。それが私には思い浮かばない。また、好きな仕事に就けたとして、必ずしも好きな業務が出来るわけでもないはずだ。だから、ワガママ言わずに、与えられた仕事をこなすことが必要であるだろう。仕事とは、好きなことが出来るわけでなく、会社からお給料をもらってすることであるからだ。
     お金に固執することなんて、と思っていた私だが、やはりお金は必要である、と家計簿をつけていてしみじみと思う。お金に固執しすぎるのも格好悪いと思うが、やはり生きていくためには必要なものである。
     やりたいことがわからず、迷走中であり、すごく不安でもあるのだが、目の前のことに取り組んでいれば、やりたいことの道は開けて来るのではないか。そう信じて、今日も1日を過ごすこととする。
     この本を読んで、実際に私が将来そのようになってしまいそうな気がして、とても恐怖を感じたので、反面教師にする。

  • ユリイカの角田光代特集を読んでいたら、寄稿する方々口をそろえたように、「エコノミカル・パレス」を褒めているので再読。家にあった文庫本、2005年初版だから、たぶんその頃読んでおり、そのときは読み込みが足りなかったと記憶している。今回は、しっかり読めた。出口の見えない、経済的不安からの無力とやけくそ。ラストの刹那。どこに向かうのか。。。2012年の今も彼らは抜け出せていないのではないかと、心配しています。

  • おもしろかった
    カツカツの中無職のくせにタマシイのない仕事はしたくないとか語るときだけは偉そうな主人公の彼氏にイライラした

    大きな事件が起こるわけでもなくありふれた日常なのにスラスラ続きが気になりながら最後まで読めるのがすごい

    たまに好みじゃない作品もあるけど今回買った人生のベストテン、愛がなんだ、エコノミカルパレスの3個すごい好みだった!!

  • 書く仕事に重きを置いて、バイトで生活費を稼ぐ…女強しの作品が多い中、違った強さの主人公であった…
    タマシイの感じどころは人それぞれ

  • ユリイカの角田光代特集で何度も取り挙げられていた本。
    フリーター文学と言うらしい。

    この主人公ほどではないけどお金の不安を感じているときに読んでしまい、なかなかきつかった。
    ひりひり痛くて苦しいのに、もっともっと読みたいと欲してしまうような中毒性のある角田作品。
    ラストは物足りないような、でもしびれるような。
    はしもっちゃんはどこへ行くんだろう。

  • 私はあまり、私小説とか現実的な話を読む方ではなかったのだが、本好きの友人から勧められ、興味を持ってお借りした本。のち、古本ですが購入。

    知らないから、なんとなく生きてきてしまった、お金が無いことによる心の余裕の欠乏が、リアルに描かれている。故にちょっと読みながら痛かった。(ワープアですから(;´∀`))

    知らないことは本当に怖い。そして自分の頭で考えないことも、同じくらい怖い。

  • 『先のことがわからなくて、でも一緒にいたいって言う。』

    信じる気持ち。葛藤。

全116件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×