一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編> (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752718

感想・レビュー・書評

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  • この本を勧めてくれたのは、ビジネススクールの友人。何百といる学友のうち、仕事の話、家族の話まで話せて聴ける、数少ないいい男だ。

    年末差し迫った中で、どうしても会おうと呼ばれ、仕事のある平日に互いの職場の中間あたりでランチ。聞けば年明けから、福島で第一原発の解体作業の準備にあたるのだとか。健康上の理由から、限られた期間の派遣だということも知った。重大な任務だけど、まだ幼い子と奥さんを置いて危険と隣り合わせの仕事。身体は本当に大事にして欲しい。

    ランチしながら、年末どう過ごす?という会話の中で、「ベトナムに行くよ」と私。即勧めてくれたのが、沢木耕太郎氏の『一号線を北上せよ』。

    会話の中で、すぐに本が出て来る人が好きだ。しかも、流行りの本、ではなくて、その人の思いや、温度が感じられる本。その時私が読みたいと思える本。

    果たしてこの本は、彼が以前ベトナムを旅した時に読んだのだという。文庫版の発売は2006年。50代になった沢木氏が、かつて出会った人の著書に導かれるようにしてベトナムをバスで旅した時の旅行記である。

    ベトナムに向かう飛行機の中で、読了。

    街のあちこちで、早朝から匂い立つ湯気や、フォーを手早く盛ってくれるおばちゃんの姿や、けたたましく鳴り続けるクラクションの音、少し湿った空気の中でたくさんの人が交差する路地。勧めてくれた人の温度だけでなく、そこに描かれた街の音や温度、匂いまで、肌で体感できるような本は、久しぶりだ。

    空の上で既に、行ったことないベトナムの街に歓迎されているような気持ちになる。

    『一号線を北上せよ』というタイトルは、おそらく2つの意味を持つのだろう。文字通り、ベトナム ホーチミンからハノイまでの国道一号線を北上していくバスの旅そのもの、そして、巻頭のエッセイで書かれた、「「北上」すべき「一号線」はどこにもある。ここにもあそこにも私にもあなたにもある」(※うろ覚えで正確ではない) という一文に印された意味。私なりに解釈するに、多分「一号線」とは、自分にとっての支柱となるような原体験や記憶で、「北上」とは、そこを辿る道程のなかで今の自分がどうあるべきか定めていく、ようなイメージ。辿る過程においては、かつて交差したたくさんの人々や、その時々での自分のありざまに触れる。記憶と自分を再度近づけたり遠ざけたりする、ある種の禊のようなものなのかもしれない。「せよ」という文末に、突き動かされる衝動をみる。(翻訳書ではないので、沢木氏が意識してつけたタイトルに込めた意味は、深い。)

    沢木氏はいつも”何か”に誘われて(呼ばれて?)旅に出ているのだろうか。かつて何度も読み返した『深夜特急』では、旅そのものを感じるというより、旅をしている沢木耕太郎というひとりの男、を追体験するような感覚があったので、そう思うのかもしれない。

    私は、そんな風に旅に出たことがあっただろうか。
    多分ない。
    まとわりついてくる何かから逃れたくて、旅に出たことは一度だけあるけど、それは「出る」を求めていただけで「入る」ではなかった。その一度を除けば、私の旅はいつももっとライトだ。

    それが、今回のベトナムは、久々の海外でもあり、沢木氏が乗り移っていたか?思いがけず思考を深める旅となった。追体験のような場面があったのは意外。この本が最初に出された2003年から10年以上過ぎても、描かれている風景は、変わっていないように感じたからだ。ハノイを歩けば空の上で想像したベトナムの街そのもの。もちろん、描かれた当時よりも経済成長に伴って物価も上がっているし活気はさらに上がっているのだと思うけれど、空気や、温度や、匂い、人の声やクラクションの音。

    現地で働く友人を見て。
    ハノイの路地の食堂で。
    少数民族の村Sapaを訪れて。
    帰ってきた羽田空港で。

    自分が立っているこの場所は「地球」なのだと思った。その中の日本にいる意味は、何か。地球上にいる、多くの誰かと繋がりたい。そのために、私のありざまをどう置くのか。コミュニケーションのツールも、自分のアイデンティティも持たずに、手ぶらで出かける旅よりも、きっと深くて甘くて少し苦い、旅ができる。日常を生きることもまた旅の一つ。であるならば私はどう生きるのか。

    まさかのベトナム旅行で、そんな思考を深めるひと時をくれたこの本は、忘れられない一冊になるだろう。

  • 若干牽強付会なところもあるが,時を経ても,深夜特急と同じで楽しめる.こういうのを「スタイル」と呼ぶのだろう.

  • 深夜特急読んで以来、久しぶりに沢木先生の著書を読んだ。
    単純にベトナムに行きたくなった。
    沢木先生も深夜特急のころと比べると年をとったはずだが、旅行方法は若いな、と感じた。その中でも旅に関する価値観の変化をみることができた。

  • 深夜特急の沢木耕太郎が、再び路線バスでベトナムを横断。
    「水曜どうでしょう」の最終回も思い起こさせ、楽しく読めた。

  • あぁ。どうでもいいと思う。関係ない、と。

  • 自分が旅をしてるかのような錯覚に陥る。
    ツアーでは感じられないバックパックの旅ならではのトラブル、出会い、発見が読者をもワクワクさせてくれる小説でした!

  • 深夜特急シリーズの沢木さんの作品です、ベトナムを縦断します。

    旅のスタイルが深夜特急のものから少し変化しており、この旅の中でも変わっていきます、ちょっと淋しい。

    ただ、多くの旅本作家さんがテーマにする旅の終わり方やスタイルの変化について、最後は沢木さんらしい結論に至っており、これからも沢木さんの旅を感じられそうで安心しました。

  • ベトナム行く前に読んで、旅先にも持っていった。
    同じように1号線をホーチミンからハノイまでバスで縦断した。
    この本なしではおいらの旅はなかったな(^-^)

  • 深夜特急とは違った、大人の旅。

  • 年を重ねてもこのような旅が出来る精神力、好奇心、そして何より体力に羨ましさを感じます。名著「深夜特急」を彷彿させる語り口は健在で、同じ道程を辿りたくなりますね。

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著者プロフィール

沢木 耕太郎(さわき こうたろう)
1947年東京生まれのノンフィクション作家、小説家。横浜国立大学経済学部卒業。大学卒業後、ルポライターとして活動、注目を集める。
浅沼稲次郎暗殺事件で刺殺された浅沼と、その犯人である少年を描いた『テロルの決算』で第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。以後、バックパッカーのバイブル『深夜特急』をはじめ、スポーツや旅などを題材にした多数のノンフィクション作品、小説などを発表。2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し話題となる。
2003年これまでの作家活動で第51回菊池寛賞、2006年 『凍』で第28回講談社ノンフィクション賞、2013年 『キャパの十字架』で第17回司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。

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