火の山ー山猿記(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.48
  • (4)
  • (7)
  • (14)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 111
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752961

作品紹介・あらすじ

火の山-とは富士山のこと。その富士山に寄り添いながら生きた有森家の変遷史。誕生と死、愛と結婚の型。戦中戦後を生きた人たちを描きながら、日本の近代を見つめ直した傑作長編小説。第51回野間文芸賞、第34回谷崎潤一郎賞受賞作。平成18年4月から放送のNHK連続テレビ小説『純情きらり』の原案。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 大江健三郎や『楡家の人びと』を彷彿とさせる圧倒的創造(想像)力のクロニクル系大長編。
    有森家の1人が、連綿と続く有森家の歴史・家族の事件を綴った手記を、更にその子供たちが読み進めていくという内容。
    現代の会話ではどうやら誰が生き誰が亡くなっているか窺い知れるが、手記は著者の幼少期から丁寧に進んでいく部分が肝な気がする。
    津島佑子の作話力に驚きを感じる一作。

  • アメリカで生まれフランスで暮らす娘に、先祖代々甲府で生きてきた一族の歴史を父が書き残した記録―を、いとこが預かって、数十年後にようやく送り届けるという態の小説。

    長年アメリカで暮らしながら根っこの部分で日本人が抜けない父親が、日本語を読めない娘に日本語で記録を残すので、間に何人か人が入って日本語を訳さなければならない。
    そして、富士山についての古文書の記録や、記録を補足する注記やメモなども入り、スムーズに読むのはかなり難しい。

    また、一族に代々伝わる小太郎という名前が、いつの時代の誰の話かを理解するのを妨げる。
    この小太郎は祖父なのか、孫なのか?
    何世代にもわたる大家族の記録は、名前を覚えるのも一苦労だ。

    ようやく第二次世界大戦がはじまろうというころまでで、上巻は終わり。
    下巻はもう少しスムーズに読めるような気がするが、さて。

  • 今Booklogで検索してびっくり。これが『純情きらり』の原作?下巻を読まないとそうは分からないんだろうな。『純情きらり』よりも現実的。

    ある家族の様子を書ききったことはすごいと思うが、正直のめり込めない。下巻を読むべきかどうかためらっている。

  • まずは個人的な思い入れについて。

    「火の山-山猿記」のハードカバーを本屋で見かけたのは10年くらい前。谷崎賞が冠せられているのと、分量、題名とトーマス・マンの「魔の山」を思わせるその堂々たる雰囲気にいつか読みたいと思っていた長編。
    読みたいとは思いつつも、当時ハードカバーだったのでなかなか手を出しづらく、なんとなく手が伸びないうちにいつしか文庫となった。そしてその帯にあったのは、NHKのドラマ「純情きらり」の原案、という一文。

    連続テレビ小説は好きでわりと見ていて「純情きらり」も例外ではない。「純情きらり」自体はなかなか面白くたぶん全部見たが、「火の山」はこういう物語性の強いものなんだろうか?という気持ちが残った。それで買いはしたもののなんとなくすぐ読むのを迷ってしまった。

    長らく積読状態であったが、去年「ナラ・レポート」をたまたま読み、津島佑子に興味が湧いて、「火の山」に対する関心も変わり、今日ようやく読み終わった、というところである。最初の出会いから10年近くである。

    読んでいる間、実に充実した時間を過ごした、という思いがした。長いのだが下巻は一日で読んでしまい、軽く疲れた。

    富士山のイメージが随所に出てくる。雄大さ、噴火の際のエネルギーなど生命力の象徴として意図的に文章の中に登場させている、と著者の巧みさを読みとることも可能のように思うが、たくさん登場する人物の濃密な描かれ方に、作為的な仕掛け(語り口の多様さとか)も忘れてしまうようなそんな思いがした。笛子、杏子、桜子、勇太郎といった人物の描かれ方が、勇太郎による回想形式をとっている、というのはあるにしても、華美な表現には流されず、事実をしっかりと積み上げていくような書き方で、とてもどろどろとした手触りである-まさに生命そのもの-といった印象を受けた。

    ドラマを見るのとはまた違うものだと思いながら、桜子が「~じゃんねえ」と言うところなんかは宮崎あおいの声を思い出しながら読んでいたような気がする。

    いろいろ言いたいことはありそうだがなかなかまとまらない。少し余韻にひたっているという感じ。なかなか圧倒的な本だ。

  • 上下巻にに分かれておりかなり長いですが、
    その長さを感じないほど深く入り込んで読める作品でした。

    とある一家の物語をこれほど見事に描ききっている作品は
    そんなに多くはないのではないでしょうか。

    貴重な一作だと思います。

  • 一見長そうですがそうでもありません。誰か家系図と年表を書いてくれないものでしょうか。

  • 構造、家系図の複雑さにめげずにがんばって読んでみよう! たいへん面白い作品だから!

  • 太くて読みにくいかと思ったが、実は読みやすく、どんどん読み進めることが出来た。登場人物をひとりひとり丁寧に描いており、有森家を身近に感じることが出来た。

  • 『純情きらり』の原案。ドラマとは全然違うような、同じところもあるような。。。。飛ばし読みしつつ読了。

  • 津島 佑子 「純情きらり」原作

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

津島 佑子(つしま・ゆうこ) 1947年、東京都生まれ。白百合女子大学卒業。78年「寵児」で第17回女流文学賞、83年「黙市」で第10回川端康成文学賞、87年『夜の光に追われて』で第38回読売文学賞、98年『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞、2005年『ナラ・レポート』で第55回芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞、12年『黄金の夢の歌』で第53回毎日芸術賞を受賞。2016年2月18日、逝去。

「2018年 『笑いオオカミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津島佑子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×