QED 竹取伝説 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062753470

作品紹介・あらすじ

騙(かた)られた『竹取物語』 かぐや姫の正体とは!?

「鷹群(たかむら)山の笹姫(ささひめ)様は……滑って転んで裏庭の、竹の林で右目を突いて、橋のたもとに捨てられた」。不吉な手毬唄(てまりうた)が伝わる奥多摩の織部(おりべ)村で、まるで唄をなぞったような猟奇殺人事件が発生。ご存じ桑原崇が事件の謎を解きつつ、「かぐや姫」の正体と『竹取物語』に隠された真実に迫る。大好評シリーズ第6弾!

感想・レビュー・書評

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  • 読書録「QED竹取伝説」4

    著者 高田崇史
    出版 講談社文庫

    p141より引用
    “「しかし」崇は奈々を見た。「ニコチン自
    体は、三日間で完全に体外に排出されてしま
    うからね。あとは脳がその快感を記憶してい
    るだけにすぎない。ということは、それ以降
    は単純に脳ー意志ーの問題だからね。そう難
    しいことじゃないよ……。”

    目次より抜粋引用
    “竹取の翁といふものありけり
     いとうつくしうして居たり
     はべりけむ身とも知らず
     翁、出でていはく
     おはすらん人々に申給へ”

     博学な変人薬剤師とその後輩を主人公とし
    た、長編ミステリ小説。同社刊行作文庫版。
    シリーズ第六弾。
     新年から馴染みのバーでグラスを傾け合う
    主人公たち、以前に関わった事件について話
    は及び…。

     上記の引用は、タバコをやめた主人公・桑
    原崇の台詞。
    ニコチン中毒というか依存は、ただの習慣な
    のかもしれませんね。近頃はめっきりタバコ
    を吸える場所もなくなってしまい、肩身の狭
    い思いをしている人もいるでしょうが、本当
    は三日の我慢で済むと思えば、いつでもられ
    そうで少しは気が楽なのではないでしょうか。
    欲しくなる気持ちをうまくごまかす方法を探
    すのが良さそうですね。
     大きく成功する存在には、必ず何か犠牲が
    潜んでいるものなのかもしれないと思わせる
    エピソードでした。

    ーーーーー

  • 日本の伝統文化は、怖い。怨霊文化を学ぶシリーズ。日本昔話は被差別民のものだったのか。良い話にはウラがある。



     前巻で匂わせた割にはグッと来なかった。竹のお話は難しい。日本神話は難しい。
     ただ、前巻の知識がすごく活かされているのは確か。タタラ場の知識がすごく大事。もののけ姫…。


     あと、出雲大社行く前に読んだら、旅行がすごい楽しくなる。

    ______
    p22 文字で残すもの、伝統で残すもの
     古の社会で、文字を使えた者が伝えた情報が、現代で真実となっている。しかし、かつて文字を使えたのはほんの少しの階級の者だけであった。
     文字が使えなかったものは、伝統で歴史に爪痕を残していたのである。そういう階級の人たちは、苦しい生活をさせられた人たち。そういう人たちが残した伝統というのは、推して図る内容である。

    p25 松竹梅
     松:古字では「木へん+八白」と書いた。八白は陰陽五行で丑寅で鬼門にあたる。つまり、鬼の木である。
     竹:竹や瓜など中が空洞になる植物は、その空洞が異界に繋がるものとして敬遠されるものだった。
     梅:太宰府天満宮の梅を筆頭に、梅は呪いに関係する。
     松竹梅は、元元「松竹椿」だったとも言われ、首落ちを連想させる椿が含まれていた。

    p28 門松
     門松は正月に松と竹の木を縄で縛めあげて、門外に張り付ける。悪くとらえれば、縁起の悪い松と竹を家から閉め出して磔の刑に処している様である。
     門松は朝廷では飾り付けない。庶民が朝廷に忠誠を示すためにやっていた正月行事ととれる。つまり、朝廷に反抗する勢力を松や竹に見立てて、差別的行為をしていたのであろう。こわい。

    p37 茅の輪くぐり
     素戔嗚尊は黄泉の国に追放された。
     スサノオはイザナギとイザナミの子供(アマテラスとツクヨミ三兄弟)。スサノオが母の住む根の国(島根)に行きたいと駄々をこねたため、追放された。その後、根の国でヤマタノオロチを倒したり、娘のスセリヒメを嫁がせるために大國主に試練を出したり、仏教の牛頭天王と習合されたり、、、氷川神社がお墓。

     で、この追放時に世間からハブられたスサノオを優しく迎え入れ宿を貸した蘇民将来に「今年は疫病が流行るだろうから茅の輪を腰に巻いておきなさい」と残して発った。その後、疫病が流行ったその地方では茅の輪を巻いた蘇民将来の一族以外全滅した。それ以降、六月の茅の輪くぐりが無病息災のゲン担ぎになった。

    p42 八王子
     「八人の童子」という意味から来ている。この八人の童子は、スサノオとアマテラスの誓約の時に誕生した五男三女のことだという。スサノオは牛頭天王と同等と見られるが、牛頭天王は疫病の神様である。そのため、スサノオの八人の童子も疫病の神として忌み嫌われたとおいう説。

    p46 磁鉄鉱
     墓石には磁鉄鉱が含有される。磁鉄鉱は磁場を発生させるので、脳の側頭葉のパルスが乱され、そのためお墓で幽霊を見る。という説。

    p63 桃太郎
     桃太郎の物語は吉備に住む鬼を団子(魂)にして食べてしまって、彼らの財宝を奪おうという物語。という説。
     犬は朝廷の狗、雉は木地師という山中に住む木工細工に勤しむ職工集団、猿は流浪の旅芸人一座のことであろう。被差別民を率いた桃太郎の反朝廷民の誅伐物語。

    p142 3月14日
     延暦19年(800)に富士山が大噴火した日。

    p157 竹取物語の洒落
     かぐや姫が出した無理難題には洒落がある。
     一人目の石作皇子は「仏の石の鉢」を要求された。石作皇子は墨塗りの贋物を作って姫に差し出すが、見破られ見向きもされない。それでもしつこく食い下がって、人はそういった恥ずかしい行為を「はぢ(鉢)を捨つ」というようになった。
     二人目の庫持皇子は「蓬莱山の珠のなる木」を要求されたが、贋物を作らせた。それを代金請求に来た職人のせいでばれて、恥ずかしさのあまり王子は蒸発する。これを「たまさかなる(珠悪なる)」と「邂逅(たまさか)」にかけたという説がある。
     三人目の阿倍みむらじは「火鼠の皮衣」を要求されたが、中国の商人から買い付けて姫に差し出した。火鼠の皮なら燃えないはずと火をつけたら燃え尽きてしまい、みむらじは顔を草の色に変えて茫然としたという。これを「敢えなし(阿倍なし)」というようになったという。
     四人目の大伴御行は「龍の首の五色の珠」を要求されたが、舟で探しに出て遭難する。漂着した御行は風病にかかり目に李を二つ付けたようになってしまった。この御行を見て人は「あな、たへがたし」と言ったという。「耐え難い」と「食べ難い」をかけたのだろう。
     五人目の石上まろたりは「燕の子安貝」を要求されたが、それを取りに行って大けがをしてしまった。せっかくとってきたのも燕の古糞で、獲りに行った「甲斐なし(貝なし)」だったのである。

     これほどに言葉遊びを詰め込むこの物語には、言霊の時代だし、もっと呪が込められているんではなかろうか…。

    p164 登場人物のモデル
     江戸時代の国学者:加納諸平が著した『竹取物語考』ではこうなっている。
     石作皇子は、多治比真人嶋である。多治比氏と石作氏は同族だったらしい。
     庫持皇子は、藤原不比等である。不比等の母は庫持氏だったらしい。不比等は天智天皇の落胤ともいわれ、怪しい人物なのである。
     阿倍みむらじは、阿倍御主人である。この人物は舶来品好きだったらしく、まんまである。
     大伴御行は、大伴御行というまんまの人物。壬申の乱で名をあげた人物らしい。
     石上まろたりは、石上麻呂である。石上氏は旧姓が物部氏だった。物部氏が天武天皇に仕えるようになって改姓した。
     こういった考察がある。

    p170 作者の考察
     竹取物語は物語の時代から200年下った平安時代に作られたといわれる。200年も昔の時代の貴族をわざわざあざ笑うように描くのだから、その貴族に縁のある人物なのだろうという説。
     登場人物の中でも庫持皇子(藤原不比等)が最も悪辣に描かれているので、作者はこれを書いた当時、藤原に恨みを持つ人物ではないかと想像している。ちなみに竹取物語が書かれた時代は、藤原良房らへんの時代である。この時代、藤原氏によって政治を追放された大伴、石上、石川、安倍、多治比、紀、巨勢、の一族ではないか。
     この中で物語に登場する大伴、石上、安倍、多治比の一族は同族を悪くは言わないだろうから除外。
     さて、不比等の仕えていた文武天皇も閣僚には竹取物語の人物のモデルが入っている。その閣僚は6つの士族がはいっており、藤原、大伴、石上、安倍、多治比、紀であった。登場人物の中でモデル化されていないのは紀氏だけである。
     前に六歌仙の時にも出たけど、紀氏は藤原良房に辛酸をなめさせられている。

     だから、この竹取物語も紀氏の呪いが込められた作品だという説。

    p185 ワン・フォア・ワン
     ウイスキーのシェイクしただけのオリジナルカクテル。のんでみたい。

    p189 迦具夜比売命
     第11代の垂仁天皇の妃に迦具夜比売命(カグヤヒメミコト)という女性がいたとされる。
     彼女は衣通姫(そとおりひめ)でもあるだろうという。

    p198 愛宕
     京都の愛宕神社は役小角が創祀したと言われる。この神社は迦具土というイザナミを出産時に大やけどさせたという神様を祭った。迦具土はイザナミに仇を成したことから「仇子」といわれ、のちに「愛宕」というようになった。

    p206 かぐやー衣通姫(ソトオリヒメ)ー小野小町
     全て竹でつながる共通人物。
     p195、紀貫之いわく、「小野小町は衣通姫のながれなり」といい、二人の境遇が、美人歌人で帝の愛妾で叶わぬ恋に生き生涯独身だったという点で似ているといった。
     p199、小町氏は滋賀県滋賀郡から興った一族と考えられている。小野小町の祖父(?)に小野篁という人物がいる。彼は昼は朝廷で働き、夜は閻魔大王の補佐官を務めたと言われ、彼は篁神社で祀られるほどの人物だった。名前の篁は「竹+皇」という異界につながる植物の皇子というスゴイ名前だが、それほど裏社会に通じる人物だったのだろう。そんな竹に関する祖先をもつ小野小町なのである。

    p281 酸漿根
     ホオズキの根っこのこと。これを煎じて飲むと子宮蠕動効果がある。つまり堕胎作用である。
     七夕の時期に開かれるホオズキ市の意味は…。七夕の頃にホオズキを煎じて飲むという風習がある。これは秋の農繁期に子供が生まれないようにするためである、らしい。七夕は穢れを黄泉の世界に「流す」ことで祓う行事だったのだ。

    p282 織姫
     織姫は古代日本では棚機津姫(タナバツヒメ)と言った。棚は「捕縛」という意味があり、機は「磔刑」という意味がある。これをまとめると、織姫は捉えられて磔られた女性である。
     日本の神は、念願叶えられなかった者がなる。自分ができなかったことを後世の人物に叶えさせてくれる、自分が受けた苦しみから後世の人物を救ってくれる、こういった慈悲があるとされる。七夕飾りで願いを込める行為が、織姫がどういう存在だったかを予想させる。

    p285 機嫌
     「ご機嫌よう」という挨拶は、気分良く過ごしてくださいという意味ではない。「機嫌」つまり機を嫌っていることの確認作業である、という説。
     「機織り」はかつて「はしため(端女・婢)」の仕事だった。つまり、差別民の仕事である。被差別民をきちんと差別していますという、嫌味な挨拶なのである。
     こういう挨拶をするのはお嬢様とかそういう上流階級のイメージである。つまり、ご機嫌ようは貴族の差別用語だったのである。

    p295 蜘蛛
     蜘蛛という字は「朱を知る虫」である。朱=水銀の鉱脈を知る民のことだったのである。

    p296 真言密教
     真言密教:空海の修行地はことごとく金、銀、水銀の鉱床だったという。鉱脈探しのためにこの密教が普及したとも言われるらしい。
     空海が高野山金剛峰寺を開いたときには肝臓を患っていたという。水銀中毒者は肝臓を傷める。つまり、空海は水銀を服薬していたと想像できる。水銀を飲んで精神を高揚させて瞑想に入っていたのかな。

    p301 鳥居
     鳥居のカタチは「丹」と似ている。色は朱色だし。
     丹波や丹後には格式の高い神社が多いが、それは「丹=水銀」にまつわる土地が多いからという説。水銀の鉱床を朝廷が強奪する。占領後、朝廷の占有地としての証である神社(鳥居)をたてる。丹のつく地方には鉱床が多く、神社が多く建ち、その中で格式がついたのだろう。鳥居の原点は、水銀の産地というシンボルではないかという想像…。

    p303 くま
     「くま」のつく地名も蜘蛛と同様朝廷に抗する者の住む土地だった。朝廷の手の届かない奥地「隅」とか「曲
    」ということである。熊野も「くま奴」が由来。
     吉野は「悪し奴」が由来だった。朝廷に抗した者の住む土地の由来は辛辣である。で、出雲、熊野、吉野はみな一大タタラ場だったようだ。

    p309 君が代
     踏鞴場で作る銑鉄は、三日四晩炉で熱し続ける。このワンサイクルを「一代」という。
     君が代に出る、千代に八千代に、はこの踏鞴場が幾代も続き、天皇ために産鉄します。という意味が込められている説。

    p316 中間まとめ
     かぐや姫=衣通姫=小野小町
     そして三女とも棚機津姫(帝の一夜妻)だった。
     天孫降臨の場面で、長屋の竹嶋でニニギの子を身ごもったのは木花之佐久夜毘売であり(天皇の一夜妻になっている)、竹取物語で不死の薬を燃やした富士山の山頂の浅間神社に祀られているのも木花之佐久夜毘売である。
     棚機津姫=七夕の姫=織姫である。七夕の笹は「砂砂=砂鉄」であり、踏鞴場を連想させる。だから、七夕に笹を飾られる織姫は、踏鞴場の多い出雲地方の何者かだったのではないか。

    p321 うさぎ
     大國主命が助けたと言われる因幡の白兎。しかし、兎は「宇佐妓」(宇佐=大分の娼妓)のことで、被差別民を隠喩で表しているのだという説。
     因幡の白兎は、ワニを騙して逆鱗に触れ、皮を剥がれたというストーリーだが、ここで出てくるワニは「和仁」つまり百済からの渡来人のことであろう。

    p330 出雲大社は日本一でっかかった
     平安時代の源為憲という人物の作った「口遊」という子供向けの貴族知識本には、橋、大仏、建物の大きい順の覚え方が載せらえていた。
     橋:山太、近二、宇三(①山崎橋、②近江の瀬田橋、③宇治橋)
     大仏:和太、河二、近三(①大和の東大寺、②河内の知識寺、③近江の関寺)
     建物:雲太、和二、京三(①出雲大社、②大和の東大寺、③京都の大極殿)
     東大寺は38.17~45.45mと言われたから、出雲大社はそれよりも大きかったと予想される。恐らく50mくらいはあったものと思われている。

    p332 鼠
     大国主命の眷属には鼠がいる。大國主がスサノオの娘:スセリビメとの結婚を認めてもらうために受けたスサノオの試練を助けたのも鼠である。
     この鼠は「寝不見」という踏鞴場の不眠番のことではないかという説。
     寝不見は炉の火が絶えないよう寝ずに番する役目の人である。ここから、大國主は製鉄大国の王だったと想像できる。

     とはいえ、宇佐妓とか寝不見とか被差別民と関わっている大國主は朝廷から見れば賤民の王だったのだろう。

    p366 キニーネ
     トニック・ウォーターには元々キニーネという成分が入っていて、独特の苦みがあった。キネの皮から抽出されるキニーネはマラリアの特効薬になり、大航海時代のヨーロッパ人を救ったらしい。
     いまでは副作用の関係上トニック・ウォーターには含まれない。キニーネの入ったジン・トニックは能くアルコールが回るらしい。のみたい。

    p384 多摩川
     多摩川上流、奥多摩湖にそそぐまでを丹波川といい、多摩川の由来はこの丹波から来ているともいう。ここは金の鉱脈もあるらしい。
     丹波…。水銀とか関係してるんだろう。

    p389 仲違い
     為政者の治政のテクニック。土地の隣接する村を仲違いさせる。とくにタタラ場とか、土地で一揆を組んで反抗勢力になられたら恐ろしいから。
     今でも残る村落とか部落間の恨み辛みは、元を辿ればそういう陰謀が隠れているのかも…。

    p398 熱田神宮
     熱田神宮はスサノオが八岐大蛇を倒して手に入れた草薙の剣が祀られているというが、スサノオの墓標ではないかという説。
     前にもあった、神社と神宮の違い。天皇家の血筋の者を祀る場所だけが神宮号を冠せられる。
     素戔嗚尊も追放にあたって非業の生涯を送っている。笠と蓑をつけて川に流され、牛頭天王と習合され疫病神とされ、、、

    p432 棚機踊り
     盆踊りは、古来の念仏踊りに小町踊りや伊勢踊りが混ざったものと言われる。
     小町踊りは七夕の夜に着飾った少女が踊り歩いて怨霊慰撫をするというものだった。別名、棚機踊りとも言われた。そういや小野小町と衣通姫は同格で、どちらも織姫とつながるところがあった。
     小野小町=衣通姫=かぐや姫=七夕 がつながった。

    p485 出雲大社
     かぐや姫のラストシーン。姫が雲に乗って月に戻っていくシーンの解釈。
     雲=出雲大社という空高い建造物に上っていく様子か?
     月=太陽の逆、つまり黄泉(夜)の国の象徴に戻っていく。
     なんだろう、かぐや姫は出雲大社への生贄とか?かぐや姫は朝廷に抗した民の象徴で、朝廷に殺されたすべての者の魂が出雲大社に行き着く様子をあらわすのか??

    p487 神無月・神在月
     出雲大社に日本中の神様が集まる10月の神無月=神在月は祝祭ではなく、お法事だったのである。
     神在月では、地域の人は謹慎斎戒し、歌舞音曲は慎み、静寂に過ごす。この期間に行われる出雲の各神社の祭りは「お忌み祭り」といわれる。「忌」やっぱり法事である。
     判明していないが、きっと大國主命の命日は十月なんだろう。

    p489 ササ取物語
     竹取物語=笹取物語=砂砂物語である。という説。
     砂鉄の産地であった出雲で行われた国獲り合戦の鎮魂の願いが、竹取物語に隠された裏物語であろう。
     光り輝く竹から生まれた珠のような子(=タタラの炉で作られた鉄器)、かぐや姫を朝廷に貴族たちが欲しがっても手に入れられない(朝廷が鉄を手に入れられない)、かぐや姫は月に去ってしまう(鉄器は出雲のもとに戻っていく)。
     すべて出雲の国が上手くいくストーリー。実際には浮かばれなかった人々が物語の中だけは憎い相手に勝てる。怨霊慰撫の特徴である。
     天皇家が紀氏の誰かに作らせたのだろう。紀貫之とかセンスのあるやつがいたのだからこれだけのものができたんだろう。

    ________


     いやーこの巻も疲れた。学ぶこといっぱいだった。

     前の式の密室くらいの量がちょうどいいな。それでも話題はてんこ盛りだろうけれど。

     今回も、これだけ納得のいく深読みなのに、結局すべて予想の域を出ないから公然とは語れないとは…。
     文字で残せないってすごい拘束力なんだなぁと改めて実感した。文字で残らないだけで、事実が事実でなくなるなんて。

     今回はいっぱい死んだなぁ。すごい無駄に多く死んだ感じがすごいする。

  • 今回は竹取物語と七夕物語の関連性からその背後にある国取りから大和朝廷にかけての権利義務の横暴と、それをどのように巧みに歴史から隠蔽したのかを解き明かしている。
    所々でかなり強引で大胆な予測を挟むものの、奈々が納得している描写を加えることで、あたかも読者まで納得したと感じてしまうところが巧みだと思う。
    正解なんてもはや誰にも分からないので、現存する点と点を繋ぎ合わせて一貫性のある説を構築する高田氏の構想力を続くシリーズでも楽しみたい。

  • QED再読第6弾。まさかの外嶋さんが第1発見者、の割には
    その後ほとんど登場せず。相変わらずタタルがページ数のほとんどを語り尽くす本。今回のテーマは竹取物語を中心にいつもの騙りと歴史の闇。竹取物語の公達、かぐや姫にモデルがいたとは。帰っていった場所がまさかあそことは。いつも勉強になる。。。

  •  読み始めたら、なんか記憶にあるぞと気が付く。考えたら出て間もないころ友達に借りて読んだ本だった。
     日本史や皇族についての記述が多く、要は漢字が多く苦笑い。久しぶりに見る名前も多くて、少しうれしかった。
     物語のキーである鵲ーかささぎ―は佐賀県の県鳥、カササギは主に西日本、特に九州に生息する中国からの留鳥だったと記憶している。となれば、題材は九州の県境か、本文にある丹波か・・・想像するに面白い。
     物語の中盤、
    P135
    「それが、昔から男女の逢瀬は、月夜に多く行われた理由の一つなんだろう」
     え?
     奈々はドキリとして崇を見た。
     今の言葉って、もしかして……。
    -引用終わり―
    に噴きだした。このキャラでそれはないだろう!
    続きが楽しみだ。
    読了後
     今朝方知人と丹波の白兎について話し合ったのに、この本でも白ウサギの話が出てきて、苦笑した。無意識とは怖いものだなと思った。
     最終章前になって犯人が予測できたので少し残念な気がした。朝鮮朝顔は他の推理小説でもよく利用されている。後はどんな物語があったかな~。キョウチクトウの話は聞き飽きた。
     天皇の伊勢神宮参拝は、明治時代になってからの話も、数日前、別の知人と話をしていたところで、知識の世界って案外狭いコミュニティなんだなと思った。
     無意識のつながりに改めて思いを馳せた一冊

  • QEDシリーズで一番楽しみにしているのは、タタルこと崇の膨大な知識量にある。
    それが学問的に証明されていようがいまいが、まったく関係はない。
    ただ、読んでいて面白い。楽しい。
    ある箇所ではなるほど・・・と感心し、ある箇所ではまさか・・・と驚く。
    そんな楽しみ方ができる物語だ。

  • QED-6。魔のカーブ。かぐや姫と織姫と。
    いつもにましてボトムアップ。よくわからなくなってきた。
    C0193

  • 「鷹群山の笹姫様は…滑って転んで裏庭の、竹の林で右目を突いて、橋のたもとに捨てられた」。不吉な手毬唄が伝わる奥多摩の織部村で、まるで唄をなぞったような猟奇殺人事件が発生。ご存じ桑原崇が事件の謎を解きつつ、「かぐや姫」の正体と『竹取物語』に隠された真実に迫る。大好評シリーズ第6弾。

  • 相変わらず蘊蓄のところは飛ばし気味で読んだけど、今回は伝説と事件が結構マッチした感じがしました。
    伝説の残る田舎っていうフィルターに騙されているかもだけど、田舎育ちとしてはそのフィルターの強力さはわかるので、違和感なく受け入れられました。

    このシリーズ読むたびに、もののけ姫を思い浮かべるのは私だけでしょうか

  • 『本来、人間は個々に存在しているくせに、集団を形成して行動しようとするからおかしくなってしまうのだ。集団には、必ずルールがある。お互いの規則を作らずに生活できるほど、人は他人を思いやることはできないからだ。

    しかしその共同体は、必ず変遷していく。だが、ルールだけは変わらずに残る。すると、人がその規則に合わせて生きていかなくてはならなくなってしまう。ルールも変遷させればいいものを、いつの間にか、それには誰も手をつけようとはしなくなってしまう。

    社会というものは、そういうものに違いないだろうけれどー本末転倒だ。』

    因縁、風習、迷信を歴史から起源をたどり、その根底にある権力社会と差別の構図をあぶりだしながら、謎を解くスタイルはますます磨きがかかって素晴らしい。

    竹取物語の起源、面白かったなぁ〜。

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著者プロフィール




「2023年 『江ノ島奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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