権現の踊り子 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062753517

作品紹介・あらすじ

文学で踊れ!
川端康成賞受賞作。

権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅(つつじ)踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 莫迦(バカ)とか鹿唐(シカト)とか躑躅(つつじ)とか優婆夷(うばい)とか、難しい漢字やら当て字を並べ立て、その合間にぎょんべらむ、とか意味の分からん語句をぶっ込んでくる。相変わらずの町田康。

    短編読んだのが久々なせいか、いつもにましてとっ散らかった世界観で、ちょい入り込めない感じはあった。

    さんざんかき回して、最後はやけにさっぱり、虚無の中に放置される感覚、毎度おなじみ。

    工夫の減さん、ふくみ笑い、逆水戸がツボ。

  • 1999年から2003年にかけて発表された短編を集めたもの。
    表題作は川端康成文学賞受賞。

    改行しねえ句点も打たねえ、文語と口語が混沌、感情の暴発、圧倒的な文圧。どこから読んでも安心の町田節。
    短編集だから初めての方も読み易いかも?って思いながら久々に再読しましたが、やっぱり駄目みたい。苦手な人は徹底的に苦手だと思われます。だから無理には薦めない。

    微妙に合ってないジグソーパズルのピースを見て見ぬふりして放置するような落ち着かなさ、坐りの悪さ。しかもそのままどんどん作り続けちゃったような取り返しのつかなさ。
    町田短編の背後にあるようなないような、そんな「儘ならなさ」の虜。虚無すげえ。

    作者の擬時代物も好きなので、『逆水戸』がお気に入り。

  • んー、なんか、怖いですね。怖いくらいにぶっ飛んでます。禍々しい、っていいますか、世の中ハンパなく憎んでる恨んでる、っていうか。

    読んでて、読んでる人をイヤーな気分にさせてくれるミステリー小説の事を「イヤミス」って言うやないですか。この本も、それに近い、気はする。ミステリー小説ではなくて、分類的には普通の?小説、かと思われるので、「イヤミス」ならぬ「イヤノベ」ですかね?

    この短編小説集を発表した時の、町田さんの精神状態って、、、どうだったんだろうなあ?なんでこんな、不気味な、後味悪い系の、ま、平たく言うと狂った感じの短編ばっかり、なんで書いていたんだろう?不思議だ。不思議でならぬ。

    こんなおっとろしい小説を書きつつ、まっとうに社会生活、送ることができていたのか?できていたんだろう、、、なあ?だからこそ、2021年現在でも、町田康という存在は、日本文学界にしっかりと、その存在感を、示している訳ですし。

    いやあしかし、ホンマに、禍々しい程になんというか、、、狂ってるよなあ、、、よおこんな作品を、作品として成立させたもんだよなあ、って思う。驚嘆。

    「工夫の減さん」
    コレ、なんか、好きですね。「くふうのげんさん」と読むのですが「こうふのげんさん」って、最初、読んじゃいました。「工夫」って、「くふう」とも「こうふ」とも読めますやね、って事を改めて教えて貰いました。面白い。

    で、このタイトルは、おそらく昔々にアイレムが作ったアーケードゲーム「大工の源さん」(今のご時世では、ほぼ、パチンコの機種としての知名度の方が有名と思われますが)のパロディーですよね?と思うのですが、実際のところは不明です。ってか、町田さん、なんで大工の源さんをパロッたんだろう?謎だ。

    物事を普通にこなす → プラマイゼロの損も得もない
    物事を工夫してこなす → プラスの行為じゃんか!
    って発想で、やることなすこと全てに工夫をこらす、減さん。でもその工夫が、ことごとく裏目に出て、全てがマイナスになってしまう。そんな悲しき男、減さん。

    うーむ、、、実際に、いそうだ。いそうだぞ。そんな人。悲しきテーマだよなあ、、、なんか、深い。深い、気が、する。このテーマは、、、深い、気が、する。実際のところ、深いのかどうかは、謎ですが。しかし、結末も見事に、もの悲しい。うう、、、辛い話です。

    「ふくみ笑い」
    抜群に狂ってるなあ、という、なんともおっとろしい話です。いやあ、怖い。なんだか、なんもかんもが見事に狂っている。そしてなんの救いもない。怖いです。この世界観がとにかく怖い。「ふくみ笑い」、、、怖い。なんちゅう怖い笑いなんだ。

    「逆江戸」
    「水戸黄門」の世界観を、圧倒的に邪悪に皮肉った、これまたなんとも怖い話。いやあ、、、怖い。コレ、本家本元の水戸黄門の原作者の人(そんな人がいるのかどうか不明ですが)に、侮辱罪で訴えられないかどうか心配ですよ?というくらいの、すんげえブラックコメディー。コメディーですらないかも?なんちゅーか、人間の精神の暗黒面って凄いよね、って事を、ヒシヒシと感じます。いやあ、怖い。

    町田さんの、なにかのエッセイで、「数年間、ほとんど仕事もしないで毎日時代劇ばかりみて過ごしていた。世の中でどんな事が起ころうとも、時代劇の中では、常に正義が行われ、悪は誅せられ、その世界は平和であった」みたいなエッセイがあった、気がするのです。気がするのです。

    その時の町田さんが感じていたのであろう、現実の世界と時代劇中の世界に対するなんらかの違和感、みたいなもんが、こんなドエライ狂った作品を描かせたのかなあ?とか思うのですが、ホンマのところはどうなのでしょうかね?

    まあ、そんな感じで、間違いなくなんらかの「こりゃ狂ってる」感をヒシヒシと感じる怪作だと思います。いやあ。凄い。面白いか面白くないか、で言うと、個人的には、そんなに面白い、とは思えなかったんですが、なんちゅーか、なんらかの凄みエグみは、ヒシヒシと感じられました。おっとろしいなあもう、って感じ。うむ。凄いですね。それは間違いない。そんな一作でしたね。

  • 2006-04-00

  • たまに町田氏の描く作品が文学なのかただの悪ふざけの言葉の羅列なのかわからなくなることがあるが、やはりこの短篇集を読んで、これは文学なのだと思った。

    地獄から出られそうで出られない、もがけばもがくほど深海にはまりこんでゆく、そこもまた、日常。
    この理不尽さが不快過ぎてたまに読むのが辛い。特に「ふくみ笑い」の胸糞の悪さ!

    『ゼリーのような感触がして酸と便が混ざったような匂いがしたのも、目の前が白くなったのも一瞬、その一瞬の間に俺は、こんなことになったのも俺がみんなに対してエゴイスティックに振る舞い、仕舞には傷害や殺人をしたからだ。みんな自業自得だ、と思おうとした。俺は納得して死にたかったのだ。納得できなかった。やはり納得できねぇ。なんで俺ばかりがこんな目に。そう思った瞬間虫のねらねらした感触が顔面をおおって息がつまって顔面が赤熱苦しくなったその瞬間後に訪れた虚無すげえ。そのすげえ虚無に響いていた音楽。べらんが、めらん。』
    ここまで理不尽な世界においてもやはり人は納得して死にたいのだなぁ。世の中がおかしいのか自分がおかしいのか。この虚無すげえ。

  • わろたわろた。町田ワールド恐るべし。

  • 工夫の減さんで泣ける

  • 大好きです。
    もうみんな言ってるけど、「ふくみ笑い」がすごい。
    「何で俺ばかりがこんな目に」とかゆって。もーねどれ読んでもそんなんばっかりやで。

    鶴の壺とか逆水戸もよかった。

  • 【本の内容】
    権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。

    踊りは拙劣。

    もはや恥辱。

    辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    町田康の小説を読むと、真夏日の炎天下、道に迷っているような気分になる。

    頭がぼんやりして思考が空回りし、周囲から聞こえてくる会話はリズムと不快なニュアンスが強調される。

    パニックになっている頭がふいに悲しい思い出を引っ張り出してくる……。

    町田康はそんな気持ちにさせてくれる。

    この短編集所収の「ふくみ笑い」はその最たるものだ。自分と世界とのわずかなズレ、軋みがしだいに大きくなっていく恐怖感。

    自分ひとりがズレていき、他の人間はなにごともなくリズムにのっているのに、理解できないでいらだつ気持ち。

    私は方向音痴でよく道に迷うのだが、そんな時、世界から取り残される不安感がひゅっと襲ってくる。

    そのくせ、何かにいらだっている。

    そんな気持ち悪さを表現してくれるのは町田康くらいだ。

    表題作は、敗北感あふれる祭りの様子になぜかせつなさを感じた。

    全体を通じて、透徹な青さが根底に流れているように思う。

    美しい物語にはなりえない世界と、自分の青さとの折り合いがつかない哀しさ。

    そんな感覚を味わわせてくれる。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • This is a story about a man going to a small town for shopping, but ending up being forced to perform strange dances, obtained the Kawabata Yasunari Literary Prize.

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田康の作品

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