老人のための残酷童話 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754217

作品紹介・あらすじ

鬼に変貌していく老婆を捨てた息子と、その嫁の意外な末路とは…。「姥捨山」や、織女と牽牛の「天の川」といった、有名な昔話をベースにしながらも、独特の解釈で綴られた10の物語。大ベストセラー『大人のための残酷童話』の著者が、性欲や物欲、羞恥心といった、人間の奥底にひそむ感情を見事に描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • さまざまな老人たちが登場する寓話10編を収録している本です。

    「ある老人の図書館」は、長い廊下があらゆる本で充満している図書館で、ずっと本を読みつづけている老人の物語です。本に淫する人間の成れの果てを、寓話的にえがいているように感じられました。

    「天の川」は、武帝の命を受けて西域に赴いた張騫が、天の川をわたり織姫・彦星と出会う物語です。「犬の哲学者」は、ディオゲネスをモデルにした作品で、彼の自由な暮らしぶりを活写しています。

    「老いらくの恋」は、老僧と倩女という侍者の物語です。一休宗純と森女の関係を連想させる、性と仏道の一致という危うい主題をあつかっていますが、深刻ぶることなく、あくまで闊達な筆致で叙述された寓話にしあげられていて、個人的には本書でもっとも印象深い一編です。

  • 読み終わって、「うわーー!!残酷ーー!」って感想がまず出た笑
    不思議な老人が出てくる不思議なお話たち。ファンタジーというより童話。(童話とファンタジーは同じか?)
    不思議な話なのに随所に出てくる性描写が人間味があって良い。
    個人的には『天の川』が一番美しく不思議で好きです。

  • ”老人のための童話”っていう形容矛盾を、敢えてタイトルに据えた本作。全10編からなる短編集で、味わいはいずれもブラックユーモア。もう色んなパターンのこういうオチを見てきたせいもあってか、斬新さはほぼ皆無でした。中学時代に読んだ星新一の諸作品に対する驚きは感じさせられず。そんな思いとともに、本作者の他作品をとは思わず、久しぶりに星新一を読みたくなる、という感想を残すことになりました。

  • 2017年、31冊目は、倉橋由美子。全10編収録の短編集。今回は、タイトルのみ紹介

    ある老人の図書館
    姥捨山異聞
    子を欲しがる老女
    天の川
    水妖女
    閻羅長官
    犬の哲学者
    臓器回収大作戦
    老いらくの恋
    地獄めぐり

    読後最初の一言は「エンターテイメントだわ」に尽きる。姥捨て伝説を下敷きにした「姥捨山異聞」。中国神話を下敷きにした「天の川」。後半の「閻羅長官」「臓器回収大作戦」「地獄めぐり」は地獄三部作とでも言えそぅな感覚。文体も、中身もベクトルは様々。あくまでも「童話」なんだから、眉を寄せて読むモノじゃないでしょう。

    ただし、ブラックも、エロスも、受け入れられる、柔軟かつ、したたかな方々のためのね。

  • 「臓器回収大作戦」と「地獄めぐり」が特に面白かった。

  • 2015 9/5

  • 【本の内容】
    鬼に変貌していく老婆を捨てた息子と、その嫁の意外な末路とは…。

    「姥捨山」や、織女と牽牛の「天の川」といった、有名な昔話をベースにしながらも、独特の解釈で綴られた10の物語。

    大ベストセラー『大人のための残酷童話』の著者が、性欲や物欲、羞恥心といった、人間の奥底にひそむ感情を見事に描きだす。


    [ 目次 ]


    [ POP ]
    「姥捨山異聞」「子を欲しがる老女」「臓器回収大作戦」など、おどろおどろしいタイトルが目立つ、10の残酷童話集。

    昔話がベースだが、ほのぼのした温かさは皆無だ。

    老人になるのが怖くなる-いえいえ、ここまで毒の強い話をすべて読破すれば、怖いものなんてなくなりそう!

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 老人が出てくる短編集。
    後半に出てくる、地獄の話は、シリーズになるのでしょうか?

    最初は図書館不思議話だったのですが
    何だか昔話怖い編、みたいな状態に。
    次々と『鬼』になっていく家族は、想像さえしなければ
    怖くも何もないのですが…想像したら負けです。
    まぁそれをいうなら、臓器回収もすごいですが。

    やはり精神的に怖かったのは、最後ですか?
    最後の最後にて…さすが女性、という感じです。
    もしかして、世の中女性が長生きなのは…。

  • タイトル通りどれも老人が出てくる童話風・昔話風の怪奇幻想短編集。「老人」が主人公というのはつまり「死に近い」ということで、どれも死の匂いが濃厚、そしてエロもあり(笑)。どれも面白かったですが、「地獄もの」が3編くらいあって、それがどれも妙に現実的な地獄ばかりでユニークでした。あとだいたい、おじいさんよりはおばあさんのほうが怖いです(笑)。

    ※収録
    ある老人の図書館/姥捨山異聞/子を欲しがる老女/天の川/水妖女/閻羅長官/犬の哲学者/臓器回収大作戦/老いらくの恋/地獄めぐり

  • 『大人のための残酷童話』よりも自由な枠組みで書かれたブラックな寓話。結構どれも好きだけど、「天の川」の張騫がなんかかっこいい。「老いらくの恋」が一番不気味かも。「臓器回収大作戦」、脳移植時代のジレンマ、ホントにそういうことになりそう・・・ 「地獄めぐり」おじいさんがかわいそう。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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