出口のない海 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3233
レビュー : 426
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754620

作品紹介・あらすじ

人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは-。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 涙しか流せない一冊。

    あの 回天を作ったのも特攻隊員を作ったのも日本という国。
    負の歴史がまた一つ胸に突き刺さる。

    お国のために青春を捧げ散る命。
    その命に家族、大切な人のために…という想いが秘められていたのかと思うと、こんな時代だったんだとただ涙しか流せない自分がいる。

    忘れ難いあの時を過ごした大切な友を回想するシーンもまた涙。

    こうやって何人もの人が心の中に大切な友を愛する人を大切に仕舞い込んでいたんだろうな。

    昨日まで隣にいた人が明日にはいなくなる、それが戦争。
    この言葉を忘れない、忘れてはならない。良作。

  • H29.8.12 読了。

    出口のない海というタイトルに魅かれて、購入。人間魚雷の回天の話。とても読みやすく、喜怒哀楽の感情が次々顔を出しながら、一気読みしてしまった。

    ・「俺はな、回天を伝えるために死のうと思う。」。
    ・「常に生と死の間を心が揺れ動き、確かなものがない。」
    ・「約束された死によって、生は鮮やかに彩られ、限られた時間を生きているのだという確かな実感がある。」

    悲しい記憶は、語り続けていかなければいけない。この本は、未来に残してほしいと思う。

  • 世界で起こっているテロと同じだし、何より弟の見送りの言葉を出させる教育が恐ろしい。伝えていくべき本だとお思います。

  • 奇しくも真珠湾攻撃の日に読み始めたこの作品は特攻魚雷「回天」にまつわるフィクションであるが、この様な若者が本当に実在したのではないかと思わせてくれて、あっという間に読んでしまった。
    基本的にティーンエイジャーが特攻であろうと分かりつつも志願し、すんなり特攻任務を受け入れられるのか?
    きっと軍のプロパガンダに洗脳され、特攻任務が美化されたに違いない。主人公の様に悩んで葛藤して、本来の自分の意に反して散った人々が多いのだろう。
    それを想うと、親があの時期を生き抜いてくれたから今の自分があるのだとしみじみ思う。
    大人になりしかも少しばかり歳をとってみると日本の歴史を知ることは大切だとつくづく思う。
    偏差値編重時代に日本史を勉強した世代としては近代史は自習に等しい程度にしか勉強してないから、小説や映画がキッカケとなって、本来の歴史に興味を持ったりする事は大切だと思う。




  • 主人公は元甲子園優勝投手で野球に励む大学生。
    ただ、肘を壊しており、昔のような球は戻ってこない。
    直球で勝負できないなら、魔球を開発する。
    主人公はそう宣言する。
    そんな中、学徒出陣により主人公も徴兵されることに。

    軍国主義への抵抗感と、自分よりも若い人間が徴兵猶予の間に先に戦地に駆り出されていっていることへの罪悪感に苛まられながら、辿り着いたのは神潮特攻隊。
    人間魚雷「回天」の搭乗員である。

    「回天」は一度搭乗すると自力での脱出は不可能。
    即ち、出撃=戦果=死を意味する。
    人間が兵器の一部と化する。

    迫り来る出撃=死に向けて日々訓練、生活を送る隊員たち。
    そんな中でも主人公は魔球を投げるいう夢を何度も諦めそうになりながらも、生きる希望にして日々を過ごす。

    神風特攻隊は聞いたことがあったけど、
    神潮特攻隊は初めて。
    一度出撃すると決して生きて戻れない人間魚雷「回天」。
    故障により出撃できず生きて基地に生還すると、生きていることを後ろめたく感じさせる空気。
    死ぬことよりも生きることが辛いという空気。

    個人的には出撃前の最後の帰省で、
    両親に最後の挨拶をする場面が切なかった。
    「回天」は機密情報のため、やんわりとしか伝えることができない。

    本書はフィクションだけど、こういうシーンは実際に過去数えきれないほどあったんだと思うと、
    考え込まずにはいられない。

    たまたま読んだタイミングが終戦の時期と重なり、テレビや記事などで当時の関連情報を得ながら読み進めることになった。

    たくさんの人に読んでほしい、知ってほしい作品です。

  •  警察小説の雄である著者の思いがけない戦争青春小説。人間魚雷回天に乗り組んだ若者の物語。甲子園の優勝投手で大学野球でもエースだった並木が苦心の末編み出した魔球。それを誰一人に見せることも叶わず戦地へ送りだされる。狭い潜水艦に乗り、生きて帰ることのない出撃に向かうところから終章までの息苦しいまでの緊迫した描写、そして好漢並木を美しく散らせてやりたいとの著者の願いと葛藤が凝縮された思わぬ結末。大きな歴史の流れに翻弄されるちっぽけな人間の生き方が、こんなにも大きく読み手の胸に迫る。戦争とはいかに愚かな営為か。なぜ人は数多くの歴史から何も学ぼうとしないのだろうか。人間魚雷、神風特攻隊、平時なら信じられない作戦を編み出すのも人間なら、無辜の非戦闘民に原子爆弾を投下する狂気も同じ人間によるものだ。戦争は何人をも狂わせる。だから金輪際繰り返してはならない。

  • 戦争のために、夢を持つことさえ許されなかった時代。
    ただ、仲間たちと野球をしたい。
    そんな些細な夢さえも、同じ年頃の若者が戦地で次々死んでいく中で野球を続けることの罪悪感や、自分も早く後に続かなければという焦燥から、ぽろぽろと仲間が抜けていく。

    そんな中、並木浩二だけは、壊れてしまった肘で投げられる魔球を作り出すために、日々の練習を続けていたのに。
    学生であることが兵役免除の理由にならなくなったのは、そうでもしなければもう兵士の調達ができないくらい、日本軍が追いつめられたころ。

    熟練の兵士がほとんど失われた日本で、学士(大学生)だったら理解力も高いので、少し教えただけで前線で活躍できるだろう。
    そんな目論見で軍に組み込まれた、数多くの大学生。

    並木はそれでも、辛い軍隊生活のなかで、魔球をつくる夢を持ち続ける。
    しかし体力の限界まで毎日訓練は行われ、少しの休憩も許されず、その後は修正という名のリンチを受け、徐々に思考力は失われ、言われたことをいかに早く行動できるかだけが日々の目標となったとき、気がつくと並木は後戻りのできないところにいたのだった。

    若者らしく夢を持ち、友と語り、好きな音楽を聞き、互いに想いを寄せ合う相手がいる。
    たった一年前のそんな生活から、あっという間に、流れに巻き込まれたかのように後戻りのできないところにいた。

    死にたくない。
    大切なものを守るために死なねばならない。
    自分が死んだからといって、守りきれるわけではない。
    自分が死なねばならない理由は、なんだ?

    生と死の間を、何度も揺れ動く並木。
    最終的に死地に赴くことに覚悟を決めた並木の真意は?

    “国のために死ぬことに迷いはない。自ら志願したのだ、回天特攻を死に場所にすることに悔いも恐れもない。ただ……。
     自分は特攻という美名と功名心の虜になってはいなかったか。国家とか軍隊とかの見えざる巨大な意志に同調し、引きずられ、流されてきた。そうではないと言い切れるか。お仕着せの男の生きざまに飛びつき、そこから外れてしまうのが恐くて、生きていたいという本能を無理やり捻じ伏せ、封じ込めてきた。他の誰よりも勇敢たらんと虚勢を張ってきた―。”

    並木はかなり意識的に「絶対生きて戻る」と思って入隊するのに、たった一年で特攻とは知らなかったとはいえ、特殊兵器部隊へ志願してしまうのである。
    それが本当に怖い。

    一か所に人を集めて、ヒステリックに購買欲を高めて、高額商品を買わせる詐欺があるけれど、軍の洗脳ってそんな感じだ。
    冷静に考えたら絶対そんなことしないのに、冷静に考えさせてもらえない。
    ヒステリックな熱にあおられて、流されて、命を差し出すことになる。

    差し出すことになってしまった後も、並木は夢をあきらめず、考え続けた。
    自分が死ぬ意味を。
    それはどれほどの精神力かと。

  • どんな時代背景があって、どれだけの犠牲があって、何を経て、何を失って、「今」という平和があるのか。
    私達は戦争を経験していないけれど、過去に触れ、知る事をしなければならないと思った。
    二度と繰り返してはならない。
    散って良い命なんてない。
    散る事が名誉だなんて、あってはならない事だ。

    とても重く、でも読む手を止められない一冊だった。

  • 「人間魚雷回天」、こんな恐ろしいものがあったのか。
    それも、ついこの間である。

    神風特攻隊は聞いたことがあったが、こちらは
    「人間魚雷回天」に乗り込む青年の話を書いたもの。


    戦争とは悲惨なものである。誰もがわかっていることであるが、
    実際に体験していない我々若者世代にとっては少し現実離れしたことである。

    その恐怖を追体験することは、私たちにとって必要なことではないだろうか。

    「二度と繰り返してはならない、あの過ちを」という言葉の重さが変わる。


    あなたも、この小説を読んで、戦争を体験してほしい。

  • 神風特攻隊はよくテレビで観たり聞いたりしていたから知っているけど、神潮特攻隊という回天に乗り込んで特攻した人たちがいたという事実はどれだけの人が知っているのだろう?今はあたりまえのように平和な世の中で暮らしていて、戦争があった事なんて日々感じることが無くて、終戦の日にちょっと戦争ものの話がテレビで放送されるくらいで、時代の流れとともに戦争していた当時の状況や記憶がどんどん風化されていってしまいそうで怖い。今の私たちは戦争がどんなに悲惨なものか実際分かっているようで、イメージし難い部分があるのも事実。だけどだからこそ、やっぱりちゃんと後世に伝えていかないといけないなっと改めて思った。

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著者プロフィール

国際商科大学商学部卒業。1979年上毛新聞社に入社。1991年、『ルパンの消息』が第9回サントリーミステリー大賞佳作を受賞。1998年、『陰の季節』で第5回松本清張賞を受賞、小説家デビュー。代表作に『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64』などがある。

「2015年 『漫画でよめる! 語り継がれる戦争の記憶 戦火の約束』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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