出口のない海 (講談社文庫)

  • 講談社 (2006年7月14日発売)
3.84
  • (410)
  • (585)
  • (531)
  • (59)
  • (7)
本棚登録 : 4170
感想 : 491
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754620

作品紹介・あらすじ

最終兵器「回天」が意味すること。
戦争とは、青春とは――。

人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第2次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは――。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。

青春の哀しみとは、命の重みとは――
横山秀夫が描く「戦争」がここにある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 非常に重い話。
    日本に住むなら知っておかなければならない話だと思った。
    無謀な戦争の中で散っていったいくつもの若い命。それぞれにあるはずだった未来、青春。。
    潔く死んでいくことが正義とされていた世界で、まるでそれが自分の意思であるかのように信じ込まされ、国のためだと死んでいく。でもやっぱり死ぬことは怖かったよね。。無念だったと思う。敵とはいえ、人を殺すことにも躊躇はあっただろう。。
    並木たちに、思いっきり野球をしてほしかった。若者が若者らしく好きなことに好きなだけ打ち込める世の中を守っていきたいと思った。

  • 読書から少し離れてしまっていて、本屋で悩みに悩んで取った一冊。読書に熱中している時は読みたい本で溢れてたはずなのに…この本に出会えて良かった。

    戦争や歴史を深く知らない自分にとっては、過去に残酷な争いがあったのは知っていてても現実味がない。平和な日本にいると海外で戦争が起きていても、ニュースで流れる事故や事件くらいに見聞きしてはすぐ忘れる物になっている気がする。

    この作品は人間魚雷″回天″のに搭乗する事になった元甲子園優勝投手の話。読み進めると訓練中に命を落としたり、故障の多さ、目標の敵艦撃破の成功率の低さを知った。様々な場面での描写がリアルで、現代との違いを感じつつも読む事ができた。

  • H29.8.12 読了。

    出口のない海というタイトルに魅かれて、購入。人間魚雷の回天の話。とても読みやすく、喜怒哀楽の感情が次々顔を出しながら、一気読みしてしまった。

    ・「俺はな、回天を伝えるために死のうと思う。」。
    ・「常に生と死の間を心が揺れ動き、確かなものがない。」
    ・「約束された死によって、生は鮮やかに彩られ、限られた時間を生きているのだという確かな実感がある。」

    悲しい記憶は、語り続けていかなければいけない。この本は、未来に残してほしいと思う。

  • 何回も生死について、ギリギリのところで何が大切か

  • 涙しか流せない一冊。

    あの 回天を作ったのも特攻隊員を作ったのも日本という国。
    負の歴史がまた一つ胸に突き刺さる。

    お国のために青春を捧げ散る命。
    その命に家族、大切な人のために…という想いが秘められていたのかと思うと、こんな時代だったんだとただ涙しか流せない自分がいる。

    忘れ難いあの時を過ごした大切な友を回想するシーンもまた涙。

    こうやって何人もの人が心の中に大切な友を愛する人を大切に仕舞い込んでいたんだろうな。

    昨日まで隣にいた人が明日にはいなくなる、それが戦争。
    この言葉を忘れない、忘れてはならない。良作。

  •  8月になると、戦争を題材にした本を読みたくなる。「戦争を風化させない」「戦争の悲惨さを忘れてはいけない」等と言う、心持ちがある訳ではなく、自分の中では8月は「戦争の本を読む」と言う季節感というだけである。
     「出口のない海」は、特攻機「桜花」に次ぐ、人間が弾頭になって海中を進む人間魚雷「回天」の話、というだけではなかった。野球を楽しむ学生たちが、敗戦色が濃くなりつつある時代に徴兵され、そこにいた「並木」青年に焦点を充てた物語りである。
     温かな家族も、淡い恋も、野球への夢のことも、最期の時まで忘れなかった「並木」青年。彼の脳裏に蘇ったのは友達の笑顔か、仲間の言葉か、それとも戦争と回天のことだったか、それは誰にも分からない。
     この本が教えてくれたことは、回天のことを忘れられたら、誰からも思い出されなくなったら、この戦争のために死んでいった兵隊たちは、死ぬために生きることはなかった、と言うこと。兵隊たちの青春が、戦火の中に青々と燃えていたこと。
     若くして英霊になることを誇りにした者もいたかもしれない。けれど本当はどうだっただろう。生きることに縋り、日の本を背負う覚悟なんて。
     「彼ら(米英たち)にも家族がいる。」
     戦争は誰も幸せになんかしてくれない。私はそう思う。当時なら非国民と言われて迫害を受けただろう、母は何も悪くないのに世間に謝ってばかりいただろう。それでも、私は戦争の二文字に、幸福が入り込む余地はないと断言する。
     しかし、「並木」青年は見つけたのだ。唯一の幸せを。自分の夢を叶えた幸福を抱いたのだ。それだけは誰の意見もつけいる隙はない。もちろん、この感想を書く私にも。
     戦争の作品で、主人公が幸せの中で散った作品は数少ない。この本を多くの人が読み、一筋の幸福に目を向け、夢を叶えますように。そう思わせてくれた作品だった。

  • 太平洋戦争末期、特攻隊員並木の回天搭乗決意の訳とは…

    美奈子と交わされる手紙には胸を抉られる。
    回天が存在した残酷な戦争を、今後如何に回避して行くか、今ある平和を如何に守り続けるか、依然覇権主義国家が存在する現代において日本があるべき姿を思う。

  • 人間魚雷「回天」。追い込まれた日本が、局面の転換、すなわち、天下を回ずために製造された兵器だ。
    カミカゼなどといって、特攻隊ばかりがクローズアップされるが、「回天」という恐ろしい兵器があったことは、戦争の異常さ、悲惨さを後世に伝えるために知っておくべきだろう。

  • 高校生になって初めて読んだ本です。何よりもいつかまた読み返したいなぁと思いました。思い出の一冊になりました。

  • どんな時代背景があって、どれだけの犠牲があって、何を経て、何を失って、「今」という平和があるのか。
    私達は戦争を経験していないけれど、過去に触れ、知る事をしなければならないと思った。
    二度と繰り返してはならない。
    散って良い命なんてない。
    散る事が名誉だなんて、あってはならない事だ。

    とても重く、でも読む手を止められない一冊だった。

全491件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

横山秀夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×