出口のない海 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754620

作品紹介・あらすじ

人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは-。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • H29.8.12 読了。

    出口のない海というタイトルに魅かれて、購入。人間魚雷の回天の話。とても読みやすく、喜怒哀楽の感情が次々顔を出しながら、一気読みしてしまった。

    ・「俺はな、回天を伝えるために死のうと思う。」。
    ・「常に生と死の間を心が揺れ動き、確かなものがない。」
    ・「約束された死によって、生は鮮やかに彩られ、限られた時間を生きているのだという確かな実感がある。」

    悲しい記憶は、語り続けていかなければいけない。この本は、未来に残してほしいと思う。

  • 涙しか流せない一冊。

    あの 回天を作ったのも特攻隊員を作ったのも日本という国。
    負の歴史がまた一つ胸に突き刺さる。

    お国のために青春を捧げ散る命。
    その命に家族、大切な人のために…という想いが秘められていたのかと思うと、こんな時代だったんだとただ涙しか流せない自分がいる。

    忘れ難いあの時を過ごした大切な友を回想するシーンもまた涙。

    こうやって何人もの人が心の中に大切な友を愛する人を大切に仕舞い込んでいたんだろうな。

    昨日まで隣にいた人が明日にはいなくなる、それが戦争。
    この言葉を忘れない、忘れてはならない。良作。

  • 太平洋戦争末期、特攻隊員並木の回天搭乗決意の訳とは…

    美奈子と交わされる手紙には胸を抉られる。
    回天が存在した残酷な戦争を、今後如何に回避して行くか、今ある平和を如何に守り続けるか、依然覇権主義国家が存在する現代において日本があるべき姿を思う。

  • 人間魚雷「回天」。追い込まれた日本が、局面の転換、すなわち、天下を回ずために製造された兵器だ。
    カミカゼなどといって、特攻隊ばかりがクローズアップされるが、「回天」という恐ろしい兵器があったことは、戦争の異常さ、悲惨さを後世に伝えるために知っておくべきだろう。

  •  8月になると、戦争を題材にした本を読みたくなる。「戦争を風化させない」「戦争の悲惨さを忘れてはいけない」等と言う、心持ちがある訳ではなく、自分の中では8月は「戦争の本を読む」と言う季節感というだけである。
     「出口のない海」は、特攻機「桜花」に次ぐ、人間が弾頭になって海中を進む人間魚雷「回天」の話、というだけではなかった。野球を楽しむ学生たちが、敗戦色が濃くなりつつある時代に徴兵され、そこにいた「並木」青年に焦点を充てた物語りである。
     温かな家族も、淡い恋も、野球への夢のことも、最期の時まで忘れなかった「並木」青年。彼の脳裏に蘇ったのは友達の笑顔か、仲間の言葉か、それとも戦争と回天のことだったか、それは誰にも分からない。
     この本が教えてくれたことは、回天のことを忘れられたら、誰からも思い出されなくなったら、この戦争のために死んでいった兵隊たちは、死ぬために生きることはなかった、と言うこと。兵隊たちの青春が、戦火の中に青々と燃えていたこと。
     若くして英霊になることを誇りにした者もいたかもしれない。けれど本当はどうだっただろう。生きることに縋り、日の本を背負う覚悟なんて。
     「彼ら(米英たち)にも家族がいる。」
     戦争は誰も幸せになんかしてくれない。私はそう思う。当時なら非国民と言われて迫害を受けただろう、母は何も悪くないのに世間に謝ってばかりいただろう。それでも、私は戦争の二文字に、幸福が入り込む余地はないと断言する。
     しかし、「並木」青年は見つけたのだ。唯一の幸せを。自分の夢を叶えた幸福を抱いたのだ。それだけは誰の意見もつけいる隙はない。もちろん、この感想を書く私にも。
     戦争の作品で、主人公が幸せの中で散った作品は数少ない。この本を多くの人が読み、一筋の幸福に目を向け、夢を叶えますように。そう思わせてくれた作品だった。

  • どんな時代背景があって、どれだけの犠牲があって、何を経て、何を失って、「今」という平和があるのか。
    私達は戦争を経験していないけれど、過去に触れ、知る事をしなければならないと思った。
    二度と繰り返してはならない。
    散って良い命なんてない。
    散る事が名誉だなんて、あってはならない事だ。

    とても重く、でも読む手を止められない一冊だった。

  • 世界で起こっているテロと同じだし、何より弟の見送りの言葉を出させる教育が恐ろしい。伝えていくべき本だとお思います。

  • 奇しくも真珠湾攻撃の日に読み始めたこの作品は特攻魚雷「回天」にまつわるフィクションであるが、この様な若者が本当に実在したのではないかと思わせてくれて、あっという間に読んでしまった。
    基本的にティーンエイジャーが特攻であろうと分かりつつも志願し、すんなり特攻任務を受け入れられるのか?
    きっと軍のプロパガンダに洗脳され、特攻任務が美化されたに違いない。主人公の様に悩んで葛藤して、本来の自分の意に反して散った人々が多いのだろう。
    それを想うと、親があの時期を生き抜いてくれたから今の自分があるのだとしみじみ思う。
    大人になりしかも少しばかり歳をとってみると日本の歴史を知ることは大切だとつくづく思う。
    偏差値編重時代に日本史を勉強した世代としては近代史は自習に等しい程度にしか勉強してないから、小説や映画がキッカケとなって、本来の歴史に興味を持ったりする事は大切だと思う。




  • BGM ボレロ / 押尾コータロー

  • 大好きな横山さんの著書だけど、戦争の話なので読みたくなかった。

    でも、手に入っちゃったし、8月なので、読んだ。
    回天特攻隊の話は読んだこと無かったし。

    やっぱり、悲しかった。

    人の命って、時代によって、重かったり、軽かったり。

    戦争の時代しか知らない幼い弟が「立派に死んできてください!」と当然のように兄に言うシーンが、一番悲しく、衝撃だった。

    生きて戻ってきたのに恥と言われたり、殴られたり。


    天災もコロナ禍も嫌だけど、戦争より全然マシ。
    アフガンの情勢が心配。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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