翳りゆく夏 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1396
感想 : 168
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754699

作品紹介・あらすじ

20年前の誘拐事件に“封印されていた真実”
過去と現在、親と子、罪と罰……。
さまざまな要素が複雑に絡み合う、社会派ミステリーの傑作。

「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」。週刊誌のスクープ記事をきっかけに、大手新聞社が、20年前の新生児誘拐事件の再調査を開始する。社命を受けた窓際社員の梶は、犯人の周辺、被害者、当時の担当刑事や病院関係者への取材を重ね、ついに“封印されていた真実”をつきとめる。

第49回江戸川乱歩賞受賞作

細部の描写に実話以上のリアリティがあり、登場人物の一人一人に温かい血が通っていて、しかも事件と謎のブレンドが絶妙なので、読者はいつしか濃密な物語空間に引き込まれ、そこで主人公とともにスリリングな作中時間を生きることになる。そして数時間後、夢さめてふたたび現実へ帰還したとき、自分がひとまわり大きくなったように感じる。それは作中で「もう1つの人生」を生きてしまったからにほかならない。――郷原宏「解説」より

感想・レビュー・書評

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  • 「週刊秀峰」に大手新聞社である東西新聞に『誘拐犯の娘を記者にする大東西の「公正と良識」』という衝撃的な見出しでスクープ記事が載ったことから、この物語は始まります。
    その誘拐事件は、20年前に発生し、犯人2人が身代金を受け取りに来た所を追跡していたパトカーの前でガードレールを突き破って転落死を遂げて。犯人は死亡し、誘拐された当時生まれたばかりの男の子が見つからず、亡くなったと思われていた事件です。
    その誘拐犯には当時2才になる女の子がおり、優秀な成績で東西新聞の最終テストである役員面接まで進んで内定が出ていました。その女の子・朝倉比呂子が、この週刊秀峰の記事で入社を辞退し、就職をあきらめて養親の焼き鳥屋で働くと言いだします。
    東西新聞は、何としてもこの優秀な朝倉を入社させようと社長自ら説得しますが上手く行きません。そんな時に東西新聞社主から、この事件を調べるように指示が来ます。調べだすと驚愕の新事実が出てきます。

    【読後】
    あとから気が付くと、最初から誘拐犯の娘と誘拐された男の子が友人として登場していたのにはビックリしました。この誘拐事件は、驚くべきことに3組の犯人がいたのです。1組2人は、誘拐事件を知りそれを利用して病院から身代金を脅し取ろうとした者たち。
    その指示で実際に身代金を受け取りに行って亡くなった2人。それとは別に、男の子を誘拐した妻とそれを知った夫、妻が死んだあと誘拐された男の子と知りつつ我が子として育てます。警察は、身代金を受け取りに来た1組しか見ていなかったですが、実際は3組が複雑に絡まっていたのです。
    展開が早く、驚愕の組み立てで、次々とページを先に先にと読んで行くのが楽しくなる本でした。この本は、著者赤井三尋さんのデビュー作で第49回江戸川乱歩賞受賞作です。
    赤井三尋さんの本を読むのは初めてです。

    【音読】
    2022年1月2日から1月15日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2006年08月発行の講談社文庫「翳りゆく夏」です。本の登録は、講談社文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻からなっています。

    翳りゆく夏
    2016.12埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字本。2022.01.02~15音読で読了。★★★★☆
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  • 江戸川乱歩賞受賞作という小説だったので買った一冊。

    20年前の事件を再調査する話

    登場人物が多く、話もちょっと複雑な話だなと思ったが、文章がわかりやすくよみやすかったので、理解力のない自分にも話の内容がよくわかった。

    意外な人物が犯人だった

    ただ残念なのは、事件の真実はわかったが、それに関わった人物のその後が書かれてないから気になる。

    暗い物を持っている人物が多いなと思ったが、事件の真実がわかり、それぞれの人物がいい方向に人生が進むといいなとふと思った小説でした。

  • 江戸川乱歩賞の作品は凝っている

    本作品は昭和の時代に起きた解決済みの誘拐事件を、20年後の平成の時代に掘り起こし再調査を行う物語。
    主人公は新聞社で左遷の憂き目にあっている中年記者。社長命令で過去に起きた誘拐事件を洗い直すことになる・・・


    あらすじはこんな所で、それよりも登場人物達が興味深い!


    直観像素質という特殊能力を持ち囲碁がプロ間近級に強い新聞社の社長

    元基院の↑の奥様

    二人称に『お主』を使う元刑事 癖が強い

    橋田ドラマに出てきそうな家政婦の千代さん

    非常に暖かい家族の焼き鳥屋さん


    ストーリーも去ることながら登場人物達の細かな設定が私の中でハマってます。
    本作の登場人物達のスピンオフの作品があれば読みたいと思った!

  • 物語の本筋の前の段階が長くて、ちょっとしんどかったけれど主人公の梶が核心に近づくにつれて、読むスピードも加速した。いくつかの出来事が重なってあの様な結末を迎えたのは不幸でしかないし、真相を知ったところでスッキリはするけど、救われる人があまり居ない感じなのも悲しい。

  • 珍しく、多分この人が…と途中からピンと来た。
    だが、事件の背景はわからなかったのでどう展開していくのかが
    読みたく一気読み。物語の緻密さも良かった。
    が、視点がコロコロ変化して登場人物達が主な物語の中ではあまり生きていないような感じが…
    アッサリした読書感。

  • 最後まで読んで「あぁ・・・!」となる作品。

    過去に起きた誘拐事件の関係者が大手新聞社に新卒内定。
    その事実が記事となって明るみになったことから過去にさかのぼって、事件の真相に近づいていく窓際社員。

    単なる誘拐事件ではなかった、切ない人の心理が巧みに表現されており推理小説というジャンルを超えた楽しみが得られる作品。

  • 2008/9/11 ★5

  • そこかぁ。
    終わりは清々しいけど…息子さんが…。
    でも、そうか。
    生き残っている人には悪人がいないんだ…。
    周りに振り回された人生を送った人だけなんだ…。
    いやぁ、本当に犯罪はやめたほうがいい。

  • 書き出しの部分が絶妙。とにかく先が読みたくなる感じが素晴らしい。推理小説としては、特に凝ったストーリーではないものの、とにかく面白くて途中でやめられ無い。巻末の解説曰く、ブレンド、バランスの妙とのことだが、正にその通り。

  • 犯人にびっくり。おもしろかった。
    ドラマ化もされたようで、配役を見ていちいち納得。

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