文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 247
  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

作品紹介・あらすじ

存在しない犯人。それは鬼神だ。
京極堂、「鳥の城」へ。

「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼二郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允(こういん)とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第8弾。

感想・レビュー・書評

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  •  精神分析から哲学にまで話が及ぶ。――京極先生の造詣の深さを堪能できる一冊。伯爵/関口/伊庭の一人称視点が入れ替わり、各自の持つ瑕(ありふれた言い回しだが所謂トラウマや悔恨の念)に入っていく。しかし、……その独白部分が中々読むに骨の折れるところで、そこのところで評価が分かれそうな印象だった。えらく短い文章が淡々と続く辺りが、講談社ノベルスの小説といった感じ。メフィスト賞作家の作品を好む人が好みそう。正直、伯爵の独白パートが読むのにきつかった。彼は、薫子を護る自身と行為に酔っている感じで、具体的に護ることがどういうことか。護るためになにをすべきか、なにかしらの犠牲を払わなければならないことを理解していなかったのだと思う。教えてくれる人も居なかったのだろうけれども。自己犠牲とも無縁というか、そこのところを、彼自身が把握していないのが、一番の悲劇だと思う。

  • 恐縮ながら、シリーズもここまでくると京極堂の衒学的な演説も少々読み苦しくなってきたのは事実だし、また、他作に比べて割と早い段階から真相の予断が可能な作品ではあるが、それ以上に、これまでのシリーズの中でもっとも“感情を動かされた”ことが印象的だった一作。

    読み進めていくうちに、「ああ、そういうことなのかな」と段々と想像がついてきて、そして終幕は果たしてそのように展開していくんだけど、その最後の情景の途中で、なんだかとても物哀しく切ない気分になった。

    これまでの京極堂シリーズにも、悲哀、といった類のテーマは込められていたこともあったとは思うが、正直私はそれを剥き出しの心根で感じたことは、今までなかった。
    しかし今作に至って、作中人物のあまりの哀しさをリアルに読み取ってしまった、というのは、私の内面に変化が起こったからなのだろうか?

  • 『絡新婦の理』まではいくつかの並行する事件がやがて絡み合うという性質上、その長さ・分厚さにも必然性か感じられたが、どうも本書はいたずらに厚いというだけな気がする。
    無駄な語りが多いわりにたいした事件も起きず、存在や死に対するいくらか哲学的な対話はあまりに露骨に結末を暗示している。
    『魍魎の匣』を読んだときの衝撃をもう一度味わいたいなぁ、などと思う。

  • まあ榎さんと関さんが2人で旅してるだけで最高だから……

  • 相変わらずの千ページ超の大長編。ただ、今回は死生観や儒教、しっぺい太郎などのウンチク話が全体の大部分を占めていたり、やたらと改行の多いページが続いたりと、密度的なことでいえばちょっとボリュームあるかな?くらいの内容。

    そして本シリーズの真骨頂である憑き物落としが始まるまでが長い長い。全部で1200ページ近くあるのに、それが始まるのは1000ページを超えてから。ウンチク話が多少(個人的に)興味深かったので、何とかテンション落ち切らずに読み切りましたが、思い返すとストーリー的に起伏のない間は結構辛かったかもしれないです。

    だけどやっぱり憑き物落としが始まると、取り憑かれたように読みふけってしまう吸引力がありますな。おぼろげに犯人が誰かと想像できたとしても、その真相はいかに?といった部分で大いに楽しめました。

    まさにレンガなみの分厚さを読み切った達成感と、読了直前の憑き物落としによるアゲアゲテンション効果で、★の数が1つ2つ多くなってるかもしれませんが、現段階での正直な評価なんで…

  • 優しいお話で、哀しくも良かったです。
    榎さん関口くんコンビで少しいつもと違った雰囲気。
    ラストといいとにかく関口くんへの愛が深まった。

  •  関口先生がどうなったか気になったので短編集すっ飛ばして長編を読むことにしたんですが、やっぱり早まったかな? まあ致命的なレベルではなかったので結果オーライ。
     珍しく高評価されてる関口先生に姑獲鳥以来のスポットライト。というかこれはシリーズが1周した(二度目の夏が来た)という示唆なのだろうか。フーワイダニットの内、個人的に最も気になるWhoは序章で暗示され、Whyも大体推測可能。ただしWhyを形成した土壌が不明という構成。ばらばらに見えた話が一気に収束する様はいつもながらに見事。
     犯行は未然に防げたはずだった。その機会は幾度もあった。けれど、誰もその誤謬に気づくことも、正すこともできなかった。京極堂の「彼以外の全員が犯人」というのも、その視点で考えれば解となりうる。嫌っていたはずの彼を皆が庇ったように、これからは皆がその重荷を背負うのだろう。
     しかし、薫子さん素敵だったのになぁ……絡新婦で大概打ち止めかと思ったけど、京極堂シリーズの女性キャラの使い切りっぷりはもう罪深い域。なんでこうも素敵な女性を次々描いては使い捨てられるのか。こうまでくると秋彦さんと千鶴子さんの馴れ初め話は千鶴子さんの死亡フラグに直結しそうな予感がひしひしとするのであきらめます。関口先生と雪絵さんの馴れ初め話もあきらめます。だから末永く仲良く幸せに暮らさせてやってくださいお願いします。
     関口先生が珍しく明るく事件を終えられたので、これは恢復か成長フラグなのかなあと期待。生きづらい人格なのではあるけどね。雪絵さんのために長生きしてほしいな。

  • 関口ファンの私歓喜の巻

    私の中では、今まで関口はとても不当な扱いを受けてきた気がする。あの不健全な精神(これが良い)により周りの人から誤解?されまくり、前巻では終始拷問を受けて最後冤罪だと分かった後も出てこず話が終わってしまった。
    しかし!今巻は伊庭、伯爵と関口をある程度好意的に捉える人が出て、京極堂も知人だと言いつつ関口の思想を理解していることを読者に分かる様に表してくれる!めっちゃ嬉しい

    不健全な精神がもっと不健全になる今までの話も好きだけれど、こう、関口への風当たりが良くなり健康になるのもいいなと思いました。

    陰摩羅鬼の瑕自体は、本格ミステリー?を読む気持ちで読んでて途中でこれは違う!私は今京極堂シリーズを読んでるんだ!と気づく感じのお話でした。
    京極堂シリーズはどの本とも違う気持ちで読んでる気がします。


  • 哀しい話。
    家族に成るとはどういうことなのか?
    伊庭さんが良かったな。
    多々良センセイのところで出てきたのは君か!と思わぬ再会。
    あと、大鷹くんはここで出てきてたのね‥。そうだったそうだった。
    関口くんが、韮山の時よりも回復していて、それは安心です。
    しかし伯爵から見た関口くんは、やはりウロンなのだなあ。

  • 剥製の描写の差で、何が起きていて何が起きるのかも分かるので、どう解かれるのかを楽しみに読み進め、楽しかった。姑獲鳥の仕掛けが好きで魍魎の匣にも手を伸ばした人間なので、今回も興味のあるテーマが読めて嬉しい。順番に読むつもりで、うっかり百器徒然袋を雨・風両方読んでいたので、がっつりシリアスな京極堂の憑物落としが体感でけっこう久し振りだったのも嬉しかった。嘘吐きであることに自覚的でその嘘の影響力を重く見ている京極堂がやっぱり好きだ

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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