文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3062
レビュー : 244
  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

作品紹介・あらすじ

存在しない犯人。それは鬼神だ。
京極堂、「鳥の城」へ。

「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼二郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允(こういん)とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第8弾。

感想・レビュー・書評

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  •  何もない田舎に聳える洋館。その中には無数の鳥の剥製があって、その館に嫁いだ花嫁は必ず死ぬ。
     そんな感じで始まる今作は、京極作品では珍しく普通の探偵小説みたいな舞台設定だった。話の筋も読みやすくて、その点でも異色な感じがした。たまにはシンプルなのも面白い。
     文章の書き方も意図的に変えてきているのかなという印象。視覚的な単語の並べ方が目に映った。あまり分からないテクニックを入れている。
     榎木津は相変わらずで、関口は基本的に落ち込んでいた。この組み合わせは面白い。太極図みたい。
     林羅山とハイデッガーを繋げるという技巧も楽しい。なんでも読んで勉強しているし、それをやりすぎない範囲で小説に盛り込むのが非常に上手い。
     京極堂が語る宗教の話は、自分も昔考えたことがあったので共感できた。私は子供の頃に死者を敬うということを考えていた。それには仏教も、キリスト教も適さない。というより何かを挟んで祖父や祖母と向き合うのが不埒だと考えていた。結局思ったのは、記憶の中に止めておけば人は死なない。ある意味生きているのではないだろうか。死んだ人のことを時折思い出すこと、そして自分が生きることが一番の供養だと思った。否定はしないし効果も理解しているが儀礼式典は全部嘘だ。
     伯爵が犯人だろうというのは早めに分かった。丁寧に説明しているし、死についての齟齬も、剥製に囲まれていることで明瞭だった。わざと分かりやすくしていると思う。答えに近づいていく不安を味合わせるために。外れるわけないのに外れてくれと思う。読者はいつの間にか関口と同じ気持ちで京極堂の憑き物落としを聞いていたわけだ。
     伯爵は、人が死ぬということを勘違いしていたわけだが、最初の妻を殺して、そのまま一緒にいたら喋らないし腐っていくしで、気づいたことだろうと思うが、その最初が無かった。誰もそういうことは教えないという特殊な環境もあった。人が死んで無になる。亡くなる。それは本当に無くなってしまう。人というのは精神であって体ではないのかもしれない。伯爵にとっては家族は動かない体だった。伯爵は聡明だったので、自分の間違いを理解して、亡き妻たちへの贖罪をするのだろう。

  • 鳥の城、由良昂允

  • 今作は犯人探しというより、そこに至るまでの過程が特に重要。タイムリミットが示され、榎木津事件簿のようでもあった。本編と言うより別巻というのがあっている感じ。
    京極も最後の憑き物落としが、あまり冴えていない感じ。
    最近では少し物足りない。


    凄い!京極小説。
    あの「夏」の衝撃が甦る。未体験の京極ワールド。

    白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」は、主の5度目の婚礼を控えていた。過去の花嫁は何者かの手によって悉く初夜に命を奪われているという。花嫁を守るよう依頼された探偵・榎木津礼二郎は、小説家・関口巽と館を訪れる。ただ困惑する小説家をよそに、館の住人達の前で探偵は叫んだ。――おお、そこに人殺しがいる。

  • 過去の既読本

  • 百鬼夜行シリーズで、今のところ一番影が薄い作品。

    ここまでシリーズを読んできた人なら、塗仏で出てきた気になる人物や、もっと不思議な事件を期待していたはず・・・

    塗仏とは違い、限定された場所の殺人、容疑者も絞り込めるといった、よくあるミステリーになっている。

    とにもかくにも、謎が解けやすいのが残念。
    榎木津のぶっ飛んだ発言を読み返したり、冒頭に戻ったりと、読了後の余韻も少ない。

    ただ、林羅山が行った儒教の解体と再構築、また、横溝正史本人が登場するあたり、飽きることはない。

  • 京極堂シリーズの第8弾。
    長野県の白樺湖畔にある由良「伯爵」邸では、当主に嫁いだ美人のお嫁さんたちが婚姻した翌日の朝に殺されるという事態がずっと続いているらしい。

    それでも結婚する世間知らずの「伯爵」さん。
    もう50歳で「おじいちゃん」って年頃なのにね。
    次の奥さんも若い美人さんらしい。

    お家は鳥ちゃんの剥製だらけで、豪華な洋館は「鳥の城」と呼ばれているらしい。
    この剥製は幼い頃にお母さんと死に別れた「伯爵」さんの「家族」なんだって。

    そして、5度目とは言え「新郎」である「伯爵」さんは「生きて居ること」がどういうことなのか、大人なのによくわからないもよう。

    案の定、京極堂さんは江戸時代に朱子学を大成した儒家の林羅山さんについて長々と講釈をたれるあたりから登場し、ラストまで顔を出さない。

    京極さんのお話は、物語に絡むのか絡まないのかわからない、おそらく作者さんの研究成果発表の場が長いのが難点だよなぁ…。

    まぁ、連続殺人事件は予想どおりの内容でございました。
    この内容をこの長さで読みたいかってあたりで、評価が大きく分かれそう…。

    でも、動機の観点からして司法は殺人として訴追できるか、公判が維持できるかで困るわけだけれども、誰が殺したかについてはシンプルだから最初から逮捕できたんじゃないかな?

    時代が戦時中&戦後すぐって設定だから、今ほど鑑識とかレベルが高くないだろうし、沢口靖子さんもいなかった時代だからムリかな?

    いずれにしても、過去も未来も「今」があってこそ。
    今だけは自分の意思で選べる。
    今を大切に生きなくちゃね。

  • ★3.5
    再読。「亡くなる」ことと「無くなる」こと、冒頭で繰り広げられる関口と伯爵の会話だけで概ねの展開が分かってしまうけれど、それでも最後まで読ませる筆力はさすがの一言。そして、関口、伯爵、伊庭の3人が語り部となり、それぞれの瑕に焦点が当てられているものの、誰よりも瑕が広く深いのは執事・山形な気がしてならない。勿論、伯爵が此方側に来た時の絶望も計り知れないけれど。それはそうと、横溝正史との邂逅に浮かれていたらしい関口が何だか可愛い(笑)。あと、解説で紹介されていたミステリ小説が気になるので読んでみたい。

  • 『絡新婦の理』まではいくつかの並行する事件がやがて絡み合うという性質上、その長さ・分厚さにも必然性か感じられたが、どうも本書はいたずらに厚いというだけな気がする。
    無駄な語りが多いわりにたいした事件も起きず、存在や死に対するいくらか哲学的な対話はあまりに露骨に結末を暗示している。
    『魍魎の匣』を読んだときの衝撃をもう一度味わいたいなぁ、などと思う。

  • 独特な世界観に引き込まれます。

  • 出場人物が大量すぎる

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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