文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

作品紹介・あらすじ

存在しない犯人。それは鬼神だ。
京極堂、「鳥の城」へ。

「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼二郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允(こういん)とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第8弾。

感想・レビュー・書評

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  • 京極の魅力の一つは登場人物にシンクロしていくような没入感を得られる点にある。語り手は大概陰気でひねたやつが多いのだが、やはり関口は一際暗くて良い。陰摩羅鬼は現実世界での出来事が少ない分、関口の出口のない思索にどっぷり浸かってダウナー系の陶酔感。
    話のネタは見えてるのだが、そこまでの過程、京極堂の憑物落としの快感は相変わらずすごい。
    榎木津は今回目が見えてたら話が成り立たんので仕方ない。

  • 純粋とは、生死とは、弔いとは、と無意識下の価値観を揺さぶられた。
    百鬼夜行シリーズの中でも本作が1番好きという感想を多数拝見して読んだが、納得の内容だった。

    『謎とは知らないこと。』
    知らない方が良かったことなんて、世の中溢れていて、後悔ばかりだ。
    無知は罪とも思う。いつもせめぎ合っていて目を塞ぎたくなる気持ちを思い出して噛み締めてしまった。

    世の中は汚い。嘘や虚栄、誤魔化しで人を利用しているのを見るのは本当に心が擦り切れる。
    でもはたして純粋なことは良いことなのか?本作で強く考えさせられた。

  • 百鬼夜行シリーズの中で、結構好きな一編かもしれない。
    冒頭から哲学的な応酬が重ねられ、論理の海に流される。膨大な言葉とページ数を尽くして語られる物語だが、実際の時間は物凄く短期間なのだ。伯爵と、鳥の城。その特殊な世界が読者の感覚も狂わせてくるのだろう。
    ある意味、はじめから全てが明らかであった。それでも、結末が気になって気になって仕方がなかった。視点者が関口くんと、伯爵と、伊庭さんに絞られていたせいか個々の思索論理の底に沈んでいけたのが、体感としてある。前作ではひたすらにひどい目にあっていた関口くんだが、今回は180度変わってひどく活動的だ。「関口巽」というキャラクターに対する印象も、上手く言えないけど変化があった。愚鈍なワトソン役のふりをしながらも、めちゃくちゃ興味深い人物じゃないか。あの連中とつるんでる時点で、只者ではないのか。
    伯爵は、一貫して公明正大で清廉潔白。だからこそ、とてつもなく悲しい。薫子さんが物語の清涼剤でもあったからこそ、なお。そして私は伊庭さんのようなキャラクターが大好物だし、木場修との会話部分を何気にめちゃくちゃ楽しんだのだった。

  • 心がえぐられましたね、悲しいぞ。しかしすごい量の知識を得られるな毎回

  • あなたにとって生きているということはどんな意味を持つのですか?

    前半は久しぶりに関くん語り多めで、応援するのが辛くなりましたが、途中からは珍しく大活躍。伊庭さんの存在もとてもよかったな...

    夏に起こった事件、鳥が出てくる、関口くんが深く関わっている、とても不思議な事件、と、「姑獲鳥の夏」との共通点をたくさん感じながら読みました。姑獲鳥の時は何度も読まないと理解できないところがあったのに、今回は早い段階で真相がみえてきました。

    繰り返される哲学的なお話はすべて伏線へと繋がっていて、すとんと納得できるけど、哀しく切ないお話でした。

  • これは悲しすぎる。
    まさか涙を堪えながら読む羽目になるとは。
    ストーリーはもちろん面白い。
    ぐいぐい読ませる文章も相変わらず。
    そもそも題材が好みなのもあって一心に読み耽った。
    毎度の事ながら、京極堂の語りには感嘆したり考えさせられた。
    でも今回の『瑕』の意味を知った瞬間、微かな絶望感に襲われた。
    帯の『謎とは知らないこと。』ってこういうことか。

  • ことの真相は京極ファンなら、かなり早い段階でたどり着くのではないか。かなりあからさまな、読者を騙してやろうという意志の余り感じられない書きぶりなので、むしろ甲羅を経たミステリファンの方が、レッド・ヘリングを疑って明後日の方角に進んでしまうかも知れない。☆シリーズの初期作、例えば『姑獲鳥の夏』なんかはこのトリックを成立させるためには、この分量がどうしても必要というような説得力があったが、本作には感じない。正直、半分かもっと短くできるだろう。水増しと言えば言えなくもないのだが、このふわりとした感じがよいという読者は間違いなくいるはず。ただ文庫で読みむとさすがに重たい。☆終盤の展開には思わず落涙。

  • 「瑕」を分かった状態で読んだので、途中辛すぎて読み進められなくなるなど。

  • 白樺湖近くに建つ洋館「鳥の城」。そこに住む主人、由良昴允。
    伯爵と呼ばれる彼は過去4回、花嫁を新婚初夜に亡くしている。
    5番目の花嫁、薫子を護るために呼ばれた榎木津と関口だが……。存在について考えるシリーズ第八弾。→

    個人的に原点回帰のように感じた本作。関口が主軸、閉じられた空間での事件、儚い謎、登場人物少なめ。
    でも、作中で一年経っているし、読んでいる私も歳を重ねているので、姑獲鳥よりさらに切なく感じた。
    伊庭さんがいいんだよなぁ。木場との絡み、好きだなぁ。
    中禅寺と柴くんと絡みも良い→

    そして中禅寺=京極堂の安定感よ……。クライマックスで京極堂が出てきた時の私の気持ち、たぶん関口とシンクロしてる(笑)

    今作は榎木津があまりかっこよくなかったのが残念(笑)暴れっぷりも控えめだったような。

  •  京極夏彦さんの作品。例にもよって、分厚い。京極さんのミステリーの中で、多分初めて真相を300ページくらいで予期できた作品です。
     内容自体は相変わらず面白く、京極堂が出てきて語り初めると、楽しさはピークに達します。

  • 鵺の碑を読む前に、2つ前のお話を再読
    読んだのがかなり前だったので、
    忘れていた内容も多くじっくり楽しく読めました。

    このシリーズは毎回、関口を心配しながら読んでしまいます。
    前巻でついに行くところまで行ってしまったので
    ハラハラしていたのですが、不安定なところはあるものの
    少しずつ回復してるかな?最後は雪絵さんとお買い物に出かけていたし
    鵺の碑でもまた心配しながら読み進めそうです。
    そして益田の人選が酷すぎる・・・・・。
    榎木津と関口って不安しかない人選でよく行かせたなぁ(笑

    子供が生まれ「死」について言葉で教えるのって本当に難しいことを実感しました。
    自分の子なので飼っていたクワガタが死んだとき直接的に教えましたが、
    私の言葉だけでは理解できなかったと思います。
    やっぱり外的刺激は大事です。
    伯爵は立場上、周りにいる大人が全員尊敬語でお話しします。
    山形さんとか使用人に尋ねたとしても、
    ぼかした言い回しになってしまうのかなと思いました。
    唯一しっかり教えなきゃいけない父親は、研究に没頭しているし。
    知識欲を満たしてくれるのが「文字」だけってかなしいです。
    ただ、もう少し死や家族について
    きちんと理解できる本はあったんじゃないかなぁと思いますが
    儒学に精通した頭の良い高等遊民は、あれこれと難しく考えてしまい
    答え合わせが出来ない環境だからしょうがないのかな。


    横溝正史の登場に関口がテンション上がっていましたが
    読んでいて私も上がりました。
    とても人当たりが良く、優しい穏やかな方だったらしいので
    病んでいる関口に、のんびりと話をする様子がイメージできました。

    後巷説百物語「五位の光」は狂骨の夢と陰摩羅鬼の瑕につながっています。
    又市さんが蒔いた種を京極堂が摘みとって行くのは胸熱です。

    次は邪魅の雫読みます!

  • せつない一冊。

    今作は前作が派手派手超長編だっただけに、地味目というかスタートから盛り上がりには欠けた。

    でも湖畔に佇む洋館「鳥の城」を舞台に婚礼の晩、死す花嫁の謎を解く展開は雰囲気から好み。

    関口さんと大御所作家とのシーンは書楼弔堂っぽくて好き。
    榎木津さんは叫んでばかりながらもやっぱり癒し。

    5人目の花嫁の死は阻止できるのか…犯人は薄々わかってしまうけれど、京極堂の憑物落としが一気にしんみり、せつなさを運ぶ。

    取り巻く世界、普通か否かのその違いの要因に胸打たれ、ミステリとしてはシンプルながらも忘れられない巻。

  • 途中で展開が読めてきたものの、畳み掛ける最後が切なすぎる。関口は相変わらず弱すぎる。

  • 何て救いのない、悲しい事件なんだろう。
    読み終わってすぐだからか未だにやるせない気持ちが凄い。

    この話に悪人なんて誰もいない。
    そりゃ多少はそういう部分がある人もいるのだろうけれど、でも根っからの悪人とか凶悪な殺人者なんてものはどこにもいない。
    それなのに繰り返し起きる事件。
    「誰も嘘を言ってない」ことがこんな悲しい結末を引き起こすなんて読み始めた時は想像がつかなかった。

    いや、確かにあったんです、話しが進んでいくにつれ「ん?何か変じゃないこれ???」と思う箇所はちらほらあったんです。
    でもまさか真相が明かされた時にこんな気持ちになってしまうなんて……。
    自分の中の常識とか先入観とか、そういうものが揺らぐ感覚が凄かった。
    これここまで大きくなくても生きていればみんな何かしら経験があることだと思うから余計にこう、くるものがある。

    京極堂の語りを読みながら「もうやめてあげようよ」と思ったのはこれが初めてだったなぁ。
    もういいじゃん、呪いとか祟りとかでいいじゃんって。
    京極堂は絶対にそれを許してはくれないんだけど、でも願わずにはいられなかった。
    せめて、せめてあの人が帰ってきた時に本当の家族というものを、世界というものを知れるようにしてあげて欲しいな、時間がかかってもあの人達には待っていてあげて欲しいなと思う。

    それにしても最後の最後、エピローグのような場面で木場修がいうあのセリフはたまたまなのか狙っているのか……。
    彼も忘れられないのかなぁ、やっぱ忘れられないんだろうなぁ。

  • 長い!流石に長い。同じことを何回も繰り返すし、自己否定を繰り返す関口の内心に流石に途中でキツくなる。内面世界を丁寧に構築することが今回の真相にとって必要不可欠というのは分かるがそれでもしんどかった。
    それでもというかだからこそ京極堂の明晰な論理と語りが際立つ。ここまで人間の思考の方向性を綺麗に書き分けられるのはすごい。

  • 今回の特徴は「じらす」こと。作中で経過する時間もとても短い。
    前作は凄い色々なことが起こっているが核がつかめなくて全貌が見えない、という話だったが、今回は対照的にとてもすっきりしたストーリーラインがある。
    前作が取り敢えずの総まとめだとすれば、今作は新章スタート、姑獲鳥の夏Part2的でもあるし、作中でも姑獲鳥についての論考が改めて開示されている。謎も「そのことに気づけば」的なものでその辺でも姑獲鳥を意識させられたり。

    本筋とは関係ないが、怪異と鳥の関係に関する部分を読みながら、2023年の宮崎駿作品が何故「遣い」に鷺を選んだのかなど考えたりもした。

  • 由良伯爵の、死の認識が一般とは違うがゆえの悲劇。
    京極堂が話した、林羅山の功績(儒教と仏教の融合?)はなかなか興味深かった。
    関口くんも榎木津も京極堂も、いつもどおりで嬉しい。

  • これは犯人(犯人かなあ)とかトリック(トリックでもないか…)とかを割と序盤に「こういうことだよね?」って薄々はっきりわかりながら、憑き物落としをどきどきしながら見守る読み方でいいんですよね?
    あまりにもそのまんまやんけ!な流れだったから逆に不安になってしまったけど、ものすごく楽しく読めた。
    「そうはならんやろ」とも思ったけど、「なっとるやろがい!」ってものすごい説得力で押し切られたのも気持ち良かったのでよし。
    出版当時に読んだらもっと新鮮な気持ちで「そうなの!?」ってびっくりできたのかな。
    何しろ読みやすくて楽しくて情景が目に浮かぶし、出てくる人もみんな魅力的で読んでいて心が弾みました。目よりも本を持つ腕が疲れた。読書には体力が必要だ。

    あ!木田元さんの解説がとっても良かったです。
    あと、最初の方に出てくる超有名作家さんが素敵すぎて好きになっちゃうもうなった。

  • 百鬼夜行シリーズで一番好きな作品。この作品特有の静かな恐怖を感じたくて読み返してしまう。

  • あの夏こと姑獲鳥の夏をパワーアップしたようなお話でした。悲しい悲しい事件です。薫子、生きていてほしかったです。。。あらすじだけ知ってしまうとバカミスですがさすが京極夏彦、深く納得してしまいます。
    とはいえ儒教の講釈のところはしんどかったです。

  • 前作『塗仏の宴』、前々作『絡新婦の理』と比べ、静かな作品。ストーリーの牽引役が関口と、刑事を引退した伊庭ということからも全体的に静の作品。

  • 913-K
    文庫

  • 伯爵に嫁いだ花嫁が嫁いだ翌朝に殺されてしまう事件が4回続いて全ての事件は犯人わからず迷宮入り今回5回目の婚礼を行おうとしてる伯爵が助けを求めたのは私も大好き名探偵榎木津礼二郎!

    奇跡的な偶然が重なり合わないと4回連続で犯人への手がかり無しとかありえへんはずやのに…犯人は誰?5回目の犯行は防げるの!?というか京極堂さんはいつ出てくるの??って読み進めてたら1200ページくらいペロリと読めてしまいました!!

    百鬼夜行シリーズはレンガ本揃いで長編やのに毎回面白すぎて一気読みしてしまう!!すごいページ数を過ごしてるからなんかでてくるキャラクターにもう知り合いのおっちゃんくらいの親しみを覚えてる。

  • 「死」という概念を間違っている男の犯す殺人。「過失致死」になったという結末が面白い。謎解きとしては単純ですぐ分かる。

  • 【2022年61冊目】
    1回読んだら忘れない結末、それがこの話です。再読でしたが、細部は忘れていたので、憑き物を落とした先のことを思いながら読むと、像を結んでいなかった事象を理解できてしまったりして、うわわと思ったり。

    普通、当たり前、常識を大きく歪められること必死です。

  • ★3.8 2022.09.13

    薫子さんも伯爵も良い人たち。
    どうしてこんな目に会わなければならないのか。
    関口じゃなくても神仏を恨みたくなる。
    存在や死などの哲学的なことは分からないが、面白かった。
    ただ、結構早い段階で犯人の目星とそのカラクリが判ってしまったので評価は少し下げた。


    ↓↓↓内容↓↓↓
    「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼二郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允(こういん)とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第8弾。

  • ちゃんと覚えてない

  • ミステリーではあるものの、犯人あてやトリックが中心ではなく、なぜ殺したのかという動機が中心になっており、その部分が京極さんらしく伝奇的に説明されています。ホラーは苦手ですが、鳥の剥製が出た時点で悪い予感はしており、予想していたので、あまり怖くなかったです。林羅山と排仏主義の話とか興味深かったです。関口君のネガティブキャラも面白かった。レギュラー登場人物が個性的で面白かったので、他のシリーズも読みたいと思いました。

  • 百鬼夜行シリーズらしく事件前の話が長い長い。そこが面白い。ミステリーとしては、今までで一番呆気ない完結だったと思う。姑獲鳥の夏を彷彿とさせる。
    しかし、叙述トリックとしてはやはりあれだけ「答え」をばら撒いておきながら、やっぱり言われるまで気付けなかった。凄い。
    その「答え」である死についてはトリックの範疇をはみ出している。自分の生活する上での常識が、読んでいる瞬間だけは揺さぶられるような感覚になるから百鬼夜行シリーズは好き。

  • 好きだな~。伊庭さんかっこよくて何度も読んじゃうな。ハクセイの鳥たちを想像しながら読むとたのしい。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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