アフターダーク (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 12389
レビュー : 1081
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062755191

感想・レビュー・書評

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  • 日付けが変わる、そのほんの少し前――ある視点の集団が、デニーズのエリを、寝室で眠り続けるマリを捉える。決して物語に介入することの無い視点で綴られる、真夜中の物語。きっと、何かが、どこかで、動き出そうとしている。

    古い春樹を読んできたので少し読み進めて「なんじゃこらー!」な文体にびっくり。時制もほぼ現在形だし、淡々としまくってるし。とにかく今までとは全然違った書き方をしていて超斬新でした。春樹にしてはちょっとチャライ書き方もしてるなーっていうのも思ったけど、現代舞台だからか…最近ずっと80年代くらいが舞台の読んでたからあはは…
    視点はあくまでも視点としてあるだけで、全然介入してこない。ただ物事が淡々と進むだけで、つまんないって感じる人もいるだろうけど私はこういう実験的な文体好きなので特にそうは感じなかったです。劇的な何かが起こるわけじゃないし、あるいは不思議なことが起こっていてもただ視点は客観的に説明に徹するだけで、何も出来ない。読者に象徴や記号を与え続けている文章のような気もします。
    ただ、何かが起こるわけではないけど、物語が朝が訪れるところで終わるので、もしかしたら「何かが起こる予兆の物語」なのかもなあ、という感じ。マリとエリの距離が縮まるといいなと思うし、マリと高橋にも何か進展があったらいいと思う。そしてそれはもしかしたらもう始まっているのかもしれないな、なんかそんな感じです。個人的には白川がどうなるのか……ケイタイ怖すぎです。

  • 深夜の都会で不穏に流れる淀みのような中にあって、高橋の平気さが明るい。

    ゆっくり歩き、たくさん水を飲む。

  • ショートショートとしての落ちを期待している読者にとっては、物足りない作品だと感じるだろう。私自身も落ちのないこの作品を、一瞬駄作なのではと思ってしまったが、一夜の内に繰り広げられる様々な人間の生活のとある一辺を切り出している形の作品なので、始まりも、終わりもあいまいなこの作品は、この終わり方が一番なのではないだろうかと読み終わった後に感じた。どの登場人物の物語も完結していないために、ある意味読者側でイメージを広げる事が出来るし、カメラ的な視点として登場した我々としても、全てを見届けるのではなく、一部だけを垣間見る事が当たり前なのかと思った。いずれにせよ、村上春樹らしい空気感が出ている作品の一つだと思った。

  • 夜中の時間の流れから朝になる様子がとてもリアルだった。

  • 全体的な印象としては「簡素」。
    ハルキ節は影を潜め、無駄なものを削ぎ落とし、小さく細かく区切って創り上げたストーリーが形成されていた。

    舞台は深夜のファミレス。ここで読書をしているマリと店に入ってきた高橋との会話から物語が始まる。
    深夜0時から早朝6時過ぎまでの、様々な人々のある意味でいつも通りの生活が描かれている。
    マリにはマリの価値観があり、姉のユリにもそれは言える。高橋と白川はその点に於いて正反対の価値観や基準を持ちその行動規範からもそれは明らか。

    彼らを比較することで本書の解説をしている文章を発見したので、よかったら是非読んでみてほしい。

    http://zoukichi.exblog.jp/1071883/
    http://zoukichi.exblog.jp/1088769/

    この人の考察が村上春樹の主張と同一であるかは分からないが、非常に興味深い考え方をする人ではある。
    もうね、この人の考察を読んだ後で自分自身の考えをまとめ上げようという気が失せてしまったんすよ。
    多分勝ち目は無いなと。


    まあでもせっかくだから簡単に本書について触れることにする。

    世間的には名作「海辺のカフカ」の次に発売されたことで、大きな期待を裏切ったとして軽く批判されたりもした。
    そんな実状だったので、私もほとんど期待せずに購入した。しかし、個人的には本書は村上春樹の思考や思想、観念などを凝縮して創り上げた作品であり、かなり完成度の高いものであると感じた。村上作品の特徴でもある機知に富んだ比喩表現を極力省き、得意とする一人称主語ではなく敢えて多人称で綴られている。(むしろともすれば神の視点から語られていると受け取ることも可能)

    ここで村上春樹はシンプルに彼なりの問いかけを掲示してきたのだ。文学的価値という賞賛に背を向けても書き上げたかったのが「アフターダーク」だったのだろう。今日本人が、いや世界中の人々が抱えているであろう閉塞感を捉え、希望という火を灯すための作品であるとさえ思うんだ。これは大袈裟ではなくね。

    高橋がマリに言ったセリフがある。

    「ねえ、僕らの人生は、明るいか暗いかだけで単純に分けられているわけじゃないんだ。そのあいだには陰影という中間地帯がある。その陰影の段階を認識し、理解するのが、健全な知性だ。そして健全な知性を獲得するには、それなりの時間と労力が必要とされる。」

    このセリフがとても好きだ。手離しで素晴らしいと言うべきセリフ。簡単に人間の存在を画一することはできないんだ。陰影を排除せずに見守ることができる社会こそを人々は真に求めるべきなんだ。

    前述した通り私は「アフターダーク」という小説は「ノルウェイの森」や「海辺のカフカ」に勝るとも劣らない作品であると感じている。
    以前村上氏を毛嫌いしていた自分に教えてあげたい。
    「村上春樹はスゴイぞ」とね。

    話は変わるんだけど、本書「アフターダーク」と伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」がとても似ていると思ったんだ。物語の構成が近似しているのはもちろんのこと、リズムだとかテンポだとかそういうのが。でも、伊坂さんは今まで一度も村上春樹について語ったことがない。影響を受けた作家にも挙げられていない。
    そうなると、年代の異なる二人の描く世界観が似ているのは、彼ら自身の持って生まれたパーソナリティに共通部分が多いと考えるのが自然なんだろうな。

    何にせよ「村上春樹」と「伊坂幸太郎」はスゴイんだ。彼らとはこれからも絶対不可侵である活字で繋がっていたい。

  • 20100909
     初めて読んだのは高校生のときだったかな? 村上春樹の文体が(今でもだが)あまり好みでなく、気取ったようにジャズやら洋画のタイトルが出てくるのが何とも鼻について仕方がなかった(関係ないが、この辺だけ見ると伊坂氏も村上春樹の影響を受けているように思われる。「アヒルと鴨のコインロッカー」の本屋襲撃も村上の「パン屋再襲撃」へのオマージュというか、好きゆえのパロディみたいなものなんじゃないか?笑)

     しかし読み直してみると、(その時の精神状態も多分に影響しているかもしれないが)前回読んだときにはてんでばらばらの行動をとり、何の脈絡もない群像劇の一員と感じた人物たちが、実はみな同じような孤独のかたちをとっていたことに気づく。眠り続ける美しい姉、彼女から逃れて深夜のファミレスで時間をつぶす妹、殴られた娼婦、殴った男、ラブホテルで淡々と業務をこなす女たち。それぞれの孤独がわずかにずれつつも重なり合い、厚みを増したところが焦点となり、夜を焦がす。街の鳥瞰図に何か狂おしいほど熱いものが放たれている。叫びのような。それを受けて、物語は少しずつ発火してゆく。そして小さな変化と共に朝が来る。これを読んで何も感じなかったとき、私はただ夜に眠り朝には起きる人間だったのかもしれない。

  • 本当に、ムラパルは毎回テーマが同じである。

    カメラ視点の読ませ方は、
    まるでテレビや映画を見ているような気分を演出する。
    きっとノイズストームのテレビが登場するのも
    それを意識しているんだろう。あてずっぽうだが。
    とりわけいつものムラパルの文章に入れ込んでいるわけでもないので、
    実験的試みは楽しむことができた。

    と書いているうちに、星4ツに昇格。

    小道具が、小気味いいくらいにムラパルでもあった。

  • 村上春樹の中でも特に大好きな中編小説。
    中毒になるくらい、何度も何度も繰り返して読んだ作品。

    難しい批評・意見は他の方に任せるが、
    (そんなもの書けやしない)
    この小説を読んで始終思ったのは、
    「何故 村上春樹は、現代の若者の心情をここまでリアルに描けるのか」
    と、いうこと。

    もう既に中年以上の層にいる村上春樹。
    しかし、その作品に出てくる登場人物達の気持ち・行動は実にリアルだ。

    私はたまに、こう聞きたくなる時がある。
    「春樹さんなら分かってくれますよね?」、と。

  • 静謐と表すのが適した小説だと感じました。ラストはもっと盛り上がるのかな?!と思っていましたが、しっとりした終わり方でした。しかし、私はあの空気感は好きですし、その静かさが心地よいと感じたので読んでよかったです。全体的に話が綺麗なのも高ポイントです。
    村上春樹のアフターダークは、とても売れているということを聞いて読んだのですが(こんな本の選び方は感心されないかもしれません)、この小説は万人受けするとは考えにくいという印象を受けました。事実、私はおもしろかったと思いましたが、友達は平坦で退屈・・・と言っていました。でも、あのかんじを出せるのは村上春樹しかいない!!というのは二人とも思いました。是非、みなさんにも読んでもらいたいです。

  • 村上春樹の小説にしては珍しく三人称を主体に用いた作品。彼の作品はどうも一人称が多いせいか、私小説的なイメージが強いのだが、この小説で彼はいわゆる『普通の三人称の小説』も書ける事も示したと言えそうだ。

    彼の作品は読みやすいことに定評があるが、それは普通の彼の作品とは異なる書き方を持って書かれたこの小説にも当てはまる。とは言え、そうかと言って闇雲に字面を追っていくだけでは、無意識のうちにパンチを食らうのも彼の作品の特徴だ。ゆえになかなか油断して読めない。

    彼の小説は『起承転結』の『転』のあたりで終わる話が多いが、ここにおいてもこの小説は例外ではない。それ以後は読者の想像に任せると言うことなのだろうか。どこか釈然としない『謎』を残したまま終わると言うのは彼のお得意のパターンだ。

    この『謎』について自発的に考えるのが好きな人は、そのまま彼の小説のファンになるだろうし、そうではない、謎は全て小説の中で鮮明に明かされなければ気がすまないと言うような人は(僕もどちらかと言えばそちらだが)、例えば三島由紀夫みたいな小説が好きになるのだろう。これは好みの問題であるから、どちらが優れているとか言う問題ではない。

    彼の主張は様々な登場人物の台詞に散見される。なんとなくだけど、白川を通じて彼は普通のサラリーマンの生き方を軽く否定してみたように思える。なんとなくだけど。
    個人的にはカオルさんみたいな人がいい味出してると思うんだけど、後半あんまり出てこなかったので少し残念。

    読みやすいので☆4つ。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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