プラネタリウムのふたご (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062755252

感想・レビュー・書評

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  • 「晴れ、時々クラゲを呼ぶ」で小崎ちゃんが激薦めしてたので。
    山に囲まれた街にあるブラネタリウムを独りでやっていた泣き男さんが、ある日ブラネタリウムに捨てられていた双子に彗星の名前からとったテンペルとタットルという名前を付けた。二人は成長し、ブラネタリウムを手伝いながら、郵便配達をしていたが、ある時街にやってきた手品師の興業にテンペルはついて行ってしまう。双子は違った運命をたどっていく。
    騙される才覚が人にないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。
    タットルは熊狩りで村人たちを騙し、テンペルは手品師として人々を騙す。事故で命を落としたテンペルの代わりにタットルが一世一代の騙しをすることで、一人の少年が救われる。
    長かったー。

  • プラネタリウムもサーカスも「現実と見紛うような虚構性」により魅力を放つが、それらはあくまでも「虚構」であることが暗黙のうちに了承されていなければならない。
    「虚構」は他者と共有され「物語」化された時に命が吹き込まれる。一方で「物語」を共有しない者にとっては何の意味も持たない。
    タットル扮する熊は町の猟師以外が銃を向けたら恐らく弾が当たっていたし、テンペルの悲劇は「物語」を共有しない者によって誘発される。
    「虚構」と「現実」を見誤ってはいけない。
    500Pほどありなかなかのボリュームでゆっくりと読んだが、興味深く読むことができる内容だった。
    次は「麦ふみクーツェ」を読みたい。

  • 登場人物や動物、だれもに物語があってそのどれもが愛おしい。お伽噺のような語り口の中に大切なことがギュッと詰まっている。くたびれた時に読むと心が洗われるようなお話。

  • とある片田舎の工場のそばにあるプラネタリウムの座席に、双子の赤ちゃんが捨てられていた。双子はプラネタリウムを経営する"泣き男"に、タットルとテンペル名付けられ、いたずら好きの青年に育つ。ある日、村にやってきた手品を見せる一団に出会い、ふとしたきっかけで双子の人生は引き裂かれ、それぞれの道を歩み始める。

    大河ドラマ的にこってりとしたストーリーに、自問自答するようなストーリーテリングで、ぐいぐいと双子の人生の紆余曲折を描いていく。父親代わりの泣き男、双子のいたずらをたしなめる工場長や盲目の老女、テンペルを世話するテオ団長など、双子の成長にともなって人生に介入して導いていく。

    最近気がついたことであるが、主人公の性格を難しくしてしまうことで、ストーリーが"詰まる"のであり、本作は銀髪でいたずら好きのの双子という以外は、素直であまり複雑でないキャラクター設定になっているのは好感を持てた。

    一方で、テオ団長以外は、性格を表すような抽象的な名前になっており、このあたりは宮沢賢治あたりの流れを汲んでいるのであろうと思う。時々見かけるが、やはり読み始めに"泣き男は"とスタートされると、名前を探してしまう。

    こってり濃厚な話で、厚みもそこそこある。ワタシはタイトルで誤解して、軽く読み飛ばしてやろうと手には取ったが、なかなか読み進まなくて時間はかかってしまった。サラリと読める話ではないが、時間の有るときに一度手にとってみてはどうだろうか。

  • どこかの国の昔話のような、おとぎ話のような。

    いろんな不思議や疑問も多かったけど『だまされる才覚がないと、かっさかさの人生』なんだって。
    たしかにこの本は、上手にだまされて人生を楽しんでる人たちが描かれてるのかな。


    テンペルとタットル、星の名前をつけられたふたごが、だましてだまされる。プラネタリウム(星がない天井をみせてる)が好きな村の人たちも、サーカスや手品(だましのたかまり)を楽しみにする人たちも、だまされる才覚があるんだね。

    手品師テンペルの最後のうそと、そのうそを守ろうとするタットルのうそが優しい。
    人を傷付けないための優しいうそには、だまされたほうがいい。

    私も上手にだまされる人生をあゆもう。
    まずはプラネタリウム行きたいな。

  • 読み始めたのは数ヶ月前だけど笑、あいだにいろいろ挟みつつ読み終えましたー

    栓ぬきが登場してからは早かったなぁ

    一冊を通して、一貫して、複数の視点の複数の出来事から"だまされる才覚"について描かれてる

    (手品をみて、しっかり騙されて楽しめる?とか、そういうこと。フィクションを楽しむこと。それをあなたの真実にできるかということ)

    たしかになぁと思います
    そしてわたしはその才覚ありすぎるなぁと笑
    おかげさまで楽しすぎるぜー!

    あと泣き男が言った「どんなにつらい、悲しいはなしのなかにも、光の粒が、救いのかけらが、ほんのわずかにせよ含まれているものなんだよ。それをけして見のがしちゃならない。」ってゆう言葉を忘れないでいたいと

    • すぴかさん

      はじめまして。

      辻村深月さんの「名前探しの放課後」
      のレビューをだーっと拝見していたところ
      "だまされる才能"の言葉にぶち当...

      はじめまして。

      辻村深月さんの「名前探しの放課後」
      のレビューをだーっと拝見していたところ
      "だまされる才能"の言葉にぶち当たり
      この方プラネタリウム読んでらっしゃる!!
      と、わきゃーっと興奮してしまいました。

      泣き男のその言葉、素敵ですよね!
      プラネタリウムのふたごに出てくる人たちの言葉はどれもすごいキラキラしていて全部大切にしたいくらいです。


      辻村深月さんの作品は"だまされる才能"があるととっても楽しめますよね(*・∨・*)

      私にも素晴らしい"だまされる才能"があります。(鈍感…とは言わない。)

      プラネタリウムのふたごで教わって、その才能を良い意味でフル活用しております(笑)



      登録したばかりでコメントの使い方があっているかよくわからないのですが、こちらに残させて頂きます。


      長文失礼しました。

      2012/07/30
    • hrnr0さん
      すぴかさんコメントありがとうございますー*
      お返事すごく遅くなりましたすみません、いかんせんブクログ使いこなせていなくて……!
      でもこうして...
      すぴかさんコメントありがとうございますー*
      お返事すごく遅くなりましたすみません、いかんせんブクログ使いこなせていなくて……!
      でもこうして本の話ができるのとても嬉しいです!ブクログさん万歳!

      “だまされる才覚”って、印象的だし、すごい汎用性のある言葉ですよね!あらゆる場面で実感するというか……便利に使わせてもらってます笑
      はい!素敵な言葉がたくさんありましたね*

      辻村作品、ラストの畳み掛けるような種明かしは、だまされる才覚本領発揮で楽しいですよねー+*'・゜゚

      お話できて嬉しかったです、
      ありがとうございました!*
      2012/10/17
  • 図書館で借りたのでとりあえず読破しましたが、もっとじっくり読みたかった。

  • ごめんなさい。終始話の内容が掴めなかった、、

    映像化すると面白いのだろうか。

    途中「い」の抜けたところがあったけどあれはなんだろう。

  • 昔話のようなファンタジーのような世界で、銀髪の双子の成長を見守るお話。
    未熟で、破天荒な双子の行動に逐一ハラハラさせられ、一体どうなるんだろうと心配でページをめくらされました。
    読後は良い話だったと思う反面、もちろん展開が都合良すぎる点が多いです。でもあくまで童話だから、"騙されないと世界はかさっかさになってしまう"からきっと騙された方がいいんだなーと作者にしてやられたような気持ちになりました。

  • プラネタリウムのようにゆっくりと回る世界で、優しい嘘、ときに必要な嘘と、それに騙されてやる才覚のある人達の優しいお話だと思った。
    人の名前がふたご以外出てこないのも、不思議な感じがして面白かった。

  • プラネタリウムに置いて行かれたふたご。テンペルタットル彗星の解説中に泣いたことから、テンペルとタットルというなまえで呼ばれるようになる。銀色の髪をした美しいふたご。
    紙製品の工場が動き続ける村では、もやや煙で星が見えない。
    ふたごは解説員「泣き男」のもとでプラネタリウムや星、神話に親しみながら育つ。
    あるとき、魔術師テオ一座が村にやってきたことからふたごは離れ離れになる。タットルは郵便配達をしながら星を語り、テンペルは手品師へと。

    「麦ふみクーツェ」以来の、いしいしんじ作品でした。
    クーツェを読んだのも思い出せないくらい昔のことで、いしい作品をほぼ知らない状態での読書でした。
    優しい文章は気持ちを暖かくさせる。でもその優しさは、シリアスな展開では不思議な感覚にさせました。
    登場人物に名前がない(ふたごとテオを除いて)、時代や場所の背景がはっきりと描かれていない分、私の想像が世界を作っていくので楽しかった。


    作品の中には、ふたごも村の人も、一座の人も、人を「だます」シーンがある。「だます」というとちょっと聞こえが悪いけれど、悪い意味ではなく、誰かを思っての行動だった。

    村に新しい工場ができることになり、それまで村や人々にとって畏怖や畏敬の対象だった北の山が崩されることに。何十年も熊が出ていない山で、毎年狩りの時期に行う儀式。なんのためだったのだろう、と肩を落とす狩人。しかし北の山に熊が出たことによって、再び村は盛り上がる。
    でも実はその熊、タットルだった。
    山を開かせないようにという思いでした行動なのだと思う。(撃たれないか撃たれないかとハラハラ読んでた。)
    しかし村の人たちは、熊はタットルが正体だと知っていた。知ったうえで作戦をねり、山へとのぼっていた。
    これはお互いにだましあっていたってことなんだろう。
    でもそれでいい、と村人は思っていたのだろう。
    毎年毎年、儀式的に行ってきた自分たちの行為、村を思ってのタットルの行動。嘘とか、本当とか、そんなことではなくて、誰かを喜ばせたいという気持ちがそうさせたんだろう。

    そしてお話の最後には、みんなが大きな「嘘」をつくことになる。それでも一人の男の子を救った。
    喜ばせたい、幸せになってほしいという気持ちが生んだことなのだろう。

    個人的には、死と星が結びつかなかったことに不思議な安心を感じた。(これは私の個人的な死生観?)
    氷山の氷から、ゆっくり解けだして水になる。水になったらすべての海とつながりをもち、雲になってどこかに降りそそぐ。
    そうやってもっと広い世界へとつながりを持つのかもしれない。

    思えば、プラネタリウムの中でも人をだますことになるのかなぁ、と。
    天井に広がっているのはにせものの空で、にせものの星。時間も操作できるので、にせものの時間の中にいる。そのなかで、本物とおなじように見せる。
    星座に描かれた神話は、実は出典がごちゃごちゃになっていたりして、生まれてから長い年月と人の営みを経て変化してきたもの。だからはっきりとした正解がない。でもそれを、きちんとお話をする。
    小さい地球上ではわからない天体の動きや、その科学的なものを、空間や時間を操作して(にせものの世界のなかで)お話をする。
    でもそれは、誰かを喜ばせることのできる。ちょっとした手品なのだ、と教えてもらったような気がした。

  • ある村のプラネタリウムで拾われた双子のお話。

    これはファンタジーなのだろうか、それともそうではないのか、と不思議に思う程、摩訶不思議なことだらけなものだったと思います。
    泣き男が語る星の話は、普段はあまり興味のない分野なのですが、ひとつひとつ星には物語があるのだなと新たな発見が出来たような気がします。また神話についてもっと知りたいとも思いました。
    ふたごだからといって双子の括りにせず、分けてよく書かれているのでとても面白かったです。

  • やさしい気持ちになる物語。

  • 大人の童話。穏やかで透明感のある読み心地のいい文章。とても好きな本になりました。

  • 泣き男の台詞がどれも深かった。こんな風に丁寧に適切な距離で子どもと接していきたいと思う。そしていつかこの話を読んであげられたらいいな。

  • まるで童話のように優しい、大人のための物語。頭の中で想像を巡らす時には絵本のような絵柄が似合う、そういう小説です。

    登場人物のほとんどは名前が明かされていないのですが、代わりの呼び名がとても良いです。
    泣き男、妹、ベテラン配達夫、栓ぬき…
    「かささぎ親方」が個人的にはツボ。

    物語の中ではいくつか悲しい出来事が起こります。
    でもそのたびに、なにかとても大切なことを教えてもらったような気がして、
    このお話を忘れないようにしよう。そしてまた絶対に読み返そう。という気持ちになりました。

  • 『ひょっとしたら、より多くだまされるほど、ひとってしあわせなんじゃないんだろうか』

    そうかもしれない

  • 上映中のプラネタリウムに捨てられた双子、周りの温かい人々に支えられながら自分の役割を見つけていく物語。

    自分の役割、仕事を見つけたら、それだけは全力で取り組む、諦めない。
    そんな素敵な役割、仕事を見つけた人々がたくさん出てくる、いしいさんらしい柔らかく優しい作品です。

  • いしいさんぽい。ひらがなのたどたどしさ、きれいさ、そんな感じだった。星がたくさん出てくる。

  • いしいしんじさんの作品は初めて読みました。前半から中盤にかけては、大人のための童話、もしくはファンタジーなのかなと思うタッチで優しさと暖かさに包まれているのですが、終盤に向けて一気に現実に引き戻されて、そのままラストへ。このラストは予想してなかったです。もっと暖かいお話のまま終わるのかと…。山間にあるプラネタリウムに捨てられたテンペルとタットルという双子と村の人や手品師の一団との交流を通して、彼らが成長する姿が描かれます。ページ数が多いので途中だれる部分もありましたが、冬の時期に読むことをおすすめします。

著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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