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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784062755399
作品紹介・あらすじ
芥川賞作家が描き出す 一夜の「性」と「生」
清冽で美しい言葉の流れ――
小説家と女性誌編集者が過ごす、京都の一夜を繊細な心理主義的方法で描き、現代の「性」を見つめる「高瀬川」。亡くした実母の面影を慕う少年と不倫を続ける女性の人生が並列して進行し、やがて1つに交錯する「氷塊」。記憶と現実の世界の間(あわい)をたゆたう「清水」など、斬新で、美しい技法を駆使した短編4作。
みんなの感想まとめ
生と性をテーマにした物語が、繊細な心理描写と実験的な技法で展開される作品です。男女の一夜を描く「高瀬川」では、官能的な瞬間が過去の出来事によって変化し、読者に深い印象を残します。また、「追憶」では言葉...
感想・レビュー・書評
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読んでみて感じたのが、実験的な小説だなという
印象でした。
表題作の「高瀬川」は、ある男女の一夜を舞台に
繰り広げられる生と性の物語です。
物語の中で森鴎外の「高瀬川」が出てくるのですが、本作との共通点が見られるのか分からないが
気になりました。
「追憶」は言葉がバラバラに散りばめられいて、最初は意味が分からない印象だったが、ページを進むにつれて、文章がまとまっていくので、最後の
ページでスッキリしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
清水
人の生死の一部始終は、清水の水滴が落ちるその一瞬なのかもしれない。滴り落ちる水滴の音は希死念慮だったのか…。
高瀬川
官能的な時間は、その後の出来事や明かされる過去によって、こうも印象が変わってしまうのか、と感じた。一度読んで感じた気持ちはもう戻ってこないと思い知らされます。
追憶
「複雑なことを複雑に考えている人にとっての追憶とはこうなのか?」と思う新たな読者体験。
伝えたい内容の難解さを前に、言葉の定義を自分は果たしてしっかりと理解できているだろうかと自問させられた。
氷塊
氷は2人にとって何を意味していたのだろう。溶けることは…
描かれなかった物語の背景ー氷山の下では、氷に触れ続けてしまった2人はこの短編の構造のように重なり合ってしまっていたのか… -
「清水」幻想的な風景の中に現実の通り名が現れる。下鴨本通から北大路通、北大路橋の下を流れるのは加茂川か。半木の道を歩いて北山大橋、北山通を西へ、堀川通の手前(油小路か)を南下、紫竹通を戻って行く。実際にはほとんど歩いたことはないのだが、現実として目に浮かぶ。
「高瀬川」そう言えば木屋町通を団栗橋の方へ歩いて行くと高瀬川沿いに古いラブホテルがあった。そこでのお話だろうか。そこではシャワールームが外から見えるような趣向が凝らされていたのか。これは「葬送」を書き終わったころの出来事だろうか。こういうのも経験として書いておきたかったということか。最初は平野啓一郎はセックス描写まで理屈っぽいななどと思いながら読んだ。しかし後半はリアリティがあってなかなか良かった。陰毛が口の中でまとわりつくとか、コンドームの包みが身体の下になってしまうとか、細かい描写ににんまりとしてしまう。なぜ下着を最後まで脱げなかったのか、その理由付けはどこかの誰かの実話だろうか。なかなか真実味があって良い。2枚のパンツの入ったペットボトルは結局大阪湾までたどり着けたのだろうか。それとも途中で誰かが回収し、その意味を深く考えさせられることになったのだろうか。そうそう、ここでも臭いへの拘りが見られた。
「追憶」太陽、僕、裂口、罅割れた、倦怠、眩暈、汚穢、沈黙、蘇生、抉じ開けて、祝福・・・最後の2ページにすべて集約されているわけでもない、意味もわからず、ただ言葉だけが残っている。
「氷塊」うーん、ここで終わらせてしまうのか。父親は亡くなった妻によく似た女性に好意を持ったということか。そしてどうしてまた子どもの学校の近くの喫茶店を待ち合わせ場所に選んだのか。子どもとも出会わせるため意図的にしたことなのか。無意識だったとしても。さて、とにかく読み方に混乱をきたしてしまった。どこまで続けて同じ段を読むのか。自由に選ぶことができるのがかえって混乱することになる。1章ごとに並行して話が進むということはたびたびあるのだが。まあ面白い体験であった。ピカソの青の時代の「人生」検索するとすぐに出てきた。この絵が先にあってこの作品が書かれたのか。それともこの作品に合う絵を見つけたということか。ピカソにもこういう絵を描く時代かあったのだ。ところで、自動改札になった今では、期限切れの定期券は決して使えなくなってしまった。僕にも昔、ドキドキしながら改札を通り抜けた経験がある。子どもの頃に神に向かって話しかけるという経験も何度もある。・・・うーん、ちょっと待てよ。この中学生の父親が不倫相手であるとの決め手はどこにも無いのか。単なる勘違いということもあるのか。他の人の感想を読んでいて分からなくなってきた。
著者自身が実験的な短編を書いたというのを先にどこかで読んだような気がする。だからちょっと身構えて読み始めたのだが、衝撃を受けるという程ではなかった。それと「高瀬川」というタイトルからはもっと古風な小説をイメージしてしまっていたので、いきなりラブホテルから始まる描写にエモ言われぬ感情を抱いた。 -
高瀬川、と氷解、が好きでした。
高瀬川は少し官能小説のようでもあるのだけれど、陳腐でなく愛情を感じるまでもないような、表現の仕方で。
でもやっぱり、少し男性目線かなと。
氷解が良かったのは特異な文章構造でときたま2人の人生が交差するところに少しはっとさせられる。
女の人から見た目線、思考、感情と
男の子が考える構想と現実のあい交える妄想と
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芥川賞作家、平野啓一郎氏が描く『現代』。実験的な作風を数多く取り入れたのが特徴です。ラヴホテルで一夜を共にする男女を描いた表題作に、少年と女性の運命が交錯する『氷塊』など4つの物語が収録されています。
芥川賞作家、平野啓一郎氏による短編集です。『ロマンティック三部作』の完結編ともいえる『葬送』を刊行した後にはガラリと作風を変えて、現代が舞台となっている他、『追憶』では活字を音符のように使ったり、『氷塊』では二つの物語が同時に展開し、ある一転で交差するなどの実験的な試みをいくつもされていることが特徴的な一冊です。
それでも印象的なのは表題作である『高瀬川』と最後の収録されている『氷塊』でございました。『高瀬川』は大野という新進作家と、女性ファッション誌の編集者である裕美子とのラヴホテルで過ごす濃密な『一夜』が描きこまれております。二人の『出会い』のきっかけから京都の夜で過ごす瞬間。ジャズの流れる店で交わされる会話やその後のラヴホテルの様子。前作である『葬送』から一転した作風で、コレをリアルタイムで読んだ方は本当にびっくりしたことであろうと察せられます。二人が一夜を過ごし、お互いの下着をつめたペットボトルを川に投げ込む瞬間がとても印象に残っております。
個人的に読んでいて一番面白かったのは最後に収録されている『氷塊』でした。これは前述したとおり、二つの物語が上下で同時に進行する作品となっており、筆者の『意気込み』が伝わってくるようでございました。上の段で展開されるのは母親を失った少年の物語で、彼は図書館に日参しながらある女性のことを目で追い、母親の『影』を追うようになります。その少年の繊細な内面描写は『母を失った』という喪失感を抱えながら、父親の再婚相手にも打ち解けることなく、『本当の母親』を求めるというなんとも切ない展開でした。
対して下の段では東京で文学部の美学科を専攻し、大学院の修士課程まで出た女性が主人公です。彼女は親の反対を押し切って画廊に就職するのですが、仕事に行き詰まりを感じ…。故郷の新美術館の学芸員に親の勧めでなることで帰省するのですが思惑が外れてその計画が凍結され、彼女が配属されたのが県庁の教育委員会文化課美術館新設室という箇所でした。彼女は倦んだ毎日を送り、不倫をするようになります。その待ち合わせに使っていた場所が上段の少年が通っている図書館でした。『不倫』という形で逢瀬を重ねる彼女の中に去来するものを本当に丁寧に描き込んでいて、とても読んでいて複雑な女性の心理というものを楽しむことが出来ました。
そんな二人の運命がところどころで『交錯』する瞬間があり、二人の物語が同時進行で進んでいるということと、最後のほうでそれが交わっていくというラストに平野氏の持つ『技量』というものを存分に感じさせるものでした。本書に収録されている物語は結構前衛的な試みがなされているものもあるのでそういった意味では最初に違和感を感じるかも知れませんが、読み進めていくとやはり面白かったです。 -
28歳くらいの時の作品かと。人生何周してるんですか?
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上手い
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小説の可能性を模索した、短編作品。
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とにかく実験精神に溢れた挑戦的な文学。
最初の掌編は記憶と流水のイメージを重ね合わせる。屁理屈っぽさすらあり読むのが少し苦しいが、ここで語られていることが後の3作のモチーフになるため、よく読むと読後感が変わる。
「高瀬川」は性交のための一夜の営みがクールっぽく描かれるも、何度か挟まれるダサい描写が印象的だ。
「追憶」は最後のページを読んで思わず拍手。なお、文庫と単行本で文字組はかわるの?と思って単行本も見てみたが、流石に同じだった。
「氷塊」は上下段の小説が同時間軸で展開され、終盤に交差する。読み応え抜群。 -
いずれも実験的な試みを含む短編四編を収録しています。
「清水」は、京都の街を歩きながら、自己の意識が刻々その現実感をうしなって不確かな過去へと流れ去っていくことに対する想念をつづった作品です。
表題作「高瀬川」は、小説家の大野と雑誌の編集者である裕美子が身体をかさねる物語です。著者はこれまでにも、現代文学のさまざまな可能性を宣明するような試みをこれまでにもつづけてきており、本作もその一環であるということはいちおう理解できます。大野がラブホテルの汚さに神経質になったり、彼がうっかりひざで裕美子のふとももを踏んでしまったりといったシーンに、多少目をみはることもありましたが、正直なところこの程度の作品であれば神崎京介でも書けるのではないかという感想をいだいてしまいました。
「追憶」は、作品の最後に示される現代詩めいたテクストをズタズタに切り裂いて複数のテクストが錯綜する作品世界をつくりあげた実験的な試みです。
「氷塊」も、自分の本当の母親に出会ったのではないかと考える中学一年生少年と、妻子のある医者と不倫関係にある女性の二人の物語が、並行した二つのテクストとして配置され、それがやがて交錯する帰結をえがいています。ジャック・デリダ『弔鐘』のような思想書での試みなどもありますが、そもそもさまざまな人物の物語をひとつのテクストのうちにえがくことのできる小説でこうした試みをおこなうことに意味があるのか、よくわからないというのが率直な感想です。 -
実験的な試みによる短編が収められた短編集。
ある一夜を切り取って細かな行動描写と
心理描写で男女の心のなかを探った高瀬川は、
セクシャルな内容に目が行きがちだけど
描写の模索が感じられて面白かった。
あとは、氷塊。
2人の物語の交錯が見事だった。 -
「高瀬川」と「氷塊」は面白かった。「氷塊」のつながりは見事。「清水」と「追憶」はよくわからなかったが、全体を通して構成が芸術だと思った。カバー写真も美しい。
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表題作は、作者と思しき若い作家と女性編集者が京都のラブホテルに入ってから朝方そこを出て別れるまでの一部始終を描写したもの、と言ってしまうと簡単ですが、ありそうでなかった小説だと思いました。
ふつうはあえて細かく書かないで済ますというか、書かずに逃げるようなことを淡々と読ませておいて「どうでもいいよ、そんなこと」と思わせないのはさすがだと思います。
「氷塊」も構成が面白かったですが、ラストの氷の場面はタイトルとも相まってちょっと計算高い感じがしてしまいました。 -
平野啓一郎さんが「葬送」後に著した短編集。
当時平野さんは28歳。ご自身の言葉によると
「作家としての挑戦」であり
「男と女の性的な関係に取り組んだ」作品集。
男女の性行為を細かに描いた「高瀬川」
不倫に悩む女性と
実母を求める少年の妄想が交差する「氷解」
の2作のみならず
難解な「清水」と「追憶」にも
確かに、若さが迸るにおいがする。
「高瀬川」には 男女間のズレの
居心地の悪さが見事に描かれている。
セックスという最も密なコミュニケーションを経ても
ラブホテルの作為的で冷笑的な空気がそうさせるのか
二人の距離は濃厚になっていく。
そんな一夜を「ペットボトル」に詰め込み
時間という川に流してしまう男の残酷さ。
「氷解」では 喫茶店のガラスを隔てて
女性と少年が視線を交わす。
その瞬間に勘違いが生まれる。
二人の妄想が膨張し破裂する過程がスリリングだ。
不倫に悩む女性の心情も実にリアルに描かれている。
余談だが、女性が思っているように
「好きと言わないのが不倫」、である。
もしも既婚者が「好き」と言えば
新たな意味と時間が生まれてしまい
同時にそれを収束させる責任も生じる。
既婚者の皆さん、
不用意な発言にはご注意ください。
この作品とは関係ないけど(^.^) -
うーん、難解。
難解難解アンド難解。
ラブホ舞台の話(「高瀬川」)は所々、文字になかなか起こしづらいあのもやもや感をこれでもかと繰り出してきて、唸った。
あと最後の「氷塊」は上段と下段とでそれぞれ別人物視点からのタイムラグなしのストーリーが展開されており、斬新で面白かった。
が、随所に難解っぷりが見え隠れして全体の1/5くらいしか理解できなかった自覚あり。 -
じっくりと腰を据えて読みたい短編集。実験的な要素も高いけれど、その言葉の紡ぐ美しさは、やはり、平野啓一郎。その感想を言葉にするのは、とても難しいけれど、なんだろう…水の滴をたどるような感じでした。
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