- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062755870
作品紹介・あらすじ
無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放りこまれたスタンリー。かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。ある日とうとう決死の脱出。友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」をめざして、穴の向こうへ踏み出した。
感想・レビュー・書評
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読んでよかった。面白かった。とても。
解説で森絵都さんが触れているように、一つ二つでは説明できない、良さを話そうとすればするほど、かえってわかりにくくなる類の本である。
手品を口で説明しても何の面白味もない。見ればわかる。
張り巡らされた伏線、回収されていく過程、でも説明しすぎない、残される謎。平易な言葉で積み重ねられていく文章だが、裏には精緻なプロットがある。だから「読めばわかる」。
ただ…一度読んだだけではすべてに気づけていないだろうと、たった今読了したばかりなのに思わされる。そんな本だった。
テーマや感想も受け手によってだいぶ違うだろう。
個人的には、25(物語のちょうど真ん中だ!)の話が忘れられない。
「なおしてあげるよ」
キャサリンとサムの挿話。
この二人の物語があっただけで、私には価値が何倍にもなった。
残された謎は、なぜメアリ・ルーは置いて行ったのに桃のジャム瓶は下ろして行かなかったのか?
なぜケイトは20年後、たった一人で戻って来たのか。
なぜ発明品の名が〈ザブン〉となったのか。
他にも諸々。
また読み返すとして。今は読めたことに感謝したい。 -
少年スタンリ-は、無実の罪で少年矯正施設(グリーン・レイク・キャンプ)へ送還されきた。ここは、テキサス州でいちばん大きな湖だったが、今は涸れ果てた不毛の地。人格形成の名のもとに、焼ける大地で<穴>を毎日掘ることを強制する、情け容赦のない矯正キャンプの女所長と指導員たち。果たしてその目的とは?・・・不遇の環境のなかで育まれる熱い友情、決死の脱出行までの手に汗握る感動の冒険ファンタジ-小説。 (1998年度全米図書賞・1999年度ニュ-ベリ-賞受賞作)
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あらすじからは予想だにしないストーリー、
まさかの伏線回収系だとは誰も思うまい。
後半の怒涛の伏線回収劇は圧巻、
これは話題作になる理由がわかりますね。
冒険と、落ちこぼれの少年の、大逆転劇。
一読の価値あり。 -
すごく面白いんだけど、どうやって人に薦めたら良いのか分からなくてもどかしい。
伏線回収が凄まじかった。 -
最後まで読むと全ての伏線が回収されてスッキリするが、そこまでがわかりにくいのはなぜだろう?名前が覚えられないからかな。しょっちゅう戻りながら読んだ。
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名作の誉れ高い児童文学です。
地元の図書館に無いという片手落ちが判明しとても遺憾に思います。
それぐらいどこにでも無いとおかしいくらいのポピュラーさなのでとても気になっていました。
解説が森絵都さんで、しかも大絶賛というのは作品のハードル爆上げになってかえって心配になります。
解説で絵都さんも言っていますが、あらすじをポンと解説するには要素が多すぎて説明しにくいです。
途中途中で挟まってくる100年前くらいの挿話がどう絡んでくるのか気になりますが、あえて気にせずどんどん読んでしまった方が良いでしょう。あまり深く考えない方が感銘受けると思います。僕は一度しか読んでいませんが、もう一度読むとまた受け取り方が変わりますねきっと。
単純な胸のすく物語として読むなら凡庸かもしれませんが、遠い過去から現在への連続体としての歴史が、将来どういう風に作用するのかを考えさせるという点で秀逸です。すぽんと伏線が嵌る気持ちよさと、友情冒険成長活劇としての気持ちよさが同居しているので児童文学の名作という評価は間違っていないと思います。
児童文学という括りは不自由だなと思いながらも、YA(ヤングアダルト)と書いてあるからこそ子供が選びやすいという側面もありますよね。いい作品であれば何でも読みたいなと思っているのですが、YAの名作と言われるものって情報入りにくいんです。 -
優れた児童文学は、子ども向けの本ではない。子どもの本であって、かつて子どもだった大人にも楽しめる本だ。
無実の罪を被った少年は、その運命を受け入れる。どんな気持ちだったのだろう。どうするんだろう。どうなっていくのだろう。穴を掘ること、意味がないように思われたこの作業が、どんどん深まっていく展開に引き込まれていく。それでいて、詩的な表現が多く、感嘆の言葉を漏らさずにはいられない。面白いなあ。 -
この本を手にしたきっかけは、外国の評価が高かったからです。
広大な土地での話しとしては、成り立ちますが日本のような狭い国では想像をめぐらすのが困難かもしれません。
という前提から、リアリティとしては受け止められないお話しでした。
しかし、読み進めていくうちに、実際の話しの流れは空想のようだけれども、こういった子供たちが実際に存在し、苦しんでる現状を感じました。
とても、切なくなりました。そして、必ず一方方向の考え方におちいらない大人になろうと思いました。 -
収容施設に送られた子供達は人格形成の為に毎日一日中穴を掘らされます。でも所長の本来の目的はと違和感を感じ始めます。きっかけは、友を絶対的に信じる想いでした。幸福も不幸すら何も感じないことほど哀しいことはありません。体力も精魂も尽き果て死に際になっても、ああ私は幸せだ、直接映らぬものを見上げ笑えるほど、悔いなく人生という穴を掘り続けてる者がどれだけいるだろう。過ちは犯せば正し埋める、そんな当然のことが出来ない世の中で、少年の正直さ、友を庇う強さ、命懸けで掘り出した答えは宝にも変えられないものだと思います。
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海外の小説は登場人物や場所が全てカタカナだから読み進めるのに時間がかかるのですが(私だけ?)、この物語は難しい表現や名前が一切出てきません。なぜこんなにスタンリーは不運なんだ?どうして所長は子供たちに穴を掘らせるんだ?そういう謎が最後にとけてスッキリ。
この物語はスタンリーとスタンリーのお父さんとそのまたお父さんとそのまたお父さん、それぞれの時代をゆがめた一つの約束のはなし。
Zさんの本棚、なんだか魅力的だなあ。評がもう少し多いと参考に…。すいません、余計なことを言って。
Zさんの本棚、なんだか魅力的だなあ。評がもう少し多いと参考に…。すいません、余計なことを言って。
昔読んだ本や長年の積読本、新たに読みたいと思った本を通して見えてくる世界を探っている感じの変則的な本棚で...
昔読んだ本や長年の積読本、新たに読みたいと思った本を通して見えてくる世界を探っている感じの変則的な本棚ですが、褒めてくださり、ありがとうございます。笑
読書感想というか、読書をきっかけにした日記のような使い方をしていて独り言多めです(そして書評は少ない汗) あまり参考にはならない本棚ですが、またよかったら覗いてみてください。