- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062756181
感想・レビュー・書評
-
思春期の中学生の女の子の精神的なゆらぎを描いた本。思春期感がものすごくわかる。もっと幼いときは無条件に自分のことを特別だと思っている。思春期になると自分や家族以外の人々を特別な存在だと憧れる。主人公の父母は不完全でダメな人たち。でも自分は違うんだと葛藤するさまは、親になってから読むか子どもの立場で読むかによってだいぶ印象が変わりそう。時間をおいてまた読みたい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
松葉が幼い頃心慰めてくれた隣家のピアノが譲られた先で出逢った紗英。華やかで自信家の紗英に松葉は惹かれていくのだった。
性格も家庭環境も違うふたりの少女が出逢うことで始まる物語。しかしそこから想定される展開は待っていませんでした。憧れが自己を昇華してくれる訳でもなく、他者を受け容れることで自己が変わっていく訳でもなく。なれ合いでも依存し合うのでもない友情。でも松葉と紗英は出逢うことで、それまでとは違う自分を見付けることになるのです。いや、それまで気付かなかった自分を見付けると言うべきでしょうか。
松葉は自分のことを平凡で良くも悪くも特化していないと思っています。周りに合わせて流される、そんな風にも思っています。しかしそれは松葉に嘘がないからかも知れません。他者に合わせてしまうのは他者への思いを真っ直ぐ見ているため。それは憧れだったり尊敬だったり幻滅だったり諦めだったり。相手への感情に嘘がないので、相手を見る目も容赦ないのかもしれません。それは親や先生への反抗ともなり、友達への想いに繋がる。その松葉の目がこの物語の核となり、松葉の周辺の人々を解体していきます。そして読者は松葉の目を通して、自らの親や友達への思いに気付くのかもしれません。
そんな目をもつ松葉だから、紗英によって変わっていくというよりも自己を確立していくように見えます。だから紗英が物語から逸れて行っても、松葉は自分の道を淡々と進んだのでしょう。そこに本人が気付いていなかったとしても。
何とも面白い読後感がありました。 -
思春期特有の大人に対する嫌悪感、独特な世界や思考、自分に酔っている、あの年齢ならではの綺麗でみずみずしいものが鮮明に書かれています。
幼さから抜け出し、汚れた大人へ…
そのはざまで揺れる少女達
当事者達にどう響くかわかりませんが、是非YAに読んでほしい一冊でした。 -
児童文学なのに、かなりビターな切り口。
-
読み返すのに覚悟のいる作品です。
いろいろな矛盾やそれに対する憤りに対してどう対処していくのか。
それのヒントが書いてあるような気がします。
ただ俺にはまだよくわからないな… -
結末が良い。
-
食玩コレクターのお父さんは、家族にも型抜きされたプラスチック人形のように自分の望むポーズを取ってほしいと思っている。お母さんは魔力がないからお金や想像力で願いをかなえる、魔法少女の悲しい成れの果てみたいなひとだ。
松葉は小学生たちから「吸血鬼の家」と呼ばれる一軒家に住んでいた時子さんの古いスタンウェイを追って引き取り先の南雲家を訪れ、そこで特別な雰囲気を持つ少女・紗英と出会う。
協調と同調のなかで生きてきた松葉には、誰にも媚びず自分の直感を信じて行動する紗英の態度が眩しく見えた。
彼女の奏でるピアノの音に惹かれ、ときにその言動に振り回されながらも、松葉は新しい自分、本当の自分らしさを模索し始める──。
松葉と紗英を取り巻く大人たちは皆、悪人ではないけれど自分勝手で独善的。
彼女たちの閉塞感や苛立ちが痛いほど伝わってきます。まるでピアニッシシモのように。
たとえ聞こえなくても、無音とは違う。いちばん弱い音がいちばん強く心を震わせるように。 -
YAとして読んでみようとしたが…。感性がもう違うのかな、頑張ろうとしたが無理でした。
-
幼いころに松葉の孤独を慰めてくれたのは、隣の家から流れるピアノの音色だった。中学3年になった松葉は、そのピアノの行方を追い、新しい持ち主紗英と出会う。同い年でも、性格も家庭環境もまるで違うふたり。松葉は華やかで才能のある紗英にあこがれ、心のよりどころを求めていくが……。