生まれる森 (講談社文庫)

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レビュー : 114
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756273

感想・レビュー・書評

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  • 失恋した女の子がゆっくりと息を吹き返す話。
    視点もテンポも息遣いも、すべてが優しさに満ちている作品だった。
    しとしと降る長雨のような。
    ちょっと憂鬱なんだけど、とても落ち着く作品。
    浮足だつところがない。なんとか浮上しようと無理しない感じが良かった。

    印象的だったのは月の描写。
    ちょいちょい月が出てくる。
    誰かの肩越しに、窓に。
    それもまた、再生に向かう優しい時を感じるのかもしれない。

    正直言って、主人公がとらわれているサイトウさんは読めば読むほどどこがいいのかわからないような、むしろ気味の悪いやつだったが、そうすることで主人公の残されてしまった抽象的な想いに焦点があてられて良かったのかも。
    タイトル「生まれる森」すごく作品にあってると思う。
    しっとり感と力強さ。森になる最初の小さな芽吹きを見た気がした。
    キクちゃん、好きだわ。
    雪生さん、いい人だけどきっと苦手だ(笑)
    店長、うざキャラだけどやたらリアルで良いバランスだった。

  • 「人が恋を失った直後の生々しい感情をラフスケッチのように素早く書きとめ、そこから出たいと願う人のためになればいいという思いだけで一冊書き上げた」
    とは、あとがきから。
    「ナラタージュ」を思い起こさせる、恋とも愛とも思える想いの結晶と、深い喪失感と絶望。
    深く共感しながら読み進めました。島本さんの恋愛小説、やっぱり大好きです。いつでもここには救いがある。

    島本さんの感性も恋愛観も好きですが、本書で特に好きだったのは、キクちゃん家族。
    父親はもちろん、3兄弟の仲の良さや互いを思いやる距離感が心地よくて、読めば読むほど素敵な家族だなと心温かくなりました。
    いわゆる一般常識ではなく、自分たちの価値観を大事にしている姿勢が共通していて、そんな生き方をできることがかっこよくも映りました。

    感受性が強いこと自体は生きにくさに直結するものではないと思うけど、何か壁にぶつかったときや、深くまで心を揺さぶる恋愛を前に、振り回されず生きていくことは簡単じゃない。
    けど、大人になるにつれて、そういったことも少しずつできるようになってくる。
    10代後半から20代前半にかけての、一番心がささくれ立つ自体を、こんなにも丁寧に寄り添って書き上げてくれたことで当時の自分がずいぶんと慰められた気がします。

  • 「幸せにしたいと思うことは、おそらく相手にとっても救いになる。けど、幸せにできるはずだと確信するのは、僕は傲慢だと思う」

    私は彼女の書く話が好きだ。
    静かで優しい、でも若い。そんな文章にいつもどきどきしてしまう。

  • 過去に同じ島本氏の作品でも思いましたが、
    場所、時間の転換がせわしなくて
    気が削がれる感じがあります。

    細かい部分をあげるつもりはないけれど
    引用した部分のようにひたすら
    ~た。
    ~だった。
    で終わる文面も、
    一連の流れにありながら段落を変え過ぎているんじゃないかと思えて、
    それも違和感に繋がっていると思います。

    ご本人もあとがきで語られている通りに
    はっきりとしたストーリーのない作品なので
    共感できる部分がなければ
    評価するのが難しい。

  • サイトウさんがなんだかなぁと思いました。
    このひとと居ると疲れきってしまう
    みたいな表現が文章中にされていたんだけど、この感覚よくわかります。
    自分がどんどん自分でいれなくなっちゃいそう。
    「彼にとって自分は、子どもが胸に抱くぬいぐるみみたいな存在だった」
    って主人公が振り返る場面があるけど、この通り、そんなふたりの関係だったんだろうなぁ。


    夏休みに主人公の野田さんは、友人キクちゃんとその家族と交流していくんですが
    このくだりがわたしはとても好きです。
    少しずつ、ほんとに少しずつだけど、野田さんが元気になってくのが素敵。
    まだ、サイトウさんの影や傷は抱えたまんまだけど、それでもちょっとずつでも元気になってく過程が好きです。


    森の中でずっと迷い続けてる野田さんだけど
    もちろんすぐに出られるわけもないんだけど
    物語が進みにつれ、そんな暗い森のなかに少しだけ陽が射したような、それを感じられてうれしかったです。


    キクちゃんが後半で野田さんに話すとある言葉がとても印象的です。
    わたし自身にも言ってもらってる気がしました。

  • 「本当はもう終わっていて、わたしだけがまだ、どうすれば良いのかわかってない」終わった恋に踏ん切りが付かない「わたし」。終わらないけど、もう一度は繰り返せないこともわかっていて、なかなか抜け出せない。友達のキクちゃんと、そのお兄ちゃん…「わたし」と「わたし」をとりまく人々のある夏の日々、淡々と語られているようで、心に残っていく言葉たち。そして、抜け出せたんだ。読んでよかったと思うよ。(ま)

  • 再読のはず。全然内容を覚えてなかったけど。

  • ただ生きる。
    生きてゆく。
    昨日も今日も。そして、明日も。

    島本作品で描かれる主人公のほとんどが私はキライなタイプだ。苦手なタイプというか。理解できない、友達にもなりたくないタイプだったりする。
    本作の「わたし」(野田)もご多分に漏れず、だ。
    ふつうだったら「読んでいてイライラする」と投げ出す。
    それなのに。
    何に惹かれて読むのだろう?

    主人公の言動はもとより、他の登場人物に共感するわけでもない。
    島本作品には正直、いままで共感したことはない。
    それなのに。
    何故か無性に読みたくなる。

    理解できず、キライであっても、生きることに対して悩む主人公たちの姿に気づかぬうちに共感しているのか。
    私の中のもがき苦しむ部分を見せつけられているからなのか。
    ただ生きる、生きてゆく姿に。
    昨日も今日も。
    そして、明日も。

    「昨日よりは今日、今日よりは明日、日々、野田ちゃんは成長して生きてる。それに私もお兄ちゃんもいるし、親だって健在でしょう。だから大丈夫だよ。なにも心配することなんてないよ。」
    「痛みは後遺症みたいなもので、時の流れが勝手に癒してくれるはずだよ。」

    「わたし」の再生を、私も切に願う。

  • 大学での初めての夏休みを描いた本作、高校卒業間際にしでかしたことで気持ちの整理がつかぬまま、日常を続ける主人公。
    どこか危うげな彼女を読者は見守るしかないが、読者の年齢、性別によって見守り方が大きく違ってくると思う。
    キクちゃんの立場だったり、キクちゃんのお兄さんだったり、お父さんだったり、もしかするとサイトウさんだったり。
    感情移入はそれほど深くはなかったが、寄り添って見守る・・・そんな感じであった。

  • 図書館/島本理生2冊め。失恋で傷付いた「わたし」が、まわりの友だちやその兄弟に癒され次第に再生していくストーリー。
    側から見たら何も変わらないけど、心の中ではこの本のカバーみたいに小さい波がたくさん立ってる。いつ止むかわからない雨みたいな気持ちを、穏やかにしてくれるかんじが心地よかった。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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