幸福な食卓 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.83
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本棚登録 : 6413
レビュー : 833
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756501

作品紹介・あらすじ

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、他の多くの画家が食卓を囲むように人物を配置したのにも関わらず、ダ・ヴィンチは片方だけに人物を並べたのが印象的な作品です。ダ・ヴィンチの意図は様々に分析されていますが、一方で、この作品では、父親が父親を辞め、母親が母親でありながら別居したという結果論で兄妹が食卓の片側に座るという光景が生まれました。

    『毎日決まった動きをしていたものがなくなる。それは人を不安にさせる。不安は人を動かすのだ。』人は同じことが繰り返されることがとても好きです。心地よく感じます。電車の乗る位置、トイレの場所、そして食事の着座位置。その場所に悪いイメージがないから、その場所にいた時幸福だったから、その時がかけがえのないものだったから、記憶に、思い出に引きずられてその幸福な瞬間に戻りたいと願って決まったことを繰り返す、繰り返したくなる。

    家族で食卓を囲むということは昨今少なくなってきているのかもしれません。家庭によって家族間の会話、コミュニケーションも様々だと思います。小林ヨシコが佐和子に家族のことを問いかけます『もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ』、日々の生活において、毎日を乗り切るために、生き抜くために、どうしても家族は後回しになりがちです。近すぎるから。絶対になくならないと思っているものだから。

    家族は家族の数だけ色があると思います。同じ色など決してない。サラサラと淡い色合いから、ドロっと濃い色味まで。そのどれもが家族であって正しい色なんてありません。中原家は一見バラバラでドライでみんな好き勝手に生きている、この家族は単に崩壊してしまっているだけじゃないかという印象しかなかったのが、後半になって色合いが変わって見えてきます。それぞれが色々な形で相手を思いやり、いたわって家族の絆で繋がっていることが見えてきます。なんだかとても素敵でうらやましくさえ感じられてしまう不思議さ。でもそれはこの家族を第三者として見ているから色合いが変わっていくように感じるだけで実際の彼らは何も変わっていないのかもしれません。状況に応じて色んな色合いを見せるもの、それが家族。みんなが最後に還る場所。

    なんだか自分自身にも問いかけられているような気がします。もう少し意識して大切にしよう、甘えてみよう、自分に投げかけられた言葉として家族と向き合ってみようと思いました。

  • 途中まででも十分、しみじみいい作品だと思っていたのだけど、しかしこれはなんとレビュー書いてよいものか…
    ネタバレがあるので、まだ読んでない方はご注意ください。

    父さんは「父さんをやめる」と宣言し、元天才児だった兄の直ちゃんは大学に行かずに農業を始め、母さんは5年前のある事件をきっかけに精神のバランスを崩して家を出る。
    佐和子の家庭はふつうじゃないけど、
    「でも、みんなで朝ご飯を食べ、父さんは父さんという立場にこだわらず子供たちを見守り、母さんは離れていても子供たちを愛している。完璧」
    という母さんの言葉のように、家族は不確かながらゆるやかにつながり合っている。

    クリスマスの前。
    大浦くんはプレゼントを買うために、佐和子が好き(と決めてかかった)な新聞のアルバイトに精を出す。
    佐和子は母と毛糸を買いに行って、初めてのマフラー編みに挑戦する。
    直ちゃんは、どれをプレゼントにしようか散々迷って決めた鶏を、クリスマスまでに頑張って太らせる。
    恋人のヨシコは、兄の留守の間に部屋を探索し、自画像を送ると決めて意気揚々と帰っていく。

    すべて順調すぎて、最後まであと50ページ以上あるのに何かちょっと怖いくらいウフフ、なんてのほほんと思って読んでいたら、突然の暗転。
    誇張ではなく、あまりの衝撃に脳天から電撃をくらったみたいに硬直してしまった。

    大きな喪失感と悲しみから、佐和子は思わず言ってしまう。
    「死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ」
    それに対する直ちゃんの言葉。
    「かわいそうに」「そんなこと言うほど、佐和子は傷ついてるんだね。」
    後半はぐわんぐわんとしながらしか読めなかったけど、
    ここが一番胸に響いて涙がもう。

    最初から通して、飄々とした天然の兄ちゃんがかなりツボで、
    絶交の時間を決めるやりとりとか、真剣に鶏を選ぶところとかが可愛かった。
    受験勉強の合間にプッチンプリンを食べるお父さんや、
    坂戸くんが引っ越しする日の鯖の秘密を教えてくれるやりとりや、
    ちっともうまくいかない合唱の秘策を伝授してくれる大浦くんとのやりとりや。
    そんなに長いお話ではないのに、好きなシーンが多すぎて書ききれない。
    でも、この本はきっともう一度読むと思うから、そのときにもう一度読んでじんわりするために、書かないでとっておこうと思う。

    • まろんさん
      私の初☆瀬尾まいこさん作品にして、
      「もう、この人の本、これから全部読む!ぜったい読む!」と決意させた
      記念すべき作品です。

      直ちゃんのガ...
      私の初☆瀬尾まいこさん作品にして、
      「もう、この人の本、これから全部読む!ぜったい読む!」と決意させた
      記念すべき作品です。

      直ちゃんのガブリエルとか、坂戸くんの鯖とか
      大浦くんの電動自転車とか、ヨシコの卵の殻入りシュークリームとか
      ひとつひとつのエピソードが放つ宝石のような煌めきも
      大浦くんを襲った悲劇に愕然として、娘に呆れられるくらい号泣したことも
      忘れられない、大好きな、大切な本なので
      マリモさんがこんな素敵なレビューを書いてくださって、本当にうれしいです(*^_^*)
      2012/11/20
    • マリモさん
      わーん、まろんさんが読んだときのと同じときに読んでいたらよかったです!
      読み終わったときは、最後の悲劇に押しつぶされ気味で、感想をどう表現し...
      わーん、まろんさんが読んだときのと同じときに読んでいたらよかったです!
      読み終わったときは、最後の悲劇に押しつぶされ気味で、感想をどう表現したらいいのかわからなかったけれど、読んで1日経ってほわほわと胸にこみあげる温かい気持ちもこれまた、どう表現していいのかわからなく、もどかしい気持ちです。
      でもこういう気持ち含め、きっとまろんさんにはわかっていただけそうでうれしいです。

      瀬尾さんの本は、まだ数冊しか読んでないのですが、私も「絶対全部読むー!」と決めちゃいましたよ!
      2012/11/20
    • まろんさん
      そのほわほわ、わかります!ちゃんと伝わってます♪

      「瀬尾さんの本全部よむ!ぜったい読む!」の会イナカ支部の私といっしょに
      これからも瀬尾さ...
      そのほわほわ、わかります!ちゃんと伝わってます♪

      「瀬尾さんの本全部よむ!ぜったい読む!」の会イナカ支部の私といっしょに
      これからも瀬尾さん作品を追いかけてくださいね(*^_^*)
      2012/11/21
  • 初 瀬尾まいこさん。やられました!!

    「父さんは今日で 父さんを辞めようと思う」からはじまり、いきなり えっ?と思い そこからぐっと引き込まれた。

    自殺未遂の経験がある父さん、そのことがきっかけで家を出て行った母さん、容姿端麗、頭脳明晰だけどちょっと浮世離れした兄を家族に持つ佐和子。ちょっと変わった家族だけど なんだか温かくて、ほのぼのしたお話なんだな~と思っていたら・・・
    この本2回目の えっ??
    大浦く~ん!! その展開はだめでしょう・・と思わず叫びそうになった。
    その時点で涙・・・

    お兄ちゃんの彼女の がさつな小林ヨシコ。初めはちょっと嫌なやつっておもったけど・・・いいよ!!小林ヨシコ最高!!
    ヨシコの作ったシュークリームが食べたい。卵の殻が入ってるのを(笑)

    人は自分でも気付かないところで たくさんの人に見守られてるんだな~と実感した。

    映画化にもなってるらしいし、ぜひ映画も見てみたい。

    • nobo0803さん
      まろんさん

      瀬尾さん、私の好みにビンゴ!!でした。

      大浦君、本当に何で~って感じですよね。

      瀬尾さんのほかの作品もはやく読みたいのだけ...
      まろんさん

      瀬尾さん、私の好みにビンゴ!!でした。

      大浦君、本当に何で~って感じですよね。

      瀬尾さんのほかの作品もはやく読みたいのだけど図書館の予約待ちです。人気なんですね・・
      いつになることやら。
      まろんさんの瀬尾さんのレビュー読んで わくわくしながらまっておきます。
      2012/07/06
    • 円軌道の外さん

      瀬尾さんの作品は
      優しいのに
      強さを持っていて、

      何度となく読み返したいって思ってしまいますよね♪
      (コレ、自分は10回くら...

      瀬尾さんの作品は
      優しいのに
      強さを持っていて、

      何度となく読み返したいって思ってしまいますよね♪
      (コレ、自分は10回くらい読み返しています笑)

      ミスチルの名曲
      『くるみ』がテーマ曲になった
      北乃きいちゃん主演の映画がまた
      胸を打つんですよ〜(泣)(ToT)


      機会があれば是非とも!


      2012/07/12
    • koshoujiさん
      こんにちはnobo様。Koshoujiと申します。
      ハナマルを押した後、コメント欄を見たら
      名前を存じ上げている方々ばっかりでびっくりし...
      こんにちはnobo様。Koshoujiと申します。
      ハナマルを押した後、コメント欄を見たら
      名前を存じ上げている方々ばっかりでびっくりしました。
      類は友を呼ぶのでしょうか。
      私も参加させていただきます(笑)
      この作品は小説、映画ともうまく嵌った素晴らしい作品ですね。
      私も大浦君の突然の……で、「えっ!! うそ」と唖然、涙しました。
      映画も、円軌道の外さんも書かれているように、ラストシーンで、ミスチルの「くるみ」が流れる中、北乃きいちゃんが歩いていく姿は感動モノです。是非、DVDもご覧ください。
      2012/07/22
  • ★3.5

    佐和子の家族はちょっとヘン。
    父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母。
    元天才児の兄。
    そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンドの大浦君がいて…。

    「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
    冒頭のこの一文で引き込まれた。
    父は、5年前に辞さ住み水をし、父であることやめ勉強をし直すと言い出し、
    幼い頃から天才児と騒がれた兄は、人生が少しずつ歪んでずれて
    大学進学をせずに、晴耕雨読の農業をしている。
    また母は、夫の自殺未遂を防げなかったと心が乱れ、とうとう家を出てしまう。
    そして中学生だった佐和子はこの事件で父親から命の恩人と思われている。
    少し…とっても変わった家族の主人公佐和子の中学から高校へと成長を
    描いているのかと思った。
    そんな…酷い…。

    でも、人は本人は気付かなくても、気付かない所で
    色々な人に守られて生きているんだね。
    家族大切にしなきゃね。
    つい忘れてしまいそうなことを気付かせて頂きました。
    あり得ない様な家族の形ですが、皆とっても優しくて温かくて
    ほっこりしたし、フワフワしてるのに何故かすんなり受け入れられた(*´ `*)

  • 幸福な食卓…
    途中まではサクサク読めるほのぼのとした作品だと思っていた。
    途中までは…
    この感情、もうずいぶん昔だけど
    夜中に「ドーハの悲劇」を観てしまった時と同じような気がした。
    何で、何で、何で…

    私も佐和子ちゃんの何十分、何百分の1の
    ほんの少しの辛さを抱えて
    明日またご飯を食べて日常の生活を送るんだろうな。

  • 幸せなホームドラマかと思ってたら、びっくり。むしろ崩壊しててみんなドロップアウトしてるのに、でもほのぼのあったかくて。どんな状況でもどんなツラい事抱えてても、幸せってちゃんとあるんだなぁ…って。読んで良かったなぁって思った。そして、最後の急に落とし穴に落ちるような展開に、気付いたら涙が出てた。切なくてやるせないけど、人はどんな状況でも幸せになれるし、そのなり方はいろいろな方法があるんだなぁと思った。すごくいいタイミングで読んだと思った。

  • 「お父さんをやめようと思う」という出だしは有名ですよね。
    朝食は必ず家族揃ってとることが家風だが、そこでは爆弾発言も時に出るのだった。
    穏やかに仲良く暮らしていた中原一家。
    じつは数年前のある出来事から、じわじわと歪みが生じていて、母は家を出ている。
    家を出てから一人暮らしをしているのが新鮮で快適らしい母。近くに住んでいて、掛け持ちでパートをし、夕食の差し入れにもよく来る。

    何でも出来る兄の直は明るく元気そうだが、実は、何事にも真剣に対処しないようになっている。
    もてるのだが、3ヶ月ぐらいでいつもふられてしまう。
    ある時、派手な化粧の彼女を連れてきて、妹としては気に入らないが、これが意外と本気になる様子。

    ごく普通に頑張ろうと思っている妹の佐和子。
    神経質な部分もあり、梅雨になると気分が悪くなりがちなのだが…
    中学から一緒の大浦君と進学塾で次第に親しくなり、時には行き違いもあるが、それも微笑ましい。
    そのまま高校でもいい感じでつきあいが続く。
    哀しい出来事や苦みもあり、少女が背負うには辛い運命。
    父の抱えていたものも…

    当たり前に、家族のことが気になる感覚。
    自分にはない良さのある人を好きになる感覚。
    繊細でいて、どこか生命力の豊かさへと繋がっていく展開。
    泣けるけど、希望も持てます。

  • 瀬尾さんの作品ははじめて。
    文章の繊細さみたいなのはあまり感じられなかったけれど、シンプルに描く方なのだなと感じた。

    幸福な食卓、という題名通りあたたかな灯火のようなものを感じた。

    直の人物像が特に面白かった。

  • こういう、何も起きないけど、日常を淡々と丁寧に描いた小説好きだなと思ってのんびり読んでたらたら、青天の霹靂。
    恋人、友達そして家族。当たり前の中にこそ愛おしいものがたくさんある。毎日精一杯大事にしなきゃ。

    ほのぼのとした雰囲気がすごく好きだったけど、青天の霹靂が辛すぎたので☆をひとつ減らしました。

  • 「卵の緒」を読んでから瀬尾まいこさんの作品の虜になりました。

    ネタバレありです↓

    自殺未遂経験者の父と元天才で優しい兄と家出中の母
    こんな問題を抱えていながらも幸せに見える。

    そして大浦くん!!!
    最後はほんとに衝撃!!!
    「そしてそれが最後だった」
    そして、「お葬式」というワードが目に入った瞬間涙が、、、
    なんでぇぇぇーーーーと心の中で叫びました。
    目が涙で霞んでページが読めなくて大変でした笑

    ほんとにほんとに感動。
    思春期真っ盛りで受験が終わったばかりの私ですが、
    家族の大切さに気付かされました。

    • koshoujiさん
      フォローいただき、ありがとうございます。<(_ _)>瀬尾まいこさん、お好きのようで。
      彼女は本当に心温まる作品ばかり書きますよね。
      私...
      フォローいただき、ありがとうございます。<(_ _)>瀬尾まいこさん、お好きのようで。
      彼女は本当に心温まる作品ばかり書きますよね。
      私も12冊ほどよんでおり、レビューを書かせていただいております。
      思春期、いい言葉です。昔、そんな時代がありました(笑)。リフォローさせていただきました。
      どんどん本をお読みになり、たくさんレビューを書いてください。
      私も面白おかしくたくさんのレビューを書いていますので、お読みいただければうれしいです。では、よろしく。<(_ _)>
      辻村深月さんの初期の作品なども、最後に感動の涙で涙腺決壊する良い本が多いですよ。(*^^*)
      2019/08/26
    • ゆりあさん
      ありがとうございます!
      これからもたくさんの本を読んでいきたいと思います!
      辻村深月さんの本読んでみたいと思います、教えていただきありがとう...
      ありがとうございます!
      これからもたくさんの本を読んでいきたいと思います!
      辻村深月さんの本読んでみたいと思います、教えていただきありがとうございます
      2019/08/28
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著者プロフィール

瀬尾まいこ(せお まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2011年の退職までは、中学校で国語教諭として勤務する傍ら執筆活動を行っていた。2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。これまでに映画化された作品に、代表作『幸福な食卓』、『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』。『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位、「キノベス2019」1位に選出、さらに2019年本屋大賞を受賞。2019年6月13日、『優しい音楽』(新装版)を刊行。

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