幸福な食卓 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.83
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本棚登録 : 6841
レビュー : 864
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756501

作品紹介・あらすじ

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、他の多くの画家が食卓を囲むように人物を配置したのにも関わらず、ダ・ヴィンチは片方だけに人物を並べたのが印象的な作品です。ダ・ヴィンチの意図は様々に分析されていますが、一方で、この作品では、父親が父親を辞め、母親が母親でありながら別居したという結果論で兄妹が食卓の片側に座るという光景が生まれました。

    『毎日決まった動きをしていたものがなくなる。それは人を不安にさせる。不安は人を動かすのだ。』人は同じことが繰り返されることがとても好きです。心地よく感じます。電車の乗る位置、トイレの場所、そして食事の着座位置。その場所に悪いイメージがないから、その場所にいた時幸福だったから、その時がかけがえのないものだったから、記憶に、思い出に引きずられてその幸福な瞬間に戻りたいと願って決まったことを繰り返す、繰り返したくなる。

    家族で食卓を囲むということは昨今少なくなってきているのかもしれません。家庭によって家族間の会話、コミュニケーションも様々だと思います。小林ヨシコが佐和子に家族のことを問いかけます『もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ』、日々の生活において、毎日を乗り切るために、生き抜くために、どうしても家族は後回しになりがちです。近すぎるから。絶対になくならないと思っているものだから。

    家族は家族の数だけ色があると思います。同じ色など決してない。サラサラと淡い色合いから、ドロっと濃い色味まで。そのどれもが家族であって正しい色なんてありません。中原家は一見バラバラでドライでみんな好き勝手に生きている、この家族は単に崩壊してしまっているだけじゃないかという印象しかなかったのが、後半になって色合いが変わって見えてきます。それぞれが色々な形で相手を思いやり、いたわって家族の絆で繋がっていることが見えてきます。なんだかとても素敵でうらやましくさえ感じられてしまう不思議さ。でもそれはこの家族を第三者として見ているから色合いが変わっていくように感じるだけで実際の彼らは何も変わっていないのかもしれません。状況に応じて色んな色合いを見せるもの、それが家族。みんなが最後に還る場所。

    なんだか自分自身にも問いかけられているような気がします。もう少し意識して大切にしよう、甘えてみよう、自分に投げかけられた言葉として家族と向き合ってみようと思いました。

  • 瀬尾まいこ 著

    「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
     まさに、「何それ?」と言って…
    唐突な、入り口から
    一気に興味を惹かれてしまった。

    コミカルな展開の話しかと思えば…結構、
    シリアスで人生の岐路に立ちはだかる問題に色々悩まされて、苦しんだり、悲しみに打ちひしがれる場面も数々あるのだけど、意外とこの家族は飄々とやり過ごしている感があるが…それは決して文字通りの意味だけではなく、きっと家族の皆が真面目で優しくて、
    軸がブレない家族だから 何だかサバサバした心地よい風を感じるのだと思う。

    父は父であることをやめ勉強しなおすと言い出し、神童だった兄は、かなり、優しい印象だが、少しずつ人生にゆがんでずれて、晴耕雨読的生活を送っている、母はある理由で家を出て一人暮らし、そして主人公の佐和子は、真面目で神経質…若さ故?過敏なところもあるが、本来優しい人格者。

    一風変わったように感じる家族が、結局、皆優しくて、互い互いの立場を尊重して生活している 
    善き家族だなぁと家族風景に羨ましくさえなったほどだ!
    きっと、この作品を描いてる作家、瀬尾さん自身が優しい人だからだろうなぁって何回も感じられた。

    本当は佐和子と同じ、鯖嫌いなのに、佐和子の分を食べてくれた中学校の転校生、板戸君
    「すごいだろ?気付かないところで中原って     いろいろ守られてるってことよ」
    その言葉に、何だか既に泣けちゃったよ( ; ; )

    高校生になって、大好きだった佐和子の彼氏の大浦君の呆気ない死の別れ…

    自分も若い頃に、好きな人が突然亡くなったという体験をしている。
    何か…思い出して、切なくなっちゃったよ。

    元気いっぱいで1ミリも死の兆しなんて見えなかった彼の突然の死の別れは とても一方的で、理不尽な感じがした。
    勿論、大浦君にしろ彼に罪はないのだけれど…。

    抗う余地すらない出来事って、それぞれの人の人生の中にあると思う。

    作品の中の佐和子のように、彼が亡くなった時は、空虚な感覚しかなく、食事も喉を通らない日々が続き、何度も何度も思い出の中の彼を引き出して涙してたように思う。

    それも佐和子と同じように、
    あの時、あーしてれば良かったとか、何故あの日、あんな風に言ってしまったんだろうとか 
    何で、もっと上手く立ち回れなかったんだろうか?いつまでも、後悔の念を繰り返し抱いて
    塞いでいた。

    でも、ある日気づいた!
    よくよく考えたら、自分に対する後悔の念ばかりじゃないか?と…
    死んでしまった彼が、私が後悔して、あんなふうにしたらよかったって事を本当に望んでたかどうかだって…もう確かめる術もない。
    結局、自分自身の彼に対する言動の自分への後悔だけじゃないか 亡くなった者には思い出の意識もない 生きてるから恥じたり、後悔するのだと。

    だから、どれだけ何か尽くしたとしても、残された者は後悔するのだと思う。
    後悔しても、その時に出来なかった自分も自分。 後悔するのは生きてるからだと思う。
    時間はかかっても、その後悔こそが、後に繋がる気づきなのではないかと思えた。
    佐和子は思う
    「私は大きなものをなくしてしまったけど、
     完全に全てを失ったわけじゃない。
     私の周りにはまだ大切なものがいくつか
     あって、
     ちゃんとつながっていくものがある」

    だよね…
    生きているうちは、なるべく、後悔する事のないように 気付かないうちに
    周りに守られているということに感謝しながら、謙虚に…生きよう。

    出来れば、残された者が「幸福な食卓」を
    思い出せるような生き方したいなぁって
    素直に感じさせてくれた作品でした。

  • 途中まででも十分、しみじみいい作品だと思っていたのだけど、しかしこれはなんとレビュー書いてよいものか…
    ネタバレがあるので、まだ読んでない方はご注意ください。

    父さんは「父さんをやめる」と宣言し、元天才児だった兄の直ちゃんは大学に行かずに農業を始め、母さんは5年前のある事件をきっかけに精神のバランスを崩して家を出る。
    佐和子の家庭はふつうじゃないけど、
    「でも、みんなで朝ご飯を食べ、父さんは父さんという立場にこだわらず子供たちを見守り、母さんは離れていても子供たちを愛している。完璧」
    という母さんの言葉のように、家族は不確かながらゆるやかにつながり合っている。

    クリスマスの前。
    大浦くんはプレゼントを買うために、佐和子が好き(と決めてかかった)な新聞のアルバイトに精を出す。
    佐和子は母と毛糸を買いに行って、初めてのマフラー編みに挑戦する。
    直ちゃんは、どれをプレゼントにしようか散々迷って決めた鶏を、クリスマスまでに頑張って太らせる。
    恋人のヨシコは、兄の留守の間に部屋を探索し、自画像を送ると決めて意気揚々と帰っていく。

    すべて順調すぎて、最後まであと50ページ以上あるのに何かちょっと怖いくらいウフフ、なんてのほほんと思って読んでいたら、突然の暗転。
    誇張ではなく、あまりの衝撃に脳天から電撃をくらったみたいに硬直してしまった。

    大きな喪失感と悲しみから、佐和子は思わず言ってしまう。
    「死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ」
    それに対する直ちゃんの言葉。
    「かわいそうに」「そんなこと言うほど、佐和子は傷ついてるんだね。」
    後半はぐわんぐわんとしながらしか読めなかったけど、
    ここが一番胸に響いて涙がもう。

    最初から通して、飄々とした天然の兄ちゃんがかなりツボで、
    絶交の時間を決めるやりとりとか、真剣に鶏を選ぶところとかが可愛かった。
    受験勉強の合間にプッチンプリンを食べるお父さんや、
    坂戸くんが引っ越しする日の鯖の秘密を教えてくれるやりとりや、
    ちっともうまくいかない合唱の秘策を伝授してくれる大浦くんとのやりとりや。
    そんなに長いお話ではないのに、好きなシーンが多すぎて書ききれない。
    でも、この本はきっともう一度読むと思うから、そのときにもう一度読んでじんわりするために、書かないでとっておこうと思う。

    • まろんさん
      私の初☆瀬尾まいこさん作品にして、
      「もう、この人の本、これから全部読む!ぜったい読む!」と決意させた
      記念すべき作品です。

      直ちゃんのガ...
      私の初☆瀬尾まいこさん作品にして、
      「もう、この人の本、これから全部読む!ぜったい読む!」と決意させた
      記念すべき作品です。

      直ちゃんのガブリエルとか、坂戸くんの鯖とか
      大浦くんの電動自転車とか、ヨシコの卵の殻入りシュークリームとか
      ひとつひとつのエピソードが放つ宝石のような煌めきも
      大浦くんを襲った悲劇に愕然として、娘に呆れられるくらい号泣したことも
      忘れられない、大好きな、大切な本なので
      マリモさんがこんな素敵なレビューを書いてくださって、本当にうれしいです(*^_^*)
      2012/11/20
    • マリモさん
      わーん、まろんさんが読んだときのと同じときに読んでいたらよかったです!
      読み終わったときは、最後の悲劇に押しつぶされ気味で、感想をどう表現し...
      わーん、まろんさんが読んだときのと同じときに読んでいたらよかったです!
      読み終わったときは、最後の悲劇に押しつぶされ気味で、感想をどう表現したらいいのかわからなかったけれど、読んで1日経ってほわほわと胸にこみあげる温かい気持ちもこれまた、どう表現していいのかわからなく、もどかしい気持ちです。
      でもこういう気持ち含め、きっとまろんさんにはわかっていただけそうでうれしいです。

      瀬尾さんの本は、まだ数冊しか読んでないのですが、私も「絶対全部読むー!」と決めちゃいましたよ!
      2012/11/20
    • まろんさん
      そのほわほわ、わかります!ちゃんと伝わってます♪

      「瀬尾さんの本全部よむ!ぜったい読む!」の会イナカ支部の私といっしょに
      これからも瀬尾さ...
      そのほわほわ、わかります!ちゃんと伝わってます♪

      「瀬尾さんの本全部よむ!ぜったい読む!」の会イナカ支部の私といっしょに
      これからも瀬尾さん作品を追いかけてくださいね(*^_^*)
      2012/11/21
  • 初 瀬尾まいこさん。やられました!!

    「父さんは今日で 父さんを辞めようと思う」からはじまり、いきなり えっ?と思い そこからぐっと引き込まれた。

    自殺未遂の経験がある父さん、そのことがきっかけで家を出て行った母さん、容姿端麗、頭脳明晰だけどちょっと浮世離れした兄を家族に持つ佐和子。ちょっと変わった家族だけど なんだか温かくて、ほのぼのしたお話なんだな~と思っていたら・・・
    この本2回目の えっ??
    大浦く~ん!! その展開はだめでしょう・・と思わず叫びそうになった。
    その時点で涙・・・

    お兄ちゃんの彼女の がさつな小林ヨシコ。初めはちょっと嫌なやつっておもったけど・・・いいよ!!小林ヨシコ最高!!
    ヨシコの作ったシュークリームが食べたい。卵の殻が入ってるのを(笑)

    人は自分でも気付かないところで たくさんの人に見守られてるんだな~と実感した。

    映画化にもなってるらしいし、ぜひ映画も見てみたい。

    • nobo0803さん
      まろんさん

      瀬尾さん、私の好みにビンゴ!!でした。

      大浦君、本当に何で~って感じですよね。

      瀬尾さんのほかの作品もはやく読みたいのだけ...
      まろんさん

      瀬尾さん、私の好みにビンゴ!!でした。

      大浦君、本当に何で~って感じですよね。

      瀬尾さんのほかの作品もはやく読みたいのだけど図書館の予約待ちです。人気なんですね・・
      いつになることやら。
      まろんさんの瀬尾さんのレビュー読んで わくわくしながらまっておきます。
      2012/07/06
    • 円軌道の外さん

      瀬尾さんの作品は
      優しいのに
      強さを持っていて、

      何度となく読み返したいって思ってしまいますよね♪
      (コレ、自分は10回くら...

      瀬尾さんの作品は
      優しいのに
      強さを持っていて、

      何度となく読み返したいって思ってしまいますよね♪
      (コレ、自分は10回くらい読み返しています笑)

      ミスチルの名曲
      『くるみ』がテーマ曲になった
      北乃きいちゃん主演の映画がまた
      胸を打つんですよ〜(泣)(ToT)


      機会があれば是非とも!


      2012/07/12
    • koshoujiさん
      こんにちはnobo様。Koshoujiと申します。
      ハナマルを押した後、コメント欄を見たら
      名前を存じ上げている方々ばっかりでびっくりし...
      こんにちはnobo様。Koshoujiと申します。
      ハナマルを押した後、コメント欄を見たら
      名前を存じ上げている方々ばっかりでびっくりしました。
      類は友を呼ぶのでしょうか。
      私も参加させていただきます(笑)
      この作品は小説、映画ともうまく嵌った素晴らしい作品ですね。
      私も大浦君の突然の……で、「えっ!! うそ」と唖然、涙しました。
      映画も、円軌道の外さんも書かれているように、ラストシーンで、ミスチルの「くるみ」が流れる中、北乃きいちゃんが歩いていく姿は感動モノです。是非、DVDもご覧ください。
      2012/07/22
  • 幸福な食卓…
    途中まではサクサク読めるほのぼのとした作品だと思っていた。
    途中までは…
    この感情、もうずいぶん昔だけど
    夜中に「ドーハの悲劇」を観てしまった時と同じような気がした。
    何で、何で、何で…

    私も佐和子ちゃんの何十分、何百分の1の
    ほんの少しの辛さを抱えて
    明日またご飯を食べて日常の生活を送るんだろうな。

  • 瀬尾まいこさんは、「そして、バトンは渡された」にて一発で引き込まれてしまって先日オトナ買いをしてみた著者。 引き続き読み進めてみた三冊目です。(昨日は「戸村飯店 青春100連発」をアップしました)

    正直、自分はあんまり世の中のことにおいかけたりするのが疎い人で、2007年に映画化で話題になったということもほとんど知らず、あぁ、瀬尾まいこさんの代表作なんだと(ほとんどの事前知識なく)読んでみてよかった。 映画化では北乃きいさんと勝地涼さんのフォスターのお二人だったそうで、そんなことも全く知らず、純粋に小説として楽しんでよかった。いろんな情報が事前にあったらこんなにつるんと読めなかったと思う。

    というのも、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」「戸村飯店 青春100連発」を読んできて、本当に楽しい食事やお菓子のシーンや、(学校の先生のご経験があられるからかの)中学高校のみずみずしいシーン、そういうところを純粋に楽しんできました。 
    さらに「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」からスタートする「家族の再生を温かく描いた、ちょっと前向きになれる感動ストーリー!」と帯にありますが、瀬尾まいこさん独特のほっこりする家族愛:どんな形であっても家族の愛がにじみ出てくる、というありのままの小説をまっすぐに受け止めて読み進められた。

    小説は、そのストーリーを自分と照らし合わせながら自分もこんな時代があったなぁとか、こんなんじゃいけないとか、いろいろ自分の人生に当てはめ直して、なんらか行動を変化させていくための、自らを成長させていくツールとして活用しています。 この本においても名言な部分はたくさんあるとは思いますが、純粋にするりと(でもいろいろ思いも広げながら)楽しませていただきました。 内容に関しては僕は触れないこととします。(ほかの人あたればごろごろ転がっているからね) いろんな家族の形があって、お互い助け合いながら、成長していく。 

    なんか世の中の一般的というか当たり前というか、こうでなければならない、という形から超越してて、でもそれぞれがそれぞれの人生を生きていて、すごい、と思う。 また引き続き読み続けようと思う。


    抜粋フレーズ、たぶんもう一度しっかり読めばまた違った見方でたくさんでてくるとは思いますが、今回は少なめで。
    ==========
    P56 「うちの家庭って崩壊してるのかな?」私がプリンにスプーンを突き刺しながら言うと、母さんが目を丸くした。
    「どうして?恐ろしく良い家庭だと思うけど」
    「父さんが父さんを辞めて、母さんは家を出て別に生活してる」
     坂戸君の言うのが家庭崩壊なら、うちだって立派に崩壊してる。
    「でも、みんなで朝ご飯を食べ、父さんは父さんという立場にこだわらず子どもたちを見守り、母さんは離れていても子どもたちを愛している。完璧」
     母さんは笑った。


    P239 「かわいそうに」しばらくして直ちゃんが言った。
     「そんなこと言うほど、佐和子は傷ついているんだね」


    P255 「あのさ、私すごい口下手だからさ、うまく表現できないと思うんだけど、あんたうまいこと、いいように解釈してくれる?私って、普段いいやつじゃないから、嫌みに聞こえるかもしれないけど、本当、悪気はないから。まぁ、うまいこと聞いて」(中略)
     「あのさ、言葉悪いけどさ、恋人はいくらでもできるよ。もちろん、今、そんなこと言うのは最悪だってわかってる。でもね、そうだよ。恋人も友達も何とかなるよ。あんたの努力次第で。あんたさ、すごくいい子だもん。いや、まじでそう思ってるよ。だから大丈夫。絶対、また恋人はできる。私が保証してあげる。っていうか、もし、できなかったら、私が探してきてもいいし。
    でも、家族はそういうわけにはいかないでしょう?お兄ちゃんの代わりもお父さんの代わりもあんたの力ではどうすることもできないじゃん」
    「だから大事にしろってこと?」
    「まあね。もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ」
    「意味がわかんない」
    私は顔をしかめたままで首をかしげた。
    「家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。あんたが努力しなくたって、そう簡単に切れたりしないじゃん。だから、安心して甘えたらいいと思う。だけど、大事だってことは知っておかないとやばいって思う。まあ、とにかく、あんたはちゃんと元気になれる環境にいると思うし、元気にならないといけないとも思う。別に急がなくてもいいし、どんな風でもいいんだけど、もう少し元気出してよ。って思ってるんだって、私だってさ。」
     ヨシコはやけくそのように言って、かばんから紙袋を取り出すと、私に押し付けた。
    ==========
    ※ヨシコのこの言葉、「そしてバトンは渡された」につながってくるようで、なんだかすごくインパクトがあった。


    瀬尾まいこさん、三冊読んで、また興味がさらにひかれてきた。 引き続きオトナ読みしていこう。

  • ★3.5

    佐和子の家族はちょっとヘン。
    父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母。
    元天才児の兄。
    そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンドの大浦君がいて…。

    「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
    冒頭のこの一文で引き込まれた。
    父は、5年前に辞さ住み水をし、父であることやめ勉強をし直すと言い出し、
    幼い頃から天才児と騒がれた兄は、人生が少しずつ歪んでずれて
    大学進学をせずに、晴耕雨読の農業をしている。
    また母は、夫の自殺未遂を防げなかったと心が乱れ、とうとう家を出てしまう。
    そして中学生だった佐和子はこの事件で父親から命の恩人と思われている。
    少し…とっても変わった家族の主人公佐和子の中学から高校へと成長を
    描いているのかと思った。
    そんな…酷い…。

    でも、人は本人は気付かなくても、気付かない所で
    色々な人に守られて生きているんだね。
    家族大切にしなきゃね。
    つい忘れてしまいそうなことを気付かせて頂きました。
    あり得ない様な家族の形ですが、皆とっても優しくて温かくて
    ほっこりしたし、フワフワしてるのに何故かすんなり受け入れられた(*´ `*)

  • 気づけなかった、気づくのが遅かった家族の綻びと歪みにどう向き合うのか。家族に友人関係に恋愛に、次から次へと絶え間なく流れる時にうまく対応できない佐和子の心苦しさは自分にも身に覚えがある。高校生の一日は大人の十分なんて言うけれど、徐々にズレていくものに焦る気持ち。
    佐和子に少し変わった家族と大浦くんが居たように、きっとズレたものを一緒に直してくれる人は居るはず。

  • 自分自身を見失うような悲しさ、虚しさ、辛い出来事にどのように向き合っていくのか。

    10代の主人公佐和子とその家族、大切な友人も加わり、かけがえのない家族の温もり、再生が描かれる。爽やかで短い文章で綴られ、読みやすかった。

  • 幸せなホームドラマかと思ってたら、びっくり。むしろ崩壊しててみんなドロップアウトしてるのに、でもほのぼのあったかくて。どんな状況でもどんなツラい事抱えてても、幸せってちゃんとあるんだなぁ…って。読んで良かったなぁって思った。そして、最後の急に落とし穴に落ちるような展開に、気付いたら涙が出てた。切なくてやるせないけど、人はどんな状況でも幸せになれるし、そのなり方はいろいろな方法があるんだなぁと思った。すごくいいタイミングで読んだと思った。

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著者プロフィール

瀬尾まいこ(せお まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2011年の退職までは、中学校で国語教諭として勤務する傍ら執筆活動を行っていた。2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。これまでに映画化された作品に、代表作『幸福な食卓』、『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』。『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位、「キノベス2019」1位に選出、さらに2019年本屋大賞を受賞。2019年6月13日、『優しい音楽』(新装版)を刊行。

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