幸福な食卓 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756501

作品紹介・あらすじ

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 思いやりと食事が人との関係には大切。
    ヨシコに愛おしさを感じる話。殻が入っててもよき。

  • 凄い笑って
    凄い泣けた

    凄い楽しかったり、面白かったり、驚いたり、悲しかったりするが
    生きていくのに正解ないし
    犯罪でなければ 決まりもない

    生きて なんとかやってければ
    それで良いはず

    頑張る事だけが【頑張る】じゃないし

    何時でも現状は過去の結果であり
    どんなに素敵な選択でも、残念な結果でも…その時点での自分のベストなんだと思います。

    詳しくは書けませんが、自分もこの家族と同じ経験をしている。
    あり得ない事態
    でもその後も良いことしかないし
    それらをいくつも経験してるからだ

    とりあえず自分は この本に出てくる【直ちゃん】大好きですね

    ぶっ飛んでますが
    良いですね(笑)
    ヨシコも憎めないし(笑)

    ※だから結局俺が何を言いたいかって言うと…
    【最近のティッシュって紙の箱じゃないビニールの奴って…ティッシュカバーに入れるの面倒だし、むき出しで残り少ないと本体ごと持ち上がって…
    フンヌー!!(*`Д´)ノ!!!】ってなるよね?って事!!

  • バラバラな方向を向いているかなりマイペースな家族。でも心はちゃんと繋がっている。日々の食事で繋がっている。
    一読後、身の回りには大切なものがあるって気づかせてくれる作品だと思います。それは何気ない日常であったり、家族であり友人であったりもします。
    佐知子の父母や兄のマイペースな生き方から、逆に平凡な日常って当たり前じゃないんだ。幸福なんだって感じました。特に後半の急展開からは益々その思いを強くしました。
    また、瀬尾さんは思春期の中高生の心理を描き出すのが抜群にうまい。それは瀬尾さんが教師として子どもとの真剣勝負の中から体得したものなのだろうと思います。リアルに自分の学生時代の空気感がよみがえってきます。特に年頃の女子の難しさは、我が娘を思い浮かべつつ胃がキリキリとしてしまうほど。あの女子の冷たい視線、冷めた空気、どよーんてくるなぁ。
    私は佐知子ほど思春期の友人とのゴタゴタや恋愛に頭を突っ込んでいません。部活の方に全力を注いでいたからです。部活での友人との切磋琢磨、強くなるために試行錯誤した日々。なので休み時間や授業ですら基本、休憩に近いものがあり、なんとも仕様のない自分を思い出しました。また、友だちとのなにげない会話が楽しかったり元気をもらってきた。そんなことを思い出しました。
    人には十人十色の青春がある。そのどれもが貴重なものだと思う。佐知子の明日は今日よりもっと素晴らしい。

  •  「普通の家族」「家族の形」のイメージは人それぞれでしょうが、一般的な枠からはみ出せば、多分「変な家族」と思われるんでしょうね。
     家族って何? どんな存在? 理想は? と考えさせてくれる、瀬尾まいこさんが2003〜04年に発表した連作(時系列で続く)短編集です。

     初っ端から、中原家の不思議で普通ではない様子が描かれます。何があってもみんなで食卓を囲む習慣は、素晴らしいと思いましたが、母は別居し、父は父を辞めると言い、元天才児の兄は何かに真剣になることなく農業を営む‥。こんな中で、中2の佐和子の視点で4年間が4編に分けて綴られます。

     側から見て、或いは世間一般では「家庭崩壊」と捉えられる状況でも、「家族」としてつながり、一緒に過ごしていなくても、気付かないところで守られている‥。このことは、やはりある程度の人生経験があって初めて気付くことかもしれません。

     有難くも面倒くさい存在の家族、誰かに唐突に訪れる不幸、哀しさ・切なさと温かさの同居‥、この小説は〝人生の縮図〟のようです。
     瀬尾さんは、重い内容も軽やかに描き、家族のつながりの本当の意味を問いかけている気がします。「カタチ」の問題ではないんですね。
     自分の家族や周囲の人たちへの関わり方を振り返り、感謝の気持ちを思い出させてくれ、希望を与えてくれる物語でした。

  • ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、他の多くの画家が食卓を囲むように人物を配置したのにも関わらず、ダ・ヴィンチは片方だけに人物を並べたのが印象的な作品です。ダ・ヴィンチの意図は様々に分析されていますが、一方で、この作品では、父親が父親を辞め、母親が母親でありながら別居したという結果論で兄妹が食卓の片側に座るという光景が生まれました。

    『毎日決まった動きをしていたものがなくなる。それは人を不安にさせる。不安は人を動かすのだ。』人は同じことが繰り返されることがとても好きです。心地よく感じます。電車の乗る位置、トイレの場所、そして食事の着座位置。その場所に悪いイメージがないから、その場所にいた時幸福だったから、その時がかけがえのないものだったから、記憶に、思い出に引きずられてその幸福な瞬間に戻りたいと願って決まったことを繰り返す、繰り返したくなる。

    家族で食卓を囲むということは昨今少なくなってきているのかもしれません。家庭によって家族間の会話、コミュニケーションも様々だと思います。小林ヨシコが佐和子に家族のことを問いかけます『もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ』、日々の生活において、毎日を乗り切るために、生き抜くために、どうしても家族は後回しになりがちです。近すぎるから。絶対になくならないと思っているものだから。

    家族は家族の数だけ色があると思います。同じ色など決してない。サラサラと淡い色合いから、ドロっと濃い色味まで。そのどれもが家族であって正しい色なんてありません。中原家は一見バラバラでドライでみんな好き勝手に生きている、この家族は単に崩壊してしまっているだけじゃないかという印象しかなかったのが、後半になって色合いが変わって見えてきます。それぞれが色々な形で相手を思いやり、いたわって家族の絆で繋がっていることが見えてきます。なんだかとても素敵でうらやましくさえ感じられてしまう不思議さ。でもそれはこの家族を第三者として見ているから色合いが変わっていくように感じるだけで実際の彼らは何も変わっていないのかもしれません。状況に応じて色んな色合いを見せるもの、それが家族。みんなが最後に還る場所。

    なんだか自分自身にも問いかけられているような気がします。もう少し意識して大切にしよう、甘えてみよう、自分に投げかけられた言葉として家族と向き合ってみようと思いました。

  • お父さんは突然「お父さんを辞める」と言い出すし、お母さんは家を出て一人暮らし。
    兄の直ちゃんは、天才児なのに大学に行かずに農業団体で働いていて、晴耕雨読な生活を送っている。

    佐和子の家族は、あることがきっかけで歪んでしまったちょっとヘンな家族だけれど、お互いを尊重し合っていて、お母さんが不在でも朝食には全員が揃うとても仲の良い家族。
    これは中学から高校までの佐和子を中心に描かれる、家族の再生の物語です。
    実は重たい話なのに、瀬尾さんの手によってさらりと、時には面白おかしく切なく、いろんな要素を含みながら物語が進んでいきます

    直ちゃんには小林ヨシコという彼女がいて、佐和子には大浦くんというボーイフレンドがいて、彼らはとても個性的で心強い存在なのだけれど、家族はそれ以上に何年も何年もかけて共に歩んでいける、決してなくならない失くしてはいけない大切なものなんだなって思います。
    家族の大切さが優しく心に染み渡ります。

  • これが映画化されたのか。それすらも知らなかった。
    たしかにドラマチックだからいいのかもしれない。
    君の膵臓を食べたい
    もショックだったけど、
    これはないよなという展開だった。
    真っ直ぐで、ちょいとお調子者の大浦くんがよかった。
    彼の存在が、物語に活力を与えてくれていた。

    幸福な食卓に
    救われない哀しみがある。
    でも、こんな食卓がなかったらと思うと
    さらに救われない。

    幾多の困難を乗り越えられるのも
    家族の絆があればこそなのかもしれない。
    でもやはり
    少なくとも今は佐和子と同じように
    気持ちは沈んでいる。

  • 瀬尾まいこ 著

    「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
     まさに、「何それ?」と言って…
    唐突な、入り口から
    一気に興味を惹かれてしまった。

    コミカルな展開の話しかと思えば…結構、
    シリアスで人生の岐路に立ちはだかる問題に色々悩まされて、苦しんだり、悲しみに打ちひしがれる場面も数々あるのだけど、意外とこの家族は飄々とやり過ごしている感があるが…それは決して文字通りの意味だけではなく、きっと家族の皆が真面目で優しくて、
    軸がブレない家族だから 何だかサバサバした心地よい風を感じるのだと思う。

    父は父であることをやめ勉強しなおすと言い出し、神童だった兄は、かなり、優しい印象だが、少しずつ人生にゆがんでずれて、晴耕雨読的生活を送っている、母はある理由で家を出て一人暮らし、そして主人公の佐和子は、真面目で神経質…若さ故?過敏なところもあるが、本来優しい人格者。

    一風変わったように感じる家族が、結局、皆優しくて、互い互いの立場を尊重して生活している 
    善き家族だなぁと家族風景に羨ましくさえなったほどだ!
    きっと、この作品を描いてる作家、瀬尾さん自身が優しい人だからだろうなぁって何回も感じられた。

    本当は佐和子と同じ、鯖嫌いなのに、佐和子の分を食べてくれた中学校の転校生、板戸君
    「すごいだろ?気付かないところで中原って     いろいろ守られてるってことよ」
    その言葉に、何だか既に泣けちゃった( ; ; )

    高校生になって、大好きだった佐和子の彼氏の大浦君の呆気ない死の別れ…

    自分も若い頃に、好きな人が突然亡くなったという体験をしている。
    何か…思い出して、切なくなっちゃったよ。

    元気いっぱいで1ミリも死の兆しなんて見えなかった彼の突然の死の別れは とても一方的で、理不尽な感じがした。
    勿論、大浦君にしろ彼に罪はないのだけれど…。

    抗う余地すらない出来事って、それぞれの人の人生の中にあると思う。

    作品の中の佐和子のように、彼が亡くなった時は、空虚な感覚しかなく、食事も喉を通らない日々が続き、何度も何度も思い出の中の彼を引き出して涙してたように思う。

    それも佐和子と同じように、
    あの時、あーしてれば良かったとか、何故あの日、あんな風に言ってしまったんだろうとか 
    何で、もっと上手く立ち回れなかったんだろうか?いつまでも、後悔の念を繰り返し抱いて
    塞いでいた。

    でも、ある日気づいた!
    よくよく考えたら、自分に対する後悔の念ばかりじゃないか?と…
    死んでしまった彼が、私が後悔して、あんなふうにしたらよかったって事を本当に望んでたかどうかだって…もう確かめる術もない。
    結局、自分自身の彼に対する言動の自分への後悔だけじゃないか 亡くなった者には思い出の意識もない 生きてるから恥じたり、後悔するのだと。

    だから、どれだけ何か尽くしたとしても、残された者は後悔するのだと思う。
    後悔しても、その時に出来なかった自分も自分。 後悔するのは生きてるからだと思う。
    時間はかかっても、その後悔こそが、後に繋がる気づきなのではないかと思えた。
    佐和子は思う
    「私は大きなものをなくしてしまったけど、
     完全に全てを失ったわけじゃない。
     私の周りにはまだ大切なものがいくつか
     あって、
     ちゃんとつながっていくものがある」

    だよね…
    生きているうちは、なるべく、後悔する事のないように 気付かないうちに
    まわりに守られているということに感謝しながら、謙虚に…生きよう。

    出来れば、残された者が「幸福な食卓」を
    思い出せるような生き方したいなぁって
    素直に感じさせてくれた作品でした。

    • Macomi55さん
      hiromida2さん、初めまして。この度は、「いいね」有難うございました。
       私はこの作品、読んでないですが、私もhiromida2さんと...
      hiromida2さん、初めまして。この度は、「いいね」有難うございました。
       私はこの作品、読んでないですが、私もhiromida2さんと同じ経験をしており、思わず、レビューに引き込まれて読ませて頂きました。
       本の主旨とは異なるかもしれませんが、その人が亡くなったことで悲しいということは、それだけ幸せだったということだと思いますし、そのことに気付かせてくれたことが、彼からの最後の大きな贈り物だったと思います。
      紹介して下さって有難うございました。是非、読んでみたいと思います。
      2021/01/25
    • hiromida2さん
      Macomi55さん、こんにちは。初めまして。
      あたたかいコメントありがとうございます。
      同じ体験をされてたなんて…!余計に通ずる思い感じま...
      Macomi55さん、こんにちは。初めまして。
      あたたかいコメントありがとうございます。
      同じ体験をされてたなんて…!余計に通ずる思い感じました。本当ですねMacomi55さん、
      悲しいと感じるのは亡くなった人から幸せ時間をもらったことですね。しみじみ。
      瀬尾まいこさんの本は優しくて悲しみもあるけど、和めます。また是非読んでみて下さいね(^.^) 今後とも、よろしくお願いします
      また、本棚にお邪魔させて頂きます♪
      2021/01/25
  •  その日まで、共に過ごした人が突然亡くなる。信じられない。周りの人は慰めてくれようとするけれど、自分の心が軽くなることは無いし、心が軽くなったり、時と共にその人がいないことに慣れてしまう自分を想像することにも耐えられない。忘れることが怖くて、四六時中、その人のことを思い出している。
     愛する人が突然亡くなるってそういう気持ちだ。
     「父さんはさ、死にたかったのに、失敗してずっと生きてる。だけど、大浦くんは死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。死にたい人が死ななくて、死にたくない人死んじゃうなんて、おかしいよ。そんなの不公平だよ。」
     “父さん”だって大切な存在だろうに、そんなこと言う気持ち分かる。彼以外の人の存在なんてどうでもいいのだ。その時は。
     だけど、父さんも直ちゃん(兄)も母さんもそんな佐和子を責めない。それどころか、明るくしていても精神を病んでいた家族たちが、一人一人佐和子のために、自立し始める。
     「父さんを辞める」なんて言っていた父もそれが甘えだったと気づいたのか、仕事と「父さん」に復帰し、兄もきっちり自分の恋愛に向き合い、佐和子は嫌いだった兄の彼女と心を通わすことが出来るようになる。
     そして、大浦君のお母さんや弟とも。
     その人が亡くなったことで、その人の人生は終わってしまったけれど、彼の周りの人と温かく繋がっていられる時、そして自分の大切な人たちの存在にも気づけた時、その人がどれだけ大きな幸せをくれていたかが分かる。
     今日という日はかけがえないのない日だ。だから、お互いを労り、日々の食事一つも大事にして大切に過ごそう。
     

  • ベルゴさん、さてさてさんの本棚から図書館予約
    やっぱり 瀬尾まいこ は読後感がいいな

    へんな家族
    まあへんでない家族ってないかなあ
    愛しくてやっかい

    それぞれの方向を向いていた四人がそれぞれ悩み
    またある方向を目指す

    佐和子と大浦君
    なんかね、なんか予感がしてたのよ

    ≪ 向かい合う 四人の食卓 それぞれに ≫

    • ベルゴさん
      この本 妻の買い物待ち中に読んでたら
      危うく その場で泣きそうになりました(笑)
      この本 妻の買い物待ち中に読んでたら
      危うく その場で泣きそうになりました(笑)
      2023/07/03
    • はまだかよこさん
      ベルゴさん、うるっときましたよね。

      いつもレビュー拝読しております。

      ※だから結局俺が何を言いたいかって言うと…
      っていうとこ...
      ベルゴさん、うるっときましたよね。

      いつもレビュー拝読しております。

      ※だから結局俺が何を言いたいかって言うと…
      っていうところが大好きで(^^♪
      にんまりと……

      これからもよろしくお願いいたします。
      コメントありがとうございました。
      2023/07/04
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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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