ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

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  • 講談社 (2007年4月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784062756938

作品紹介・あらすじ

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している〈創作者の家〉。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた――。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。(講談社文庫)


読めば読むほどいとおしくなる。
胴の1・2倍に達する尻尾の動きは自由自在、僕が言葉を発する時には目をそらさないブラフマン。
静謐な文章から愛が溢れだす。

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している〈創作者の家〉。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた――。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。

朝日を遮るものが何もない庭の真ん中に、2人で寝転がる。僕は草の上に、ブラフマンは僕のお腹の上に。
みぞおちに頭を埋め、首の後ろをベルトのバックルで固定し、下腹にお尻を載せている。少しでもたくさん光を浴びられるよう、脚は4本とも水かきを開いてだらんとさせている。僕が深呼吸すると、膨らむ下腹に合わせてうまくお尻をくねらせる。――<本文より>

第32回泉鏡花賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  • “夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。”

    その子犬のような小さな生き物は、痩せて傷つき、震えている

    “最初に感じ取ったのは体温だった。
    そのことに、僕は戸惑った。
    朝露に濡れて震えている腕の中の小さなものが、こんなにも温かいなんて信じられない気持ちがした。
    温もりの塊だった。”

    それから僕はブラフマンとの濃密な日々を過ごしていき、彼の生態について詳しく記録していくのだ。

    ※ブラフマンの尻尾
    ※ブラフマンの眠り方
    ※ブラフマンの食事
    ※ブラフマンの足音
       ・
       ・ 
     そして最後は……
    ※ブラフマンの埋葬

    なんて愛おしいのでしょう。
    愛情しかありません。

    この物語の世界はとても美しく静か。
    自然に囲まれた小さな村は、死者たちの世界のようで現実味がない。
    古代墓地にいくつも転がる石棺や墓標。
    埋葬人の見張小屋。
    過去も未来も持たない僕。
    この静けさや曖昧さが、なんとなく村上春樹の世界を思わせる。

    その中で、ブラフマンの存在が生き生きと生命力に溢れているのだ。

    170頁程の文章には、想像を巡らせるのに充分な余白と余韻があり、胸の奥深くに沁みていく。

    あぁ、私達は生きているのだな。



    ※この本は、いるかさん・地球っこさんに「小川洋子さんの好きな作品」として教えて頂いた中の一冊です。
    ありがとうございます♪

    • aoi-soraさん
      いるかさん、こんばんは^⁠_⁠^
      きれいな文章でした。
      水彩絵の具で描いたみたいな風景の中で駆け回るブラフマンが愛おしい。
      題名から結末が予...
      いるかさん、こんばんは^⁠_⁠^
      きれいな文章でした。
      水彩絵の具で描いたみたいな風景の中で駆け回るブラフマンが愛おしい。
      題名から結末が予測できるでしょ?
      その上で読み始めるってのがまた切なかった。
      素敵な作品を教えてくれてありがとう。
      私も同じく感謝です!
      (⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+
      2023/09/19
    • 地球っこさん
      おはようございます!

      素敵なレビューに、朝からじーんと浸ってます。
      小川洋子さん、やっぱりいいな。
      私も読んでみたいと思います。
      おはようございます!

      素敵なレビューに、朝からじーんと浸ってます。
      小川洋子さん、やっぱりいいな。
      私も読んでみたいと思います。
      2023/09/20
    • aoi-soraさん
      地球っこさん、おはようございます♪
      まだフワフワと物語の世界を漂ってますよ(笑)
      なんか後を引くの
      小川洋子さんの作品、少しずつ読んで行こう...
      地球っこさん、おはようございます♪
      まだフワフワと物語の世界を漂ってますよ(笑)
      なんか後を引くの
      小川洋子さんの作品、少しずつ読んで行こうと思います。⁠◕⁠‿⁠◕⁠。
      2023/09/20
  • 最近のエッセイ集「遠慮深いうたた寝」の中で、
    「ブラフマンの埋葬」ほど、のびのびと書けた小説はない。
    と振り返られていた作品。

    南仏の小さな町が舞台のようだ。
    登場人物は、僕、碑文彫刻師、雑貨屋の娘、レース編み作家、ホルン奏者その他数名。
    名前が出てこないだけでなく、人物像もほとんど説明されない。
    名前があり詳しく描写されるのは『謎』の生物「ブラフマン」だけ。
    だが「ブラフマン」の正体は最後までわからない。

    ストーリーも無いに等しい。
    夏の初めに「ブラフマン」に出会い、ひと夏を一緒に過ごし、秋の初めに亡くなった「ブラフマン」を埋葬する。
    簡単に言えばこれだけの話。

    ブラフマンとは何かを調べてみると、
    個の根源であるアートマンに対して、宇宙全体の根源をブラフマンというらしい。
    主人公の僕は芸術家たちの創作の場である<創作者の家>の管理人だ。
    小川洋子さんは、芸術家たちを「アートマン」としてみたときに「ブラフマン」の存在を感じたのだろうか。

    でも「ブラフマン」が死んでしまって「アートマン」たちが埋葬するって逆じゃないの?
    この物語の意味を考えすぎると宗教的になってしまう。

    ずっと「ブラフマン」て何だろうと思いながら読んでいた。
    そして何だか分からないまま突然死んでしまった。
    「ブラフマン」は『謎』の生物だ。
    世の中いろんな謎が現れたり消えたりしているということなのだろう。

  • さてさてさんが本書をアップしたので、13年前に書いたこの書評を思い出した。この時は、父親が死ぬ間際で毎日朝と夜に看病をしていた。思えば、この頃、まだ我が家族には父も兄もいた。‥‥結局犬は飼わなかった。


    いまだかつて犬も猫も飼ったことはない。犬に関してはトラウマがある。三歳の頃、犬のオバケに食われる夢を見た。それが私の覚えている最初の夢で、以来オバケのQ太郎にはずっと親近感を覚えていた。二歳上の兄たちが父親に反対されて犬ころを裏山の砂ダムの近くで長い間飼っていたことがある。いつの間にかいなくなったようだ。生き物は飼ったことはある。10歳の頃、番の文鳥を手乗りにすべく、ヒナから飼った。手乗りの練習をしているとき、ある日窓から飛び出した。そのまま野生化してくれればいいのだが、彼らは家の周りで時々見つけた。おそらく餓死したに違いない。これもひどいトラウマになった。そういえば、夜店で飼った金魚を死なせて、金魚の墓を母と一緒に作ったこともあったけ。


    ‥‥最初に感じ取ったのは体温だった。そのことに、僕は戸惑った。朝露に濡れて震えてている腕の中の小さなものが、こんなにも温かいなんて信じられない気持ちがした。温もりの塊だった。‥‥

    物語は<僕>が裏庭で瀕死の生き物を見つけたところから始まる。どんな種の動物なのかは最後まで明らかにはされない。犬ではない。水かきとひげを持っていたのだから。<僕>はこの生き物に<ブラフマン>-謎と言う意味-と名づける。ブラフマンはしだいと元気になっていく。

    ‥‥ブラフマンはどこにいるのか。机の下の暗がりに隠れている。僕と視線が合うと、自分の一番可愛い顔を見せようとするかのように、大きく目を見開いて瞬きさえしない。自分もたった今、ここへ置き去りにされたばかりで、何がどうなっているのか分らないのです、という表情をする。

    やはりブラフマンは目をそらさない。僕が言葉を発するとき、目があっていなければ、その言葉は中をさ迷ってどこにもたどり着けない、と信じている。‥‥

    ブラフマンの目は赤ん坊の目のような気がする。何の邪心もない。それと同じような目を、私は最近毎日毎日病室で出会っている。ブラフマンも、赤ん坊も、病室の男の目も、気負った欲望はなくて、まっすぐに見つめてくる。命そのもの、と言えるだろう。

    <僕>はブラフマンと相対し、ひと夏の貴重な経験をする。

    私はこの本を読んだあと、犬を飼いたいと切実に思うようになった。既にトラウマは解消しているから飼えるだろう。隣が兄貴の家だから、数日家を留守にしても頼んでいけるだろう。<命>と<死>は隣り合わせである。ならば、命の素晴らしさを感じてみたい。
    (2008年3月8日記入)

    • さてさてさん
      kuma0504さん、こんにちは。
      私のレビューが起点となったようで恐縮です。私も犬や猫は飼ったことがありません。なのでこの作品のように飼...
      kuma0504さん、こんにちは。
      私のレビューが起点となったようで恐縮です。私も犬や猫は飼ったことがありません。なのでこの作品のように飼っている対象を見る心持ちというのは実際には理解できていません。この作品のブラフマンはとにかく謎でイメージすればするほどにこんがらがってしまいましたが、生き物を飼うということは命というものを身近に理解する一つの機会なんだと思いました。動かなくなったら電池を交換してとか、修理をしてとか、そういったものではないということの理解、頭では分かっていた生き物とは何かを感覚として理解する一つの機会。私は環境的に飼えなさそうですが、ブラフマンの存在は心に沁みました。
      2021/08/30
    • kuma0504さん
      さてさてさん、こんばんは♪
      うちの父は、約4ヶ月つきっきりで看病しました。血行をよくするために、毎日1時間以上足のツボを押さえたり。その時は...
      さてさてさん、こんばんは♪
      うちの父は、約4ヶ月つきっきりで看病しました。血行をよくするために、毎日1時間以上足のツボを押さえたり。その時は大変だったのですが、結局、ものすごく貴重な体験をしました。あの父親が初めて「ありがとう」と、私に言ったのです。つぶらな瞳を何度も見ました。感謝しています。
      2021/08/30
    • さてさてさん
      kuma0504さん、記憶に残る一冊であられたのですね。13年前の書評、貴重なものを発掘させていただいたというところでしょうか。ありがとうご...
      kuma0504さん、記憶に残る一冊であられたのですね。13年前の書評、貴重なものを発掘させていただいたというところでしょうか。ありがとうございました。
      2021/08/30
  • 小川洋子 著

    なんて素敵な小川洋子さんならではの世界に
    誘ってくれる作品なんだろう。
    やっぱり、この世界観好きだなぁと思う。
    出だしの頁から既に誘われ、何処か知らない外国の土地に降り立って、物語の登場人物達に出会ってしまうのだ。
    最初に姿を現した僕は、、少年かと思った。
    そして朝早く裏庭のゴミバケツに潜んでいた動物らしきものは子犬かと思ったけれど…
    予想は少しずつ外れてゆくが、それすら気にならないくらい、どんどん物語に引き込まれてゆく。
    目をあけていられないほどの眩しい夏でも緑の匂いがする。泉がある。
    静謐な雰囲気に漂いながら物語りを読む。
    どうやら、少年は青年であるらしい。
    そして、物語りの中で唯一名前を持つ僕が飼うことになったブラフマンは最初、子犬かと思ったけれど…違う生き物(動物)らしい。
    最後まで、ブラフマンの正体は明かされてはいない。ブラフマンの容姿とも特徴とも言える表記には、途中⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄ンッ?かなり驚いた部分もある₍ᵔ·͈༝·͈ᵔ₎

    とても気になるんだけど…それ以上に自分の中の想像の中のくりっとしたチョコレート色の小さな瞳で僕を一番信頼して見ているブラフマンが愛らしくて見守っていきたいと強く感じてしまう(⑉︎• •⑉︎)♡︎

    解説で書かれていたけれど…
    “全編に漂う不可思議な雰囲気の中核をなすのだけれど、それ以上に、名前のない人間たちこそ、夢のなかで出会う行きずりの人物のように謎めいている。”
    小川洋子さんの不思議な空気を纏う物語りはいつもそうだ。
    その空気感の中にずっと漂っていたい気分になってるときに、いきなり、とても具体的にその姿の繊細な部分を描いていたり、さらりと深い悲しみをもたらす。
    いつも、優しいような思いがけない場所に連れて行かれるような感覚がする。

    それにしても、この厄介でいたずらっ子の相棒ブラフマン。この作品を読めば、きっと
    愛おしくなるに違いない。

    • 松子さん
      ブラフマン…宇宙人なのかな?_φ(・_・
      ブラフマン…宇宙人なのかな?_φ(・_・
      2022/11/26
    • hiromida2さん
      ꉂꉂ(๑˃▿︎˂๑)ァ,、'`違うよ๑´•.̫ • `๑꒱
      ꉂꉂ(๑˃▿︎˂๑)ァ,、'`違うよ๑´•.̫ • `๑꒱
      2022/11/26
  • 犬や猫のようなペットを飼ったことがないのに僕とブラフマンとの触れ合いを読むと、感触やしぐさがわかるような、体験したことあるような気持ちになった。哀しみも静かに受け止める人達。小川洋子さんの物静かで少し悲しい予感のする世界を味わう。

  • 僕とブラフマンの幸せな日々。だけどそれは終わりに向かっていた。皮肉にも僕がきっかけを作った思いもよらぬ原因で。現実にはこういうこともある、という教えにも受け取れた。
    創作者の家の泉でブラフマンは美しく泳ぐ。落ち葉の上で転げ回ったり、どんぐりを拾って森で遊ぶ。一つ一つの場面が浮かんで美しい世界が輝やきました。
    (おそらく)自然界で居場所のなくなったブラフマンは優しい僕の元にやってきた。心が清らかすぎる青年、僕は社会で生き辛く感じていたのかもしれない。似たもの同士。
    ブラフマンは僕の元で過ごせて、僕に抱かれて息絶えて幸せだった。
    創作者の家の管理人僕は、自分も究極の創作物をと、
    最高の埋葬でブラフマンに愛情表現をする。
    ラストは泣けてしかたない。
    最初で最後のたった一回きりの、ブラマンの声。どんなだろうと想像するのは辛すぎた。

    レース編み作家の人間性が素晴らしいと思った。最初は冷たく感じもしたが、言っていることは真っ当だし、最後は限りない優しさを見せる。
    淡々とした中に、優しさと残酷さがありとても心に染みました。現実逃避できそうな物語。周りの人に優しくしようと思えました。

  • 場所は日本なのか?登場人物は日本人なのか?それとも外国の話なのか?ブラフマンと名付けられた動物は猫なのか、野生動物なのか?最初から最後まで想像力をあちらへこちらへと働かせながら読書する絵のない絵本のような小説でした。
    人生経験を総動員して小説中の情景を想像する。その情景をこれまで見聞きした人物、生き物、映像に当てはめる。あまりいい読書の仕方ではないなーと思いつつ、情景にあった映像パズル探しが覚醒しました。たぶん作者の意図に沿った映像を半分も見つけられなかったと思いますが、勝手に想い描いた映像を構成すると立派な映画が自分の中で出来上がっていました!
    読書をする際に自分の感性を信じて読みひたることの心地良さを教えてもらったような気がします。
    中学生に読んでもらいたいな〜

  • 夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。
    ブラフマンという名前をつけてくれたのは、<創作者の家>に工房を持つ碑文彫刻師。『謎』という意味である。
    ブラフマンが何の動物かは、最後までわからない。
    傷の手当てをし、溢れんばかりの愛情を注いだ青年の期待に応えるように、ブラフマンはどんどん活発に動き回るようになる。
    森で走り回り、泉で泳いだブラフマンとのかけがえのない日々。
    けれどそれはほんのひと夏の出来事に終わってしまった。
    愛おしさに胸が熱くなり、切なくて泣けてくる。
    そして、骨董市で買った白黒の家族写真が、妙に気にかかってしまう。

  • 創作者の家の管理人は,傷を負った謎の生物と出会う。登場人物は全て名無しだが,謎の生物だけブラフマンという立派な名を貰う。ヤンチャなブラフマンの死の直後,心理描写が消え,この世の終わりのような喪失感。

  • あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している<創作者の家>。
    その家の世話をする「僕」の元に、ブラフマンはやってきた。
    サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、小さな生き物と触れ合い、見守ったひと夏の物語。


    文章だけ読んでいると子犬のようにも思えるけれど、水かきを持っていたりする謎の生き物、ブラフマン。そのブラフマンとのひと夏を綴った物語です。
    ともに過ごした時間は短いけれど、ブラフマンを愛おしむ僕の感情や、確かにあった絆が丁寧に書かれていて、小さな世界のささやかな話だけど心に刺さります。

    こんな優しい物語の果てを、読者目線ではタイトルで既に知ってしまってはいるんですが、どうかその時が来ないように。この小さな幸せがずっと続けば良いのにと願わずにはいられません。
    それでも終わりは訪れて、しかも想像とは違った形でなかなかショッキング。閉じた世界(理想の世界)から外界の物を望んでしまった時(欲望を知ってしまった時)、楽園は壊れてしまう、みたいな。楽園の追放とかそんなメタファーなのかな、とぼんやり感じました。

    ***

    冒頭で登場人物(?)の行く末を知ってしまうという点で、同作者さんの『人質の朗読会』(中公文庫)を思い出しました。
    最期を知っていてこそ感じるものもありますよね。こちらも素敵なお話なのでぜひ。

  • ブラフマンという生き物との生涯、作中にブラフマンはなんの生き物なのか明らかにされていないのですが、毛があって耳があって尻尾もあって…確かに生き物で、それが忠実だけどヤンチャな、もふもふとしたイメージを与えられました。
    犬かな?と想像しましたがもしかしたらタヌキかもしれませんしはっきりと分かりません。
    それが、この物語でブラフマンという生き物を、人と対等な関係、つながりを表しているような気になり、犬でも猫でもタヌキでも、ブラフマンはブラフマンなのだと思わされながら読み進め、気がついたらブラフマンにとっても愛着が湧いていました。
    このように想像を掻き立てられるのも純文学の特徴なのでしょうか、心地が良かったです☺︎

    小川洋子さんのワードチョイスというか、物語に出てくる言葉がやはり独特な世界観を生み出していると再認識しました。
    レース編み、創作者の家、彫刻師だとかそういうものを毎回小説で目にするのですが、この世界観が大好きです。

    物語として何か展開があるものではなく、ブラフマンとのかけがえのない日々といったような物語でした☺︎

  • 小川洋子さんの小説はいつも不思議が詰まっている。
    ここはどこなの?
    この人はなんていう名前なの?
    この動物は何?
    たくさんの想像力をつかって、たくさんの優しさをもらって、たくさんの尊さを得ました。
    次読んだら違う感想を持つのかな。

  • 舞台は、田園風景が広がる南仏のどこかの村。作家や音楽家、陶芸家など創作活動に励む芸術家が集う「創作家の家」の管理人を託された青年と、迷い込んできた仔犬のような、謎の生物<ブラフマン>との触れ合いを通し描かれた、幻想的で優しさと切なさに包まれた<小川洋子>さんの泉鏡花賞受賞作。〝「謎さ」と、碑文彫刻師は答えた 「どこの言葉?」 「・・・サンスクリット語だって言ってた気もする」「どう読むの?」「ブラフマン」「うん、いいね。これにするよ」〟・・・黒いボタンのような鼻、指と指の間の水かき、吠えないブラフマンとは?

  • ぼくがブラフマンを大事に思っていることを
    読者に伝える表現の仕方が、
    こんなにたくさんあることに驚いた。

    そして物語が進んで
    ブラフマンを愛しく思う気持ちが高まるにつれ、
    きっと来る(と、読者は題名で知っている)
    ブラフマンとの死別のことを考えて
    不安とか緊張とか、
    心のざわめきが強くなってくるのを
    感じながら読んだ。

    「静謐」ってよく表現される小川洋子さんの文章、
    個人的にとても好きだなぁ。
    淡々と綴られるからこそ
    小さくて鋭くて品のいい痛みが
    感じられるというか。
    博士の愛した数式をまだ読んでないので、
    読了即Kindleで買いました。

  • あらゆる種類の芸術家が集う〈創作者の家〉。その管理人である〈僕〉と、肉球と水かきを持つ謎の小動物〈ブラフマン〉との、ひと夏の邂逅そして別れを描く。南仏を思わせる架空の村を舞台に、物語は〈僕〉の抑制のきいた一人称で、水彩画で描かれた大人の絵日記のように淡々と静かに進んでゆく。

    正体不明ながらも愛くるしいブラフマンと、〈僕〉の心の交流が物語の主成分となっている。しかし、これを心温まるハートフルストーリーと呼ぶのは少し違うように思われる。物語の始めから終わりまで繰り返し現れるのは、取り繕いようのない死の気配だからだ。古代墓地、石棺、埋葬人、碑文彫刻師、身寄りなく死んだ老人の所有していた家族写真、そして生活感を全く感じさせない登場人物たち。

    生身の肉体を感じさせるのはブラフマンと、〈僕〉が思いを寄せる雑貨屋の娘だけだ。しかし、ブラフマンは予めタイトルで死が暗示されており、いくら愛らしくともこの蜃気楼のような村の無自覚な虜囚であることから免れないように思われる。雑貨屋の娘だけが虜囚であることに満足せず、生身の人間らしい欲望に従って村から飛び出していこうとするが、その陳腐で無遠慮な生命力の前に、ブラフマンの存在はあっけなく掻き消されてしまう。

    ハートフルストーリーとしてはあまりに仄暗い物語は、しかしどこか遠い国のお伽話めいて、誰を罰するでもなく何を嘆くでもなく淡々と終幕を迎える。ここではこの世の価値基準は無効化され、ただ夢のような読後感と無常感が読者に残されるのみだ。この作品が受賞したのが直木賞や本屋大賞ではなく、泉鏡花文学賞だったというのはさもありなんと言うべきだろう。

  • 淡々と過ぎて行く孤独な日々で、いつも傍らにいたブラフマン。あまりにも唐突な事件に言葉を失ってしまった。読みながら涙が止まらなくなった。ずっと大事にしたい作品。

  • 美しく、静謐な物語だった。
    ブラフマンがどういう生き物であるか、丹念に観察し、文字として記録を残してゆく。そう、まるで「謎」を一つ一つ解き明かしてゆくように。
    しかし、雑貨屋の娘の心に入って行こうとした時、世界は崩れ去る。世界は、解き明かされない「謎」を残したまま、驚くほど小さな石棺の中に姿を隠す。
    そして後に残るのは、再びの静寂。
    失ってしまったものは、戻らない。世界の謎は解き明かされない。ただその尻尾の先に触れることが出来るのみなのだ。

  •  小川洋子さんの作品を読んでいると、やはり他の作家の方々とは一味違う、静けさのようなものを感じずにはいられない。あとがきにもあったが、まるで夢のようである。
     小川洋子作品の特徴として、登場人物の素性がわからないという点は誰もが知る所だろう。この点があるために、登場人物の感情に入り込みすぎず、夢を見ているように、俯瞰的に作品と向き合えるのかも知れない。

  • なんとも不思議な空気感の作品でした
    絵のない絵本を読んだような

    謎の生物『ブラフマン』
    ただ、登場者のなかで名前があるのは、この謎の生物だけ
    具体的な生物名が明かされている訳ではないので、想像するにブラフマンは可愛い・愛くるしさを持った存在。なによりも主人公に愛されているし、ブラフマンも信頼している感じが伝わってくる。
    だが、ブラフマンは主人公が想いを寄せている娘の運転する車に轢かれてしまう。
    そこから主人公の感情の描写が消えたように感じた。
    ブラフマンの葬儀にその娘は来ず、ブラフマンを毛嫌いしていたレース編みの老婆がきている。
    なんか、ここの描写に心がザワ付いた。
    人の心の奥にあるものが表に出る時って、その人の本質を表してるなって。

  • 最後 悲しい
    ブラフマンて何のことなんだろうと、普段あまりしない読み方をした。
    不思議な気持ちになった。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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