ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2483
レビュー : 330
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756938

作品紹介・あらすじ

読めば読むほどいとおしくなる。
胴の1・2倍に達する尻尾の動きは自由自在、僕が言葉を発する時には目をそらさないブラフマン。
静謐な文章から愛が溢れだす。

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している〈創作者の家〉。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた――。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。

朝日を遮るものが何もない庭の真ん中に、2人で寝転がる。僕は草の上に、ブラフマンは僕のお腹の上に。
みぞおちに頭を埋め、首の後ろをベルトのバックルで固定し、下腹にお尻を載せている。少しでもたくさん光を浴びられるよう、脚は4本とも水かきを開いてだらんとさせている。僕が深呼吸すると、膨らむ下腹に合わせてうまくお尻をくねらせる。――<本文より>

第32回泉鏡花賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  • 小川洋子さん第1作
    作風が心に馴染んでとても好きだと思った
    そよ風、牛乳、円やかで少し外国っぽい表現だなとも思った
    悲しいことも描くけど、憎悪や絶望を抱くのではなく、すべて受け入れて流していくような優しい世界だった
    ブラフマンと主人公の関係も素敵だった
    吉本ばななさんに似ている

  • ファンタジー

  • 久しぶりに本を読みました。最近映画を観ることが多かった。
    やっぱり落ち着くし、目が疲れないからいいなあ。

    久しぶりに本を読んだので、読みながら、自分が本を読む意味って何だろう?というところから考えていました。
    私の場合は、まず一つに綺麗な文章を眺めたいから…というのが強そうです。クラシック音楽を聴くように、美してくて現実離れしたものを取り入れることで、リフレッシュしている。
    二つ目に、自分の無意識が何に向いているのかを自覚するツールに使っているようでした。
    今回の「ブラフマンの埋葬」に関しては、私の無意識は「自分」というものに向いていました。
    終始、ブラフマン=「僕」の分身という読みになっていたためです。

    不器用で醜く、人から嫌われる「ブラフマン」。「僕」とは戸惑いとともに出会い、調和していく。共に侵略者と戦うも、最後は死に向かう。
    創作者の家が「僕」の箱庭的位置だとしたら、少女もまた侵略者であり、ブラフマンはそれから守ろうとしている。

    疲れている時に読んだら、また違う感想が出てきそうだなと思います。

  • 小川洋子の小説はいつも死がそばにあり、時に死そのものでもある。静けさが漂う作品も多く、この作品では「らしさ」を存分に堪能できるのではないかなと思う。通勤電車で読んだが、短い物語なので、休日の夜中など音の少ない時間にじっくり読むとさらに世界に深く居れるかもしれない。

    この世界もどこか淡白で、静かで、無国籍だ。そこに色濃く浮かび上がるのがブラフマンである。現実でも命の終わりのあっけなさを目の当たりにする機会は多い。そして愚かなことに人はすぐに忘れる。つらく苦しい記憶は忘れないと生きていけないのだという。

    生死の境は本当にわずかなものでしかない。最後に並ぶ言葉は、淡々とした事実と愛おしさのみである。小さな死を取り巻く登場人物たちは、目の前の出来事がこの世の真理だと知っているかのようで、取り乱す者はいない。ただ、特別な存在が去る悲しみは確かに散らばっている。

  • 第32回(2004年度)泉鏡花文学賞受賞作品。
    主人公は、芸術家が滞在する「創作者の家」の
    管理人。ひょんなことから、生き物を飼うことになる。
    ブラフマン(サンスクリット語で謎)と名付け、
    その実際、謎の生物であるブラフマンと
    過ごす穏やかな日々が描かれている。

    その穏やかな日々は、主人公が好意を寄せている娘に
    よってあっけなく終わってしまう。悲しく凄惨な
    終わり方のはずなのに、それすらも小川洋子にかかると
    穏やかに締めくくられる。

    もう15年も前の作品なんですね。
    そのことに驚いてしまいました。

  • 『あたたかくて、せつなくて、いとおしい。極上の文学世界をご堪能ください。』
    胴の1.2倍もある尻尾、大理石の様な模様の茶色い毛皮、泳ぎが得意 etc.
    ブラフマンの細かな描写はあるものの、何の動物か分からないままっていうのが非常にもどかしい。
    アライグマかビーバーか?なんて想像もしましたが、案外架空の生き物だったりして。

  • 山と川に囲まれた村にある〈創作者の家〉には,作家や彫刻家,演奏家といった芸術家が逗留する。そこで住む込みの管理人をしている僕は,ある日森で傷付いた小動物を救い,「ブラフマン」と名付けて一緒に暮らすことにした――四つ足で歩き,長い尾を持ち,上手く泳ぐための水掻きを持ち,ひまわりの種を好んで食べるこの小動物は一体何者なんだろう――。トイレを教え,家具を噛まぬように躾け,甘えるのをなだめ,暗闇を恐れるブラフマンを抱いて眠る。そして小説のタイトルは『〜の埋葬』である。謎めいた物語。寓話なのか?
    (乃木坂文庫版,表紙は久保史緒里さん)

  • まるで映画を観ているかのように風景が浮かんできた。あたたかくてせつなくてそれでいて穏やかで静かな読後感でした。どこからか感じられる主人公の孤独のようなものに惹かれました。

  • 泉鏡花賞、解説:奥泉光

  • ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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