黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.79
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本棚登録 : 6206
感想 : 519
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756945

作品紹介・あらすじ

華麗なる恩田ワールドの結晶
「魔女の家」で――今、あたしは1人だ。
1人きりで戦うのだ

強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。奇妙な遺言に導かれてやってきた高校生の理瀬を迎えたのは、優雅に暮らす美貌の叔母2人。因縁に満ちた屋敷で何があったのか。「魔女の家」と呼ばれる由来を探るうち、周囲で毒殺や失踪など不吉な事件が起こる。将来への焦りを感じながら理瀬は――。

感想・レビュー・書評

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  • 理瀬シリーズの一冊。

    百合の匂いに包まれた洋館は魔女の家?この洋館で転落死した祖母の遺言の謎、噂、毒殺や失踪など、高校生の理瀬を取り巻く百合の強烈な香りと不穏な空気。
    このどこか幻想的な現実と非現実が溶け合うような世界観に今回も魅了された。

    良いなぁ、このグレーのヴェールがかかったようなすっきり霧が晴れないような世界観。

    存分に味わいながら導かれた終盤は驚愕の秘密を抱えた洋館の正体といいラストのラストまで目が離せない展開だった。

    理瀬が急に大人の階段を登り始めた気もしたな。今回はちょっと淋しさも感じつつ読了。

    • yyさん
      くるたんさん
      レビューを読ませていただいて、この作品を読んだ時の "毒” に酔った感じを思い出しました。むせかえるような百合の香りのする、...
      くるたんさん
      レビューを読ませていただいて、この作品を読んだ時の "毒” に酔った感じを思い出しました。むせかえるような百合の香りのする、怖い感じ。『麦の海に沈む果実』はお読みになりましたか? 私は続けて読んだので、ぞくぞくしました。
      2021/04/19
    • くるたんさん
      yyさん♪コメントありがとうございます♪
      毒!たしかに毒を感じる不穏な世界でしたよね。女の怖さも。
      麦はだいぶ前に読了していますが、また再読...
      yyさん♪コメントありがとうございます♪
      毒!たしかに毒を感じる不穏な世界でしたよね。女の怖さも。
      麦はだいぶ前に読了していますが、また再読したくなりました♫
      このシリーズは不思議な魅力がありますね、
      来月の新刊も楽しみです♡
      2021/04/19
  • 「魔女の家」と呼ばれる謎めいた洋館、白百合荘。
    そこに住むのは、理瀬と血の繋がりのない義理のおばさん、梨南子と梨耶子。
    一年前に祖母が転落死し、奇妙な遺言に導かれてこの家にやって来た高校生の理瀬。
    理瀬の従兄弟の稔と亘。
    毒殺や失踪などの不吉な事件が起こり、近隣に住む理瀬の友人朋子や、弟の慎二、朋子の幼馴染の雅雪にも目が離せない。

    悪は全ての源なのだ――善などしょせん悪の上澄みの一部に過ぎない
    という言葉が心に突き刺さる。
    この物語の中では、誰もが演技をし、誰もが噓をついているようで、まるでお芝居をみているかのようだった。
    これぞミステリーの醍醐味。面白くて、あっという間に読み終えてしまった。

    人間の魅力というのは、一筋縄ではいかないものだ。
    ということは、悪もその人の魅力のひとつになるということなのだろうか。

    ミステリアスで魅力的な人物が登場する理瀬シリーズ、まだまだ読んでいきたい気がします。

  • 「三月は深き紅の淵を」の次に「麦の海に沈む果実」を読みました。これは逆でも良いと思います。でもこの「黄昏の百合の骨」は「麦の」の後に読まないと、「麦の」の前半が台無しになってしまいます。

    なんと言ってもこの作品は一にも二にも理瀬だと思います。「麦の」で主人公・理瀬に感情移入していた人はそもそも「麦の」の最後に放り出され、そしてこの作品でトドメを刺されます。
    「しょせん、あたしは善人にはなれないのだ。」
    こっちの世界とそっちの世界。理瀬という女の子にダークなどこまでもダークなヒロインの片鱗をそこかしこに感じさせながら物語はゆっくりと進んでいきます。でもそんな理瀬の周りで蠢く人間模様はさらに複雑です。一体誰が味方で誰が敵なのか。誰がこっち側で誰がそっち側の人間なのか。血生臭い闇がずっと見え隠れするなんとも言えない世界観。書名の「骨」の一文字が物語に隠された闇を暗示し続けます。

    最後の最後までどんでん返しに継ぐどんでん返し、あまりに予想外の展開続きに自分の感覚まで信じられなくなっていきます。まさか、まさかの連続。そして、最後に新たな物語が胎動し始めるかのような予感を残しながら幕を下ろします。

    「麦の」のようなファンタジーっぽい雰囲気もなく、これはミステリーです!という感じの作品でしたが、それを恩田さんも意識されたのか、この作品では、いつもの如く散々に散りばめられた伏線が、最後にはかなり綺麗に回収されてモヤモヤ感をあまり残さないで結末を迎えました。

    こうなるとなんだかモヤモヤできないことにモヤモヤしてしまうような不思議な心持ち。でも間違いなくこれも恩田さんだなぁと感じました。

    「麦の」と必ずセットで読みたい、そんな作品でした。

    • mayutochibu9さん
      このころの作品は陰湿な感じがします。
      暗い影を引き摺った時代でしょうか?
      作品は色あせず、楽しめました。
      このころの作品は陰湿な感じがします。
      暗い影を引き摺った時代でしょうか?
      作品は色あせず、楽しめました。
      2019/12/18
    • さてさてさん
      しっかりと染み込んだ暗さなのだと思います。なので色あせにくく、逆に擦れた感じが時を経て不気味さを増すような気もします。
      しっかりと染み込んだ暗さなのだと思います。なので色あせにくく、逆に擦れた感じが時を経て不気味さを増すような気もします。
      2019/12/18
  • 幻想的で優雅な世界観が理瀬シリーズの魅力。
    その中でたくさん湧き出る謎や事件、ワクワクするしゾクゾクする。
    少女ではなくなった今後の理瀬の物語も期待します。

  • 伏線は張り巡らさていたことに最後に気づいた。
    若干、それなら??と思うところが、推理を惑わされるところであり、いいところかも知れない。

    「呟く」が多く用いられるのはどのキャラクターの内向的なのか?作者の癖なのか?気になるところ。

    「呟く」ができない私には羨ましい。

    最後の「気持ちよく送り出す」が違う意味を持つことが笑えた。

    • やまさん
      おはようございます
      やま
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
    • mayutochibu9さん
      1週1冊のペースで読破を心がけています
      1週1冊のペースで読破を心がけています
      2019/11/10
  • 71冊目『黄昏の百合の骨』(恩田陸 著、2007年4月、講談社)
    謎の女子高生・水野理瀬の活躍を描く、通称「理瀬シリーズ」に連なる一冊。『麦の海に沈む果実』のその後が描かれており、16歳になった理瀬が「魔女の家」と呼ばれる屋敷の謎に迫る。
    どことなく『三月は深き紅の淵を』の第三章に似た手触りを持った作品。
    全編を通して醸し出される不穏な空気感は素晴らしいのだが、キャラクターの設定が少々幼稚。終盤の展開は突飛すぎて、正直肩透かしを喰らった。

    「夜の底に百合の香りが漂っている。」

  • おもしろい。登場人物がみんな謎めいていて、でもなんか愛おしくて…。みんな好き。ラストのたたみかけるような、意外な展開も気持ち良かった。

  • 理瀬シリーズ4作目に入る。「麦の海に沈む果実」に続く理瀬が主人公の長編。

    高校生になった理瀬が、亡くなった祖母の遺言に従い、祖母が遺した洋館で二人の叔母と一緒に暮らすことになる。
    祖母が亡くなった時の不自然な状況、奇妙な遺言、得体の知れない二人の叔母、同級生の弟の警告、謎の『ジュピター』、猫の毒殺、二階に住む妖精、悪意に満ちた封筒、級友の失踪…。
    曰くつきの館に染み込んだ謀略と欺瞞の血が呼ぶ疑心暗鬼に、この作者らしいワールドが全開。
    これだけでも十分楽しめるが、同級生の雅雪との交流に大人びた理瀬とは別の彼女の一面を見ることが出来ていい感じ(丘の上の公園での会話の切ない感じが好きですね)。
    理瀬だけでなく朋子も加えて、この年頃の女の子が持つ罪作りなところがよく表現されていて、それがまた話の顛末にも結びついているところにも感心。
    大団円と思われた後のひと悶着もオマケの楽しみ。余韻を残したラストにまだまだ続く物語を思う。

    それでは「薔薇のなかの蛇」が文庫になって出てくるのを待つとする。

  • 常に緊張感があって、ゾクっとする場面もあり一気に読んだ。互いの心理戦も面白いし、学園を知ってるからその世界で読めた。
    勝手にシリーズがこれで最後だと思ってたら、短編やら番外編やらあるんですね。
    しかも21年に最新作が出ていたとは!楽しみがまだあって嬉しい

  • かなりぞわぞわするミステリー。理瀬シリーズではあるけれど、理瀬のみならずキャラクターが濃いので、それだけで百合の香りにうたれてしまいそうな感じ。こっち側、そっち側って、わかるようなわからないような・・・いままでの理瀬シリーズからふわっとイメージはするものの、そもそもあのファミリーは何なんだろう?謎はまだまだ残りますが、ページを繰る手が止まらないという意味ではやはり圧巻。しばらく、百合、むりかも。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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