黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 6206
感想 : 519
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756945

感想・レビュー・書評

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  • 理瀬シリーズの一冊。

    百合の匂いに包まれた洋館は魔女の家?この洋館で転落死した祖母の遺言の謎、噂、毒殺や失踪など、高校生の理瀬を取り巻く百合の強烈な香りと不穏な空気。
    このどこか幻想的な現実と非現実が溶け合うような世界観に今回も魅了された。

    良いなぁ、このグレーのヴェールがかかったようなすっきり霧が晴れないような世界観。

    存分に味わいながら導かれた終盤は驚愕の秘密を抱えた洋館の正体といいラストのラストまで目が離せない展開だった。

    理瀬が急に大人の階段を登り始めた気もしたな。今回はちょっと淋しさも感じつつ読了。

    • yyさん
      くるたんさん
      レビューを読ませていただいて、この作品を読んだ時の "毒” に酔った感じを思い出しました。むせかえるような百合の香りのする、...
      くるたんさん
      レビューを読ませていただいて、この作品を読んだ時の "毒” に酔った感じを思い出しました。むせかえるような百合の香りのする、怖い感じ。『麦の海に沈む果実』はお読みになりましたか? 私は続けて読んだので、ぞくぞくしました。
      2021/04/19
    • くるたんさん
      yyさん♪コメントありがとうございます♪
      毒!たしかに毒を感じる不穏な世界でしたよね。女の怖さも。
      麦はだいぶ前に読了していますが、また再読...
      yyさん♪コメントありがとうございます♪
      毒!たしかに毒を感じる不穏な世界でしたよね。女の怖さも。
      麦はだいぶ前に読了していますが、また再読したくなりました♫
      このシリーズは不思議な魅力がありますね、
      来月の新刊も楽しみです♡
      2021/04/19
  • 「魔女の家」と呼ばれる謎めいた洋館、白百合荘。
    そこに住むのは、理瀬と血の繋がりのない義理のおばさん、梨南子と梨耶子。
    一年前に祖母が転落死し、奇妙な遺言に導かれてこの家にやって来た高校生の理瀬。
    理瀬の従兄弟の稔と亘。
    毒殺や失踪などの不吉な事件が起こり、近隣に住む理瀬の友人朋子や、弟の慎二、朋子の幼馴染の雅雪にも目が離せない。

    悪は全ての源なのだ――善などしょせん悪の上澄みの一部に過ぎない
    という言葉が心に突き刺さる。
    この物語の中では、誰もが演技をし、誰もが噓をついているようで、まるでお芝居をみているかのようだった。
    これぞミステリーの醍醐味。面白くて、あっという間に読み終えてしまった。

    人間の魅力というのは、一筋縄ではいかないものだ。
    ということは、悪もその人の魅力のひとつになるということなのだろうか。

    ミステリアスで魅力的な人物が登場する理瀬シリーズ、まだまだ読んでいきたい気がします。

  • 「三月は深き紅の淵を」の次に「麦の海に沈む果実」を読みました。これは逆でも良いと思います。でもこの「黄昏の百合の骨」は「麦の」の後に読まないと、「麦の」の前半が台無しになってしまいます。

    なんと言ってもこの作品は一にも二にも理瀬だと思います。「麦の」で主人公・理瀬に感情移入していた人はそもそも「麦の」の最後に放り出され、そしてこの作品でトドメを刺されます。
    「しょせん、あたしは善人にはなれないのだ。」
    こっちの世界とそっちの世界。理瀬という女の子にダークなどこまでもダークなヒロインの片鱗をそこかしこに感じさせながら物語はゆっくりと進んでいきます。でもそんな理瀬の周りで蠢く人間模様はさらに複雑です。一体誰が味方で誰が敵なのか。誰がこっち側で誰がそっち側の人間なのか。血生臭い闇がずっと見え隠れするなんとも言えない世界観。書名の「骨」の一文字が物語に隠された闇を暗示し続けます。

    最後の最後までどんでん返しに継ぐどんでん返し、あまりに予想外の展開続きに自分の感覚まで信じられなくなっていきます。まさか、まさかの連続。そして、最後に新たな物語が胎動し始めるかのような予感を残しながら幕を下ろします。

    「麦の」のようなファンタジーっぽい雰囲気もなく、これはミステリーです!という感じの作品でしたが、それを恩田さんも意識されたのか、この作品では、いつもの如く散々に散りばめられた伏線が、最後にはかなり綺麗に回収されてモヤモヤ感をあまり残さないで結末を迎えました。

    こうなるとなんだかモヤモヤできないことにモヤモヤしてしまうような不思議な心持ち。でも間違いなくこれも恩田さんだなぁと感じました。

    「麦の」と必ずセットで読みたい、そんな作品でした。

    • mayutochibu9さん
      このころの作品は陰湿な感じがします。
      暗い影を引き摺った時代でしょうか?
      作品は色あせず、楽しめました。
      このころの作品は陰湿な感じがします。
      暗い影を引き摺った時代でしょうか?
      作品は色あせず、楽しめました。
      2019/12/18
    • さてさてさん
      しっかりと染み込んだ暗さなのだと思います。なので色あせにくく、逆に擦れた感じが時を経て不気味さを増すような気もします。
      しっかりと染み込んだ暗さなのだと思います。なので色あせにくく、逆に擦れた感じが時を経て不気味さを増すような気もします。
      2019/12/18
  • 幻想的で優雅な世界観が理瀬シリーズの魅力。
    その中でたくさん湧き出る謎や事件、ワクワクするしゾクゾクする。
    少女ではなくなった今後の理瀬の物語も期待します。

  • 伏線は張り巡らさていたことに最後に気づいた。
    若干、それなら??と思うところが、推理を惑わされるところであり、いいところかも知れない。

    「呟く」が多く用いられるのはどのキャラクターの内向的なのか?作者の癖なのか?気になるところ。

    「呟く」ができない私には羨ましい。

    最後の「気持ちよく送り出す」が違う意味を持つことが笑えた。

    • やまさん
      おはようございます
      やま
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
    • mayutochibu9さん
      1週1冊のペースで読破を心がけています
      1週1冊のペースで読破を心がけています
      2019/11/10
  • おもしろい。登場人物がみんな謎めいていて、でもなんか愛おしくて…。みんな好き。ラストのたたみかけるような、意外な展開も気持ち良かった。

  • 常に緊張感があって、ゾクっとする場面もあり一気に読んだ。互いの心理戦も面白いし、学園を知ってるからその世界で読めた。
    勝手にシリーズがこれで最後だと思ってたら、短編やら番外編やらあるんですね。
    しかも21年に最新作が出ていたとは!楽しみがまだあって嬉しい

  • かなりぞわぞわするミステリー。理瀬シリーズではあるけれど、理瀬のみならずキャラクターが濃いので、それだけで百合の香りにうたれてしまいそうな感じ。こっち側、そっち側って、わかるようなわからないような・・・いままでの理瀬シリーズからふわっとイメージはするものの、そもそもあのファミリーは何なんだろう?謎はまだまだ残りますが、ページを繰る手が止まらないという意味ではやはり圧巻。しばらく、百合、むりかも。

  • 薔薇のなかの蛇を読もうとして、というか、数ページ読んで、あれ、これは前作を読んでいない気がする、、、と本棚から引っ張り出したのが、黄昏の百合の骨。
    理瀬シリーズの第二作。
    麦の海に沈む果実を読んでからけっこう経っていて、あの何とも言えない不気味で、重苦しいのに、煌びやかで、黒を適量混ぜたぎりぎり明るい赤が目の裏に残っている。理瀬という人は残っているけど、その他の人はけっこう忘れてしまっていたなー。これを読む前にぱらぱらと麦の~を読み返す。前作とは黄昏はまた違う色の作品だった。

    麦の~から時間がったって、イギリスに留学していた理瀬は祖母の遺言に従って日本の祖母の家に戻ってきていた。その家には、祖母の娘である姉妹(姉は夫と死に別れ、妹は別居中)が暮らしていた。彼女たちは祖母と一緒に暮らしていたが、彼女たちが出払っているときに祖母は死んだ。祖母の残した遺産はいったい何なのか。祖母の死は本当に事故死なのか。隣家に住む家族の猫や、近所の動物を殺しているのは誰なのか。いつでも百合の花が飾られている家、その中で蠢く欲望や、羨望や、諦観がゆっくりと、でも確かに理瀬の首元へと迫っていた。


    短編に出てきた理瀬のいとこの稔と、亘が深くかかわり、彼らが関わるから理瀬の中の闇にも強い光があたってしまう。
    明るい道を、当たり前には歩けない理瀬の、最後の少女としての抵抗が愛しい。
    魅力があり、才能がある人間は苦しいのだろう。
    ただ歩くことができるのなら、そのほうがよっぽど幸せなんじゃないだろうか。
    彼女とかかわった少年は、きっと彼女を忘れないと思う。

  • 理瀬シリーズはやはり面白い。
    完全な続編というわけではないので、極端に言えばどの本から読んでも楽しめる。
    そして読後は他の理瀬シリーズを読みたくなるといった感じ。

    黒と茶の幻想を読もうと思う。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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