FUTON (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 345
レビュー : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757188

作品紹介・あらすじ

『蒲団』読む人、書く人、生きた人。百年という時間

日系の学生エミを追いかけて、東京で行われた学会に出席した花袋研究家のデイブ・マッコーリー。エミの祖父の店「ラブウェイ・鶉町店」で待ち伏せするうちに、曾祖父のウメキチを介護する画家のイズミと知り合う。彼女はウメキチの体験を絵にできるのか。近代日本の百年を凝縮した、ユーモア溢れる長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 電子書籍、巻末特典本家花袋の『蒲団』付。なんとお得な。とりあえず中島さんの方から読む。ウメキチはじめ個性的な男性盛りだくさん。どれも妻の他に恋心を抱く女性を持つ。ウメキチの場合は遥か昔の記憶のため、それが現なのか夢なのか誰も判断ができないのが一興。デイヴ教授の蒲団アレンジ、妻視点からの夫の酔狂。子を三人もなしている故、どっしりしていて極めて正論で清々しい。中年夫がプラトニックラブで終った女弟子の蒲団で見悶えた後に妻がとった行動。これぞ本妻というものか。天晴。男は新しい玩具を求めるばかりで。しょーもな。笑

  • 花袋の『蒲団』では脇役として影を潜めていた主人公の妻視点で『蒲団』の打ち直しを行うアメリカ人日本文学研究者とその周辺の人々の物語。
    誰が語るかによって世界がこんなにも変わってしまうというのがすごくおもしろい。

    主人公のひとり語りで進む『蒲団』で存在していたたくさんの壁、例えば年齢、性別、価値観など、そういう隔たりに橋がかけられたような印象を受けた。

    『蒲団』で主人公が抱いていた人生に対する圧倒的なさみしさを思い出す。

    そのさみしさは『蒲団』を打ち直す研究者にもおじいさんにも絵描きにも共通していて、誰か何かがその空白を埋めてくれるんじゃないか、自分が誰かのさみしさに寄り添えるんじゃないか、どこかにきっとそれはあるはずなのにいるはずなのにと探し回るけれどそれはなかなか見つからず、見つかったと喜んだ途端それは幻に変わり、皆、途方にくれているようだった。

    物語のそのあとに『蒲団』の夫婦が思いっきりぶつかりあえてたらいいなー。

  • タイトルからもおわかりのように、田山花袋の〝蒲団〟を本歌取りした長編小説です。
    感想を簡潔に述べるとすれば〝おもしろかったぁぁぁ〟のひと言に尽きます。
    主人公はアメリカの大学で教鞭をふるう日本文学研究者。女性を巡る彼の私生活と、彼が〝蒲団の打ち直し〟と題して、女性視点で焼き直して書き上げた小説。そして、東京の下町に暮す百歳になろうとする老人とその周辺の人々・・・これら3つの物語が交錯しながら、ストーリーは展開していきます。
    ただ面白いというのではなく、人が生きていく上で背負わなければならない重荷、その過程で深く刻み込まれる心の傷痕などもしっかり描かれていて、断片的に語られる老人の過去などは、胸に突き刺さるものがありますよ。
    日本文学史に残る花袋の〝蒲団〟ですが、そのタイトルだけ知っていて読んだことないという人でも、中島京子さんの〝FUTON〟には、すんなり入り込めると思います。また、花袋の〝蒲団〟を理解する上でも、〝蒲団の打ち直し〟は、良いサブテキストになるのではないでしょうか?
    デビュー作とは思えぬほどの面白さでしたぁ。

  • なんとも近代的な名前をつけてもらったものだ。
    美穂。
    美しい、実り。

    原作では名前さえ与えられなかった女性が本作では主人公の座を射止め、物語を語りはじめた。
    田山花袋の『蒲団』を題材にとって瑞々しい女たちの姿が動き始める。

    自分の夫が奔放な女弟子に翻弄される姿を悔しい思いで見つめつつ
    生活が荒れないようにあたりに目を配る主婦の目。
    華やかな女弟子の姿に母としての日常に追われ「女」を捨てている、と目が覚める瞬間。
    その気づきが豊かな実りをもたらすのだろう。
    「女」なだけでは身につけられない母の豊かさ。
    永遠の男の子である夫の目には気づかれないかもしれないが、女は何食わぬ顔でと変化を遂げるのだ。
    女弟子には到達できない豊かさであるかもしれない。
    ふてぶてしさと豊穣。
    明治の女の強さと平成の女の肝の太さ。
    男は幻惑させられる。
    なぜなら彼は女の一面しか見ないから。
    一面にしか執着できないから。

  • p116
    いろんな人に声をかけてる。その声を聞きとるかどうかが、まず最初の関門になる。同じ声を聞いても、それを形にする人間によって、どんな形になるのかはまったく違う。

    別のテクストを暗示しながら進む文章に私はひかれてしまうらしい。タイトルでもしかしてとは思ったけど、田山花袋『布団』のスピンオフみたいな作中作。あと布団のストーリーをなぞるような恋愛をしているアメリカ人教授と、花袋の時代を生きていた老人。この微妙な接点を作り込まれた設定が良い。
    小説として面白いかはオススメできる自信がないけど、技巧的だと思う。

  • 2016.02.07

  • 自然主義文学の「布団」を本歌として、その妻の心情を描いている。それを布団の打ち直しと言っている。洒落ている。

  • 大変興味深く読んだ。

    著者の書くことへの情熱が感じられスゴイと思った。でも、以前読んだ「花桃実桃」でも思ったが、どうしておチャラけた表現とストーリー展開を持ってくるのかな。すんごい上手なのに。

    100年近く生きたウメキチじいさんの妄想の世界は抒情的で深く哀しい。これだけを抜き出して更に深く書いてほしかった。

    花袋の「蒲団」のオマージュだけど、それはエッセンスに留めたほうが良いのでは。
    「蒲団の打ち直し」は妻の立場から、曖昧にされていた部分まで詳らかにしているが、ほぼ本家と同じで、表現がセピア色から原色になった感じで必要ないと思った。

    著者の解釈は著者の中に留めてほしい。読者の想像の余地を奪っていると思った。これを先に読んだら「蒲団」は読まないんじゃないかな。

    蒲団を“打ち直し”して主人公の本性を白日の下にさらすのが21世紀スタイルなのだろうか。
    主人公の憤懣やるかたない気持ちを妻にぶつけるシーンがある。これは正直、強姦だと思う。本家の「蒲団」だけならある程度の女卑も流せるが、妻に対する暴力的な性行為など表出されると笑みが漏れるでは済まされなくなる。これを読んで、ああ、こうして夫婦の関係と言うのは徐々に冷えて、妻は夫を許さなくなるのだろうな、夫婦関係は壊れるんだろうな、こんな夫婦がいっぱいいるんだよなと他の読者のほぼ読み流してることに注目しすぎるわたし。

    曖昧も見せて日本文学では。

    顔を寄せなくても、嗅がなくても妻は夫の匂いを寝具をみただけで感じるはず。

  • 格好悪い男と理解出来ない日本の昔の風習にイライラしながら読んだ。
    途中入る布団の小説も必要なのか疑問。
    国語のテストっぽい小説。
    自分には響かなかった。

  • 田山花袋「布団」とセットで。

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著者プロフィール

中島京子(なかじま きょうこ)
1964年東京都生まれの作家。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。2019年5月15日、新刊『夢見る帝国図書館』を刊行。

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