- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062757188
感想・レビュー・書評
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直木賞受賞の文字につられて買ってみた。着眼点がオモシロイ。
田山花袋の『蒲団』とあわせて読むとちょっとにやりとする。
でも、読まなくても、そして知らなくても意外とイケそう。
たとえば、田山花袋の『蒲団』は日本文学史の上では、いわゆる私小説の走りとされていて、あまり評価は高くないようなのです(よく知らないケド)。それがあまりに作家本人の境遇に似たことが書かれているので、本当に私小説なのか、それともあくまでフィクションとして書いたのか、前者だとしたらちょっとはしたないし、後者だとしたらちょっと盛り上がりに欠ける、みたいな。
で、家庭を持つ男の視線で書かれた『蒲団』という作品に対し、『FUTON』は、アメリカ人の日本文学(田山花袋専門)研究者による『蒲団の打ち直し』という作中小説を合間にはさみながら、その研究者、教え子の日系女子学生、その女子学生の曾祖父、曾祖父のもとにくるヘルパー等々の、過去と現在の恋愛模様が描かれてます。
『FUTON』は『蒲団』のパロディではないけれど、『蒲団』がなければ『FUTON』はなかった。そう考えると形としては新しいのではないかと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これがデビュウ作とは、、、凄すぎる。
『蒲団』読んだことなかったの反省しましたね。
おもしろいところあげはじめたらキリがないけれども、脇役のタツゾウのべらんめぇが一番よかったなぁ。
デイブのみっともなさというか、中年男の情けなさが全開だった前半の勢いがそがれて、最後の方になるとずいぶんいいひとというか、まっとうな優しい人に昇華されてしまったのはちょっと残念な気もする。
それにしても、このひとの小説には「おS」がけっこう出てくるね。「女中譚」にしてもそうだし。なかなか興味深いところだ、そこも -
アメリカ人は恋をするときさっさと告白してセックスして結婚するんだと思う。それに比べ、日本人の恋愛はなんてうじうじしているんだろう。片思いを何年もしてようやく勇気を出して告白して成功しても性交にいたるまでまた何年も時間は必要だ。蒲団のように寝るたびに敷いて、起床すればまた畳んでどこかに置く。それの繰り返しさ。ベッドで寝たほうが早いのに・・・。日本人はなんて奥深い人種なんだろうか。
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何とはなくの、不思議な世界を感じながら、面白く読みました。
イズミさん と ウメキチさん がいい。 -
2010年下半期分をまとめて登録
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処女作とは思えない完成度の高さ。
花袋の蒲団ももう一度読み直そう。 -
時代が行き来する設定で面白い。花袋の「布団」も未読だったので、興味があった。ただし、読後は「えっ」というやや悲しい気分に。
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日系の女学生エミに翻弄される中年のアメリカ人教授デイブの葛藤を軸に、挿入される作中作『蒲団の打ち直し』、そこにエミの曾祖父ウメキチの回想も入り、どのひとつをとってもひとつの小説でいけそうな物語。
『蒲団の打ち直し』は田山花袋の『蒲団』のremixで、細君の視点から描かれている。デイブとエミの話はデイブ側からの視点なので、この異なった視点の当て方が物語に深みを与えている。
すごい面白い。