FUTON (講談社文庫)

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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757188

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞の文字につられて買ってみた。着眼点がオモシロイ。
    田山花袋の『蒲団』とあわせて読むとちょっとにやりとする。
    でも、読まなくても、そして知らなくても意外とイケそう。
    たとえば、田山花袋の『蒲団』は日本文学史の上では、いわゆる私小説の走りとされていて、あまり評価は高くないようなのです(よく知らないケド)。それがあまりに作家本人の境遇に似たことが書かれているので、本当に私小説なのか、それともあくまでフィクションとして書いたのか、前者だとしたらちょっとはしたないし、後者だとしたらちょっと盛り上がりに欠ける、みたいな。
    で、家庭を持つ男の視線で書かれた『蒲団』という作品に対し、『FUTON』は、アメリカ人の日本文学(田山花袋専門)研究者による『蒲団の打ち直し』という作中小説を合間にはさみながら、その研究者、教え子の日系女子学生、その女子学生の曾祖父、曾祖父のもとにくるヘルパー等々の、過去と現在の恋愛模様が描かれてます。
    『FUTON』は『蒲団』のパロディではないけれど、『蒲団』がなければ『FUTON』はなかった。そう考えると形としては新しいのではないかと。

  • これがデビュウ作とは、、、凄すぎる。
    『蒲団』読んだことなかったの反省しましたね。

    おもしろいところあげはじめたらキリがないけれども、脇役のタツゾウのべらんめぇが一番よかったなぁ。

    デイブのみっともなさというか、中年男の情けなさが全開だった前半の勢いがそがれて、最後の方になるとずいぶんいいひとというか、まっとうな優しい人に昇華されてしまったのはちょっと残念な気もする。

    それにしても、このひとの小説には「おS」がけっこう出てくるね。「女中譚」にしてもそうだし。なかなか興味深いところだ、そこも

  • これがデビュー作だとは!中島京子恐るべし。
    花袋の「蒲団」と対をなす「蒲団の打ち直し」(デイブ・マッコーリー)が実に秀逸である。作中作と主人公をめぐるよしなしごとをラップさせての進行が良い。何より,複層構造とした本作の中で核となる東京大空襲や第二次世界大戦にまつわるウメキチの話が何ともせつなくって,良いね。文句なし!

  • 家族のペースメーカー埋め込み手術の日に、病院の売店で見つけた。どこかで作者名と書評を読んだ気がしたのだが、何をどう書いてあったかさっぱり覚えていなかった。ただ、田山花袋の「布団」といえば、日本文学を専攻した人間には常識。一応、元の小説も図書館で読んだこともあった。本当のことを言うと、高1のときの国語の先生の「出て行った女の弟子の布団の残り香を嗅ぐ」という、先生自身も「え?」と思った話が印象に残っていたのだけど・・。
    で、最終的に、手術の待ち時間に読む気になったのは、冒頭に出てくる蕎麦屋のじいさんが「ペースメーカーで思いがけず長生きをした」とかいう部分を読んだから・・。親戚に蕎麦屋がいることも縁を感じた。
    ただ、慣れるまではちょっと読みづらかった。映画のプロローグのように・・。それが、終盤は走るようにして読み終えた。あまりにいろいろなものがはめ込まれていたもので、何度か前のページをめくって確認したほどだ。
    この作家の作品、我が家にもう一冊ある。読むのが楽しみだ。

  • アメリカ人は恋をするときさっさと告白してセックスして結婚するんだと思う。それに比べ、日本人の恋愛はなんてうじうじしているんだろう。片思いを何年もしてようやく勇気を出して告白して成功しても性交にいたるまでまた何年も時間は必要だ。蒲団のように寝るたびに敷いて、起床すればまた畳んでどこかに置く。それの繰り返しさ。ベッドで寝たほうが早いのに・・・。日本人はなんて奥深い人種なんだろうか。

  • 何とはなくの、不思議な世界を感じながら、面白く読みました。
    イズミさん と ウメキチさん がいい。

  • 2010年下半期分をまとめて登録

  • 処女作とは思えない完成度の高さ。
    花袋の蒲団ももう一度読み直そう。

  • 時代が行き来する設定で面白い。花袋の「布団」も未読だったので、興味があった。ただし、読後は「えっ」というやや悲しい気分に。

  • 日系の女学生エミに翻弄される中年のアメリカ人教授デイブの葛藤を軸に、挿入される作中作『蒲団の打ち直し』、そこにエミの曾祖父ウメキチの回想も入り、どのひとつをとってもひとつの小説でいけそうな物語。
    『蒲団の打ち直し』は田山花袋の『蒲団』のremixで、細君の視点から描かれている。デイブとエミの話はデイブ側からの視点なので、この異なった視点の当て方が物語に深みを与えている。
    すごい面白い。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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