チルドレン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757249

作品紹介・あらすじ

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々-。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 家裁の調査官と少年の物語。キャラクターが可愛く、休日の午後に喫茶店で読みたくなる作品 #チルドレン

    ■きっと読みたくなるレビュー
    家庭裁判所で少年事件の調査官である陣内、武藤を中心に、友人たちとの様々な日常や事件を描く連作短編集です。伊坂先生らしい独特の人物像とプロットで、さらに気の利いたセリフが読者にほっこりさせてくれる作品。

    〇バンク
    鴨居と陣内が銀行強盗の事件に巻き込まれる物語。途中、全盲の永瀬との出会いが事件解決のキーとなり… 陣内が調査官になる前日譚で、最もミステリー要素がある一編。

    まさに伊坂節あふれるストーリー、強盗事件に巻き込まれているのに全編とおしてファニーな雰囲気。真相もまるで現実味がなくて好き。

    〇チルドレン
    万引き事件を起こした少年と調査官である武藤、陣内の物語。

    難しい少年犯罪をテーマにしながらも、調査官の苦悩をあくまでライトに切り取っている。タイトルの通り「子供たち」と大人の距離を描いていて、陣内のセリフがいちいち胸に刺さりました。

    〇レトリーバー【おすすめ】
    陣内がレンタルビデオの店員に告白する物語。陣内の突拍子もない価値観をきっかけに、思いもよらない展開になっていく。

    この作品を読むと、どれだけ自分が固定概念をもっていたり、必要以上に周りの目を気にしていたかのが分かってくる。生き方を変えるのって難しいんだけど、できるだけありのままに生きてみようって思える作品。

    〇チルドレンⅡ【おすすめ】
    少年の親権について離婚調停に挑む武藤、陣内の物語。ザ・伊坂幸太郎の作品、おもろい。

    何歳になろうが、どんな立場になろうが、どんな状況や環境におかれようが、やっぱりクールでありたいよね。そしてなにをするにもスケールを大きくする必要はなくて、熱い想いひとつだけが大事なんだろうなぁ

    〇イン
    駅前のデパート屋上での物語、鴨居はじめ友人たちとの日常。本編も陣内が調査官になる前日譚。

    永瀬の推理力が光るエピソード、そしてあいかわらず自分に正直な陣内が波乱を巻き起こす。なんともキャラクターたちが可愛くて、休日の午後、喫茶店でゆっくりと読みたくなる作品でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    本作を読んだきっかけですが、とある本関連のイベントで出会った方にガチ推しされたんですよね。おすすめしてくれた方は、自分の信条や夢に向かって生きているのが分かる、生命力が溢れる若い女性でした。お陰様で素敵な本に出会うことができました、ありがとうございました。

    かなり年齢を重ねてしまった私、生活に疲れてしまうことも多いんです。ただおすすめしてくれた彼女や、本書の陣内からパワーをもらいました。まだまだ人生はこれからですよね、胸を張って生きていきたいと思ったのでした。

  • 力の入れどころ、抜きどころをわかっている大人はかっこいい。

    「少年と向かい合うのに、心理学も社会学もない」
    「あいつらは統計じゃないし、数学でも化学式でもない」
    「『他の誰にも似ていない、世界で1人きりの奴』だと思って、向かい合わないと駄目なんだよ」p.90

    • 松子さん
      はじめまして(^^)
      フォローありがとうございます。
      ワイン?と本の素敵な写真ですね♪
      本の素敵な情報交換ができたら嬉しいです。
      どうぞお願...
      はじめまして(^^)
      フォローありがとうございます。
      ワイン?と本の素敵な写真ですね♪
      本の素敵な情報交換ができたら嬉しいです。
      どうぞお願いします♪
      2022/09/18
  • 再読です。
    サブマリンを読もうと思って、本棚登録していたら、それがいつの間にか文庫化されて、そこでチルドレンのことをほとんど覚えていないことを思い出した。
    初めてチルドレンを読んだのはいつだったか。10年以上前だ。自宅の本棚には、単行本のチルドレンが、だいぶ日焼けをして突っ込まれている。当時のわたしは家庭裁判所調査官を目指していて、結局面接で落ちてしまったのだけれど、まあ、そんなわたしの人生は置いといて。
    大好きな作家さんが、自分がやりたいと思っている職業、しかもかなりニッチな職業のことを描いているというのはとてもゾクゾクする事態で、その運命に震えが止まらなかったことを憶えている。

    と、当時はそんな感じで作品に触れていて。今回はまた違った視点で読むことができました。そしてきっと、今は、なることができなかった家庭裁判所調査官のことはもう自分の中で整理ができていて、人に関わる仕事をしながら、それなりに生きているからこそ、何の気なしに読めたんだと思います。

    驚くべきことに全く覚えてなかった。だからめちゃ楽しく読めました。

    当時は年上だった陣内と武藤も、今はわたしの方が歳を重ねていて、初見の時は、今の自分、陣内より歳を重ねた自分がこういう人生を送っていることは想像もしていなかっただろう。
    人に関わる仕事というのは、心のエネルギーを使う。何かしらの決断や判断をしなければならない時、最も負荷がかかる。人の人生の方向を決めるような、そんな瞬間だからだ。陣内は極端だけれど、彼の言う「適当でいいんだよ、適当で。人の人生にそこまで責任持てるかよ」は、実は常に持っておきたい視点、かもしれない。相手のために一生懸命考えることと、相手のために代わりに答えを出すことは全く別で、何かを決めるのはその人なわけであるから、いくら対人援助の専門家であっても、そこには踏み込んではいけないんだ。専門家は、これからもその人が生きていくために、その人が自分で決められるよう、手助けをするんだ。だからいつも、わたしは仕事で煮詰まると、こう思うようにしている。「まあいっか、人の人生だし」。これからは、陣内語録も加えていこう…

    この、陣内が中心にいながら陣内は決して主人公にならない感じは、朝井リョウを思い出させました。伊坂先生にインスパイアされたんですかね( ˙-˙ )

    • naonaonao16gさん
      mariさん
      素敵なコメントありがとうございます(^^)
      「適当」、できるようになったの、最近なんですよ~
      わたしもこのような考え方になれた...
      mariさん
      素敵なコメントありがとうございます(^^)
      「適当」、できるようになったの、最近なんですよ~
      わたしもこのような考え方になれたのは、カウンセラーさんであったり、敏感力と鈍感力を持ち合わせている人との出会いであったりしました。
      mariさんが今後、誰かに対してもご自身に対しても、選択を尊重できますように…❁⃘*.゚
      2019/05/26
  • 陣内さんの屁理屈はすごい。なぜか納得させられる。一人でもこういう人が周りにいればそりゃ楽しくなるだろうな。

  • 伊坂幸太郎さん初めましてだけど、この本とても面白い!!
    陣内を中心に起こる事件の数々。謎が気になりすぎて、ページがどんどん進んだ。謎が解けると、少し戻って読み返したくなる!


    私は陣内にとても惹かれました。きっと登場人物たちも、陣内に対して傍迷惑でちょっとおかしな奴って思っている反面、自分には持ってない正義感の強さや、物事の核心をつく発言の数々に魅了されていると思う。
    特に私が魅力的だなと思ったところは、ステレオタイプな考え方に捉われていない所。これはこう考えるのが一般だ、とされてる事に対しても純粋な気持ちで「それは違う。」と言えるところがすごいなと思った。

    いくつものハッとさせられる発言や突飛な行動だなと思える事でも、後々意味がある事だったんだと分かると、陣内はどこまで物事を見透かしているのだろうと不思議に思った。

  • 竜巻から微風への一冊。

    伊坂作品、2冊目。
    また新しい作品という扉を一枚開けてみた。
    面白く気持ち良く開かれた。

    陣内さんのキャラが強烈過ぎて面白い。

    破天荒な性格で独自の世界観で竜巻のような風を吹かせていく。
    たしかに一緒に居たら疲れそう。

    でもね、支離滅裂無茶振りな言動の中にもよく耳を傾けると、きちんと正しいことを言っている。
    そこを見つけるたびに陣内さんが輝く、このギャップが楽しくて。

    彼が去った後は穏やかな微風に変わる。

    忙しない日常の中、ふわっと心地よいそよ風を感じ、ホッとする瞬間に似ている。

    そんな読後感が良い。

    • まことさん
      くるたんさん♪
      新年明けましておめでとうございます!
      今、くるたんさんの『チルドレン』のレビューが流れてきたのを見て、心が踊りました!
      やっ...
      くるたんさん♪
      新年明けましておめでとうございます!
      今、くるたんさんの『チルドレン』のレビューが流れてきたのを見て、心が踊りました!
      やっぱり嬉しい!
      くるたんさんのレビュー最高です!

      『チルドレン』は、私も拝読後、本についてきた、出版社宛のハガキに感想を書いて伊坂さんに届きますように!と送りました。
      「伊坂さんの小説で、世の中を変えてください」と書きました。
      やっぱり、小説で、世の中を変えてくれるのは、伊坂さんだと思っています。

      失礼しました。
      こんな、私ですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
      くるたんさんにとって、素晴らしい年になりますように!
      2023/01/05
    • くるたんさん
      まことさん♪
      あけましておめでとうございます✩⡱

      まことさんは本当に伊坂幸太郎の作品が好きなんですね✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      世の中を変え...
      まことさん♪
      あけましておめでとうございます✩⡱

      まことさんは本当に伊坂幸太郎の作品が好きなんですね✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      世の中を変えてください、ってメッセージ、めちゃくちゃ素敵です!!

      まだ2冊目だけど、だんだん伊坂幸太郎ワールドがわかってきた気がしますよ♡なんて、まだまだ初心者だけどw

      この作品はとにかく陣内さんのギャップにやられました。あと、周りの友人も良かったな〜、盲導犬ベスもさりげなく良かった♬

      こちらこそ今年もよろしくお願いします✩⡱
      素敵なうさぎ年になりますように⤴︎
      2023/01/05
  • 続編を読むために再読。

    あぁ、思い出しました。陣内のこの感じ!
    騒がしくて、ふざけたことばかり言っていて、
    からまれている少年を、いきなり殴るなんてありえないでしょ(笑)!
    前も「侏儒の言葉」と「トイレの落書き編」を読みたいと思ったんだっけ。
    今回も、支店長をハゲと言った犯人(行員?)のその後が妙に気になります。

    「かわいそうに…」と通りすがりの人にお金をもらった盲目の永瀬に、
    「俺もお金が欲しいのに、お前だけずるい」と、陣内が怒った場面と、
    永瀬に「一緒に服を選んで」と声をかける鴨居のエピソードが好きです。
    ハンデを背負った人を、かわいそうだと決めつけないこと。
    一見無神経に思えるような行動が、優しさにつながることってあるんですよね。

    そして、自分なりのルールというか、ぶれない陣内が羨ましいです。
    それに振り回される周りの人は、大変なのかもしれないけど…(笑)
    どうか陣内は陣内のままでいて下さい。

    「人間はな、縛られてたってな、飛ぶことくらいできるんだよ」
    この陣内の言葉が大好きです。
    最後、くまさんの着ぐるみ姿の陣内が走り去る姿に、
    ほっこりとして本を閉じました。

  • 家裁調査官の陣内を中心とした繋がりある連作短編集。

    とくに永瀬への「お前だけなんで金がもらえるんだ」のシーンは陣内の人柄を表していて何度読んでも痛快。
    陣内の持つ破天荒さに救われている人って結構いるんだろうなあ。

    スッキリした読後感だったので、『サブマリン』も続けて読んでみようと思う。

  • 陣内、可笑しい。
    電車の中で何度も吹き出してしまった。

    語り部がさまざまな代わる連作短編集(のふりをした長編小説)。スタイルも時系列もバラバラなので、さすがに長編小説として読むことはできなかったけど(笑)

    「バンク」の銀行強盗を除いて、大きな事件が起きるわけではないから、肩の力を抜いて読める本。

    「歴史に残るような特別さはまるでなかったけれど、僕にはこれが、特別な時間なのだ、と分かった。」
    最後の段落の一文。とても素敵な文章だと思った。
    伊坂さんの小説を読むとき、僕がよく感じるのはこんな気持ちです。

    • 大野弘紀さん
      陳内はとてもおかしみのある
      愛されるキャラですね。
      陳内はとてもおかしみのある
      愛されるキャラですね。
      2020/06/21
    • たけさん
      陣内は愛されキャラですね。
      近くにいたら思い切りひくと思いますけど(笑)
      陣内は愛されキャラですね。
      近くにいたら思い切りひくと思いますけど(笑)
      2020/06/21
  • 短編集のふりをした長編小説。
    時代が前後し、語り手も変わるのだけれど、物語はちゃんと繋がっていて、最後には気持ち良いほどスカッと結ばれる。
    清々しい程の疾走感に、読み終わったあとはしばらく放心状態。心が火照ったまま。
    陣内のぶれない態度とうざったいほどの自信に満ち溢れた言動は、ちょっと一歩引いたところから眺めていたいだけの(実はあんまり関わり合いたくない‥‥笑)周囲の友だちや、私をも無理矢理巻き込んでいく。
    ちょちょっと待って!と声をあげても後の祭り。
    でも、なぜか、私たちはいつのまにか、めちゃくちゃにも思える陣内の魅力にはまり惹かれていた。

    そう。こういう男がきっと奇跡を起こすのだ。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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