新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757591

作品紹介・あらすじ

大坂一の侠客から侍大将 怪態(けったい)な男は止まらない

「わが一生は、一場の俄のようなものだ」。大侠客となった万吉は、播州一柳藩に依頼され、攘夷派の浪士たちが横行しだした西大坂を警備する侍大将を引き受ける。おのれの勘と才覚を頼りに、場当たり的に幕末維新から明治の騒乱の中をたくましく生き抜いた“怪態な男”の浮沈を描いた、異色の上方任侠一代記。

感想・レビュー・書評

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  • ちょうど十月に、歌舞伎の「夏祭浪花鑑」を見ました。大坂の侠客のあんちゃんが主人公で愛之助、世話になってる親方みたいなおやじが翫雀、というキャストでとても楽しんだのですが、この「俄 浪華遊侠伝」もまさに「舞台は大坂」「侠客もの」ということで、タイムリーに楽しめました。
    以下備忘メモ。

    *主人公の万吉が、かっこいい。特に印象に残っているのは、「男稼業は泣くな」のシーン。
    *万吉その他の侠客仲間は、決して思慮深いタイプの人物ではなく、勢いと男気あふれる台詞を軽快な大阪弁でしゃべる。それだけでなんとなくおかしみがあるというか、かっこつけてない雰囲気になる。ように感じた。
    *幕末の動乱にも巻き込まれるのだが、新撰組の歳三も登場してきちんと絡みもあったりして、嬉しい。その他、他の幕末作品の主人公も少しずつ登場する。豪華な気分。
    *万吉が新撰組に捕らえられて蔵の中で寒さに打ち勝つために踊るシーンは、病院の待合室で読んでいたのだけど笑いを堪えるのにとても苦労した。
    *堺での土佐藩士たちの切腹。切腹シーンそのものも、そこへ至る過程も、迫力あってドラマチックで、読ませてくれた。
    *堺筋が堺につながっているということを、ちょっと考えればその通りなのに、この本を読むまで気づかなかった。
    *全体的に面白かったが、わかりやすいただひとつのクライマックスというのはない。まあ、人の一生だから、そうよね。

  • 自分の命を粗末にする主人公に次々とやってくる難解なミッション。今度こそ死ぬんじゃないかと心配でたまらない。読んでいる自分が本の残ページの厚みに命の安心を求めてしまうという・・・こんなことは初めてだw

  • (ええっ)
     と万吉は内心、叫びたくなるほどの驚きで建部小藤治をながめた。考えてみればこの小役人は、わが藩とわが身可愛さのあまり、万吉を他人の手で殺そうとしてきた男ではないか。
     それが、
    「頼む、わしも一緒に連れて行ってくれ」
     というのである。
    (全く、妙な生きものやな)
     万吉は腹が立つよりも腹が立つよりも感嘆したい思いで建部古陶磁を見ている。
     建部にすれば、もともと万吉に悪意もなければ幕府に忠誠心もない。ただただひとえに自分の信念のなさと小心のために強いほうになびいているだけのことだ。
    (世の中の人間はどいつもこいつも建部小藤治と似たようなものや。建部だけがおかしいわけやない)
     万吉はそう思った。
     むしろ建部小藤治は善人なのである。善人とは小心で毒にも薬にもならなくて一向に前後の見通しがなく、常に大きいものに巻かれることをもって生き方としている人間とすれば、建部小藤治は善人の標本のようなものだ。
    (まあ、ええおっさんや)
     万吉はそう思うのである。しかし考えようによっては善人ほど始末のわるい悪をする者はない。建部のこんどの行動などはその格好な例だろう。万吉を殺すために京につれてきたことも、「大公儀のため、御家のため」という立派な「善」に装飾されている。この善のために、殺される万吉の方こそいい面の皮だが。

  • 町人の街大坂が明治維新の流れに巻き込まれる中、侠客の明石家万吉の波乱の人生。上下巻の下巻。

    司馬遼太郎の作品、随分と読んだつもりであったが見逃していた作品。「手掘り日本史」で紹介されていたのを機に読んでみました。米相場師だった司馬の祖父の姿が万吉に投影されているらしい。

    司馬の本当の魅力は本書のような司馬の出身、大阪の言葉、風俗、文化を活かしたものにあるのかもしれない。

    明治維新の流れの中、私欲なく行動する万吉。見返りを求めぬ姿を天は見ているのだろう。決して粗略に扱われない。

    本書で初めて知ったのが堺港攘夷事件。万吉の仁義も見事だが、本書とは違った視点で掘り下げてみたい。

    テンポよく痛快な娯楽対策。日本史に名を残す人物でなくとも楽しめる作品、ぜひご堪能あれ!

  • 市井の人、大阪の侠客「明石家万吉」を通して語られる幕末維新。しっかり楽しめました!

  • この位、破天荒でないと歴史に名
    が残らないのだろうなぁ。いつ死んでもおかしくない生き方。数人分の人生を送ったとしか言いようがない。そこで、名士、奇人と出会うのだろう。

  • 下巻読了。

    身体を張りまくった万吉の生涯。
    上下巻と合わせて結構ヴォリュームありましたが、一気に読めてしまいました。

  • 15/10/15読了

  • 本当の任侠って生き方がロック過ぎるわ。

  • 【読了日】
     2014.05

    【タグ】
     時代小説 幕末 大坂 大阪 

    【経緯】
     ・今さら司馬遼を読んでみようキャンペーン

    ----------------------------------------------

    ・幕末から明治、大正にかけての実在の侠客が主人公。

    ・武士の少ない町大坂で「どつかれ屋」から身を起こした貧しい少年が、任侠の世界で頭角を現し、堂島米相場で財をなし……というふうに出世していく前半が特におもしろい。

    ・時は折りしも幕末、維新の直前。シンプルな親分の出世物語では終わらない。幕府側は親分のごろつきども動員能力、統率能力を利用しようとする。

    ・大坂は海上交通の要衝だけに、海からいろんな人物がこの町に潜入するところもまた読みどころ。長州藩士もかなり潜伏していたらしい。親分は幕府側につきながらも、長州の男達に好ましい感情を抱いているらしい。

    ・次郎長と生きた年代、世界がかぶる。次郎長の親分は明治新政府に協力している?
    明石屋万吉(小林佐兵衛) 1829(文政12)-1917(大正6)
    清水次郎長(山本長五郎) 1820(文政3)- 1893(明治26)

    ・俄というタイトルは、親分が自らの人生を振り返って「まるで俄のようだ」と述懐した、という設定から。
    動乱と新時代到来の世の中を渡っていく劇的な生涯であり、一幕の芝居のようだという意味がこめられていると思われる。

    ・「まるで芝居(=歌舞伎)のようだ」とは言わなかったのはなぜなのか。当時あるいは司馬の執筆当時に「俄」が持っていた意味合いが、現在の私には明確に通じないが、次の個人的興味もまたそこにある。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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