グランド・フィナーレ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 824
感想 : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757751

作品紹介・あらすじ

「二〇〇一年のクリスマスを境に、我が家の紐帯は解れ」すべてを失った"わたし"は故郷に還る。そして「バスの走行音がジングルベルみたいに聞こえだした日曜日の夕方」二人の女児と出会った。神町-土地の因縁が紡ぐ物語。ここで何が終わり、はじまったのか。第132回芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の子供服のお店のポップな描写が90年代のMVみたいで一気に作品の中にひきこまれて、そのまま心地よく連れ回された感じ。ここまで人を食ったような再生?改心?ほのかな希望?の物語ってありますか。
    同時収録の短篇『馬小屋の乙女』のラストの嵌められた感も面白かった!
    あと、『20世紀』。おなじみ神町が舞台だけど、語り手は外から来た人。で、写真の発明とか戦争の歴史とか記録と記憶の関係とか興味深いし、ちょっとパワーズの『舞踏会』みたいだななんて盛り上がっていたらば、ラストでめちゃくちゃ戦慄した。別の話だと分かっているけど『グランド・フィナーレ』とループしてるように思えたのだ。うわああ。

  • とても重いテーマだった。

    児童性愛者の主人公。
    なんだかこう、はじめてこういう人の主観にたってみて、きっと子どもに対するときめきみたいなものは抑えられないんだろうと思い、なんと少し同情の気持ちが湧いてしまった。
    子どものことはみんな、好きでしょう?それを、性的に好きになるかどうかって、意外と紙一重だったりしないのかな………
    主人公の異常性が露骨にえがかれていなかったからか、彼の子どもへの愛情が強いからか、2人の女の子が非常に愛らしくえがかれていたからか、案外ぽろっとハマってしまうものなのかもしれないと感じた。
    主人公の男性的な事実のみの思考、離婚やドラッグや法に触れる仕事といったハードな現実。これに対応するのが、子ども達の純粋無垢な姿なのかな。これだけキツイ汚い世界に生きていると、より子どもというものが輝かしい存在に思えてくる。


    そして自殺、という行動について。
    「愛する人に自殺してほしくない」
    という気持ち。
    主人公はIからこれを突きつけられ、終盤では自分がこの気持ちに駆られて動く。
    なんとも……
    子どもを愛することをやめられないから避けようとしていた主人公にとっては、子どもを自分の欲望によって傷つけることなく、幸せに、生きていってほしいと思う行動、そんな自分との折り合いの付け方はハッピーエンドじゃないだろうか。
    終始主人公は愛情深く、意外と、憎めなかったんだよな。

    あまり評判よくなさそうだけど、終わり方含めてあたしは含みのある現代小説でよかったなぁと思いました。キモイ暗いテーマだけど、主人公が無機質なので割と軽くなってる印象。
    阿部和重の主人公の執着思考は何だか読んでて臨場感がある。あと漢検の勉強になりそうな本笑。

  • 表題作の「グランド・フィナーレ」について。

    以前『シンセミア』と『ピストルズ』を読んでいたので、神町という舞台に対するイメージが既に自分の中で出来ており、作品世界への没入感がありました。

    『シンセミア』では、町に暮らす様々な人物の視点から、性とドラッグと暴力に溢れた町、「神町」を描いていましたが、本作では18年ぶりに帰郷した主人公という外部の一人称の視点で物語が展開しています。
    主人公は過去の自分を嫌悪し、善意から二人の女児に関わろうとしていますが、神町という舞台では、何か普通でないことが起こらないわけはなく、これから発生する未知の危機の予感を孕んだまま作品が終わる点は面白かったです。

  • 初めて阿部和重を読んだ。有名どころから入りたくて、芥川賞を受賞したグランドフィナーレを読んでみた。

    いやぁ、難しい。正直なところ、小説として面白いとは思えなかった。
    けれど、解説込みでなんとか「そういうことなのかな」という納得感みたいなものをひねり出した。

    主人公の男性は、娘を含めた複数の女児のポルノ写真を撮影していたんだけど、そのことが妻にバレてしまい離婚となる。
    都会での仕事や家庭、享楽の全てを失って、主人公は地元へと帰る。地元では二人の女児と出会って、演劇の指導を手伝うことになるんだけど、二人がインターネットで自殺サイトを閲覧する場面に遭遇してしまう。

    物語の終盤で、主人公は二人の無事を確認するために夜中まで駆けずり回る。それは贖罪というよりもむしろ、もっと原初的な感情なのかもしれないと感じた。
    東京では相手の立場に立って考えることなんて一度も無かった主人公が、全てを失った後に初めて必死になって何かをした。それはある意味では美しくて希望の持てる展開だったのかなと思った。

    ちなみに、文体は硬くてシリアスな森見登美彦といった感じだった。

  • 初阿部。主人公・沢見からある友人に語られる沙央里との離婚した経緯は現代でもありがちだなと思った。またイニシャルで表記されている人物とそうでない人物がいるが、これは何を示しているのだろうか...?純文学は読みにくいイメージがあるが、割と読みやすい文体でした!機会があれば他作品も読んでみたい。それにしても感想を述べるのは難しい・・(><;;

  • 帯に「文学がようやく阿部和重に追いついた」とあるが、このコピー考えた人はすごいと思う。 何の根拠があってこんなことを書いたのか理解できない。 グランドフィナーレはなんと言っていいかわからない。修飾が多すぎる文章は、作者がボキャブラリー豊富な人なのだろうと思われるが、少しごてごてしすぎて単純な私には読みずらい。 死に向かおうとしている少女たちに何とか思いとどまらせようとすることで自分の過去の罪を贖罪しようとしているのだろうか。 過去の性癖とは決別できたのだろうか。 「馬小屋の少女」を読んで、他人の夢に入り込んだような気がした。意味不明。 「新宿ヨドバシカメラ」以降は斜め読みで放棄した。 これが文学というものなら、文学とはよほど相性が悪いと思われる。05・5・8

  • 読書開始日:2021年10月13日
    読書終了日:2021年10月17日
    所感
    台詞がかなり好み。
    表現方法も多彩。
    でも内容としてはあまり好みではない。
    台詞や言い回し図鑑のような作品だった。

    半導体技術はもはや何の手助けにもなってくれず
    置いてけ堀
    期待が大きいほど外れくじを引きやすい
    うすばかげろう
    彼なりの動物愛護精神
    どう転んでも原物とは一致し得ないまやかし=磁気的記録
    不道徳の匂い
    今現在は露悪趣味に走って自身であえて貶めることにより逆説的に自らを際立たせた気になって悦に入る
    ちっぽけでぼやけたデジタルの像を見つめることによって感受されるのは、やはりどうにも埋め難い、被写体との距離だった
    沢見さんは、田舎に帰って、こっちにいる人たちの顔を見ないで暮らしていけば何もかも忘れ去られるんだろうけど
    古典的メロドラマ
    デジタルの象を守るあまり変え難い現実を手放す羽目になった後悔を抱く
    都市化の推進とは一方で、新市街地の周囲に無数の小さな田舎を同時に生み出してゆく
    素寒貧
    少々てれ気味に腹を立てていた
    わたしの中に巣食うナルシシステイックなセンチメンタリズム
    無責任を玩味しながら孤独に酔っていたかったのだ。完全から孤独を恐れながら
    子供たちの社会は、大人のそれよりも遥かに人間関係の変化に富んでおり、濃密な時間が流れているものだ。
    死にゆくものから託されたねがいは、それを受け止めたものに対して絶対的な命令のごとき強制力を及ぼしてしまう
    貫徹は美徳
    イエローベースの春の肌色
    ブルーベースの冬の肌色

    馬小屋の乙女
    素性もわからぬものに対してこうもあっさり明け透けになれるのは、きっと本心ではそれなりに不満が鬱積しており、自身の現状についてだれでもいいから話して聞かせてみたかったのだろう
    シャブもしくはスミ子の名器

    しんじゅくよどばしかめら
    新宿のなにもかもが鬱陶しく、わたしたちを逆説的に惹きつけてやまない。
    渋谷=どこもかしこも広告の一部として存在するだけであって、ただ消費者のみが交通を許される
    新宿=人情味の排除=ヨドバシの罪
    姿見ずを克服するためにカメラは、あえて「淀」の中へレンズを向けねばならないという逆説

    20世紀
    ダゲレオタイプの登場により、存在という概念が明確化。観測可能なものだけが存在。
    心霊写真がいい例
    人間が観測技術よってしか存在を認めなくなると、無神論が蔓延る。そのため神は存在の刻印を世界中に残し続ける。

  • 終わり、それとも始まり……神町を巡る物語「グランドフィナーレ」という名の終わりの始まり。毎日出版文化賞、伊藤整賞W受賞作「シンセミア」に続く、二人の少女と一人の男を巡る新たなる神町の物語。

    自分の過去をまるで他人事のように小さく語る主人公。刑事事件になっていないからなのか、それとも思考を停止しているだけなのか。クライマックスもこじんまりしていてサイコパス感が出ていて良かった。阿部小説は文体にかなり特徴があるらしい。とある芥川賞作家は、この作品についてこう書いていた。「多くの読者は疲れるだろう」と。だけどグランドフィナーレを読み終えた直後の感想は「普通に読めるし面白い」だった。

  • 度し難いクズのお話。なにかおかしいと読み進めると、徐々に明らかにされるクズのクズたる由縁がおもしろかった。最後はなー、きっとこの主人公は変わらないだろうなとも読めて、評判悪いのもわかるが個人的にはかなり読ませる小説で面白かったです。この2ヶ月くらい、芥川賞受賞作を10作近く読んだけれど、『推し燃ゆ』の次くらいに面白かった。

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著者プロフィール

1968年山形県生れ。「アメリカの夜」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。『グランド・フィナーレ』で芥川賞、『ピストルズ』で谷崎賞等受賞歴多数。『オーガ(ニ)ズム』『ブラック・チェンバー・ミュージック』

「2022年 『Ultimate Edition』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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