グランド・フィナーレ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 697
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757751

感想・レビュー・書評

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  • とても重いテーマだった。

    児童性愛者の主人公。
    なんだかこう、はじめてこういう人の主観にたってみて、きっと子どもに対するときめきみたいなものは抑えられないんだろうと思い、なんと少し同情の気持ちが湧いてしまった。
    子どものことはみんな、好きでしょう?それを、性的に好きになるかどうかって、意外と紙一重だったりしないのかな………
    主人公の異常性が露骨にえがかれていなかったからか、彼の子どもへの愛情が強いからか、2人の女の子が非常に愛らしくえがかれていたからか、案外ぽろっとハマってしまうものなのかもしれないと感じた。
    主人公の男性的な事実のみの思考、離婚やドラッグや法に触れる仕事といったハードな現実。これに対応するのが、子ども達の純粋無垢な姿なのかな。これだけキツイ汚い世界に生きていると、より子どもというものが輝かしい存在に思えてくる。


    そして自殺、という行動について。
    「愛する人に自殺してほしくない」
    という気持ち。
    主人公はIからこれを突きつけられ、終盤では自分がこの気持ちに駆られて動く。
    なんとも……
    子どもを愛することをやめられないから避けようとしていた主人公にとっては、子どもを自分の欲望によって傷つけることなく、幸せに、生きていってほしいと思う行動、そんな自分との折り合いの付け方はハッピーエンドじゃないだろうか。
    終始主人公は愛情深く、意外と、憎めなかったんだよな。

    あまり評判よくなさそうだけど、終わり方含めてあたしは含みのある現代小説でよかったなぁと思いました。キモイ暗いテーマだけど、主人公が無機質なので割と軽くなってる印象。
    阿部和重の主人公の執着思考は何だか読んでて臨場感がある。あと漢検の勉強になりそうな本笑。

  • おもしろいなあ。本編もいいが他の3編もいい。かなり笑った。

  •  四編からなる短編集。
     うち「グランド・フィナーレ」が芥川賞受賞作。
     うーん……。
     なんて感想を書けばいいのか困ってしまう。
     個性の強いキャラクターも出てこなければ、ひとつひとつの行動に移るための熱みたいなものも全く感じられない。
     いや、書き方によってはもの凄いキャラクターになるのだろうし、高熱を発しながら怒涛の活躍を見せることだってできる、そんな内容の話だと思う。
     ということは、あえてニュートラルに書いているのだろうか。
     なんだか自分でも上手く把握できないうちに読み終えてしまったのだが、なんだかんだ言ってもかなり面白かった。
     だから余計に困ってしまうんだよなぁ……なんで面白かったのかチンプンカンプンなのだから……ブツブツ。
    「馬小屋の乙女」は考えようによっては、ホラーですね、これ。

  • これは神町絡みって分かりやすかったし、ニッポニア関連の話題も出てきたけど、やっぱりそれぞれの相関性はほぼ皆無なんですね。独立した物語になっていて、これ単独でも十分楽しめる内容でした。まあ、どこまで楽しめたかってのは別問題で、アブノーマル描写が多いなってこと以外、とりたてて言うことはない感じでした。でもそのアブノーマリティも、前2作の方が極端に思えましたが。表題作以外のおまけ(?)短編に関しては、読み流した程度で、特に感慨は覚えませんでした。やっぱりシンセミアが最強と思います。

  • 読書が、岩山を登っているような感覚。「漢字」という岩山を。というのも画数の多い漢字が多用されているからだ。また、レトリックが妙に古めかしかったりする。作者が明らかに視覚人間だというのは一目瞭然。また、論理の運びも視覚的。
    作者が最近書いた、そのものずばり、『□(しかく)』という本が書店に並んでいたが、きっとこの本も「視覚」にかけてあるはず。
    見た目には違うけど、実際発音してみると同じ音、の言葉に対する執着がいくらか強い。

  • 2005年芥川賞受賞作。作品全体の暗さ、不気味さが体に残る。前半は主人公の気持ち悪さが際立つが、意外と自己反省的で、自分の悪い部分を分析する一面も見られる。掴みどころがない。掴みどころのなさから多少の人間味が出ていて(とても魅力とは呼べないけど)、憎みきれない。

  • 私は佳作だと思います。
    設定から奇を衒う内容を思わせます。しかし本作品では普通に、大人から見た子供、大人になったが故遠く感じてしまう子供、その純粋なものに触れたい気持ちを抑えられない不純な大人が描かれているのです。
    設定のマニアックさのバイアスがあるので酷評されている感がありますが、普通の純文学と見ていいのではないでしょうか?

  • シンセミアほどの衝撃はないが、ありそうにない話でいながら、リアリティのある、筆者の真骨頂が発揮された作品であると思う。救われない内容でありながら、何か心温まるものが感じられて、とても味のある作品ではないかと思う。

  • 2010/07/13-14

  • 幼女ポルノのビジネスに手を染めた冴えない中年の話です。
    離婚され、最愛の娘と引き剥がされ、でも未練たっぷりで。

    さて困りましたね。
    面白いかと聞かれれば「そこそこ」です。さらに文学性も高いと思います。どこがと言われても困るのですが。
    しかし、何が書きたかったのか良く判らない。少なくとも表面を流れている物語では無いような気がするのです。どこかに何かのバックグラウンドが存在しているように思えます。しかしぞれが何か判りません。
    どう評価すべきなのか悩んでしまう、そんな作品でした。

著者プロフィール

1968年生まれ。『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年本作で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書『クエーサーと13番目の柱』『IP/NN 阿部和重傑作集』『ミステリアスセッティング』ABC 阿部和重初期作品集』対談集『和子の部屋』他多数。

「2013年 『ピストルズ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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