グランド・フィナーレ (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757751

感想・レビュー・書評

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  • 初めて阿部和重を読んだ。有名どころから入りたくて、芥川賞を受賞したグランドフィナーレを読んでみた。

    いやぁ、難しい。正直なところ、小説として面白いとは思えなかった。
    けれど、解説込みでなんとか「そういうことなのかな」という納得感みたいなものをひねり出した。

    主人公の男性は、娘を含めた複数の女児のポルノ写真を撮影していたんだけど、そのことが妻にバレてしまい離婚となる。
    都会での仕事や家庭、享楽の全てを失って、主人公は地元へと帰る。地元では二人の女児と出会って、演劇の指導を手伝うことになるんだけど、二人がインターネットで自殺サイトを閲覧する場面に遭遇してしまう。

    物語の終盤で、主人公は二人の無事を確認するために夜中まで駆けずり回る。それは贖罪というよりもむしろ、もっと原初的な感情なのかもしれないと感じた。
    東京では相手の立場に立って考えることなんて一度も無かった主人公が、全てを失った後に初めて必死になって何かをした。それはある意味では美しくて希望の持てる展開だったのかなと思った。

    ちなみに、文体は硬くてシリアスな森見登美彦といった感じだった。

  • 『神町サーガ』構築のため、脇で脇なりの音を奏でる、そんな存在意義の小説。これ単体で味わい尽くそうとすると、ちょっと辛い出来映え、だと思う。

    安部公房が、長編小説を上梓する前に同テーマの短編を書くことによって試行錯誤することがあった。「グランド・フィナーレ」もそれに近しいものを感じる。

    個人的な好みでいえば芥川賞受賞作の表題作よりも「新宿 ヨドバシカメラ」のほうが馬鹿らしさの振り幅が大きくて好き。

  • 何が言いたいのやら全くわからない。何を感じたのか?離婚して愛娘と会えなくなったのは自業自得。家業を手伝いながら小学生の演劇の手伝いをして二人の少女の生きる手助けをしようとするのは贖罪なのだろうか?

  • 伊坂幸太郎氏との共作『キャプテン・サンダーボルト』を受けての阿部和重作品初読みです

    芥川賞受賞作品
    「阿部氏代表作になるのかな」と手に取ってみたものの・・・・・・・

    えー よく わかんなーい (´-ω-`)ウーン

    三次元の世界を文章で著す表現力はとても興味深くて、すごいなって感じるんだけど
    お話自体は何を求めたお話なのか・・・まったく理解できなかった・・・・・(^_^;)
    珍しく、この時点で他みなさまのレビューを拝見することにしたが、同じような意見を持つ方々が多くいるようで・・・・・
    特に阿部氏のファンの方々の多数はこの作品が「代表作」とは考えておらず、『シンセミア』『ピストルズ』へと続くプロローグ的作品との位置づけとしているようであります

    ある男が幼児性愛者であることで妻子を失ってしまうというお話
    自分の娘、そして、自分を頼って近づいてくる女児たち
    彼女らとの係わりの中で自分自身の葛藤と周りの人物たちとの距離感を繊細なタッチで描いているのです・・・・・が・・・・・
    何を表現した作品なのか・・・・・・

    その他
    『馬小屋の乙女』
    『新宿ヨドバシカメラ』
    『20世紀』

    短編集であります

  • ストーリーは、ロリコン趣味のある父親が娘に固執し、奥さんに離婚され、実家に帰る。って言う話。
    文の言い回しとか直接的じゃなくって曲折的であまり好きじゃないのよね。
    たとえば、クリスマスって言うのを「聖なる夜」とか言っちゃうとこ、芥川賞的だよね~。
    でも読んでて悪い本ではなかったけど、すっごい良い本でもない。
    何が結局のとこ言いたかったのかちょっと理解できなかったな~。尻切れトンボみたいな結末も好きじゃない。

    併録されてるとは、『馬小屋の乙女』『新宿ヨドバシカメラ』『20世紀』。
    『馬小屋~』と『新宿~』はね~、イマイチ。ちょっとシモネタ系の短編。
    読み終わった後「ん~~。オッケーーー。(単調に言う)」って言いたくなるほど、あ。っそうなの。
    って感じの小説。
    『20世紀』はね、著者が小説の舞台にもなった神町(じんまち)の取材に訪れたときの紀行エッセイ。
    こっちの方が面白かったよ。

  • なんかひとつの物事に対して比喩が多い、森見的な文章→ってかまじでいちいち理屈臭い男だな→と思ったらお前ロリコンかよ!キモイ→あー、でもまぁ、ロリコンも突き詰めて言えば性癖=個性だしなぁ。言い分はわからなくもない→ってIさん、そうですよね-!こいつの満足のために、傷ついている人々は大勢いますよね!

    って、流れ。第一章は。

    そんでもって第二章で、なんか今までの聳え立つプライドと取り囲む鉄壁の理論が完全に崩れて、まるで宗教か牢獄の洗礼を受けた元犯罪者のような恥と反省と抑制力の塊のようになってるじゃないの。驚き。
    ま、児童館に集まったガキの中から人目で可愛い女の子たちを見つけて、プラス覚えちゃってるところあたりは昔取った杵柄ですが、それにしてもこの豹変っぷりは、やっぱりIの説教なんでしょうか?
    そんでもってその可愛い子たちが自殺を考えてるっぽくて、なんの因果か小奴がそれを止めようと頑張るところで話終わりー。

    もー、何なんだよー!この本を通してのメッセージは何なのよー。ってヤキモキする。
    男を上げ落とし上げ落とし上げ上げどーんと落とし、落としーーー-の最後上げっ!・・・でっ!?って振り回された。

    にしても私、今こうやってレビュー読むと、男の善悪の立ち位置がコロコロ変わってる(笑)中身のない子(笑)

    ちなみに全4話短篇集の中、グランドフィナーレともう一個読んで、放置中。

    『死にゆく者から託された願いは、それを受け止めた者に対して絶対的な命令の如き強制力を及ぼしてしまう。』・・・だよね。遺言は、自己完結の楽しいものにしましょう。

  • 『シンセミア』や『ニッポニアニッポン』に関する内容もちょろっと出てきますが、そんなの知らなくても全然読めます。読んでない人はどこに出てきたのかも気付かないじゃないかと。
    で、肝心の内容自体は前述の2つの方が全然おもしろい。

    簡単に言うとロリコンの男の話なんだけど、イマイチ人間の心理の奥の部分を避けてるっちゅうか変態性が足りないっちゅうか…。
    『シンセミア』のような押し寄せてくる圧倒的な文圧みたいなものは感じられないですね。

  • 自分にはこの作品イマイチでした。なぜこれが芥川賞???って正直思いました。

  • (偉そうですが)芥川賞?自分の頭が追いつかないだけかもしれませんが、前衛的すぎるのと言い回しのくどさに疲れました
    おおまかな内容は、ロリコンの男が自分の娘に変な感情を抱いてしまい、離れる為に実家に帰され、そこで出会った二人の少女と演劇を作る、と言いった作品です。多分

  • 第132回芥川賞。
    冒頭は離婚したロリコン男が、近づくことすら許されない一人娘の誕生日にプレゼントを贈るエピソード。
    後半は主人公が田舎に帰って文房具店で働いているところに、ひょんなことから小学生の女の子の演劇指導をするはめになってしまう話。

  • 幼女趣味の一児の父親が、その趣味故に離婚し、娘と離れることになった。そこからこの小説は始まる。ただ、確かに娘への執着から話は始まるのだが、序盤で自分自身を冷静に理解し始め、中盤以降は娘への執着はほとんど感じられなくなる。後半は、少女たちの演劇の指導に、誠実に取り組む姿が描かれる。

    題材が題材なだけに、妄想で語られるというファクターを頭をよぎる。ゆえに、フィナーレを迎えたのか迎えられなかったのか、それさえも釈然としない。読み終わったとき「え?終わり?」そんな感想を抱く小説である。

著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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