- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062757898
感想・レビュー・書評
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もともと「講談社ブルーバックス」シリーズの一冊として刊行された本のようで、定量的な絵画の分析に基づく研究が紹介されているのかと思って手に取りました。しかし中身は標準的な芸術学的アプローチが採用されており、期待していた内容からはやや外れていたものの、おもしろく読みました。
セザンヌにおけるマッスへの注目から現代アートのオブジェに至るまでの歴史や、自画像の成立に関する精神史など、美術史の教科書に記されているような内容もありますが、著者自身の洞察に基づく興味深い議論も展開されています。具体的には、近代日本の画壇における裸婦画の扱われ方を追ったり、これまでの抽象と具体の対立が浅薄な「リアリズム」観に捕らわれていたことを批判的に検討したり、さらに真贋問題を手がかりに芸術を取り巻く社会的環境についての考察が展開されています。
絵画の見方を分かりやすく語った本ですが、芸術学の教科書的な知識があった方がより理解できるのではないかと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひまわりを書いたゴッホに惚れるか。ゴッホに書かれたひまわりに惚れるか。どっちでもいいような気もするが立ち止まる。そういう面倒くさい感じは長年腑に落ちないことのひとつで。たまたまゴッホだったのかたまたまひまわりだったのかボクはおそらくこの『たまたま』に謎めいたものがあるように思っていた。何よりも衝撃や感動が人を先に飲み込んでしまう時間があるような気もしている。それを解消してくれたのはルチオ・フォンタナの『空間の概念』だった。この三本の亀裂と穴は美を超越してボクの心を打ったから後にも先にも何も考えなくていい。ただシュッっとしてるそれとフウッっとしている。たまたまそういう時間に何かが飲み込まれた。