ランドマーク (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 978
感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062757980

作品紹介・あらすじ

今、何かが壊れ始める……
大宮に姿を現した超高層ビル。建設に携わる設計士と鉄筋工、立場の違う2人の運命が、交差する……

大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。圧巻の構想力と、並はずれた筆力で描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • いびつ…。
    建設中のスパイラルビル…それは、重箱を少しずつずらして重ねたような35階建の螺旋状ビル。
    そこで作業員として建築に携わる隼人。
    ゼネコン現場責任者として携わる犬飼。
    同じビルに関わっていても、2人の生活圏格差は顕著。

    特に何か事件めいたものも際立つ問題もないけれど、ジワジワと2人の日常が歪んでいく。
    隼人は自ら望み〝いびつな日常〟を選択し、犬飼は自身が望まぬところで〝いびつな日常〟の真ん中に立たされてしまう。
    スパイラルといういびつなビルに関わることで、知らず知らずにその呪いに絡め取られてゆくような…そんな話し。

    例えば、危険な場所に近づけば当然に事故リスクが高まるのと同じで、人が作り出した不自然な物が不自然な日常を呼んでしまう…そんなことって本当にあるのではないだろかと思ってしまう。

    今年の16冊目
    2021.10.2

  • 人に勧めたくならないけど
    自分の中で好き
    私にとって吉田修一さんの小説はそういうものです。
    万人受けするものじゃない気がするけど
    吉田さんの表現する描写と雰囲気がわたしは好みです。

    これも同じ建物に関わる犬飼と隼人の2人が出てくるが
    決して交わらないあたり、粋だなと。
    同じ時を生きていることが伝わり、共存を感じました。

    現在のことしか書かれていないのに
    犬飼と隼人の育った環境の違いが伝わるのが面白い。
    同じ建物に関わる仕事でも犬飼はエリートだしお金持ち。真面目に育ったんだろうなと伝わります。
    一方隼人は高卒で田舎育ちでやんちゃしてたんだろうなと。今がたのしきゃいい、という感じ。
    そんな2人は同じ建物に関わりながら仕事内容は異なり生活の余裕も違くて。本人たちはそれを考える場面こそないがこう読み手は客観的に見るためそれを強く感じる。資本主義社会を味わいます。

    このランドマークタワーがそれぞれの人生を比喩しているというのも読みどころか。



    それにしても、吉田修一さんは知識が特に広いと感心。
    建設というかなり専門的なことも小説書くためとはいえ学ばれていてすごい。これだけでなくいつも専門知識やその仕事ならではの生活感だとかを丹念に描いていて、その詳しさに驚かされます。
    あとこういう一見光を浴びない人、泥臭いことをする人にスポットをよく当ててるなという印象。しかも今まで関わったことないような人なんですよね。そして特別なことは特に起きなくて。それだからとてもリアル。それが好き。他人の人生を覗き見する感じ。面白い。
     

  • う〜ん。。。結局なんだったのでしょう?
    書評を見て回って少し納得。主人公2人はねじれの関係なのね。だからどちらも線。空間にありながら厚みがない。最近のエンタメ小説に慣れているとまったく味がしないけど、奥を探り出すときりがないのかも知れない(?)。

  • 建設中のねじれた高層ビルと、それと比例するように不安定になっていく主人公。特に隼人は、突発的に何をしでかすかわからない、常に不気味な存在だった。

  • 話がひとつのまとまりに集約していくことなく、終わってしまった。
    埼玉在住なので大宮やその辺りの風景に多少知見がある自分が見てもそうなのだから、道や風景のわからない人はさらにわからないのだろう。
    期待してただけに残念。

  • 不穏。

  • 残念ながら、吉田修一作品好きなのに、何か伝えたいのか、理解できなかった。
    最後まで読むのが苦痛だった。

  • 物語だが、あちらこちらを積み上げたりねじったり離したりして、まるで未完成の建物を見ているようだ。建てる目的や意図も分からない、奇を衒っただけのモノ…。

    今まで読んできた吉田修一さんの小説には考えさせられる内容が多かったが、本作は登場人物の配置が未完成、という感じで消化不良だった。実質的な主人公である2人(隼人と犬飼)が、どこかで対峙する展開を見たかった。彼らの人物像は対照的なところが面白いと思っていたのに。

  • ごくごく普通の日常に、貞操帯や壁一面の毛皮など、異質な物がふいに姿を現しぎょっとさせられる。少しの歪みがしだいに膨らみ、支えきれなくなり、やがて崩壊する。

  • あぁ、そこで終わるんですかという終わり方。
    建築中の高層ビルのねじれが象徴する人間のゆがみ。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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