- Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062758222
作品紹介・あらすじ
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう-。第31回メフィスト賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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同作者「かがみの孤城」があまりにも素晴らしすぎたので、永遠と本棚の肥やしとなっていた辻村深月作品を読む事に。彼女=と言っても過言ではない(らしい)こちらの作品、なるほど教科書通りの人物紹介「起」の整った文章は原点でもしかり。しっかりワクワクさせてもらいながらページを捲る。
主に土台作りのこの前編。キャラクターの特徴 特性 立ち位置 が丁寧に綴られている割には個々のキャラが薄い。深月ちゃんとそのかれぴっぴ、ヤンキー少年、そしてやたら破天荒アピールしてくる先生。
主にここら辺しか印象に残らない。充分なのかもしれないが。
謎ルール蔓延る冷たい校舎、ホストとなる顔の無い自殺者、疑心暗鬼となる少年少女達の心情と並行して、着実に不穏へと進んでいく物語。
ここらでやっと各々の個性が光り出し、人物の言動がマッチして来た事により、全てを把握したいマンの私はページを戻す羽目になる。中々先に進めない小説は苦手だ。私の脳内キャパの問題なのだが。
とまぁややテンションゲージは下がっていたものの、これは伏線だと隠す気が全くない気になるワード達がひょこひょこ顔を出してくるので途中放棄をさせてくれません気になりますもの。
ダークでホラーな雰囲気なのに何も起こらないもどかしさでトータル約1000ページのこちらの作品、スローペースで読み進める事となったが、それは前編の終盤で解消され、私の鼻ちょうちんが割れた勢いで後編に続きます。。。( ゚∀ ゚)ハッ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんと、作者の名前が登場人物となっている。と、そこに「何か意味があるのだろうか?」、「過去、友達で悩んだのだろうか?」、「自分の名前を使ってそのギャップはないのだろうか?」、「進学校に通っていたのかなぁ?」、「学生時代に亡くなった友人がいるのだろうか?」とか、すごく引っかかってしまった。(でも、辻の字が少し違うのだが)
まだ、上巻なので勘違いがあるかもしれないが、深月が角田春子から受ける「いじめ」、「妬み」、昭彦の中学同級生・の「いじめ」による「自殺」。そして高校同級生の「自殺」。
これがテーマのような気がしながら読んでいるのだが…
朝から降り続けている雪の中、県内一の進学校である西南高校3年2組の辻村深月は、幼なじみの鷹野博嗣と一緒に登校する。
そして。停学明けの菅原と佐伯梨香も一緒に登校する。
また、同じ時刻、コンビニで寒さを凌いでいた桐野恵子が同じくコンビニに避難した藤本昭彦と会いこの後、登校する。
さらに駅では、学費免除の特待生・清水あやめは片瀬充が出会い登校する。
ただその日の朝は、彼ら以外の西南高校の学生たちの通学姿がないのが、不思議であった。
静まりかえった校舎には、3年2組の学級委員である彼ら8人だけでった。そして、校舎から外に出れなくなっていることに気がつくのである。
開かない扉、5時53分で止まった時計、圏外を告げる携帯電話…全てに違和感があるシチュエーション。
そして担任・榊の机の上に置かれていたフォトスタンドに写る学級委員は7人。1人足らない…
さらに2ヶ月前の10月12日の学園祭で、同級生が屋上から飛び降り自殺していたが、彼らの誰もがこの同級生の顔も名前も思い出せない。
彼らは、5時53分はその同級生が亡くなった時間であり、その同級生が彼らの中にいて、自分の世界に彼らを招き入れているのだと推測する。
止まっていた時間が動き出した…そして次の5時53分がやってきた時、彼らのうちの誰かが石膏化して消えていく。
なぜ、担任の榊は学生たちに慕われ、彼らの回想の中に頻繁に登場しているのに、ここにいないのか??絶対にこの物語の種明かしが榊にある。
そして、「ホスト」が彼らに恨みがあるのであれば、亡くなった同級生は、角田春子しかいないのだが…
作者があえて自分の名前を出して、自殺者を深月だと思わせていると読んでいるのだが。
とにかく、今のところ全く展開が読めない。ただ、自分がこの中にいたら気が狂るであろうことだけがわかっている… -
はじめてミステリ中のミステリを読んだ。結構怖い・・・。犯人がだれか考えながら読んでるけど難しい・・・。下はある試験が終わってから・・・
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中学や高校に進学した時など、クラスに知っている友達もほとんどいない時、まず出席番号順か何かでたまたま座った席の隣の人から会話をはじめ繋がりを求めていきます。お弁当を一緒に食べたり、下校の際に一緒に帰ったり。そんな中で偶然にも自分に合う人であればよいですがなかなかそうはいきません。それから半年、一年と経つ中で毎日のようにかかわり続ける人たちの中でそれぞれの人となりを知って彼ら彼女らと交流を深め、お互いの関係を作っていく。この作品、上巻だけで600ページもあるのに極めて限られた空間で、半日しか時間が経過しません。そんな中で主人公たちそれぞれの視点からの今までがとても丁寧にひたすら丁寧にゆっくりとした口調で語られていきます。しかも極めて限られた内容のことばかり。そんな中で深月に対する昭彦に対する見方も随分と変わっていきます。まるで自分が交友関係を築いていくかのように。それもあって、読み始めた際の全体の作品の雰囲気もどんどん変わって、作品冒頭で語られる校舎の印象までも変化していきます。そう、進学してその学校の一員として馴染んでいく過程を辿っていくかのように。
この作品を読んでいて感じたのは誰もいない夜が明ける直前の海岸にいるような感覚です。誰もいない静かな夜明け前の海岸、そこに昨日作られたのか小さな8つの砂山がある。静かで平和でいつまでも続くかのような世界。でも、時が経ち、汐が満ちていく中でそれらの一つがさらわれていく、でもそれは一瞬のことで何もなかったかのように、また時が経過していく。そしてまた次の砂山が、という繰り返し。元からいくつあったのかのかもわからなくなっていく。小説の世界は砂山でなくてそれは人間であるという事実。とても怖い世界。でも、この世界にいつまでも浸っていたいと思わせるような心地よさがどこか漂う神秘的な世界。ゆっくりゆっくりと真実に空が白んでいく。下巻では全ての真実が明らかになるだろう期待感の高まり。
すっかりこの世界感にハマりました。下巻もとても楽しみです。 -
初辻村深月。これがデビュー作とはなかなか。長さを感じさせず一気に読める。続きが気になる。
教育観だったり友人観、いじめだったりと作者の思考や伝えたい事がよくわかる。
さて下巻。どのように進んでいくのだろう。 -
敢えて、このデビュー作品のレビューに書き込もう。
註:この作品のレビューではありません。
「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した辻村さんへの雑感です。
直木賞受賞に対して:(7/18)
辻村深月さん、直木賞受賞おめでとうございます。
と彼女のファンとしては素直に祝福したいし、私が1年前から公言していた予想は見事に当たったのだけれど、この作品で? となると疑問……。
直木賞はこの作品に与えられたというよりは、今回、辻村深月という作家に与えられたのでは?と邪推するのは私だけ?
惜しくも落選した「楽園のカンヴァス」はブクログレビューで4.29と稀に見る高評価なのに比べ「鍵のない夢を見る」は、3.20と1点以上も差があるし……。
なんだかなあ、というのが正直な感想です。
選考委員の桐野夏生さんの会見も、下記のように、もやもや感のある表現で、この作品に対する具体的な評価はほとんどないし……。
──選考委員の桐野夏生さんは選考の経緯について説明した。概要は次の通り。
「(選考委員による投票の)最初の方で(候補の5作中)3作が落ち、残ったのが原田マハさんの『楽園のカンヴァス』と、辻村深月さんの当選作『鍵のない夢を見る』でした」
「辻村さんの作品については、短編集であるという点が議論の的になりました。非常に多作で長編もたくさんお書きになっていて、何度も大きな賞の候補になっているのに、今回は短編集であるということで、(この作品での受賞に)若干反対する方もいらっしゃったんです。でも、やはり今の時代を非常に書いている若い作家ではないかということで評価を得まして、当選されました」
「原田マハさんは残念ながら落選されましたが、非常に柄(がら)の大きな作品であるということで、大きな嘘をついているというところでたいへん大きな評価もありました。ただ柄の大きな作品であるところの瑕疵(かし)、インターポールが出てきたりですとか、作中作がやや弱いのではないかということで、マイナスの点数を付けられる方もおりました。本当に僅差で、今回は残念でした。次作に期待しております」
これじゃあ、差があるんだか、ないんだか。
今回は文藝春秋の強引な”がぶり寄り”と言ったところじゃないんですかね。
さらに言うと、今回の結果で、これからの原田マハさんの動向が注目を浴びる。
今年下期、或いは来年上期に、まともな小説を書けば、直木賞受賞は確実でしょう。
今回、彼女を落とした選考委員にはある種の後ろめたさがあるはずだから。
こんなことが起こるから、これまでのノミネート回数とかを視野に入れずに、純粋に作品のみを評価して直木賞を選んでほしいものだ。
でなければ、はなから「この作品にではなく、この作品を書いた作家に与える賞だ!!」と開き直るとかね。
で、辻村深月さん本人はどう言っているかというと、
「読者を信頼し、結論まで踏み込んで書かなくてもいいと思った。目に見えるハッピーエンドだけがエンタメではない」
自然体で書けたが、「いつも通り全力で取り組んだ仕事」と胸を張る。
これまで多くの本から幸福を得た。
書き続けることで「本の世界に恩返しできたら」と結んだ。
らしいのだが、「ベタでも最後までハッピーエンドを書き続けたい」と語った彼女はいったい何処へ消えてしまったのだろう。
結婚、出産を経て心情が変わってしまったのだろうか。残念だ。
しかも──
─第147回直木賞を受賞(2012年7月17日発表)した辻村深月さんの『鍵のない夢を見る』(文藝春秋、1470円)がすでに品切れという店舗が、18日の段階で相次いでいるらしい。
いったいこの本を読んで「面白い!!」と感じる読者がどれほどいるのか甚だ疑問だ。
その後、「辻村深月ってあまり面白くないね」という風評が飛び交い、彼女の作品の人気がなくなることを危惧する私が変わっているのだろうか?
まあ、よく解釈すれば、これで彼女自身、足かせも重荷も取れたことだし、今後は本当に彼女の書きたい小説を自由に書いてもらいたい。
次作に期待するのみだ。
「スロウハイツ」や「名前探し」のような、心揺さぶる小説を。-
おっしゃるとおりです。私は「凍りのクジラ」からずっと辻村さんを応援していたので、この作品しか読まずに他の本をもオミットされてしまうのではない...おっしゃるとおりです。私は「凍りのクジラ」からずっと辻村さんを応援していたので、この作品しか読まずに他の本をもオミットされてしまうのではないか心配・・・2012/07/22
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辻村ワールドすごろく8コマ目でデビュー作に到達。綾辻行人作「Another」を彷彿とさせるシチュエーションのホラーっぽいテイストがいい感じ。大学受験勉強の最中に原型を書き始めたというだけに、まさに当時の辻村さんの内面が溢れ出たかのよう。多感な高校生のリアルで閉塞感漂う心情心理描写はしつこく感じるほど。前半だけでこのボリュームも作者の圧倒的な熱量と思い入れの強さの結果と思えば納得できる。大学時代、就職を前にして書き上げたという後半はさて…。ちなみに読みながら何気に日付を確認したら10月12日…ちょっとゾクッとした。
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「冷たい校舎の時は止まる(上)」
クラス委員の8人が、高校にとじこめられた。
辻村深月デビュー作が、メフィスト賞だったのは、ちょっと意外でしたが、中身がオカルトホラー要素満載の密室、しかも、時が止まり、外には出れず、現実世界から隔離されたもう1つの世界、となると納得。
主人公の位置づけである深月は、ある雪の日、幼馴染の鷹野と何時も通りに仲良く青南学院高校に通学した。ところが、クラスの皆は、登校してこない。やがて、仲が良い景子、充、昭彦、あやめ、梨香、そして停学明けの菅原も登校してくるが、その他生徒に加え、教師も他クラスも登校してこない。痺れを切らした菅原が、学校から出ようとすると登校時には開いた扉が開かない。窓も割れない。電話も繋がらない。そして時計も動かない。8人は謎の空間に閉じ込められる。あやめが、人の中に人が閉じ込められる事例を持ち出し、やがてある仮説に辿り着く。
と、正にオカルト王道を行くストーリー。とはいえ、この物語の背景にあるのは、深月と彼女と仲の良かった角田春子との確執であり、いや、確執ではなく春子による一方的な攻撃と虐めでなんですけどね。
自分がいくら勉強しても成績は上がらないけど、自分より勉強してなく見え部活も継続する深月は、常に上位。だから気にくわないと攻撃を始める春子。進学校ならば当たり前の課題であり、深月が可哀想で仕方がなかったです。自分で自己消化しろと。虐められる側は、そんなはっきり主張できないですよ。虐める側が異常な訳でね。だから、深月のそばに鷹野や昭彦らがいて良かったなと。
上巻では、何故この空間か発生したのか。次第に皆に浮かぶ自殺したクラスメイトの漠然とした記憶に、マネキンに代わっていく仲間、とオカルト感満載です。誰もが、この空間のhostをつかめない中、迫る恐怖と戦う。すごい怖い訳では無いですが、徐々に伝わる仲間の絆の強さの方が響きました。冒頭に、
冷たい校舎の中で、彼らと一緒に過ごしたこと。今また、あなたが新たにページを開き、雪降る通学路を歩き出そうとしていること。それを思う時、前が向けます。これはわたしの名刺代わりの話になりました。初めまして、辻村深月です。
とあるように500ぺージでボリュームが多いが、意気込みは伝わりました。 -
ずっと気になっていて、やっと読めた1冊。センター試験が迫るある日、登校した学校に閉じ込められた8人。この理不尽な世界は誰が作り出したのか……いや、理不尽なのはどちら側なのか。ややホラータッチで進んでいく展開に、ページをめくる手がとまらなかった。少しずつ見えてくる皆の過去と心の闇が、下巻でどう結末に絡んでいくのか楽しみだ。
著者プロフィール
辻村深月の作品






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