冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 9729
レビュー : 892
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758222

感想・レビュー・書評

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  • 「自殺したのは誰?」


    雪の日に8人の高校生が学校に閉じ込められる。8人は共通して、学園祭の日に自殺したクラスメートの顔も名前も思い出せない。止まる時間。

    展開が全く読めない、実に面白いミステリー・ホラー作品である。
    ただ単純にミステリー・ホラーとして読んでも面白いが、僕はこの物語の真髄は登場人物の心の闇にあると思う。

    「自殺したクラスメート」を必死に思い出そうする過程で、登場人物たちは自分の過去を回想する。それも、それぞれが抱える闇の回想だ。

    とても優しい心を持つが、自分のことを卑屈に思いすぎ世界の事象に対して全ての責任を負おうと苦しむ深月。

    誰に対しても優しく他人を受け入れるが、それは実は上辺だけであって本当の意味で悩んでいる人の助けにはなれないと思う充。

    サバサバしていていつも本音でぶつかる気丈な性格だが、実はとても繊細で重い家族の悩みを抱える梨香。

    嫌味なく言いたいことが言え気遣いができるが、友人が自殺してしまった過去を持ち「他人事とは思えない」と考えることができず、「責任感」が拭えない昭彦。

    成績優秀で絵画もコンクールに入賞するほどの秀才であるが、器用に何でもできる反面『本物』にはなれず人と本心でぶつかることを避けてきた清水。


    上巻だけではまだこの5人の話までしか出てこない。
    「思い出して」と反芻されるセリフは、実は「自殺」という悩みの行き着く果てを考えることによって各登場人物がそれぞれの心の闇を振り返って、そして受け入れるようにしているのだ。

    人間は、心の闇、僕は「弱さ」と解釈しているが、それを受け入れないと成長できない。本当の意味で大人になれない。

    そういうことを、「自殺したクラスメート」を思い出そうとする過程で、悟らせようとしているのではないだろうか。


    高校生を登場人物にして上述したようにすることは、「子供から大人へ」ととてもわかりやすいメッセージである。

    何も高校生だけが考える必要はない。むしろ、僕のような大学生が考えるべきなのではないだろうか。
    大学生はモラトリアムと言われ、大人になる最後の、そして最も難しいステップだと思っている。「自分で考え、決断すること」が大人になることだと思っていて、そのためには「心の闇(=自分の弱さ)」を受け入れなくてはならない。


    そんなことを考えさせてくれた作品です。
    作者の考えとズレるかもわかりませんが、僕は上述したような受け止め方をしたしそれで良いと思います。

  • 季節を間違えて咲いた花のように、全身に受ける風と温度の全てに感じたまま自らを与えるような、感受性の強い人でした。だからその心の弱さに同じく傷付く己の弱さが、彼女だけは救いたいと痛むのです。脆くて壊れやすい少女、辻村深月を。彼等をこんなにも繋いでるものは、各々が傷口から流れる赤い絶望を持っていると解っている強さだと思います。時が止まり封鎖された冷たい校舎で、8人全員があの日5時53分あの一瞬に問う。枯れるほど泣き叫ぶ人達が居た目前で空を踏み、燃え散った翼は貴方なのですか、と。それが平等に愛されるべき命だったということ、それが重要なのだ。そしてまた1人、消えていった。

  • 下巻にて。

  • 怖いーっ!これを読んで寝たら怖い夢を見ました…。
    ミステリーは好きなのですが、たまに怖いのと紙一重のものがあり、自分からは近付かないように気をつけているけれど、でも怖いものみたさで読んでしまったり。
    もう誰なのか気になって気になって仕方ありません。でも夜に読むと怖いのよ ><;
    一気に最後のページを見てしまいたいけど、我慢!我慢!

  • 世の中の魅力的な人間に対するカテゴライズが、ここに出てきている登場人物で過不足なく描写できているようで、そこがとても好き。

  • 学園ものは好んで読まないが、今まで読んだ学園もので一番おもしろかった。
    どんでん返しでおもいきり騙されたが心地よい。
    ホラー要素あり、恋愛あり、友情ありで盛りだくさんである。
    しかし飽きることなく、一気読みした。
    そして最後騙された。

  • 再読。毎年冬になると読みたくなる作品です。

    今思えば、この作品で辻村作品にハマったんだな~
    最近はちょっと方向性が変わってきたので離れてしまいましたが、
    今でもこの作品は学園ミステリの中では1、2位を争う面白さです!

    しんしんと降り積もる雪。凍てつく校舎に閉じ込められた数人の生徒。
    共通するのは、皆にぽっかりと抜け落ちた学園祭の時の記憶。
    あの時自殺したのは誰?ここから抜け出す事はできるのか?

    ミステリとはいえ、チャイムが鳴る度に一人、また一人と
    消えていくリアルな描写は、かなりホラーテイスト。

    人物描写が怖いくらい丁寧で、ついついのめり込んじゃいます。

  • 一気読みした。すごく、すごく面白かった。こんなに自分の気持ちを代弁してくれる作者はいないと思う。散りばめられた伏線の回収もとても素敵。本当にオススメの一冊。

  • すっっっっごくおもしろかったです!!!
    話の進め方といい、キャラクターの描き方といい、
    すごくのめり込んでしまって、上下巻ともけっこう分厚いのですがすぐ読み終わってしまいました!
    読み終わった後は登場人物の皆を好きになっていました。
    友達に借りて読んだのですが、改めて自分で買い直してしまいました。笑
    大好きな本です!

  • じれったい!いったい誰が自殺したんだ!
    一人ひとり、一つひとつ丁寧に物語が進んでいくおかげで、凄く奥行きを感じさせる。時系列がバラバラでも、小出しにしていくことでゆっくりと謎が紐解かれていく感じもとても良い。
    感情や空気の表現も秀逸で、冬の、あの灰色の雰囲気がじわじわ伝わってくるようだった。ほとんど人のいない校舎の冷たさとか、ちょっと懐かしいなぁ。あの心細い感じ、独特だよね。
    上巻ということでまだまだ謎が多い分、下巻でどう収集を付けていくのか期待が膨らむ。早く!下巻を!

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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