『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

  • 400人登録
  • 3.14評価
    • (12)
    • (37)
    • (100)
    • (22)
    • (7)
  • 59レビュー
著者 : 北山猛邦
  • 講談社 (2007年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758635

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • とりあえず読み終わってまず考えたのは、本格ミステリとは一体どこまで示すのだろうか、ということだ。
    本著は裏表紙のあらすじに本格ミステリを謳っているのだが、他の本格派とはかなり毛色が異なる。

    まず設定だが、終焉をむかえつつある人類の世界、が舞台だ。これは件の裏表紙あらすじから抜粋させて頂いた。
    主人公はゲシュタルトの欠片と本作内では呼ばれる見えざる者が見えてしまう探偵、南深騎。彼は一般人が可視出来ないゲシュタルトの欠片を退治することを仕事としている。
    そんな南深騎と行動にするのがどこにでもいてどこにもいない謎に包まれた少女、菜美。

    ある日二人の元に瑠華という少女が訪れる。
    彼女は自宅であるクロック城に住まうスキップマンと呼ばれるゲシュタルトの欠片を退治してほしいと依頼する。

    彼女が世界の終焉を止める鍵だと命を狙う武装集団のSEED、逆に彼女を守って世界を救おうとする十一人委員会、あらゆる組織、人間が渦巻くクロック城で首なし遺体が発見されて惨劇が始まる。
    犯人は誰なのか、世界の終焉を止める鍵とは何なのか、殺人事件の犯人探しに留まらないミステリーがラスト怒涛の数十ページで展開される。

    ストーリーを語るならこんなところだろう。
    ここまで読んで伝わる人には伝わると思うが、私は初めて本作を読んだときに西尾維新の戯言シリーズを思い出した。
    異型な世界において繰り広げられる突飛なミステリー。世界観だと言われては何とも言い難いが、かなり独特だと思う。ちなみに本作を読んだ50代の母は何がなんだかと首を傾げていた。
    本格ミステリーだと思って読むとうぅん、となるかもしれない。

    だが謎解き自体は理路整然としていて本格的で作者の得意とする物理的トリックが余すところなく使用されている。
    果たして舞台が終焉を迎える世界であることに意味はあったのかと聞かれれば口籠る部分もあるが、SF要素の何でもありな世界観を舞台が証明しているのだろう。
    ありえない世界な上でのありえない人間たち、感情、一般人には理解出来ない亜種な世界を楽しんで欲しい。

    個人的には最後の謎解きのまどろっこしさがあまり好きになれない。伏線回収を詰め込み過ぎて情報の過多にキャパオーバーした。

    ただ全体的には世界観、トリックもよく出来ていると思う。有栖川有栖のあとがきを読むと何だか読後の違和感を嚥下させられる感じがする。流石ベテラン。

    ところでその有栖川有栖のあとがきに北山氏は叙述トリックが嫌いとあるのだが他作で叙述トリックを拝見したような……(笑)

    最後に本作の感想や紹介から逸れてしまったが、好き嫌いは分かれるものの1回読んでみるべき作品だとは思う。特にメフィスト賞の系譜が好きな人は是非。

  • 太陽黒点の異常による磁気嵐の影響を受け、終末へと向かう世界。
    そんな世界で探偵業を営み、ボウガンで幽霊(ゲシュタルトの欠片)退治が出来る能力を持つ南深騎と謎の相棒志乃美菜美は、黒鴣瑠華の依頼で「クロック城」に現れる幽霊「スキップマン」を調査します。
    そこで相次ぐ殺人事件、はては世界の終末の鍵を巡る騒動にも巻き込まれていくSF色の強いミステリーです。

    終末へ向かう世界というのがなんとも暗く、降り続ける雨や不気味なクロック城という舞台が良い雰囲気です。
    SEEMや十一人委員会などよく分からない人々や事柄が多く、特に世界の終末に関する〔真夜中の鍵〕や志乃美菜美についての謎については全く意味が分かりませんでしたが、クロック城事件には(全くではないですが)それほど関係ないので問題ないです。
    このSFっぽい要素は雰囲気の一つとして楽しめれば良いんじゃないかと思っています。

    過去・現在・未来と分かれ、それぞれに巨大な時計が配されたクロック城というのはとても魅力的です。
    密室に関しては某作品の影響もあって分かりやすいですが、見所はその後の二人の推理合戦の凄まじさだと思います。
    クロック城という異質な場所での異質な人々によって、とんでもない真実が成り立つ事に唸りました。
    設定舞台の特殊さなどそれももちろん魅力の一つではありますが、それを抜きにしても事件のトリックや真相は衝撃的なおもしろさでした。

  • 2012年は、北山猛邦の年になる。



    『名探偵音野順の事件簿』(東京創元社)などで知られる本格推理小説作家、北山猛邦の、デビュー作。

    以降、『瑠璃城』、『アリス・ミラー城』、『ギロチン城』(いずれも講談社)と続く、城シリーズの一作目でもある。

    デビュー作にして、既に「世界」を形作る小説作法を持っていて、見事なまでの良質なミステリ。

    文庫版解説の有栖川有栖氏の文章が、まさに的確。

    過不足なく北山ミステリが紹介されているので、是非、本編読了後にお読みください。(ネタバレが若干含まれてるから、間違っても立ち読みしないで)

    ちょっとばかし、早すぎたのかもしれない。

    一昔前、出版される小説はすべて、どんなジャンルであろうとも、かならず「ミステリの要素を持つ」作品だったことがある。

    「えっ、こんなものまで?」という驚きを、書店の、特に本帯を見るにつけ感じていた。

    「ミステリにあらずんば小説にあらず」

    というほどに、いわゆる「ミステリ全盛期」があった。

    それはかつて、SFという一大ジャンルが通り、そして衰退した路だった。

    一度大きく広がりすぎたムーブメントは、特にそれを支える人たちによって、その世界を規定され始め、「これはSFじゃない」「こんなものはミステリじゃない」などと、広がりすぎたジャンルを何とか自分の手元に置いておきたい人たちによって、制限を加えられるようになってしまった。

    その結果、ちょっとしたSF、なんとなくなミステリは世間一般では許されず、書き手の方も、ガチでSFやミステリを書いても、それを支えるべきファンたちから突き上げを喰らってしまい、糞味噌にけなされることが少なくない状態になっていき、結果、特定ジャンルを敬遠する作家が生まれるという、ジャンルが衰退するのも当たり前と言わざるを得ない状況が、できあがった。

    書く人が書かなくなれば、読む人は読むものがなくなる。

    北山猛邦の、ミステリに対するこだわり、そしてその膨大なる知識、さらには独自の終末的世界観が、この一冊のデビュー作に、詰まっている。

    しかしこれは、果たしてミステリファンが読みたいミステリだったのだろうか?

    一面では、そうだと思う。

    殺人事件が起こり、その犯人を突き止めるために、アリバイの検証が行われ、そして、トリックが解明される。

    その単純なミステリとしての筋書き(プロット)に、必要なのか不必要なのか判然としない、終末的世界とその物語。

    これはただのミステリじゃない。

    北山猛邦の語る、物語だ。

    ミステリにとって必要か否かではなく。

    北山猛邦作品に必要な世界観・ガジェット・キャラクター。

    それがあって始めて、本書は本書たり得るのだ。

    だからこそ、北山猛邦の登場は、ちょっと早かったかもしれない。

    SFやミステリがそのジャンルそのものを自分たちの手で窮屈にしていったために、ちょっとやそっとじゃあ、世間で受け入れられなくなってしまった。

    SFは、一度衰退した。

    ミステリは、その残り火がくすぶっていた。

    それを再燃させるのは、もしかすると、この北山猛邦かもしれない。

    そう思わせる、圧倒的なデビュー作。

    特にラストのどんでん返しは、お見事。

    読者に読ませる、読者を楽しませるというエンターテインメントの基本が、そこにある。

    2012年は、北山猛邦の年になる。

    きっと。(とある出版社が、そのように宣伝しているのです)

    今こそ、デビュー作から読み返すチャンスですよ。(ミステリはネタバレが怖いから、内容を突っ込んで書けないのが辛いのう)

  • 城シリーズ、第1弾。

    ファンタジーのような世界が舞台の本格ミステリー。
    ちょっと世界観にはついていけなかった。
    トリックもすぐに分かりました。

  • ネタバレ禁と解説で大好きな有栖川さんが言っているので、トリックについては触れないことにする。

    1999年、世界の終焉を間近に控えた物語。
    明日滅びるかもしれない不安を抱える世界で、南深騎は菜美とともに探偵としての仕事を続けている。
    彼にしか出来ないある技を武器にして。
    瑠華という少女から依頼を受け訪れたのは、巨大な時計が3つ並んでいる「クロック城」。
    未来、現在、過去を現しているという時計は、それぞれ時間がズレている。
    世界を救う鍵となるのか、それとも世界を滅ぼす弾きがねとなるのか。
    正体不明の「真夜中の鍵」をめぐって対立する十一人委員会と武装集団SEEM。
    そして、存在しているのに存在していはいない菜美。
    確立した世界観は少しも崩れることなく物語を貫いている。
    深騎と菜美の関係性も、物語を進めていくうえで重要な意味を持っている。
    終端での探偵役と真犯人との対決は読みごたえがあった。
    語られる事件の結末と経緯。
    探偵と犯人の攻防により、真実は二転三転してその様相を変えていく。
    少し苦手かも…と思いながら読み始めたけれど、最後まで楽しめた物語だった。

  • 中二病的ダークファンタジーの色濃い霧の中、聳えるクロック城。
    三つの時計が過去、現在、未来の時を刻む。
    終末を間近に控えた世界。
    突然立ち現れる不可能犯罪。
    人間の可能性に関する研究。
    物理トリックの名手と名高い北山さん、クロック城の存在がトリックを昇華させていた。

  • 中2病全開なお話。
    キャラクター一人一人が個性的だったが、どのキャラももう少し掘り下げて欲しかった。
    幾つかの謎が謎のまま終わってしまい、何となく消化不良…
    世界観やキャラクター、トリックはよかった。

  • 『『クロック城』殺人事件』を読了。北山猛邦のデビュー作だが、当時22歳だというので驚いた。

    読む前はよくあるクローズドサークル物かなと思っていたが、ちょっと世界観が特殊。終焉を迎えつつある人類の世界という設定で、物語上では残り一ヶ月もなく、世界はほぼ確実に終わり。ストーリー設定は完全にSF。

    探偵、南深騎(みなみみき)は、ゲシュタルトの欠片(幽霊のようなもの)をボウガンで退治する事を専門としている。

    あらすじは、南深騎の元に黒鴣瑠華という少女が訪れ、自分の住んでいるクロック城に出没するスキップマンを退治して欲しいとの事。

    瑠華によると、スキップマンとは幽霊のようなもので、殺された人もいるという。しかし幽霊は大脳が見せる幻とも言えるものなので、生きている人間には何も手出しはできない。

    色々あってクロック城に調査に向かうのだが、そこで殺人事件が起こる。

    本作は、設定などは全体的にSFだが、謎解き面では間違いなく本格ミステリだった。

    そして、ホワイダニットもなかなか現実離れしていて楽しめた。

  • 雰囲気で読者の好みがはっきり分かれる一冊。わたしは嫌いでした。つまらなかった。殺人事件の部分はトリックも分かったんだけど、結局世界が終わっちゃううんぬんはどうなるんだ。なんとかっていう組織が二つでてきたけどいらんかったんじゃないか、ゲシュタルトなんたらもよう分からんけど曖昧すぎやしないか、キャラクター設定がいわゆる中二病に走りすぎていてミステリを読もうとする読者にはハードルが高すぎるんじゃないか、などなど。書き出すと不満が止まらなさそうなのでやめます。

  • ラノベ的というかSF風味の世界観と本格ミステリ的トリックのギャップがすごい。最終的にどのようなタネなのか(SF的世界に押し切られるのか物理トリックにするのか)はらはらしながら読んでいて、望み通りしっかり物理トリックで解いていた。
    それにしてもそれぞれの人間関係がちょっと酷だなぁ。

全59件中 1 - 10件を表示

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)のその他の作品

北山猛邦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする