- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062758635
作品紹介・あらすじ
世界が終わる瞬間、あなたは誰と一緒にいたいですか?
「その時」だからこそわかる、本当に大切な人、守りたいもの。あなたなら、そのために人を殺せますか?
歓喜した。こんな本格の傑作に出会えようとは。――有栖川有栖
終焉をむかえつつある人類の世界。探偵・南深騎(みき)と菜美の下に、黒鴣瑠華(くろうるか)と名乗る美少女が現れた。眠り続ける美女。蠢く人面蒼。3つの時を刻む巨大な時計。謎が漂うクロック城に2人を誘う瑠華。そこに大きな鐘が鳴り響いたとき、首なし遺体が次々と現れた。驚愕のトリックが待つ、本格ミステリ。
「もしも、『クロック城』をブレイク前の習作だと思っている方がいたら、ぜひ本書を読んで勘違いに気づいていただきたい。(中略)シュアで美しい推理をたどり、ゴールに着いた時は、溜め息が出た。しごく素直な気持ちで、凄い、と思った。」――<有栖川有栖氏「解説」より>
第24回メフィスト賞受賞作
感想・レビュー・書評
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再読の筈だが記憶なし。メフィスト賞の中のガチガチの本格もの。舞台設定は、探偵のところに美少女が依頼に来て、怪しい館(大時計が3つあるクロック城)に向かう王道展開に、セカイ系の終末SF風味をひとつまみ。という感じ。正直、昨今ラノベでもなさそうな感じだが、序盤は気恥ずかしくて読み進めるのが辛いのでは。
複雑そうに見えてストーリーもトリックも非常にシンプル。特に物理トリックはバカミス的な傑作でしょうね。館モノはしばらくいいかなぁ、、、詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと前の、あったのかもしれない、違う世界線の話かもしれない、人類史が終わる寸前の世界。
クロック城と呼ばれる謎の建物。
直径10メートルの巨大な時計が3つ並び、左右の時計の針は真ん中の時計と10分づつ前後にずれている。
SFチックな館の噂、存在の不明な登場人物、眉唾な計画や組織、それらが収束してどういう展開、結末になるのか、序盤では全く想像できず。。。
本格ミステリーとして読んでいましたがファンタジーとして取り掛かった方がすんなりとはいってきそう。
ノベルズ版では後半の謎解き部分や館の見取り図?館の図が袋綴じになっていたし、帯には"本文208頁の真相を他人に喋らないでください"との記載がそのくらいにネタバレ厳禁なトリック。なるほどわかる気がする。勘のいい人はトリックに気付いてしまうかも。
真相が暴かれてからさらに深層へ、そんなふうに思わせる物語の展開の仕方で後半は駆け足で読み切りました。
気になることは解明されず、、、一応城シリーズとしては続きますが話が繋がっているわけではないようなのでもやもや、、、最後の有栖川さんの解説はまさに解説という感じで理解が深まって面白かった♪
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にしても当時22歳の方が書いたとは、脱帽です。 -
物語の舞台が終わりかけている世界で、素敵に好みのミステリでした。面白かったです。
この音世界を終わらせないためにSEEMと十一人委員会がそれぞれ別の方向性で支配している…磁気異常と降り続く雨の世界観も好きでした。
びしょ濡れでやってきた瑠華から「家に住む〈スキップマン〉を退治して」という依頼を受けた探偵の南深騎といつも側にいる菜美が訪れる『クロック城』。外壁にある10分ずつずれた3つの大時計が印象的です。
クロック城で暮らす瑠華の家族や親族、博士の助手、執事親子もなんだか変わっている人ばかり、加えて世界の崩壊を止める〈真夜中の鍵〉を探す十一人委員会の第三の天使・クロスとその助手までいる。
世界観も好きだし、起こる事件も凄惨だし、SEEMも十一人委員会も乗り込んでくるしクロック城は崩壊するし…で盛りだくさんでした。
でも真相…事件の真相もだし、菜美の正体もびっくりで哀しくなりました。ゲシュタルトの欠片、かぁ。。
それにしてもセロトニン異常ってここまで影響大きいものなのかな。気をつけよう。未音、場を支配してたな。
この世界設定が好きだったので、これより後の城というタイトルが付いたシリーズもこんな感じなのかなぁ。読みます。 -
ハズレ。
中二っぽい世界が私には合わなかった。 -
城シリーズ、第1弾。
ファンタジーのような世界が舞台の本格ミステリー。
ちょっと世界観にはついていけなかった。
トリックもすぐに分かりました。 -
とりあえず読み終わってまず考えたのは、本格ミステリとは一体どこまで示すのだろうか、ということだ。
本著は裏表紙のあらすじに本格ミステリを謳っているのだが、他の本格派とはかなり毛色が異なる。
まず設定だが、終焉をむかえつつある人類の世界、が舞台だ。これは件の裏表紙あらすじから抜粋させて頂いた。
主人公はゲシュタルトの欠片と本作内では呼ばれる見えざる者が見えてしまう探偵、南深騎。彼は一般人が可視出来ないゲシュタルトの欠片を退治することを仕事としている。
そんな南深騎と行動にするのがどこにでもいてどこにもいない謎に包まれた少女、菜美。
ある日二人の元に瑠華という少女が訪れる。
彼女は自宅であるクロック城に住まうスキップマンと呼ばれるゲシュタルトの欠片を退治してほしいと依頼する。
彼女が世界の終焉を止める鍵だと命を狙う武装集団のSEED、逆に彼女を守って世界を救おうとする十一人委員会、あらゆる組織、人間が渦巻くクロック城で首なし遺体が発見されて惨劇が始まる。
犯人は誰なのか、世界の終焉を止める鍵とは何なのか、殺人事件の犯人探しに留まらないミステリーがラスト怒涛の数十ページで展開される。
ストーリーを語るならこんなところだろう。
ここまで読んで伝わる人には伝わると思うが、私は初めて本作を読んだときに西尾維新の戯言シリーズを思い出した。
異型な世界において繰り広げられる突飛なミステリー。世界観だと言われては何とも言い難いが、かなり独特だと思う。ちなみに本作を読んだ50代の母は何がなんだかと首を傾げていた。
本格ミステリーだと思って読むとうぅん、となるかもしれない。
だが謎解き自体は理路整然としていて本格的で作者の得意とする物理的トリックが余すところなく使用されている。
果たして舞台が終焉を迎える世界であることに意味はあったのかと聞かれれば口籠る部分もあるが、SF要素の何でもありな世界観を舞台が証明しているのだろう。
ありえない世界な上でのありえない人間たち、感情、一般人には理解出来ない亜種な世界を楽しんで欲しい。
個人的には最後の謎解きのまどろっこしさがあまり好きになれない。伏線回収を詰め込み過ぎて情報の過多にキャパオーバーした。
ただ全体的には世界観、トリックもよく出来ていると思う。有栖川有栖のあとがきを読むと何だか読後の違和感を嚥下させられる感じがする。流石ベテラン。
ところでその有栖川有栖のあとがきに北山氏は叙述トリックが嫌いとあるのだが他作で叙述トリックを拝見したような……(笑)
最後に本作の感想や紹介から逸れてしまったが、好き嫌いは分かれるものの1回読んでみるべき作品だとは思う。特にメフィスト賞の系譜が好きな人は是非。 -
雰囲気で読者の好みがはっきり分かれる一冊。わたしは嫌いでした。つまらなかった。殺人事件の部分はトリックも分かったんだけど、結局世界が終わっちゃううんぬんはどうなるんだ。なんとかっていう組織が二つでてきたけどいらんかったんじゃないか、ゲシュタルトなんたらもよう分からんけど曖昧すぎやしないか、キャラクター設定がいわゆる中二病に走りすぎていてミステリを読もうとする読者にはハードルが高すぎるんじゃないか、などなど。書き出すと不満が止まらなさそうなのでやめます。
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太陽黒点の異常による磁気嵐の影響を受け、終末へと向かう世界。
そんな世界で探偵業を営み、ボウガンで幽霊(ゲシュタルトの欠片)退治が出来る能力を持つ南深騎と謎の相棒志乃美菜美は、黒鴣瑠華の依頼で「クロック城」に現れる幽霊「スキップマン」を調査します。
そこで相次ぐ殺人事件、はては世界の終末の鍵を巡る騒動にも巻き込まれていくSF色の強いミステリーです。
終末へ向かう世界というのがなんとも暗く、降り続ける雨や不気味なクロック城という舞台が良い雰囲気です。
SEEMや十一人委員会などよく分からない人々や事柄が多く、特に世界の終末に関する〔真夜中の鍵〕や志乃美菜美についての謎については全く意味が分かりませんでしたが、クロック城事件には(全くではないですが)それほど関係ないので問題ないです。
このSFっぽい要素は雰囲気の一つとして楽しめれば良いんじゃないかと思っています。
過去・現在・未来と分かれ、それぞれに巨大な時計が配されたクロック城というのはとても魅力的です。
密室に関しては某作品の影響もあって分かりやすいですが、見所はその後の二人の推理合戦の凄まじさだと思います。
クロック城という異質な場所での異質な人々によって、とんでもない真実が成り立つ事に唸りました。
設定舞台の特殊さなどそれももちろん魅力の一つではありますが、それを抜きにしても事件のトリックや真相は衝撃的なおもしろさでした。 -
2012年は、北山猛邦の年になる。
『名探偵音野順の事件簿』(東京創元社)などで知られる本格推理小説作家、北山猛邦の、デビュー作。
以降、『瑠璃城』、『アリス・ミラー城』、『ギロチン城』(いずれも講談社)と続く、城シリーズの一作目でもある。
デビュー作にして、既に「世界」を形作る小説作法を持っていて、見事なまでの良質なミステリ。
文庫版解説の有栖川有栖氏の文章が、まさに的確。
過不足なく北山ミステリが紹介されているので、是非、本編読了後にお読みください。(ネタバレが若干含まれてるから、間違っても立ち読みしないで)
ちょっとばかし、早すぎたのかもしれない。
一昔前、出版される小説はすべて、どんなジャンルであろうとも、かならず「ミステリの要素を持つ」作品だったことがある。
「えっ、こんなものまで?」という驚きを、書店の、特に本帯を見るにつけ感じていた。
「ミステリにあらずんば小説にあらず」
というほどに、いわゆる「ミステリ全盛期」があった。
それはかつて、SFという一大ジャンルが通り、そして衰退した路だった。
一度大きく広がりすぎたムーブメントは、特にそれを支える人たちによって、その世界を規定され始め、「これはSFじゃない」「こんなものはミステリじゃない」などと、広がりすぎたジャンルを何とか自分の手元に置いておきたい人たちによって、制限を加えられるようになってしまった。
その結果、ちょっとしたSF、なんとなくなミステリは世間一般では許されず、書き手の方も、ガチでSFやミステリを書いても、それを支えるべきファンたちから突き上げを喰らってしまい、糞味噌にけなされることが少なくない状態になっていき、結果、特定ジャンルを敬遠する作家が生まれるという、ジャンルが衰退するのも当たり前と言わざるを得ない状況が、できあがった。
書く人が書かなくなれば、読む人は読むものがなくなる。
北山猛邦の、ミステリに対するこだわり、そしてその膨大なる知識、さらには独自の終末的世界観が、この一冊のデビュー作に、詰まっている。
しかしこれは、果たしてミステリファンが読みたいミステリだったのだろうか?
一面では、そうだと思う。
殺人事件が起こり、その犯人を突き止めるために、アリバイの検証が行われ、そして、トリックが解明される。
その単純なミステリとしての筋書き(プロット)に、必要なのか不必要なのか判然としない、終末的世界とその物語。
これはただのミステリじゃない。
北山猛邦の語る、物語だ。
ミステリにとって必要か否かではなく。
北山猛邦作品に必要な世界観・ガジェット・キャラクター。
それがあって始めて、本書は本書たり得るのだ。
だからこそ、北山猛邦の登場は、ちょっと早かったかもしれない。
SFやミステリがそのジャンルそのものを自分たちの手で窮屈にしていったために、ちょっとやそっとじゃあ、世間で受け入れられなくなってしまった。
SFは、一度衰退した。
ミステリは、その残り火がくすぶっていた。
それを再燃させるのは、もしかすると、この北山猛邦かもしれない。
そう思わせる、圧倒的なデビュー作。
特にラストのどんでん返しは、お見事。
読者に読ませる、読者を楽しませるというエンターテインメントの基本が、そこにある。
2012年は、北山猛邦の年になる。
きっと。(とある出版社が、そのように宣伝しているのです)
今こそ、デビュー作から読み返すチャンスですよ。(ミステリはネタバレが怖いから、内容を突っ込んで書けないのが辛いのう)