暗黒館の殺人(四) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2307
感想 : 179
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758819

作品紹介・あらすじ

血塗られた浦登家の系譜を受け継ぐ者は誰?漆黒の館を包み込むのは断罪の炎か。逆転に次ぐ逆転の果て、とうとう事件の真相は明らかになったかに見えたが…。空前の本格&幻想ミステリ巨編二六〇〇枚、ここに堂々の完結!恩田陸、京極夏彦、宝野アリカ、奈須きのこ各氏の「特別寄稿」を収録の最終巻。

感想・レビュー・書評

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  • 無事、全4巻読了。
    まさか、「私」の正体が中村青司だったとは...全く気づかなかった。
    この話自体が中村青司の出発点になっていようとは思わなかった、
    他の館→暗黒館ではなく、暗黒館→他の館という構造になっているところが驚いた、そしてこの暗黒館の殺人以降に発売された作品にもこの暗黒館での出来事が契機となって作られているのかと思うと最後の10作目にもこの館が元ネタとなった作品になるのかと思うととても楽しみになってきた。
    そして物語の真相だが、江南(えなみ)が犯人とは思わなかった。主要人物の一人の江南(かわみなみ)とごっちゃになるが別人であるという事に気づけず少々混乱してしまった。そして動機もまぁ気持ち悪い上、深い沼のような深淵に似たものを覚えた。これが館シリーズの世界観の根幹なのだと思い、良い読書をさせてもらったことに感謝したい。

  • 暗黒館の物語も最終局面へ。一冊丸ごと解決編!時計館が表の傑作ならば、暗黒館は館の持つ色気をすべて塗り込んで黒く燃やした集大成と言える。館という匣の辿り着く頂点という名の底。立ち位置的にシリーズ最終巻でもよかった。鹿谷や江南のように館への衝動を抑えきれない読者にはぜひともここまで読み進めてほしい作品。読み終わった後にはこれまでの館へともう一度訪ねてみたくなるだろう。その魅力へと取り込まれてしまう魔性の作品となっている。

    謎については推測が割と当たっていてうれしかった。ノートに16ページもメモをして読んできた甲斐があった(笑) それでも解答を見ていて、自分が気づかない伏線が多くあって唸るしかなかった。示されてしまえば、これは大胆過ぎやしないか…という感じなんだけどね。
    ずっと気になっていた犯人の動機も腑に落ちた。他の謎でもそうだけど、世の理外にある暗黒館。そのルールから見えてくるものも、その場だからこそ映らないものもある。動機はまさに暗黒館という場に慣れていたからこそ、盲点になってしまっていた気がする。

    また、今回はトリックがどうというよりは、館や登場人物が魅力的だった。あれだけ世から外れたものを縋っていた一族が、その闇の果てで見せる人間臭さ。光ではなく闇の中で生きる者たちの愛。狂おしいまでの悲しみに満ちていた。その涙を拭うことができたのか、その答えもまた闇の中にあるのだろう。

    全体としてやっぱり長いので(核心に迫ろうとするとすぐ横槍が入るのはもうギャグに近い)、3冊くらいにまとまる物語だったら文句なしだったなあ。

  • 約二ヶ月間をかけて、ようやくこの『暗黒館の殺人』という長大な作品を読了した。
    シリーズの7作目として捉えたとき、この作品はやはり特別だ。単体の作品としてはやはり読めないだろう。単体で読んでもそのあまりに深く醸成された世界観を楽しむことが出来ない。

    故に、この作品はシリーズを読んできたからこそ味わえる驚きや雰囲気に満ちている。盟友有栖川有栖が学生アリスシリーズの『女王国の城』において、ファンサービスのようなシリーズの楽しみを演出しているように、この作品は館シリーズのファンが今まで楽しんできた幻想的でロジカルで怪奇的な綾辻作品の要素が凝縮されている作品だ。

    本作品の評価は長大であるが故に、その全ての要素に納得できるかは怪しいところで、それ故に受け付けない人は多いだろう。それだけ多くの試みがなされていて、その中には単純に作者らしい要素、作者の趣味とも言えそうなものも含まれている。
    ストーリーとしては雰囲気作りが徹底されていて、舞台、登場人物ともにシリーズ最高レベルといえる。今回の主役である中也はどこか懐かしみと親しみのある青年だが、その素性は隠匿されている。またその中也を暗黒館という舞台に誘い、謎に引き込み続けるのが玄児だ。彼に垣間見られる闇は暗黒館そのものの闇と同調している。他にも、魅力的なキャラクターが多く登場するが、全てを語るのは興が削がれるだけだろう。

    そして、事件や謎の規模でいえば、およそこの文量に見合ったものではないが、逆に少ない謎を隠しながら読者を暗部へと引き込んで行くようであるといえる。謎が解決しかけると何か別の退っ引きならない事が起きて解決が延期される、そういう場面が多い。人によってはイライラするかもしれないが、そこはこの館の住人になったつもりで気長に楽しみたいところ。謎解きの難度は、このシリーズ特有の文脈、幻想性、闇をどこまで読者が認め受け入れているかで変わる。この点で僕は比較的波長が合っているので謎解きはまあいい線行ったのではないか。

    最後に、この作品のクライマックスの一つである、ダリアの夜の宴について。長いことこの作品にどっぷりと使って、さながら暗黒館の住人のようにここ数十日を楽しんだ者としては、ぜひともいつか参加してみたいものだ。そんなことを思ってしまうのは、僕もダリアと暗黒館の魅力に取り憑かれてしまったからだろうか。

  • 4巻物だから買った一冊。

    やっと読み終わった。
    ちょっと話が複雑で7割から8割くらいしか内容を理解できてない

    謎が多く、解決もまわりくどい感じがしてちょっとイライラしたが、最後にはスッキリ解決してイライラしたのも忘れた感じだった。

    でも一通りの謎が解決しても、現在にもどり登場人物も言っていたが、その後どうなったか?という謎がいくつも出てきてちょっとモヤモヤ感が残るラストだった。

    長い話だったが終わるとなんだか寂しくなる小説でした。

  • ひととおり再読して、改めて綾辻行人の魅力を再確認しました。
    本格ミステリーでありながら、独自のファンタジー要素を組み込んだ独特の表現で私の心を魅了します。
    大好きすぎです。
    得意の名前トリックはもちろん、館シリーズ独特の「隠し部屋」トリック、登場人物達の特殊な信仰や性質を駆使し、謎を作り出してゆきます。
    ラストの伏線回収も見事で、再読して初めて納得した要素もありました。
    思い出し、暗黒館の中で漂う「視点」の気分にしばらく浸れそうです。
    ダリアの祝福を。

  • これまでの館シリーズのテイストが随所に盛り込まれ、そしてこの話はある重要な人物のバックボーンとなる。4篇に分かれているものの長さを感じることなく暗黒館に没入しました。

  • 大好きな世界でした。ゴシックホラーミステリ…幻想小説好きなのでもうたまらなく良かったです。
    何度もあるカタルシス、江南くんがよく知る江南くんじゃなかった上に、本編の舞台は三十三年前の暗黒館、そして明かされる中也さまの本名「中村青司」!この明かされ方は十角館に似ている、頁めくったらあるところが。
    殺人事件の謎は解かれるけれど、その他の、知らない方が幸せだと思う…というところは明かされないのも好みです。
    シリーズ7作目だけれどすべての始まりの館かと思ったらまた十角館から読みたくなります。シリーズ順番に読んできたから楽しめたところもあります。

    これまでなんとなく心惹かれていた昏いものたち、それを大切に仕舞っておく『暗黒館』がわたしの心の中にも確実に建造された気がします。闇に惹かれても良いのだな。
    いろいろと心の暗黒館に入れておこう。。素敵な居場所が作れて良かったです。
    特別寄稿もとても面白かったです。心強い方々。

  • 館シリーズ第7作目、眠たい目を擦りつつ4巻からなる大作を1週間で読み終えたが余韻がすごい。

    館シリーズの始まりとなる物語、今まで読んできた藤沼氏の幻想画や不思議の国のアリス、時計といった単語が所々に散りばめられており否応なしに現実の世界なのに現実ではないどこか幻想的な雰囲気を醸し出す。
    わざわざカッコ書きまでして入る視点のセリフがさらに効果的。読むにつれ謎が明らかになってくる高揚感でどんどんのめり込んでくるのに、唐突な別視点の台詞やワードが私を物語から引き剥がす。波のようだ。安定しない。だからこそ、読み手の関心を引く。

    物語としては王道のクローズドサークルという舞台の中、本シリーズの中核をなす館を土台に置き、その中で起きるミステリー。しかしながらただのミステリーにはない、閉塞感か、はたまた狂気か、そんな要素を詰め込んだ結果、ミステリーとはまた違うカテゴリーに入る小説のように感じた。

    色々と書いた結果、よくわからない内容になっていると思うがまさにこの本はそんな感じ。思考の迷路に迷い込んだかのようなそんな後味。

    いい本であったことは間違いない。
    ただどうしても気になるのはその後の皆の今。果たして最後にピアノを弾いていたのは誰だったのか。惑える誰かの歌声か。

    ここでやめてもいいような気もするが、次のびっくり館は気が向けば。

  • ネタバレ強め

    読み終わりました。長かったけど大満足です。
    予想通りだったな〜と思ったら毎回どんでん返しされてます。
    絶対犯人江南くんだろと思ったらそもそも別人だし。
    玄児さんが玄児じゃないのは、だよねって感じでした。が、一段落して油断してたら中也の正体という大爆弾に唖然...

    長い故に強い愛着も沸いてた中也が、これまで最も謎だった青司その人とわかった時の興奮はヤバかったです。
    読む前は長すぎだろと思ってましたが、シリーズ最重要人物である中村青司の始まりの物語だと思うと、この長さも頷けます。
    特別感あるのも当然ですね。読んだ甲斐がありました。

    ただ、私は読者の想像に任せる的なのが好きではなく、はっきりして欲しいタイプなので気になる所は残りました。
    それを蛇足と感じる人もいると思うので、好みの問題だと思いますが。

  •  すべての原点。

     感想は四巻分まとめて。
     ノベルス版で読んで以来だから11年ぶりの再読だってことにぞっとした。もう11年前なのか……。読み終わったら頭ぐらぐらする感じ。雰囲気、重厚感、たまらん。
     そんで、今読み返してぞっとしたとこな、三巻409ページな。「鉄仮面」が出てくるんですわ。ああ、って思ったね。
     びっくり館のモチーフ忘れてしまってるんだけど、あれも青司の館であることに違いはない、んだよね? あっち読み返して、また戻ってくるのもいいかもしれない。読み切るのに二日かかるが。
     ノベルス版の感想でも書いてあるけど「視点」の盛り込みは、未だにちょっと納得いかないかなぁって。あれは江南(コナンのほうな)くんを騙すための視点だよなって、今読むと思う。読者だけを騙すのであれば、「視点」なんて盛り込み方はする必要なかったんじゃなかろうか。ただその場合、「ネタ晴らし」が面倒くさくなるかなって気もする。そこまで含めたらやっぱり、「視点」を盛り込まざるを得なかったのかもしれないのかなぁ。
     このボリューム、内容だったら、シリーズ最終作として持ってきたほうがいいんじゃないかって気もした。集大成として相応しそう。ただこれを書き切るには体力も精神力もいるだろうしなぁ。寝かせておくべきネタでもないのかもしれない。作者としてはそこに意図はなかったとしても、この話をシリーズ七作目にした理由を探したくなる。
     殺人事件やら何やらのトリックは全然覚えてなかったし、犯人も覚えてなかったんだけど、物語全体の大きな仕掛け(「私」の混在、時系列の混在)と「中也くん」が誰であるのかってところは覚えてて、そこを踏まえた上で読んでたんだけど、やっぱりうまいなぁ。
     ただちょっと冗長かなって気もする。雰囲気は出るけど、単語、文節を切り貼りして羅列、(カッコ)の差し込み方とか、誰かが重要なことを言おうとしたタイミングで横やりが入ったりってのが数か所あって、早く話を進めろよ! って気分になった。昔はそんなこと思わなかったんだけどなぁ。年とってせっかちになったのかな。
     いやまあ、そこ踏まえて、全力で神とあがめますがね。
     事件が起こってもいないのに、ずっと錆びた鉄の匂いとか、じっとりとかびた空気とかが纏わりついているような雰囲気がある。
     ノベルスだと上下の二冊、文庫だと四冊。相当な文量だけど、それもこれも全部、第五部ラスト(四巻346ページの最後の二行)のためだけに綴られた文字。あの二行にはすべての価値が詰まってる。
     抜粋は二巻の冒頭。間奏曲三より。


     すべてを包んで広がる闇は存外に柔らかく、そしてやはり、冷ややかな悪意に満ちている。

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著者プロフィール

1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院修了。1987年に『十角館の殺人』で作家デビュー。「新本格ムーヴメント」の先駆けとなる。1992年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。『水車館の殺人』『暗黒館の殺人』『奇面館の殺人』など、「館シリーズ」と呼ばれる一連の長編は現代本格ミステリを牽引する人気シリーズとなった。ほかに『緋色の囁き』『霧越邸殺人事件』『眼球奇譚』『深泥丘奇談』『Another』などがある。2018年、第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。

「2021年 『十角館の殺人(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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