暗黒館の殺人(四) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 247
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758819

感想・レビュー・書評

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  • 綾辻行人『暗黒館の殺人(1〜4)』読了。ぜったいもっと短くできただろと思ってはいますが、これも味です。結局は一気読みでやっぱり面白かったのです。望むとすれば、あのノイズがなければ、もっともっと重厚な怪奇幻想とミステリの世界に浸れたのではないかと思うのです。

    これ館シリーズの一つの集大成としても単品としてもすごく面白いのですが、館シリーズはよくも悪くも館シリーズとしての特色を期待されて、作者もそれに応えようとしてる部分があると思っていて、それを取っ払った純粋な暗黒館も読んでみたいとの複雑な気持ちも湧いてくるのでした。

    (ネタバレ注意)

    どんでん返し要素は置いておいて、密室と人間消失のトリックの推理面はもう少し盛り上げることができたのでは。設定に無理やり感はあるものの、筆者の文体、表現力、構成力が、無理を無理じゃなくしている。舞台装置が作り込まれて、この世界では、それも自然と納得させられてしまう。一族の狂信と鏡に映らなくなるという思い込みから、そこに鏡があったはずだという指摘の流れはかなり面白かった。狂信を理解した上での心理的な必然性の指摘。

  • 3.5
    小説全体の謎が粗方解明。青司や館の謎に迫る部分はこれまでの積み重ねもありそれなりに面白い。大作ではあり色々考えられてはいるがそれなりな感じ。最大の真相。中也は大学生の頃の中村青司であり暗黒館が始まりの館。全体にわたって所々出てくる太字は乗り移った編集者の江南の想い。探偵の鹿谷門実こと島田潔は最後の少し出てくる程度。江南は編集者の「かわみなみ」ではなく幼児取り換えによる玄遥とカンナの息子「えなみ」、玄児は柳士郎と使用人諸居静その後江南静の息子忠教であったことが明らかに。
    限性遺伝。異常を持った父親の男児には必ず同じ異常が現れる。玄遥は足が3本指の奇形でこれが幼児すり替えの気づきに。玄児、柳士郎、忠教を含め火事により生死不明に。残った征順が当主になるが各登場人物のその後は基本不明。

  • シリーズの中では後発なのに、「館」シリーズの原点ともいえる書。ここまでの作品の中の登場人物の、「当時の年齢」が書かれていたこと、まさかこの作品に組み込まれているとは…。
    「十角館」での衝撃のセリフにも似た、「あっ!」と言わせるセリフが後半にあり、そこから結末に向けてはずっと肌が粟立ってました。一種、オカルトでありえない設定で、まさかの夢オチ…っていうのは私が求めている推理小説とはちょっと違うけど、良い作品。ネタがわかってから読み返したいけど、なにぶん4冊にもわたる超大作なので…。また今度、かなぁ。笑

  • 4巻、最終巻を読み終えて、ようやく面白い!と思った。
    さすが、綾辻さん!と。
    1~3巻を読むのがなかなか大変で、挫折しそうだったけれど、4巻で救われた。

    “視点”がうろうろするのが私は読みにくくて苦手だったけれど。

    メジャーを巻き取るみたいにしゅるしゅるしゅるっと伏線を回収してくれる爽快感を得ることができたので、いつの日かもう少し丁寧に読み返してみたい。
    (今回はぐったりしながらめくっていたので…)

  • 4冊分まとめての感想


    「館シリーズ」自体は第1作目の『十角館の殺人』しか読んだことがなく、それもだいぶ昔に読んでいたので、他シリーズの内容やそこに関わっている人達のことをほとんど何の知識も無しでこの『暗黒館の殺人』を読み始めてしまったことを少しだけ後悔…。

    それでも、この物語で繰り広げられた一連の出来事の濃密さ、闇の深さは底無しかと思うくらいボリュームのある内容で、充分世界観に浸ることができました。



    1・2巻はまだまだ物語の序盤、建物の説明や人物説明がほとんどだったのが、3巻で謎の解明が始まり、そこでようやく事件の全貌が見えてきたように見せての、4巻のドンデン返しが凄かった!
    自分が今まで見て(読んで)信じていた事柄や、それこそ“記憶”と言っていいものをほぼ全て否定されててしまったような衝撃。言われてみれば1巻の最初からあちこちに伏線が張られていて、偶然か、それとも何かに導かれた必然なのか暗黒館に集められた人々の過去と未来がひとつに繋がった瞬間は鳥肌が立ちました。



    長きに渡って疑問に感じていた“視点”の正体や、“ダリアの祝福”の謎、そして一連の事件の解決。さらに、最後の最後で“中也”の本名を明かした時には「やられた!」って思いました。

    最初は、厨二的な文章表現が少し小っ恥ずかしく思いながら読んでいましたが気付けば自分もすっかり暗黒館の魅力にはまっていたんだな、と読み終わってから染み染みと感じるものがあります。もし、中学か高校生の頃に読んでしまってたら絶対に影響されいてただろうなぁ…もっと早く読んでいたかった、それも全シリーズを通して。そうしたら文句なしの☆5でオススメしたい作品です。

  • 「視点」が何なのか分からず、とても鬱陶しく感じて、
    「視点」をどう読めば良いのかを調べたいと思い、インターネット検索をしてしまった。

    これが大きな間違いで、つまりそれは推理小説を最後のページから読むような話だったのだ。

    しかしそこは綾辻先生。
    答えが分かってしまっても、畳みかけるように真実が分かってくるこの第四巻は、トイレに行くのにも本を手放せなくなってしまうほどだった。

    最初から気になっていた中也は、なるほど、あの人だったのか!

    この本を読み終わった後は、館シリーズの最初からもう一度読みたくなった。

  • なるほどそうきたかーーーーー!一番館シリーズっぽくなくて、一番館シリーズっぽい館でした。これは前の館シリーズを読んでからじゃないと読んではいけないやつ。

  • 「館シリーズ」第七作。二六〇〇枚に及ぶ巨編ミステリ。
    名前の如く屋根と壁、そして家具までも黒い館、暗黒館。館の主、浦登柳士郎の息子、玄児に招待されやってきた中也、彼は館で起こる殺人事件に遭遇する。
    文庫本で四冊に分けられた本作を読むのに大変、骨が折れた。何分長いので、これから読む方には覚悟して頂きたい。まあ、活字中毒の方には寧ろその逆か。
    ゆっくりと時を刻んでいく物語。漠然とした違和感を抱えたまま解決編を迎えた。ああ、そんな感じなんだろうなと拍子抜けしてしまった。が、しかし読み進めていくと新しい真実に驚愕した。いつの間にか過去と現在を行き来する視点に翻弄されてしまっていたらしい。
    何よりも綾辻作品らしいトリックだった。
    本作は「館シリーズ」の分岐点であり、シリーズ全体の解答編でもあるだろう。「館シリーズ」には欠かせない一作だ。

  • 中也君の正体、並びに不可思議な視点の謎、そして玄児の出生の秘密…
    まだまだこの暗黒の館には謎が犇めいている。
    最後まで読み進めても気になる事が沢山残ったまま、
    まだダリアの魔性が現世にも残っているかのような余韻のある終わり方で良かったです。
    特別寄稿も個人的に胸の熱くなる人選で、兎に角最後まで楽しめました。
    改めて十角館等を読んでみると、また違った感慨が生まれるかもしれません。

  • 1巻からひたすら先延ばしにされ続けた謎が
    3巻以降次々に解明されていき…

    でもその直後、明かされた内容を
    さらに覆す事実がどんどん溢れ出てきて…

    二転三転する衝撃の真相に震撼、戦慄。

    それとなく匂わせるだけで
    最後まで明かされない謎も残ってますが、
    そこは読者の想像にお任せということなのでしょうか。

    暗く、重く、えげつないお話でしたが、
    まさに館シリーズの集大成であり、
    中村青司の原点ともいえる作品。

    既刊各館のモチーフが其処彼処に出てきます。
    この1ヶ月、刊行順に読んできた甲斐がありました。

    これがシリーズ最終巻でもよさそうですが(笑)、
    館シリーズはまだ続くみたいなので
    気長に文庫化待ちます。

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著者プロフィール

1960年京都市生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士後期課程修了。87年、大学院在学中に『十角館の殺人』でデビュー、新本格ミステリ・ムーヴメントの契機となる。92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。2009年発表の『Another』は本格ミステリとホラーを融合した傑作として絶賛を浴び、TVアニメーション、実写映画のW映像化も好評を博した。他に『Another エピソードS』『霧越邸殺人事件』『深泥丘奇談』など著書多数。18年度、第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。

「2023年 『Another 2001(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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